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奈々の これが私の生きる道!

映画や読書のお話、日々のあれこれを気ままに綴っています

漫画「妖精王」山岸涼子

2013-06-09 00:19:19 | 読書

私の住む宮崎では、桜は3月の半ばに咲き始め、4月には散ってしまったというのに、北海道は先月、ようやく咲いて、今月もまだ散っていないところがあるそうです。
そういう話を聞くと、日本は広いのだなと、つくづく感じます。
私が、なぜこんな事を書くのかと言いますと、山岸涼子さんの漫画「妖精王」の舞台が北海道だからです。
妖精が住んでいそうなところと言ったら、北海道が一番ふさわしいような気がします。
それは、冬の間、たくさんの雪が北海道を真っ白な世界に変え、人々の欲望や嫉妬、怒りや憎しみなど、すべての醜いものを包み込んで、リセットさせてくれそうだからです。

そう、北海道は神様に選ばれた土地なのです。

そんな雪と氷に閉ざされた美しい北海道にも、残念ながら春はやってきます。

今、私は残念ながらと書きましたが、北海道には春を待ち望んでいる人が多いですよね?

それは、名前にも如実に現れています。
北海道には、千春とか陽子とか、春や暖かさをイメージさせる名前の女性が多いそうです。

でも、私にとって北海道の春のイメージは、雪解けとともに地上の醜いもの達が蠢(うごめ)き出す、そんな気がするのです。

つまり、この漫画「妖精王」の美しい妖精に敵対するクイーン・マブ率いるダーク・エルフの化物達が、神様の魔法から解き放たれ、自由になれるのが春という訳です。

おそらく、この作者の山岸涼子さんも、私と同じイメージをお持ちなのではないでしょうか?
と言いますのも、このお話は主人公の爵(ジャック)が、病気で転地療養のために、春先に北海道を訪れるところから始まるからです。


とこで、ここであなたにお願いがあります。
本題に入る前に、2つほど書かせていただきたい事があるのです。

私は作者の山岸涼子さんを、「日出処の天子」がヒットしていた時、テレビで観た事があるのです。
山岸涼子さんは、髪の毛を両方で束ねて、どんぐり目玉で、両目ともあらぬ方向を向いている自画像をよく描かれていますが、実際のお姿は目がきりりと引き締まって、無駄なお肉のない均整のとれたとても素敵なお姿をされていらっしゃいました。
その時、なぜか漫画家に成り立ての若い女性も出演していて、どんなふうに漫画を描いているのかカメラで追っていたのです。
その彼女の描き方はストレスがたまって嫌な気持ちがわいてきたら、即座に描くのをやめ、お茶をしたり、軽いダンスを踊ったりして、気持ちが落ち着いてから描くというものでした。
彼女いわく、「素敵な愛のお話を描くのに、嫌な気持ちのままでは描けません」

それを聞いた私は一瞬なるほどと思ったのですが、彼女はちょっと描くと、すぐに嫌な気持ちがわいてくるみたいで気分転換ばかりして、原稿がなかなか進まないのです。
そして、最後は「ちょっと散歩に行って来ますので、あとをついて来ないで下さい」と言い残し、そのまま何時間も帰って来なかったとか。
それを番組の司会者に指摘されると、「なかなか、漫画を描く気にならなかったので」と事もなげに答えていました。
次に司会者は山岸涼子さんに、「やはり、こういうふうに描かれてるんですか?」と尋ねたんです。
すると、山岸涼子さんはさもおかしそうに鼻で笑って、「いいえ、私の場合は一旦、描くとなったら、机にしがみついて、決して離れません。」と答えたのです。

そう、鼻で笑いながら。

私はそれを観ていて、山岸涼子さんはプロ中のプロだな、そして人にも自分にもめちゃくちゃ厳しい人なんだなと感心した次第でした。

あと、もう一つ書きたいのは妖精についてです。
世の中には妖精が見えるという人が少なからずいらっしゃいますよね?
それも、ちっちゃな小人の妖精を。
私自身は見たことがないのですが、昔、私の周りにも見えるという人がいましたので、本当にいるんだろうなと信じています。
だけど、妖精が見えるという人を、羨ましいなとか、特殊能力を持った優れた人とはまったく思っていません。
と言うのも、可愛らしい妖精ならともかく、いやらしい顔をした中年男性の小人の姿をしているとよく聞くからです。
私の知っているバイト仲間だった女性は、おじさんの妖精がニヤニヤしながら、いつも彼女のあとをついてきていたそうです。
そんなある日、トイレの中までついて来て、あまりにも腹がたったから便器の中に水と一緒に流してやったと、思い出すのも嫌そうに教えてくれた事がありました。

また以前、付き合っていた友人にこんな女性がいました。
彼女はマンションに住んでいたのですが、ある晩から、誰もいないはずなのに、ガサゴソ音がしたり、家具や食器などがひとりでに動くようになったらしいのです。
そして、化け物の姿まで見えるようになったとか。
そこで、彼女はある人の勧めにより、お祓いをしてもらいに年老いた女性の祈祷師のところを尋ねたそうです。
その祈祷師は何やら呪文を唱えたかと思うと、彼女に、「百鬼夜行というのを聞いた事があるでしょう?あなたの部屋は化け物達の通り道になっている。その化け物達がいたずらしているんです」と言って、お祓いをしてくれたそうです。
そして、その祈祷師のところを去る時、「家に帰るまで、決して振り返ってはなりませんよ。後ろを振り返ったら、私のお祓いは無効になるから」と言われ、その言葉通りにしたところ、その夜から何事もなくなったのだとか。
しかし、そのマンションで、そういうのが起きたのは彼女の住んでいる部屋だけで、よそは何事もなかったそうです。
それを聞かされたのは、私が彼女と知り合って間もない頃で、まだよく彼女の事を知らなかったのです。
ところが、あまり詳しくは書けませんが、彼女と付き合うに連れ、だんだんおかしなところが、いくつもあるのに気づいたのです。

彼女は一見美しく見えたのですが、それは仮の姿で、本当は化け物の血が混じっていて、仲間が呼び寄せたのではないのか?

そう思える節がところどころ見え隠れするようになったのです。

だから、私は素敵な妖精や存在が見えるのならともかく、普通の人に見えないものが見えたからと言って羨ましいとはまったく思わないのです。


山岸涼子さんの「妖精王」とはちょっと関係ないお話をしちゃいましたが、あなたはどう思われたでしょうか?

それでは本題に入りますね。


東京で高校一年生になったばかりの爵(ジャック)は病気で転地療養のために北海道の親戚の家に預けられます。
そこで、奇妙ななささやきを聞いたり、不思議な夢や小人を見るうちに、やがてクーフーリンという、なぜか懐かしい気のする若者と出会うのです。

事の発端はジャックが、クーフーリンに、「君にとって、それは必要なんだ」と言われて、角笛をもらった事でした。

それから、ほどなくして一人の来客がジャックの住んでいる親戚の家を訪れます。

この女性が、ジャックとクーフーリンの敵クイーン・マブの仮の姿なのですが、山岸涼子さんの初登場のこのキャラクターの描き方がすごいです。
帽子をまぶかにかぶって、顔はよく見えないものの、いかにも美人を思わせる品のいいファッションと素振りで、今にも折れそうなほど細い体つき。


これは怪しい雰囲気がプンプン匂います。(笑)


彼女がジャックに会いに来た理由は、ジャックがクーフーリンから譲り受けた角笛を奪うためだったのです。
その角笛を持った者だけが、妖精王になり、ニンフィディアを統治する資格が得られるのです。

そしてジャックとクーフーリン達は、妖精王の子グィンの失った言葉で出来た水の指輪をクイーン・マブから奪い返して、平和なニンフィディアを取り戻すべく魔州湖を目指して旅を続け、クイーン・マブの放った化け物達と戦うのです。


この作品の中で妖精は美と愛と勇気を持った者として描かれ、男女を問わず殆どの妖精がジャックとクーフーリンを好きになったり、二人の仲をヤキモチ焼いたりします。

実は妖精達は同性愛志向だったりする訳で、その傾向のある人が読むと、この作品はもっと面白く感じられるかも♪

そうして、妖精達がジャックやクーフーリンに恋愛感情を持つのに対してクイーン・マブは彼らにまったく心を動かされず、闘いを挑むばかりなのです。

悪の権化とは言え、元々女性ですから、少しは動かされてもいいのでは?

しかし、その訳は読み進むうちに、次第に明かされていきます。

クイーン・マブが悪の権化になった理由は、クーフーリンへのひとりよがりの思いから愛を叶えられず、屈折したその思いが彼女をして冷酷非情で卑劣な恐るべき存在に仕立て上げてしまったのです。

そう考えるとクイーン・マブに同情の念が湧かないでも?


女性にとって、愛はとても大切で尊いものですからね。



私の体験談も含め、いろいろ書いちゃいましたが、美と愛と勇気の大切さを描いた山岸涼子さんの名作「妖精王」、あなたにもぜひお勧めしたい作品です♪


















 

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ちはる)
2013-06-09 18:23:41
奈々さん、いつも北海道のことを良く言ってくれて嬉しいです。冬は嫌いですが、北海道の美しい自然は大好きです。

漫画は殆ど読んだことがないので良く分りませんが、世の中には目に見えるものだけが存在しているとは思っていません。不思議なことって沢山ありますよね?

それにしても奈々さんの感性って凄いな~といつも思います。
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ちはるさんへ (奈々)
2013-06-09 19:16:24
ちはるさんは、北海道に住んでいるから分からないかも知れないけど、全国のほとんどの人の北海道のイメージは雪と氷に閉ざされた世界だと思うんです。
こちらでは滅多に雪が降ったりしませんし、雪で苦労した経験はまったくないんです。
だからこそ、雪の素晴らしい面に気づけるのだと思います。
ところで、ちはるさんのブログに私が書いたコメントの返答、気になりました。
きっと、あれは自分の力で道を切り開くという意味で書いたのですよね?
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Unknown (ちはる)
2013-06-11 22:51:43
奈々さん、私もうパートナーを求めていません。
パートナーが居なくても幸せを感じているのです。
私にとっての青い鳥はパートナーだったのです。
これからは多くの人達に愛を与えられたらいいな~と・・・難しいかもですが・・・
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ちはるさんへ (奈々)
2013-06-12 16:34:43
私がちはるさんのブログを読み始めてからいろんな事がありましたよね。
そのたびに、ちはるさんは自問自答しながらチャレンジしてきましたね。
その姿に私はいくつも大切なものに気づかされてきました。
自分を変える努力を惜しんではいけないですよね。
ちはるさんには、どれだけ感謝しても足りないくらい
です。
これからのご活躍、楽しみにしてますね。
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Unknown (ちはる)
2013-06-15 08:13:56
奈々さん、私こそ奈々さんに感謝です。
今日は100kmウォークのボランティアスタッフとして遅くまでマッサージして来ます!
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ちはるさんへ (奈々)
2013-06-16 06:24:35
ちはるさん、ボランティアお疲れ様でした。
何事にも意欲的に取り組むちはるさん、とても素晴らしいと思います。
ところで、誰かが匿名で、ちはるさんのブログにコメントしてましたが気にしないで結構ですよ。
人生は、持ちつ持たれつで成り立っている訳ですし、当人同士が納得していたら構わないと思います。
それを、第三者が口をはさむ方がおかしいです。
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