風 雑記

建築とその周辺で感じたこと、思ったこと

武雄・嬉野

2018-12-19 19:34:28 | 日記

武雄市図書館・歴史資料館                       

12月7、8日に佐賀の嬉野温泉「大正屋」へ行きました。曇り空で今年一番の寒波らしく北風が冷たい二日間でした。

途中柳川で昼食、ウナギのセイロ蒸しを30数年ぶりに食べました。美味しかったのですが、以前食べた時は中段にもウナギがあったような、店の場所と店名はおぼろげながら覚えていたと思いましたが、遠い記憶なので。

嬉野に行く前に「武雄市図書館・歴史資料館」に足を延ばしました。公立図書館に蔦屋書店が併設され話題のところです。

RC造と木造(集成材)の混構造ですが、内部空間は2階図書室と一体となった吹抜けが濃密な空間を作っていて、とても見応えがありました。スターバックコーヒーがあり、多くの人で賑わっていてます。他にも幾つもの別室図書室もあり、多くの人が思い思いに腰かけて本と空間を楽しんでいました。

書籍数も充実しており、大人から子供まで楽しめる空間です。近くに住んでいれば時々通いたくなる図書館です。外観的イメージより、内部空間が魅力的で久しぶり感動しました。

今回の目的は吉村順三設計の嬉野温泉「大正屋」に宿泊することで、吉村順三は若い時から好きでディテール集を飽きるほど見ながら参考にしていた時期があります。アントニン・レーモンド、吉村順三、奥村昭雄へと繋がる建築が今も設計の羅針盤になっています。

九州に居ながら「大正屋」を訪れたのは初めてです。現在自宅設計を依頼されている施主の方に、友人である家内が吉村順三の本を貸して読んでもらったところ、すぐ、ご家族で「大正屋」に泊まりに行かれたので、私自身が「大正屋」に知識が無くてはマズイと思い急きょスタッフ研修も兼ねて来ました。久しぶり吉村空間に接するチャンスになって依頼主のおかげです。

離れの特別室に泊まりました。10帖の和室と縁側、茶室もあり和風の鬱蒼とした庭に面し落ち着く部屋でした。木製建具と引込障子は吉村建築ディテールの基本ですが、太目で桝目の大きな障子は男性的で野太く、繊細とは言えないのですが安心感があります。多くの旅行客が宿泊することを考えれば、この方が傷みや劣化は少ないのかもしれません。

障子を引き込むと鬱蒼とした庭と一体になったような心地良さが部屋中に満ちてきます。次の間や洗面、浴室などに細かに気遣ったディテールに設計者の優しさと思いやりを感じます。温泉は大浴場が二か所、四季の湯と滝の湯そして部屋風呂(桧風呂)、中規模の滝の湯は浴槽のガラス越しに池が見え、浴槽の水面と池の水面が10cm程で錦鯉が目の前を泳いでいて視覚的な楽しさがあります。

夕食は品数も多く美味しく丁度良い満足感、朝食も品数は多いのですが完食なのに腹八分の満足感で、そのことがとても不思議でした。旅行者にとっては次の日の行動がし易く有り難い気がしました。

一番感心したことは建物を大切に使われている事です。当然建物を目的に来る方も多いでしょうし、木造の客室を常時快適に維持するのは大変だと思います。木造は湿気対策が難しく、かび臭くなったりますが、時を経てより味わいが増すように常に手入れをされていると感じました。

スタッフの対応も良く気遣いが感じられます。ただ一番奥の部屋だったからか、食事の配膳の間隔が長く待ち長かったことがだけ少し残念でした。

また来てみたい宿です。