八代城址、博物館、松浜軒などが面する県道沿いにH医院の移転新築が完成しました。間口約28M、奥行き71Mと恵まれた敷地で、医院を挟んで、前面を外来駐車場にし、裏が職員駐車場になっています。植栽も以前から在ったカイズカイブキやクスノキ、サクラなどを再移植しました。中に一本「太閤千代しだれ桜 第十六号」という醍醐寺の枝垂桜を組織培養された桜が移植されました。
この建物はRC躯体を外断熱で包み込み、太陽熱空気集熱(OMソーラー)、氷蓄熱空調などで光熱費の大幅な削減を目指しました。RCの構造体は外壁部と内部柱だけで、内壁は全て乾式間仕切りとして、将来の改修や変更に対応できるようにしました。1階は木床組で桧大引に液状触媒活性炭を塗布し、床下空間確保と設備配管のメンテナンス、足元に柔軟性があることで立ち働きの疲労軽減や患者さんへの負担軽減にも役立ています。
建て主の要望もあり、待合ホールの天井高さは9.0M、2階南面は全面カーテンウォールとしています。日照調整の為2.0M程の袖壁と庇を南に張り出し、北側の3階レベルに排煙と換気を兼ねた温度差換気窓を設けました。大きな吹抜空間は空調が難しいですが、外断熱による躯体蓄熱体利用、太陽熱空気集熱式床暖房、床下冷暖房、サーキュレーションを組合せる事によって、逆に効率を高めながら、空間的魅力も引き出したいと考えました。
5月6日にオープンしましたが、患者さんも多く、キッズコーナーで子供達が喜んで遊んでいるのを見ていると、待合室がもっと広くした方が良かったのかと心配になりました。先生方もきれいで清潔な建物が出来たと大変喜んで頂きました。
今回の設計はインターネットの紹介サイトからのご縁でした。先生達自ら何ヶ所かの設計事務所を訪問・面談されています。「良い建物を造るのは設計者が大切だとの強い思いがあった」とお聞きして、その期待に答えたいと全力で取り組みました。私のディテールへの執着にも粘り強く対応してくれ、納得できるものにしてくれた松島建設の所長さんにも大変感謝しています。