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継続高校チームのT-26軽戦車

2021年01月29日 | ガールズ&パンツァー

 去る1月20日より解禁となった、最終章第3話の本予告映像にて、また1輌あらたな戦車が登場しました。上図の継続高校チームのT-26軽戦車です。この場面には薄灰色の三角旗をかかげたフラッグ車のBT-42も出ており、T-26軽戦車がこれを護衛する役目をこなしている様子が伺えます。

 継続高校チームがT-26軽戦車を保有している事は、既に2014年刊行の「月刊戦車道」第6号の28ページの継続高校の紹介記事にて述べられ、第63回戦車道全国高校生大会にて試合にも参戦している旨が2015年刊行の「月刊戦車道 第63回戦車道全国高校生大会総決算特別号1」にて紹介されています。
 したがって、アニメ本編にいずれ出てくる事は前々から予想され、大洗女子学園にとって継続高校チームとの対戦が既定路線となってからは、実質的に時間の問題であったと言えます。

 また、コミック版の「フェイズエリカ」においても継続高校チームの1輌として対黒森峰女学園戦を戦っており、その作中車はT-26Bタイプの車体と1933年型砲塔との組み合わせに1938年型の要素を混ぜ込んだ独自の姿にて描かれています。それは、T-26軽戦車が史実においても色々なバリエーションを展開して時期毎に異なる形状を示していた経緯をある程度反映させた設定であったのかもしれません。

 なので、個人的には最終章第3話にて対継続高校戦が実現するならば、継続高校チームの1輌であるT-26軽戦車も必ず出てくる、と当たり前のように思っていました。問題は、色々なバリエーションをもつT-26軽戦車が、どのバージョンで登場するか、という点でした。

 

 そして初登場の劇中車の姿に接した途端、あれ?と思いました。新たな戦車が加わった事に対する感動もありましたが、それ以上に劇中車の姿が、私自身の予測していたイメージのバージョンと違っていたことによる驚きとショックのほうが大きかったのでした。

 まず、車体をBタイプだろうと予測していましたが、上図のようにCタイプでした。つまりはT-26Cです。1938年の末期より生産が始まって資料類では1939年型とされている形式です。これに、1938年から採用された形状の砲塔がセットされていますので、全体的にはT-26Cの1939年型のように見えました。
 以前に「フェイズエリカ」版の作中車を再現製作する際にT-26軽戦車の歴史やバリエーションを一通り調べましたから、おおよそのイメージは把握出来たのでした。

 しかし、砲塔が本来の左側ではなく、右側にオフセットされている点に違和感を覚えました。さらに砲防盾に段差が付いています。ソ連軍が運用したT-26Cの砲塔には有り得ない状態でした。初登場の劇中車の姿に接した途端、あれ?と思ったのは、これらの相違点に気付いたからでした。

 加えて、戦闘室前面の左側に奇妙な五角形にみえる機銃マウントがあることも、違和感をより強めました。こんなタイプのT-26Cってあったのかなあ、フィンランド軍が鹵獲して以降に加えた独自の改造なのかなあ、と考えを巡らせつつ、またガルパン独自の形状を織り込んできたかな、いやそれは無いかも、と思い迷いました。

 こういう場合、もともと仏教美術史や歴史関連の研究者だった身としては、歴史的な知見や情報についてはしかるべき研究機関に問い合わせて正確な内容を提示して貰うのが最適解だ、と考えます。ソ連の軍事車輌ですから、日本国内に情報を求めても意味がありません。ソ連の戦車に関して最も正確で豊富な情報を網羅するのは、現在のロシアの戦車博物館つまりはクビンカ軍事博物館などの学芸部門しかありません。
 そこで、最終章第3話の本予告映像に初めて接したその日のうちに、あらかじめ調べてあったクビンカ軍事博物館のメアドに向けて、質問事項を英文で送信しました。

 返事のメールは、三日後の1月23日の昼過ぎに届きました。丁寧な文章に添付の図面が3枚添えられて、T-26軽戦車のバリエーションが分かりやすく示されていました。自身の理解の浅さを悟るとともに、新たな学びの感動に身を震わせずにはいられませんでした。この場を借りて、改めて感謝申し上げます。

 返事でのご教示内容によれば、T-26軽戦車は大まかに分けて車体が3型式、砲塔がMシリーズで3種、OTシリーズで3種の計6型式あるそうです。そして砲塔の位置はMシリーズで左側にオフセット、OTシリーズで右側にオフセットだそうです。さらに、それまであまり知らなかったOTシリーズ、T-26軽戦車を火炎放射車輌に改造した派生型についても詳しく知ることが出来ました。
 そして劇中車のモデルがフィンランドのパロラ博物館に現存する1939年型の「Ps.164-7号車」で、これはもとはOT-133火焔放射戦車であったものを砲身だけ交換して元の45ミリ砲に戻しているタイプであることも示されました。砲防盾につく段差と、砲塔の右側オフセットはOT-133火焔放射戦車の特徴であることも知りました。

 以上の情報により、継続高校チームのT-26軽戦車は、モデルがパロラ博物館に現存する1939年型の「Ps.164-7号車」であって、そのまま忠実にアニメ化していることが理解出来ました。五角形の機銃マウントもフィンランド軍の独自改造による追加要素であるそうです。

 

 返信を書いて下さった学芸員の方は、どうやらガルパンも御存知であるようで、RUBICON MODELSのサイトおよび窓口アドレスも資料図面に書き添えてありました。それでRUBICON MODELSをネット検索して見つけたのが上図のT-26軽戦車の形式一覧図ですが、これによってさらに分かりやすくなります。

 先に述べた、車体が3型式、砲塔がMシリーズで3種、OTシリーズで3種の計6型式、というのがこの図でも簡単に分かります。
 これらをきちんとおさえておくと、模型的には再現製作への適応キットの絞り込みに役立ちます。ネット上やツイッター上で適応キットが分からなかったり、違う形式のキットを購入していたりする事例が散見されますので、私自身も間違えないように、あらためてここでおさらいしておきます。

 

 まずは「車体が3型式」ですが、御覧のように左から双砲塔式のT-26A、単砲塔式のT-26BおよびT-26Cと並びます。T-26AとT-26Bは原型のヴイッカース6トンの車体をそのまま受け継いでいますが、T-26Cはアンダータレットボックスの三方を傾斜装甲に換えています。
 そして最終章第3話の劇中車は、車体は1939年からの生産型であるT-26Cにあたります。

 なお、T-26Eという形式もよく知られますが、これはヴィッカース6トン車の車体にT26の砲塔を載せた改造型を指します。クビンカ軍事博物館の基本分類ではヴィッカース6トンの系列に含めており、したがってT26系列には属さない亜流の型と位置づけているようです。

 

 次に、「砲塔がMシリーズで3種、OTシリーズで3種の計6型式」というのを上掲の図にてみてみましょう。御覧のようにMシリーズの双砲塔の1931年型、単砲塔の1933年型および1935年型、1938年型および1939年型、の3種類があり、その3種類をそのまま火炎放射筒に換えたOTシリーズがあります。1931年型を使用したOT-26、1933年型を使用したOT-130、1938年型を使用したOT-133、の3種類です。

 そして最終章第3話の劇中車の砲塔は、1938年型および1939年型を使用したOT-133のタイプで、フィンランド軍が鹵獲した後に砲身を火炎放射筒から元の45mm対戦車砲に戻した現存車輌の状態をそのまま示しています。その改変によってT-26Cの姿にほぼ等しくなりましたが、右側へのオフセットなどがソ連軍の正規のT-26Cの1938年型および1939年型の砲塔には有り得ない状態ですから、最初に見た瞬間に違和感を覚えたのも間違いではなかったことになります。

 

 参考までに、劇中車のモデルとされるフィンランド軍の車輌の図を挙げておきます。車体はT-26Cのタイプ、砲塔はOT-133のタイプで砲身だけが本来の45mm対戦車砲に戻されています。

 

 そしてこちらが火炎放射車輌のOT-133です。砲塔天板上のループアンテナ基台を撤去した跡が見えるので、砲塔自体は1939年型のタイプでしょうか。これの火炎放射筒を外して元の45mm対戦車砲に換えれば、劇中車の姿に通じてくることが分かります。

 以上、継続高校チームのT-26軽戦車について、クビンカ軍事博物館への問い合わせ事項に対する返信教示をふまえ、自身なりに忘備録を兼ねて分かりやすくまとめました。これらの情報を活かして、後日、その適応キットについて紹介する予定です。

 


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