goo blog サービス終了のお知らせ 

奈々の これが私の生きる道!

映画や読書のお話、日々のあれこれを気ままに綴っています

漫画「ポーの一族」萩尾望都

2010-03-16 07:34:51 | 読書
私は、一年以上前から、ある一人の女性のブログにコメントをし続けています。
それは彼女のブログが、愛や生きる事に悩み、ありのままの気持ちを正直に吐露していて、私の心に響くからです。
そんな彼女を励まそうと、私はずっとさまざまな言葉を使ってコメントして来たのですが、文章だけで励ますのは限界があり、彼女は元気な様子を見せてはくれるものの、時折り不安が襲ってくるようで、最近悲しい文章を綴る事が多くなってしまいました。

私は言葉を出し尽くし、もうどうやって励ましたらいいか、分からなくなってしまったのです。

彼女が元気になる特効薬は、愛する人に恵まれる事と分かっているのですが、彼女は過去の恋愛のトラウマから、思うように人を愛せないのです。

つい先日も、悲しみにうちひしがれた文章を書いていて、私まで涙がぽろぽろこぼれて、どうする事も出来ませんでした。


もう、私には彼女を励ます事はおろか、慰める事すら出来ない・・・

そう、思い悩んでいた時、一瞬、一人の少年の姿が私の脳裏をよぎったのです。

エドガー・・・あなたはエドガー・ポーツネル。

エドガー・ポーツネルは、漫画家萩尾望都が創出したキャラクターで、ヴァンパイアとして、数百年を生きながらえ、時間と空間を旅する少年のお話です。

私は、エドガーの登場する「ポーの一族」を若かりし頃、愛読して、彼とアランのお話に夢中になったものでした。

ああ、エドガー、君は時間と空間を旅して、思い悩んでいる私のために、今こうして会いに来てくれたんだね。

エドガー、お願いだから、君のお話を、私の大切な彼女の為に聞かせてはくれないだろうか。


「はるかな国の花や小鳥」

ある日、エドガーが歩いていると、庭にたくさんの花々の咲き乱れている家の前を通ります。
その花のあまりの美しさに、ふと足を止め、見入っていると、その家に住む女性が、エドガーに声をかけます。
その女性は、エルゼリと言って、遠い昔、愛し合っていた男性の思い出だけで生きているのです。
その思い出とは・・・

エルゼリ16歳。
彼氏ハロルド・リー20歳。
ある夏の日、二人は恋に落ちます。
しかし、ハロルドには婚約者がいて、「待っててくれ。婚約を破棄して帰ってくるから」と言い残し、エリゼリの元を去って行くのです。
彼は、明日帰るという前の夜、エルゼリと二人で、森の中を歩きます。
すると、ふいに崖の上から、お城が見えたのです。
エルゼリは思わず「お城が見えるわ」と、つぶやいたのですが、それは月明かりで、木々がそう見えただけと、すぐに気づいたのですけど、彼は「ああ、ほんとうだ。お城だね」と返してくれたのです。

「そう答えたあの人が世界中で1番好きだった。」と話すエルゼリ。

やがて、ハロルドは帰り、約束した手紙もこず、エルゼリを捨て婚約者と結婚します。

だけど、エルゼリは少しも不幸ではありませんでした。

あの人、きっと奥様を愛し、奥様もあの人を愛し、生まれた子供を愛し、家庭を愛しているのでしょう。
でも、私は幸せ
一人
バラの庭
とても幸せ・・・


エルゼリは、ハロルドに捨てられたのですが、ハロルドを恨んではいないのです。

悲しみも憎しみも、それらの心は行き場がない。わたし弱虫。そんな感情には堪えられない。だから、あの人を愛していたいの。
それだけで幸せでいられる。
これが、私の世界。
私の浮遊出来る世界。
あの人の愛が周囲をとりまいている世界。

遠い想い
遠い想い

わたしが住むのはバラの庭
口ずさむのは愛の歌
日々、思うのは
優しい人


エドガーにそう話すエルゼリなのです。
しかし、エドガーは訝ります。
「なぜ、そう幸せでいられる?
ぼくは想いおこすだけでは幸せにはなれない。現にあなたは彼氏に捨てられて一人じゃないか」

エドガーは、エルゼリを捨て、ホービスの町に住んでいる元彼氏ハロルド・リーに会いに行きます。
はたして、彼はエリゼリとの、ひと夏の恋を覚えてはいませんでした。

やがて、ハロルドは自転車に乗った子供を助けようとして、馬車の下敷きになり死んでしまいます。

それを知ったエルゼリは、彼女の想い描いていた世界の終焉を悟り、自分の手首を剃刀で切るのです。
「悲しみはいや
憎しみも
早く眠ってしまおう・・・庭のバラが枯れてしまう明日までに・・・」



しかし、幸いエドガーの発見が早く、一命を取り止めます。

それからの彼女は、黙って花を見つめ、物思う日々を送り・・・



私が住むのはバラの庭

口ずさむのは、愛の歌

日々、想うのは

やさしい人



エルゼリは、夢に浮かぶ 、はるかな国の住人だったのです・・・




















 

最新の画像もっと見る