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奈々の これが私の生きる道!

映画や読書のお話、日々のあれこれを気ままに綴っています

映画「メトロポリス」SF映画の原点にして頂点

2017-10-03 23:44:27 | 映画・テレビ

 あれは10年前くらいだったと思います。
 SF映画「メトロポリス」というDVDを、中古ショップで見つけたのは。
 そのSF映画は、1927年にドイツで制作され、人造人間が登場する100年後の世界を

描いたものでした。
 1927年は、日本で言えば、昭和2年という年で、そんな遠い昔に、どんな未来が描か

れているのか、すごく興味を惹かれてしまいました。
 それで、そのDVDを買い、観てみたのですが、何しろ昭和2年に作られたSF映画ですから、

正直、それほど大きな期待はしていませんでした。
 ところが、その映像を観て、びっくりしちゃったんです!
 そこに映し出されたものは、今見ても、未来っぽく見えましたし、圧倒的な迫力に満ちて

いたのです。
 とくに、超高層ビルをはじめとする街の様子は私たちが描く未来都市そのままと言っても

、決して過言ではなかったのです。
 そして、人造人間が誕生する瞬間の映像も、その時代にどうやって撮影したのか、とても

よく出来ていて、素晴らしいとしか言いようがありませんでした。
 それで、私はとてもいいものを観たなという満足感でいっぱいになりました。

 ところが、それからしばらく経って、レンタル屋さんに行ったら、「メトロポリス」のビ

デオを見つけたのです。
 そのレンタル屋さんは、今はもうなくなっちゃったのですが、よそのお店がDVDを主流にし

たあとも、ビデオが沢山置いてあったのです。
 その「メトロポリス」のビデオを手にとってみたら、驚いたことにカラー版と書いてあり

、しかも、BGMにロック音楽を使用しているらしく、またまた興味を惹かれて、観てみる

ことにしたのです。
 すると、それはカラー版と言っても、画面全体が赤くなったり、黄色くなったりして、本

物のカラー版とはちょっと違っていたのです。
 だけど、ロックンロールのポップな音楽と相俟っていて、これはこれでいいように思えま

した。
 しかし、不思議なことに、このカラー版は私が買ったものより長くて、観たことのない映

像や写真がいくつも插入されていたのです。
 同じ映画なのに、どうしてでしょう?
 そこで調べてみたら、この映画は、もともと2時間半ほどあったそうですが、時代をあま

りにも先取りし過ぎていたのか興行収入がパッとしなくて、1時間半の短縮版にしたそうで

す。
 その結果、元の完全版のフィルムが散逸してしまい、そのカラー版はジョルジオ・モロダ

ーが世界に散らばったフィルムや写真をかき集め、あとから継ぎ足したものだったのです。
 しかし、そのカラー版でもまだ見つかっていないフィルムがあり、完全版には程遠いもの

でした。
 私が観たのは完全版ではなかったのです。
 私はこの映画は映像が素晴らしいとは思っていたのですが、どうしても理解しにくいとこ

ろがあり、その理由をサイレントで、説明も少なく、セリフが字幕でちょっとしか写ってい

なかったからだと思っていたのです。
 
 そして、私はこの映画が、SF映画の原点にして、頂点だと、この時、初めて知ったのです



 やっぱり、この映画は、すごい作品だったんだ!

 でも、ちょっと待って。
 SF映画の原点なのは、その古さから分からないでもないですが、頂点は「2001年宇宙

の旅」では?
 映画評論家や映画監督も、「2001年宇宙の旅」の方を評価してる人が多いみたいだし

、どうして、「メトロポリス」が、SF映画の頂点なんでしょう?
 ところが、「メトロポリス」は人類が記憶に残すべき作品として、2001年にユネスコが世界記憶遺産に承認した初めての映画なのです。
 だから、ある意味、「2001年宇宙の旅」を超えちゃっているのです!

 「メトロポリス」が、SF映画の頂点と言われる訳は、SF映画ならではの設定がいくつも取り入れられているこ

とにあるのだとか。
 まず、1つめは未来を描いたこと。
 2つめに、人造人間が登場すること。
 3つめにマッド・サイエンティスト、つまり、気狂い博士が奇想天外な発明をして、世間

を騒がせちゃうことです。
  わかりやすく言うと、マンガの「鉄腕アトム」の天馬博士、「鉄人28号」の敷島博士

というところかしら♪
 そして、頂点だけあって、その後のSF映画に多大な影響を与えたそうです。
 大都会の外観は、「ブレード・ランナー」、人造人間は「スター・ウォーズ」のC3POなど

、その例は枚挙に暇がないとか♪

 だけど、惜しいことに、この映画はサイレントで、セリフや説明が少なく、そのせいで、

意味が理解しにくく、想像したり、わからないままのところが、私にはいくつもあったので

す。
 なんででしょうねえ。
 でも、分かりにくいから名作と言われてるのかも知れないし・・・ 
 ところが、それからしばらく経ったある日、古本屋さんで、「メトロポリス」の文庫本を

見つけちゃったのです!


 それは、「メトロポリス」の監督フリッツ・ラングの奥さんのテア・フォン・ハルボウが

書いた小説でした。
 この小説は映画版と同時進行の形で、新聞に発表され、その後、単行本として出版された

ものでした。
 この原作版を読んだら、きっと理解しにくかったところも分かるかも知れない。
 そう思いはしたのですが、なぜか、その時は買わなかったのです。
 もしかしたら、「メトロポリス」に対する興味を失いつつあったのかもしれません。
 しかし、そんな私に待ったをかけたのは、ブルーレイの完全復元版の存在でした。
 とうとう、「メトロポリス」の全部のフィルムが発見され、ついに神秘のベールがはがさ

れる時がやってきたのです。

 だけど、それを観ても分からなかったらどうしよう?
 そこで、ネット・オークションで、古本屋さんで見かけた原作本を取り寄せることにし、

先日、ようやく原作本と、ブルーレイの完全復元版の両方を鑑賞してみたのです。
 原作本は文章も素晴らしく、完全復元版でも触れてない部分がいくつも書いてあり、「メ

トロポリス」を初めて、心ゆくまで堪能出来たように思いました。
 そして、原作本ではメトロポリスの冷徹な最高権力者ヨー・フレーデルセンが老いた母親

と、亡き妻ヘルのおかげで改心するところがあり、この作品のテーマが分かりやすく書いて

あったのが、なによりに収穫でした。


 ところで、この「メトロポリス」のテーマは、何なのか気になりますか?
 それは「脳と手の媒介者は心でなくてはならない」です。
 実は、この映画を作った当時、監督のフリッツ・ラングは原作者の妻(後に離婚)テア・
フォン・ハルボウの提示したこのテーマに懐疑的だったらしいです。
 だけど、晩年、フリッツ・ラングは若者に「現在のコンピューターに制御された世界を、どう思っているのか、何が欠けているか?」と尋ねた時、「心が欠けている」と答えた若者が何人もいて、テア・フォン・ハルボウの先見性の素晴らしさを、今更ながら思い知らされたとインタビューで語っています。
 

 また、マンガの神様・手塚治虫も「メトロポリス」に感銘を受けた一人で、アニメ「ミクロイドS」の主題歌には、この映画のテーマが巧みに取り入れられています。

 ♪心を忘れた科学には、幸せ求める夢がない・・・(作詞・阿久悠)
 

 真に偉大な人は、偉大なものを知るとは、この事を指すのでしょうね?

 「メトロポリス」、機会があれば、ぜひ、観ていただきたいです。

  

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