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ヒイラギ、セイヨウヒイラギ

2022年12月12日 07時19分00秒 | 樹木
赤い実をつけるセイヨウヒイラギ
パブリックドメイン

冒頭の画像は、セイヨウヒイラギです。ヒイラギではありません。和名で言うと、セイヨウヒイラギはヒイラギの一種だ、と感じてしまいますが、セイヨウヒイラギとヒイラギは、系統の異なる植物です。

セイヨウヒイラギについて、念のために、科と属だけでなく、科のもうひとつ上の分類である目(もく)まで書いておきます。

和名 セイヨウヒイラギ(西洋柊)
ニシキギ目(Celastrales)モチノキ科(Aquifoliaceae)モチノキ属(Ilex)
学名 Ilex aquifolium
英名 Holly
原産 西部ヨーロッパ、南部ヨーロッパ、北西アフリカ、南西アジア

セイヨウヒイラギ

Holly(英文+画像)

ヒイラギについては、昨日の記事をご覧ください。

ヒイラギ、ヒイラギモクセイ

ヒイラギ

ヒイラギ
撮影者:KENPEI
撮影日:2006.11.16
オリジナルからの改変、なし

ヒイラギ(左)とセイヨウヒイラギ(右)を左右に突きあわせて、比べてみます。

名称、原産
和名: ヒイラギ(柊)・・・・・・セイヨウヒイラギ(西洋柊)
目名: シソ目(Lamiales)・・・・ニシキギ目(Celastrales)
科名: モクセイ科(Oleaceae)・・モチノキ科(Aquifoliaceae)
属名: モクセイ属(Osmanthus)・モチノキ属(Ilex)
学名: Osmanthus heterophyllus・・Ilex aquifolium
英名: False holly・・・・・・・・・Holly
原産: 台湾、日本・・・・・・・・主に、西部、南部、ヨーロッパ

これを見てみると、日本では、和名として Osmanthus heterophyllus を指す「ヒイラギ」がまず名称として存在し、その後、Ilex aquifolium が日本に紹介されて「セイヨウヒイラギ」と命名されたたことになります。

その反対に、英語では、古代のローマの時代から親しまれてきた Ilex aquifolium(セイヨウヒイラギ)を指す「Holly」がまず名称としてあり、その後、日本などから移入された Osmanthus heterophyllus(ヒイラギ)を表す名称が「False holly(偽のホリー)」となったことがわかります。

さらに特徴を比べてみます。冒頭の画像(セイヨウヒイラギ)と、2番目の画像(ヒイラギ)で、葉をご観察ください。

葉は、両者とも、大変よく似ています。異なるのは、葉のつき方ぐらいです。

葉の共通の特徴
落葉: 常緑
色:  濃緑色
表面: 光沢がある
トゲ: 縁に鋭いトゲがある(古い葉では、減る)

葉の異なる特徴
つき方:対生(ヒイラギ)・・・・・・互生(セイヨウヒイラギ)

では、花はどうでしょうか。次は、セイヨウヒイラギ(英語で Holly)の花です。この画像(セイヨウヒイラギ)と、上の画像(ヒイラギ)で、花をお比べください。

セイヨウヒイラギの花
撮影者:Tigerente
オリジナルからの改変、なし

花の特徴
和名: ヒイラギ(柊)・・・・・・・セイヨウヒイラギ(西洋柊)
雌雄: ・・・・・・・・・異株・・・・・・・・・・
花びら:反り返る・・・・・・・・・・反り返らない
色:  白・・・・・・・・・・・・・緑っぽい白
匂い: 芳香がある・・・・・・・・・気づかれるほどの匂いはない

Wikipedia英語版の Holly の記事には、セイヨウヒイラギの花は inconspicuous である、と書かれています。この英単語は「簡単には気づかれない」という意味で、白や緑や茶色の小さく、あまり魅力的でない花を形容するのによく使われます。つまり、鑑賞価値から言うと「どーでもいい」花について、こう述べられます。

ということは、いい匂いもしない、と結論せざるを得ない。実際、「ホリー」の花の匂いなんか嗅いだことがない、「ホリー」はその辺にたくさん植わっているんですが。と言うか、「ホリー」は実生で結構生えてくるんです。鳥さんの活動のおかげです。

最後に、その実を比べてみます。

ヒイラギの実は、次のサイトにはっきりした画像が挙がっています。上から7番目の画像です。無断で転載できませんので、どうか、お出かけになって、ご覧くださいませ。

ヒイラギ

> 雌木についたヒイラギの実
> 黒紫色が美しい(ちゆきさん撮影、2005.6)

そして、このヒイラギの、黒紫の実を、次のセイヨウヒイラギの赤い実とお比べください。

セイヨウヒイラギ
撮影者:4028mdk09
撮影日:2009.12.17
オリジナルからの改変、なし

結局、セイヨウヒイラギ(Ilex aquifolium)が「ヒイラギ」と呼ばれるのは、ヒイラギ(Osmanthus heterophyllus)の葉と類似の葉を持っている、という理由から。大きな違いは、ヒイラギは、その花の匂いで知られ、セイヨウヒイラギは、赤い実つきの常緑の枝が冬場を彩る、ということでしょう。

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