カラスといちごとクロッカスと

身の回りの鳥や小動物、庭の花や畑の野菜など、日々日々、季節季節の情報を、
個人の目をとおしてお届けします。

ラテン語になった日本語

2022年12月27日 08時00分00秒 | クイズ
2021.01.17撮影

今日は、学名(=ラテン語)になった日本語の単語をいくつかご紹介したいと思います。

まずは、季節柄、この花から。

和名 サザンカ(山茶花)
ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia
学名 Camellia sasanqua「サザンカのツバキ」
英名 Sasanqua camellia「サザンカツバキ」
原産 南部中国、インドネシア、台湾、南部日本

日本文化の中では、椿(ツバキ)と山茶花(サザンカ)は、似てはいるけれど別物、と考えられていると思います。

それなのに、学名や英名は、
・山茶花(サザンカ)= Camellia sasanqua「サザンカのツバキ」
・椿(ツバキ)= Camellia japonica「日本のツバキ」
となります。

つまり、両方、「ツバキ」。そして、一方が「サザンカの」と呼ばれることで「山茶花」であることが示されています。

そして、この「サザンカの」という種小名が、日本語からきているのです。sazanka が sasanqua とラテン語化され、「ササンクヮ」と読まれます。

実は中国語に「山茶花」という花の名がありますが、それはツバキの呼称のひとつです(他には、山茶、日本山茶)。サザンカは中国語では「茶梅」であり、そういった状況でサザンカを指す学名 sasanqua が中国語からきているとは考えにくいです。

ツバキ? サザンカ?

ウメの花(白梅)
撮影者:Kakidai
撮影日:2012.03.09
オリジナルからの改変、なし

和名 ウメ(梅)
バラ科(Rosaceae)スモモ属(Prunus
学名 Prunus mume「ウメのスモモ」
英名 Japanese apricot「日本のアプリコット」
原産 中部中国

ウメの学名は、Prunus mume。その種小名 mume が、日本語の「うめ」から来ています。

日本語の「うめ(梅)」は、元々は中国語から来ていて、最初は、「んめ」と発音していたようです。それが「うめ」になり、一旦「むめ」に変化し、それが、また、現代日本語では「うめ」になっています。

ただ、ウメは、日本は原産地のひとつでなく、中国が原産です。それでも、種小名に日本語の言葉が使われている、というのは、西洋人が日本で初めて見て西洋に紹介した、という経緯があると思われます。

mume と先の sasanqua とは、種小名に使われる日本語由来の言葉ですが、日本語由来で属名に使われる言葉もあります。

2022.05.04撮影

和名 アケビ(木通)
アケビ科(Lardizabalaceae)アケビ属(Akebia
学名 Akebia quinata「5裂(の葉)のアケビ」
英名 Chocolate vine「チョコレートのつる」
原産 中国、朝鮮半島、日本(本州、四国、九州)

属名の Akebia は、指しているものが「アケビ」である以上、日本語から来たのは、明らかでしょう。

ところで、この画像のうちのアケビ、20年ぐらい元気にここで育っているのに、実を結んだことは一度もありません。雄花も雌花もちゃんと咲きます。バンクーバーは寒すぎるのだろう、と自分に都合よく考えていましたが、調べてみると、耐寒温度はバンクーバーより随分低い・・・他の方のブログで教えられましたのは、自家受粉ではダメということ・・・なら、もう1株植えましょう。

2022.05.02撮影

もうひとつ、属名が日本語から来たものに「シキミ」があります。shikimi をラテン語風に Skimmia「スキミア」としました。

ところが、Skimmia は、仏事、神事、に使われるシキミ(樒)の属名や種小名でなく、ミヤマシキミ(深山樒)の属名です。

和名 ミヤマシキミ(深山樒)【こちらが、Skimmia
ミカン科(Rutaceae)ミヤマシキミ属(Skimmia
学名 Skimmia japonica「日本のシキミ」
原産 日本

和名 シキミ(樒)【こちらは、Skimmia でない】
マツブサ科(Rutaceae)シキミ属(Illlicium
学名 Illicium anisatum「スターアニス(八角)の香りのする誘惑」
英名 Japanese star anise
原産 日本(他のシキミ属の種は、東アジア、東南アジア、北アメリカ)

うちには、ミヤマシキミが2株あります。いくつも理由があって求めたのですが、特に冬に赤い実がほしかった。ところが、ぜ〜〜んぜんならない。赤い実どころか、実そのものがならない。

隣の庭づくりをするおばさんに、泣、泣、していると、雄株なんじゃない? って。わたし、え? ミヤマシキミって、雌雄異株だった? あぜん。そんなもんなあ、植物屋さんで相談した時、指摘してくれてもよかったんじゃない?

代わりに、春の日のアセビ(Pieris japonica)の赤い若葉を思い出しておきましょう。アセビも japonica です。

2022.04.06撮影

japonica で始め、しばらく、日本語と関係する学名について書いてきましたが、その話題は、一旦ここでおくことにします。

今年8月2日からブログを書いてきました。書くのは楽しかったし、書くために勉強もしてきました。そして、新年が明ければ、5ヶ月になります。

読んでくださり、また、リアクションしてくださる方やコメントをくださる方もいて、たいへん励みになりました。どうもありがとうございます。

今年の記事はこれで終わりとし、年末年始を1週間お休みして、新年は4日から再開します。

それでは、みなさま、良いお年をお迎えくださいませ。
新年にまたお会いできれば、うれしいです。

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ニッポニカ、まであるクイズ

2022年12月26日 08時00分00秒 | クイズ
2012.09.27撮影
(花束から)

クイズも、今日で終わりです。ホッとさせたようなら、ごめんなさいです。もっと〜〜、なら、いずれまた。

今日も、画像と記事の内容とボクシングデー(12月26日)とは、お互い、なんの関係もありません。

ボクシングデーは、実は、大安売りで、買い物客たちがボクシングをするかのように品物を取り合う日ではありません。昔、イギリスの貴族たちが、自分たちの要らないものを箱に入れて(ボックスして)、使用人たちにプレゼントし、里に持ち帰らせ、1年に1日だけのお休みの日を上げたのが、この12月26日です。

それでは、クイズに関心がなくても、バラの花でお祭り気分を味わってくださいませ。

2012.09.27撮影
(花束から)

今日のクイズは、過去2日間の形式とはやや異なります。そして、「ジャポニカ」だけでなく「ニッポニカ」とか「オリエンタル」とかなどまで出てきます。でも、正解率は、昨日までの25%から、一挙に50%まで上がります。年末の大サービスですよ。

【クイズの方法】
学名と和名を正しく組み合わせてください。
・学名で、属名が同じで、種小名の異なる植物、ふたつ
・それらの和名

新しい形式ですので、ウォームアップ・クイズから(その後、クイズが5つ)。ヒントを見られれば、正解率が50%から100%に上がるかも。

【ウォームアップ・クイズ】
学名と和名を正しく組み合わせてください。
Platanus orientalis
Platanus occidentalis
スズカケノキ
アメリカスズカケノキ
ヒント:「オリエンタル」って、東洋? 西洋?

【ウォームアップ・クイズ】の答えは、
Platanus orientalis「東洋のプラタナス」スズカケノキ
Platanus occidentalis「西洋のプラタナス」アメリカスズカケノキ

なお、クイズは、きちんと調べて作ってあります。でも、見落としがあるかもしれません。その場合は、ご容赦の上、コメント機能を使い訂正をご一報ください。

2021.08.19撮影
(ご近所の中国系のおばあさんのお庭から)

【クイズ11】
学名と和名を正しく組み合わせてください。
Acer japonicum
Acer nipponicum
ハウチワカエデ、別名 メイゲツカエデ
テツカエデ
ヒント:japonicum の方が nipponicum よりよく知られている植物である傾向がある

早くに西洋に紹介されて学名がつけられた植物は、japonicusjaponicajaponicum、と名づけられ、後に紹介されたものは、種小名が足りなくなって、nipponicusnipponicanipponicum、も導入されたようです。いずれも「日本の」。

japonicus

nipponicus

2012.09.27撮影
(花束から)

【クイズ12】
学名と和名を正しく組み合わせてください。
Rhododendron japonicum
Rhododendron nipponicum
オオバツツジ
レンゲツツジ
ヒント:japonicum の方が nipponicum よりよく知られている植物である傾向がある

2021.06.21撮影
(わたしの庭から)

【クイズ13】
学名と和名を正しく組み合わせてください。
Spiraea japonica
Spiraea nipponica
シモツケ
イワシモツケ
ヒント:japonicum の方が nipponicum よりよく知られている植物である傾向がある

2012.09.27撮影
(花束から)

【クイズ14】
学名と和名を正しく組み合わせてください。
Chrysanthemum japonicum
Chrysanthemum nipponicum
リュウノウギク
ハマギク
ヒント:・・・ありません、こじつけヒントも見つかりませんでした

2012.09.27撮影
(花束から)

【クイズ15】
学名と和名を正しく組み合わせてください。
Camellia japonica
Camellia sinensis
チャ、別名 チャノキ
ツバキ、別名 ヤブツバキ
ヒント:sinensis は、「シナの」「中国の」

ツバキ? サザンカ?

なお、シナノキは「科の木」で、「支那(シナ=中国)の木」ではありません。学名は、Tilia japonica と、japonica がついています、sinensis ではなく。

2016.10.19撮影
(花束から)

今日の答えは、

【クイズ11】
Acer japonicum ハウチワカエデ、別名 メイゲツカエデ
Acer nipponicum テツカエデ

【クイズ12】
Rhododendron japonicum レンゲツツジ
Rhododendron nipponicum オオバツツジ

【クイズ13】
Spiraea japonica シモツケ
Spiraea nipponica イワシモツケ

【クイズ14】
Chrysanthemum japonicum リュウノウギク
Chrysanthemum nipponicum ハマギク

【クイズ15】
Camellia japonica ツバキ、別名 ヤブツバキ
Camellia sinensis チャ、別名 チャノキ

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日本の植物ジャポニカクイズ

2022年12月25日 08時00分00秒 | クイズ
2012.09.27撮影

今日もクイズですよ。それも、ジャポニカクイズ(他に目新しいものは、ないんかい)。昨日は不正解の連続だった方は、気分を新たにどうぞ。4択ですから打てば当たることもあります。全部正解だった方は、その記録更新をおねらいください。

今日の画像も、昨日に続き、記事の内容に全く関係ありません。クリスマスにも関係ありません。

あえて言えば、その園芸種の華やかさで、花束によく入れられるので、クリスマスに飾られる方もいらっしゃるか、と。この花は、また、切り花として、たいへん持ちがいいです。今日の画像は、全て同一の園芸種ですが、同一の個体ではありません。園芸種名が何か、まではわかりません。

学名 Alstroemeria
英名 Peruvian lily「ペルーのユリ」
別名 Lily of the Incas「インカのユリ」
和名 ユリズイセン(百合水仙)
別名 アルストロメリア
ユリズイセン科(Alstroemeriaceae)アルストロメリア属(Alstroemeria

2015.01.30撮影

昨日同様、クイズは、全て調べた挙句で作ってあります。しかし、見落としもあるかもしれません。その場合は、ご容赦の上、訂正できるようにご連絡くだされば幸いです。

今日は、花や葉や匂いや姿が楽しめる植物です。クイズは全部で5つ。

質問は、ご期待通り、学名に
japonicusjaponicajaponicum、のいずれか、
がつくものは?

2015.01.30撮影

【クイズ6(和名の似ている植物)】
japonicusjaponicajaponicum、のいずれか、
が学名につくものは?
キンモクセイ
ヒイラギ
ヒイラギナンテン
ナンテン

2015.01.30撮影

【クイズ7(木に咲く花)】
japonicusjaponicajaponicum、のいずれか、
が学名につくものは?
ソメイヨシノ
ニワウメ
ボケ
モモ

2015.01.30撮影

【クイズ8(きれいな実のなる植物)】
japonicusjaponicajaponicum、のいずれか、
が学名につくものは?
ムラサキシキブ
ハナミズキ
メギ
ノイバラ

2012.09.27撮影

【クイズ9(日本固有種の木)】
japonicusjaponicajaponicum、のいずれか、
が学名につくものは?
コウヤマキ
アスナロ
ヒノキ
スギ

2012.09.27撮影

【クイズ10(タンポポ Taraxacum の中で日本原産のもの)】
japonicusjaponicajaponicum、のいずれか、
が学名につくものは?
カントウタンポポ
トウカイタンポポ
カンサイタンポポ
シロバナタンポポ

タンポポを食い気で行きたい人は、次の記事をどうぞ。わたしのブログ初期の記事です。


2015.01.30撮影

今日の答えは、
【クイズ6】ヒイラギナンテン Mahonia japonica
【クイズ7】ニワウメ Prunus japonica
註:ソメイヨシノは Cerasus x yedoensis あるいは Prunus x yedoensis (江戸の)
【クイズ8】ムラサキシキブ Callicarpa japonica
【クイズ9】スギ Cryptomeria japonica
【クイズ10】カンサイタンポポ Taraxacum japonicum

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日本の食べ物ジャポニカクイズ

2022年12月24日 08時00分00秒 | クイズ
2018.04.15撮影
ヒアシンス(Hyacinthus orientalis
チューリップ(Tulipa)葉のみ
シモツケ(Spiraea japonica ‘Goldfame’)

今日は、待ちに待った、クイズの日ですよ(あれ? そんなお知らせ、前にあったっけ)。雑学と当てずっぽうで答えを出しましょ。全問「不」正解の方には、景品はありません。全問正解の方にも、景品はありません。せいぜい、画像を楽しんでください。

今日の画像は、今日がクリスマスの前日であるということにも、記事の内容にも、全く関係ありません。ただ、画像の中心に写っている植物は、全て、2〜4月ごろに咲く球根植物です。「冬来りなば・・・」って言いますもんね。

クイズは、みんな種小名 japonicusjaponicajaponicum、(意味は、「日本の」))をめぐってです。(また「ジャポニカ」かい、やれやれ)

全て調べた挙句でクイズを作ってありますが、見落としもあると思います。何か間違いがありましたら、ご容赦の上、ご連絡くだされば幸いです。

今日は食べる物を取り上げます。その多くは、日本でよく食べられる物です。クイズは全部で5つ。

質問は、学名に、「日本の」という意味の
japonicusjaponicajaponicum、のいずれか、
がつくものは?

2022.03.22撮影
キバナセツブンソウ(Eranthis hyemalis
雨の中、真上から見下ろして

【クイズ1(果物)】
japonicusjaponicajaponicum、のいずれか、
が学名につくものは?
ミカン
カキ
イチジク
ビワ

2022.03.24撮影
ムスカリ(Muscari latifolium ‘Grape Ice’)

【クイズ2(根菜)】
japonicusjaponicajaponicum、のいずれか、
が学名につくものは?
サトイモ
ヤマノイモ
ダイコン
レンコン

2021.02.16撮影
スノードロップ(Galanthus nivalis
下から見上げて

【クイズ3(薬味)】
japonicusjaponicajaponicum、のいずれか、
が学名につくものは?
ミツバ
青ネギ(細ネギ)
シソ
ゴマ

2022.04.11撮影
ムスカリ(Muscari armeniacum

【クイズ4(薬味)】
japonicusjaponicajaponicum、のいずれか、
が学名につくものは?
サンショウ
ショウガ
ワサビ
トウガラシ

2022.04.11撮影
チューリップ「ピンク・インプレッション」(Tulipa ‘Pink Impression’)

【クイズ5(広義の穀物)】
japonicusjaponicajaponicum、のいずれか、
が学名につくものは?
トウモロコシ
コムギ
オオムギ
イネ

2022.04.20撮影
スイセン「ゼラニウム」(Narcissus ‘Geranium’)

今日の答えは、
【クイズ1】ビワ Eriobotrya japonica
【クイズ2】ヤマノイモ Dioscorea japonica
【クイズ3】ミツバ Cryptotaenia japonica 
【クイズ4】ワサビ Wasabi japonicum
【クイズ5】イネ Oryza sativa subsp. japonica(通称 japonica rice)

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アセビはいいけど、マサキは?

2022年12月23日 08時00分00秒 | ツツジ科
2022.04.06撮影

冒頭の画像は、うちの、なぜか花が全然咲かないアセビです。アセビって、ある程度成長しないと花が咲かないのかしら。それとも、日光量が足りない? でも、毎年、美しい若葉で楽しませてくれます。

和名 アセビ(馬酔木)
ツツジ科(Ericaceae)アセビ属(Pieris
学名 Pieris japonica

もう少し時期が経つと、次のような色になります。わたしは、これも美しいと思います。

2021.06.30撮影

上に書いたアセビの学名に、わたしがここ数日話題にしている japonica がしっかりと入っているのに、気づかれた方もいらっしゃると思います。反対に、学名には関心がない、とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。でも、学名って、一度ハマると、便利なんですよ。

さて、その生物の学名に使われるラテン語ですが、語形変化をよくします。例えば、形容詞は、それが修飾する名詞の「性」により、形を変えます。なんで名詞に「性」があるか、なんて聞かないでね。そうしたいからそうしたんでしょう。

その名詞の「性」とは、「男性」「女性」「中性」です。

学名の属名は名詞で、その後に続く種小名が形容詞です。ですから、種小名には、語形が3種類あることになります。

例えば、japonica(でた〜)なら、これは、japonicus(男性形)の女性形です。

japonicus(男性形)
japonica(女性形)
japonicum(中性形)

なぜ男性を立てて japonicus(男性形)から話を始めなかったか、と言うと、それは、日本人の間では「ジャポニカ」というのは知られた表現だからです。それだけ。男性のみなさま、ここまで無視を続けてごめんね。

ところで、ラテン語の読み方は、「ジャポニカ」ではなく「ヤポニカ」です。今まで、この点に触れておらず、失礼いたしました。

Euonymus japonicus(マサキ)
パブリックドメイン

直前の画像のマサキは、男性形 japonicus の例です。

和名 マサキ(正木)
ニシキギ科(Celastraceae)ニシキギ属(Euonymus
学名 Euonymus japonicus

次のジャノヒゲも、男性形 japonicus の例。

Ophiopogon japonicus(ジャノヒゲ)
撮影者:Alpsdake
撮影日:2018.01.06
オリジナルからの改変、なし

和名 ジャノヒゲ(蛇の髭)
別名 リュウノヒゲ(竜の髯)
キジカクシ科(Asparagaceae)ジャノヒゲ属(Ophiopogon
学名 Ophiopogon japonicus

「ヒゲ」を「髭」と書くか、「髯」と書くか、あるいは、「鬚」と書くか、ははっきりしませんでした。

次は、中性形 japonicum の例です。

Acer japonicum(ハウチワカエデ)
撮影者:西画像創庫
撮影日:2008.05.17
オリジナルからの改変、なし

和名 ハウチワカエデ(羽団扇楓)
別名 メイゲツカエデ(名月楓)
骸じ科(Sapindaceae)カエデ属(Acer
学名 Acer japonicum

中性形 japonicum の例は、他に、
・ヒメオトギリ(Hypericum japonicum
・フジバカマ(Eupatorium japonicum
など。

オトギリソウ、西洋の

ジョウ・パイ草、ってなに?

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バイモにも〜〜

2022年12月22日 08時00分00秒 | ユリ科
2021.04.17撮影

バイモにも「ジャポニカ」があるんです。クサボケ(Chaenomeles japonica)、ヤマブキ(Kerria japonica)、ヤブツバキ(Camellia japonica)、だけではありません。

「ジャポニカ」なんていう植物

ツバキ? サザンカ?

冒頭の画像は、コバンユリです。

和名 コバンユリ(小判百合)
ユリ科(Liliaceae)バイモ属(Fritillaria
学名 Fritillaria meleagris「ホロホロチョウの(ような点々のついている)バイモ」
英名 Snake’s head「ヘビ頭」
別名 Checkered lily「市松・格子模様のユリ」
原産 ヨーロッパ、西アジア

ホロホロチョウ科(Numididae)

コバンユリは、「小判」だの「ホロホロ鳥(のような点々のついている)」だの「蛇」だの「市松・格子模様」だの、全然 japonica ではないのですが、そのうち、japonica のバイモ(Fritillaria)も出てきますので、しばらくの間、ご辛抱をお願いいたします。

2022.06.21撮影

全てのバイモ属の植物がそうなのか知りませんが、コバンユリ(Fritillaria meleagris)は、球根の分球からだけでなく、タネからも増えます。上の画像のようなサヤができて、そこからタネがこぼれます。サヤの中に、ペラペラした薄茶色のものが見えますね。それがタネをひとつずつ覆うセロハン紙のようなもので、その平たいタネ入りの袋が、サヤの下の方までぎっしり詰まっています。

自生地(ヨーロッパ、西アジア)の多くでは絶滅危惧種になっていますが、ヨーロッパやカナダでは、庭によく植えられます。「植物耐寒域区分(Plant Hardiness Zone)」は「4-8」なので、暖かいところでは育たず、バンクーバーあたりが生育の南限となります。

2022.05.13撮影

これもうちにあります。花びらが大変厚いです。

和名 クロユリ(黒百合)
ユリ科(Liliaceae)バイモ属(Fritillaria
学名 Fritillaria camschatcensis「カムチャツカのバイモ」
英名 Kamchatka fritillary「カムチャツカのバイモ」
別名 Chocolate lily「チョコレートのユリ」
原産 アジア北東部(ロシア極東地域、日本北部)、北アメリカ北西部

それで、クロユリの学名ですが、Fritillaria camschatcensis です。Fritillaria の部分は属名でバイモ属ですが、camschatcensis の部分は種小名で「カムチャツカの」という意味です。そうです、地名のカムチャツカです。japonica 以外の地名が種小名である、一例です。

カムチャツカ地方

コバンユリ(Fritillaria meleagris)とクロユリ(Fritillaria camschatcensis)は、和名に「バイモ」が出てきませんが、次の植物の和名には、「コバイモ」が現れます。

Fritillaria japonica
撮影者:Alpsdake
撮影日:2014.04.12
オリジナルからの改変、なし

和名 ミノコバイモ(美濃小貝母)「美濃国で発見されたコバイモ」
ユリ科(Liliaceae)バイモ属(Fritillaria
学名 Fritillaria japonica「日本のバイモ」
英名 ないもよう
固有 日本

これが、バイモ属の japonica です。日本の固有種なので、japonica と呼ばれて然りなんですが、それでも、ミノコバイモが他のバイモ属の日本固有種を押さえ、なぜ特に japonica と呼ぶに値する、とされたか、は、???です。西洋人によって一番最初に発見されたバイモなんでしょうか?

ミノコバイモ

Fritillaria koidzumiana(コシノコバイモ)
撮影者:Qwert1234
撮影日:2017.05.02
オリジナルからの改変、なし

以下のWikipedia記事から、日本国内の地名を和名に持つ種を拾い、その中で、学名に地名の入っているものに「*」の印をつけます。上の画像は、そのうちのコシノコバイモ(Fritillaria koidzumiana)です。和名には地名「越」が入っていますが、学名には入っていません。

日本でも、絶滅危惧種が多いんですね・・・中には、盗掘を恐れて、撮影地を明かさない撮影者もいるようです。

バイモ属

*ミノコバイモ(コバイモ)(Fritillaria japonica)【美濃】絶滅危惧II類
・イズモコバイモ(Fritillaria ayakoana)【出雲】絶滅危惧II類
*カイコバイモ(Fritillaria kaiensis)【甲斐】絶滅危惧IB類
・コシノコバイモ(Fritillaria koidzumiana)【越<越後】
・アワコバイモ(Fritillaria muraiana)【阿波】絶滅危惧II類
*トサコバイモ(Fritillaria shikokiana)【土佐】絶滅危惧II類
*トクシマコバイモ(Fritillaria × tokushimensis)【徳島】

最後のトクシマコバイモですが、Wikipediaの記事では、
> アワコバイモとトサコバイモの交雑種
とされ、学名は、交雑種の表示である「×」を使って、Fritillaria × tokushimensis となっています。

しかしながら、交雑種ではなく、独立の新種である、という記事もあります。

アワコバイモ・トサコバイモ・トクシマコバイモ
> トクシマコバイモ(徳島小貝母)
> 一見してアワコバイモとトサコバイモの中間型に見えますが、この花の生育地付近にはアワコバイモは見られず、トサコバイモも遠く離れた場所に生育しており、両種の雑種とは考えられない
> 2005年8月発行の英国王立キュー植物園発行の植物学会誌「ボタニカルマガジン」に紹介され、正式に新種として認められた

トクシマコバイモの写真
> トクシマコバイモは2005年に発見された新種(Naito2005)

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ヤマブキも?

2022年12月21日 08時00分00秒 | バラ科
2022.04.20撮影

ご存知の方も多いと思いますが、動植物の学名の種名は、
「属名+種小名」
で成り立っています。

このように名前をふたつ連ねて動植物を命名することを、二名法といいます。

高校生 5分でわかる! 二名法

「属名+種小名」の種小名は、属名を形容するものだ、と考えていいです。

例えば、昨日書きました日本原産(そして、多分、固有)のボケ属(Chaenomeles)の植物、クサボケ(Chaenomeles japonica)は、「日本の(japonica)ボケ(Chaenomeles)」という意味です。

2006.03.27撮影

和名 クサボケ(草木瓜)
バラ科(Rosaceae)ボケ属(Chaenomeles
学名 Chaenomeles japonica「日本のボケ」
英名 Japanese quince「日本のボケ」
原産 日本

「ジャポニカ」なんていう植物

 japonica「日本の」と学名のついた植物(動物も)は、かなりあります。次もそうです。

2022.04.20撮影

ヤマブキです。冒頭の画像もヤマブキ。

和名 ヤマブキ(山吹)
バラ科(Rosaceae)ヤマブキ属(Kerria
学名 Kerria japonica
英名 Japanese kerria
原産 日本、朝鮮半島、中国

ヤマブキは、日本も原産地のひとつではあっても、日本の固有種ではありません。でも、japonica とついている。日本の固有種でなくても「日本の」と呼ばれる植物は他にもあります。

他の地域を差し置いて「日本の」になる理由は、それぞれあるでしょうが、ヤマブキの場合は、日本で突然変異でできた八重のヤマブキ 'Pleniflora'(「多くの花」という意味) の方が、一重のヤマブキよりも先に、西洋諸国に入ったからのようです。ただし、日本から直接入ったのではないようです。

わたしの周り(カナダ、バンクーバー)では、ヤマブキとはポンポンみたいな花だ、と思っている人はたくさんいます。そして、うちの一重のヤマブキを見て、不思議そうな顔をします。

僕は八重の山吹。知ってるよね。

2021.04.27撮影

実は、わたしは、高校で(?)太田道灌の

七重八重 花は咲けども
山吹の実のひとつなきぞ 悲しき

を習った時、これは意味不明、と思いました。なぜなら、その時、わたしはヤマブキは一重のものしか知らなかったからです。

でも、人間は、理解できないことは都合よく解釈するもので、その時は、花がたくさん咲いて、上の画像のように花が段々に重なっていることを「七重八重」と言ったんだろう、「実のひとつなきぞ」は、まだ花の季節だから、実があるわけないよね、そして、またあ、「蓑(みの)ない」なんてひっかけてえ、いやん、とも思いました。恐ろしい思考をしたものです。

japonica のついた花をもうひとつ。これは、もう2日前に話題にしました。

ツバキ? サザンカ?

Camellia japonica
撮影者:BotBin
撮影日:2007.12.27
オリジナルからの改変、なし

和名 ヤブツバキ(藪椿)
別名 ツバキ(椿)
別名 ヤマツバキ(山椿)
ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia
学名 Camellia japonica
英名 Japanese camellia
原産 日本、朝鮮半島、中国

これも、日本固有種ではありません。では、なぜ japonica か。

ヤブツバキの場合は、エンゲルベルト・ケンペル(1651-1716)が日本にいる時に、この植物について書き示したからです。(この情報は、Wikipedia英語版から得ました。)

Camellia japonica(英文+画像)

エンゲルベルト・ケンペル

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「ジャポニカ」なんていう植物

2022年12月20日 08時00分00秒 | バラ科
クサボケ
2006.03.27撮影

冒頭の画像の、ツボミのふくらんでいる植物は、わたしが、日本の花を懐かしく思い、また、この花の色が気に入って、求めたものです。でも、これも、庭の木々が大木に成長して、犠牲になりました。真後ろに葉が見えるチューリップ(Tulipa)も、同様。白いきれいなチューリップだったのよ・・・

あのころはこの庭の一角にもこんなに陽の光が当たっていたんだなあ・・・あのうららかな庭は、もう決して戻ってこない、、、木が市の条例により伐採できないから、、、

フウちゃん、伐採を免れる

冒頭の花は、クサボケ(Chaenomeles japonica)の、多くある園芸種のうちのひとつです。画像中では、まだ花が開ききっていません。「日本の」と学名(japonica)にも英名(Japanese)にも書いてあったので、色が気に入った以上、迷わず買ってきました!

和名 クサボケ(草木瓜)
バラ科(Rosaceae)ボケ属(Chaenomeles
学名 Chaenomeles japonica「日本のボケ」
英名 Japanese quince「日本のボケ」

ボケ
パブリックドメイン

ボケ(Chaenomeles speciosa)は、先に述べたクサボケ(Chaenomeles japonica)とは別種です。

ボケ

和名 ボケ(木瓜)
バラ科(Rosaceae)ボケ属(Chaenomeles
学名 Chaenomeles speciosa「美しいボケ」
英名 Flowering quince「花用のボケ、花ボケ」

ここの英名に使われている flowering は、「花が咲いている」「花が咲く」いう意味(flower という動詞の現在分詞)ではなく、「花咲用の」という意味(同じく動詞 flower の動名詞)です。英語で、Flowering cherry と言えば、「花咲用のサクラ(=花の観賞用サクラ)」であって、Cherry とだけ言えば「サクランボ」「食用のサクランボの木」です。

ボケ
撮影者:Roozitaa
撮影日:2014.04.05
オリジナルからの改変、なし

クサボケとボケは、別種だとは言っても、見かけも似ているし、両者の交配種が園芸種として多く存在するので、区別は難しいか、そもそも、現実的に見て、区別する人は多くはないだろう、と思われます。

種名は「属名+種小名」であり、文脈でわかっている時には、属名を頭文字にして種名を短く表記します。その習慣に従い、以下では、ChaenomelesC. とします。

C. japonica と学名で呼ばれるクサボケは、名称の表す通り、日本原産です。 japonica (種小名なので、小文字で書き始めます)というのが「日本の」という意味です。英語圏では、Japanese quince「日本のボケ」と呼ばれます。

一方、見かけのよく似ている、学名が C. speciosa のボケは、中国が原産です。英語では、Flowering quince「花ボケ」と呼ばれます。

そして、英語圏では、日本原産のクサボケ(C. japonica)も、中国原産のボケ(C. specioosa)も、現代ではやや古風な言い方ではあるものの、共に、Japonica と呼ばれます。園芸関係者が、ボケ属(Chaenomeles)の話をしている時に Japonica と言えば、それは、クサボケ(C. japonica)のことを指しますが。

つまり、英語で Japonica と言えば、ボケ、クサボケ、それらの園芸種、全てをひっくるめて言うわけです。

わたしがカナダに来た時、現在住んでいる所とは別の所のことなんですが、お隣のおじいさんが、うちの庭に前の(いつかはわからない)所有者が植えてあったクサボケを指して、わたしが日本人であることを知って、これ、Japonica って言うんだよ、って、うれしそうに教えてくれたのを覚えています。

そのクサボケが、次の画像にそっくりな花でした。わたしの日本で見慣れていたボケに比べ、トゲが少なく、丈が小ぶりだなあ、と思いました。

クサボケ
撮影者:Hoodedwarbler12
撮影日:2010.04.11
オリジナルからの改変、なし

ところで、もううちには生きていないクサボケ(冒頭の画像)、横へ、横へ、伸びたんですよね。変わったボケだなあ、と思っていたんですが、あれはボケではなくて、クサボケ、つまり「草」ボケだったわけです。クサボケの「クサ」は、丈の小さいことを表すのだそうです。

下の画像で、枝が横へ伸びる様子をご覧ください。これは、冒頭の画像からの切り取りです。

クサボケ
2006.03.27撮影

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ツバキ? サザンカ?

2022年12月19日 08時53分25秒 | ツバキ科
2020.12.24撮影

ツバキとサザンカの見分け方については、インターネット上にもいい記事がたくさんあると思いますが、その中で視覚的に見やすいかな、と思われる記事をご紹介しておきます。株式会社科学技術研究所(かぎけん)が制作・管理する「かぎけん花図鑑」というサイトのものです。


今日のわたしの記事の目標とすることは、でも、ツバキとサザンカの特徴の違いを見極めることではありません。入り組んだツバキとサザンカの名称を、ツバキ科ツバキ属を全体的に見ながら、解きほぐす糸口を見つけることです。科学的な探究では、もちろん、ありません。

2021.01.17撮影

ツバキもサザンカも、ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia)に属する植物です。まず、上位の分類であるツバキ科から見ます。

和名 ツバキ科
学名 Theaceae「チャ科」
英名 the tea family「チャ科」

植物に興味のある方にはツバキとお茶がつながっているかもしれませんが、一般的にはどうでしょうか。お茶の花なんて見たことない、という方もいらっしゃれば、あ、言われてみればお茶の花ってツバキに似ているよね、と思う方もいらっしゃるかもしれません。実際、ツバキとお茶の木は近縁です。

科名の学名となった Theaceae の「thea」は、語源的に、「チャ(茶)」なので、Theaceae は、文字通りには、「チャ科」です。

でも、その「チャ科(Theaceae)」の下には、現在の分類では、「チャ属(Thea)」はありません。お茶の類は、現在、ツバキ属(Camellia)に吸収されています。ですから、ツバキとお茶の木は、同じ属の植物なのです。

今は存在しない「チャ属」という分類からきた「チャ科」という名称が、それでも変更されずに残ったのは、その科名が今まで使われてきたという事実と歴史を優先して、のことです。

和名の方では便利な(?)ことに、最初から(?)、「ツバキ科」だったようです。ただし、「チャ科(Theaceae)」という意味の学名からは、「ツバキ科」という名称は、ずれた名称になっています。

2021.01.17撮影

では、ツバキ科には、どんな属が属しているでしょうか。


ツバキ科には、現在、9属が認められており、以下の4属がその主だったものです。

属名に「ツバキ」を含む
1.ツバキ属(Camellia
2.ナツツバキ属(Stewartia
3.ヒメツバキ属(Schima

属名に「サザンカ」を含む
4.ヒサカキサザンカ属(Tutcheria

4のヒサカキサザンカ属だけが「サザンカ」を名称に含むのね、
それなら、サザンカは、4のヒサカキサザンカ属に入っているのよね、
と思いませんか・・・

それにしても、それなら、
上位の分類である「属」の名前が「ヒサカキ+サザンカ」で、
下位の分類である「種」の名前が「サザンカ」、
ということになる、って変・・・ですよね・・・

ヒサカキサザンカ属(Tutcheria)のうち、(和名では属名と同名の?)ヒサカキサザンカ(Tutcheria virgata)という種の画像を見つけましたので、次のリンク先で、よろしければご覧ください。


2021.01.17撮影

それでは、ツバキ科のクイーン、ツバキ属(Camellia)にどんな種が属すか、見てみましょう。

以下の種のうち、ヤブツバキ(Camellia japonica)というのは、平たく言うところのツバキのことです。サルウィンツバキ(Camellia saluenensis)については、昨日書きました。サルウィンツバキとヤブツバキをかけ合わせて生み出された交配種が、ウィリアムシーツバキ(Camellia × williamsii)です。これも、昨日の記事。


ツバキ属(Camellia)に属す種は、その名称により、3つのグループに分けることができます。主な種の例も、挙げておきます。

「ツバキ」を名称に含む
・ヤブツバキ(Camellia japonica
・ユキツバキ(Camellia rusticana
・サルウィンツバキ(Camellia saluenensis

サザンカ」を名称に含む
・サザンカ(Camellia sasanqua
・ヒメサザンカ(Camellia lutchuensis

「チャ」を名称に含む
・チャノキ(Camellia sinensis
・タイワンヤマチャ(Camellia formosensis

つまり、ツバキ属の種の名称には、「ツバキ」「サザンカ」「チャ」の3つの名称が混在していることになります。

2022.12.03撮影

少なくとも、日本の文化の中で、「椿(ツバキ)」「山茶花(サザンカ)」「茶(チャ)」は異なる植物である、という認識がある(だからこそ、ツバキとサザンカはどう違うか、が話題になる)以上、この3つの名称の混在には、問題があります。

名称の使い分けが、
? 植物の特徴をはっきり表しているのか
? 植物の特徴をある程度表しているのか
? ほぼ単なる呼び慣わしなのか

さらに、
? ツバキとサザンカの特徴の差異とされるものは、名称にどこまで一致するのか
? 交配種は、ツバキなのか、サザンカなのか、あるいは、チャなのか
? 新しい園芸種の命名は、何に基づくのか

わたしは名称に敏感すぎるのかもしれませんが、やはり、科学的な分類こそ、「名は体を表す」で行ってほしいと思うんです。ところが、動植物だと、ここに、伝統的に、また、文化的に、使われてきた名称がからむので、簡単にはいきませんね。

ところで、今日掲載の画像は、次の画像も含め、全て同一の植物からのものです。うちの庭にわたしが植えて、大切に育てている植物です。これは、わたしの「見立て」(と言うほどでもないけど)だけでなく、ラベルにもよると、、、

2006.02.05撮影

サザンカの園芸種です。園芸種名は失念しました。

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花を愛でるはずが、怒江まで行く

2022年12月18日 08時00分00秒 | ツバキ科
Camellia x williamsii 'Roger Hall’
Focus stack of 11 photos
撮影者:Agnes Monkelbaan
撮影日:2021.04.20
オリジナルからの改変、なし

今日は、クイズから始めま〜す。

この花は、何でしょう。

1.バラ
2.ツバキ
3.ボタン

園芸がお好きな方、葉っぱをジトっと観察された方、画像につけた説明の学名をチラ見された方、には、すぐにバレたかもしれませんが、答えは、2のツバキです。

もっと正確には、ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia)のウィリアムシーツバキ(Camellia × williamsii)、そして、そのツバキの園芸種で、‘Roger Hall’「ロジャー・ホール」と呼ばれるものです。

和名 ウィリアムシーツバキ「ロジャー・ホール」
学名 Camellia × williamsii ‘Roger Hall’
英名 Camellia williamsii ‘Roger Hall’(など、類似名、多数)
ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia

Camellia × williamsii(英文+画像)

ウィリアムシーツバキは、サルウィンツバキ(Camellia saluenensis)とヤブツバキ(Camellia japonica)をかけ合わせて生み出された交配種です。

サルウィンツバキ(Camellia saluenensis)の花の様子の例は、以下でご覧ください。何とも言えない花色です。でも、個体により色の濃さの差は大きいのだそうです。

サルウィンツバキ

草本図譜
ツバキ属の交配種

ウィリアムシーツバキの例は、以下。園芸種名は、書かれていないので分かりませんが、サルウィンツバキと同様に、独特の花色を表しています。

ウイリアムシー

ウィリアムシーツバキの園芸種のほとんどが、花びらが半透明で、透き通るような感じなのだそうです。もうひとつ例をどうぞ。これは、'Citation'「サイテーション」という園芸種です。

Camellia × williamsii 'Citation'
撮影者:A. Barra
撮影日:2007.03.
オリジナルから、改変なし

ウィリアムシーツバキは、イギリス人の John Charles Williams(ジョン・チャールズ・ウィリアムズ)によって作り出されました。創作者の名前 Williams をラテン語風に変形して williamsii とし、Camellia × williamsii と呼ばれます。

「×」という表記は、交配種である、という印です。(でも、Camellia × williamsii は、Camelliawilliamsii をかけ合わせた、という意味ではありません。)

「W」という文字は、ラテン語を表すラテン文字(ローマ字)には本来はありませんでした。でも、外国語の固有名詞に由来する語をラテン語である学名に使用するときには、必要に応じ、使います。発音は、その元の外国語における読み方に従います。

ドイツ語の例:welchi「ヴェルヒ」
英語の例:williamsii「ウィリアムズィイ」

(細かいことを言えば、「ウィリアムシー」ではなく「ウィリアムズィイ」のはず。「ウィリアムズ」の「ズ」から来ているので。)

サルウィンツバキは、中国名を「怒江山茶」といい、「怒江」は川の名前、「山茶」は日本語の「ツバキ」に当たり言葉です(サザンカは中国語では「茶梅」)。

怒江山茶

怒江山茶は
> 是中国的特有植物。分布于中国大陆的云南等地
と書いてありました。

「これ(=怒江山茶)は中国固有の植物である。分布は、中国大陸の雲南、等である」という意味だと思います。

「怒江山茶」という命名から、サルウィンツバキが、怒江辺りの原産、あるいは、固有、なのだろうな(地名が必ずしも原産地、固有地、を表すわけではないが)、とは思いましたが、怒江なんてのは、高校の地理の時間に習わなかったよ。

怒江山茶は、中国の雲南が原産、ということなので、この川は雲南にあるのかな。

それで、調べてみると、日本語では「サルウィン川」と呼ぶ、と分かりました。種小名の saluenensis は、ここから来ているのね。そして、これが日本語の「サルウィンツバキ」の「サルウィン」なのね。

Wikipediaの記事によると、サルウィン川は
> チベットを源流とし、中国雲南省を流れ、ミャンマー北東部のシャン台地にあるカヤー州・カレン州を南下してアンダマン海北端部のマルタバン湾へと注ぐ国際河川である。一部ミャンマーとタイの国境を成す。長さは2815 kmにおよぶ。

サルウィン川

この同じ川「怒江」を、Wikipediaの中華人民共和国版で見てみると、
> 國家 中华人民共和国
としか書いていない、地図では明らかにミャンマー領内も流れているのに・・・

怒江(中国語+画像+地図)

「怒江」なんて名前だから、流れが激しいのかなあ、とか、舟を引きずり込むほどの渦巻きがあるのかなあ、とか、考えたのですが、わからずじまいでした。「怒江(ヌー川)」の両岸には「ヌー族(怒族)」が住む、というのは、分かりましたけど。(そう言えば、昔に、「怒族」って何? と調べたことがあったのを思い出しました。)

サルウィン川の流れる中国の雲南と言えば、植物が豊富なところで知られていますよね。そのことについて、Wikipediaの「サルウィン川」から引用しておきます。

> 流域には7千種を超える植物と、80種の希少種および絶滅危惧種の動物と魚が暮らす。ユネスコはサルウィン川の流域を「世界で最も多様性に富む温帯の生態系かもしれない」とし、2003年に、上流域を世界遺産に登録した。

実は、ひとつ、お詫びがあります。冒頭の画像についてです。

この花が、なんか、不自然に美しかった、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。この画像には、撮影者自身の施した加工が加わっています。複数の画像を重ね合わせて、各種調整がなされています。でも、この画像に見える花の姿は、自然の姿とあまり変わりません。画像として美しくなっているだけです。

よろしければ、念のために、次のサイトなどで、Camellia × williamsii ‘Roger Hall’ のより自然な姿をお確かめください。以下のサイトでは、大きい画像の下にある小さい画像は、クリックすると拡大します。

Camellia ‘Roger Hall’(英文+画像)

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