カラスといちごとクロッカスと

身の回りの鳥や小動物、庭の花や畑の野菜など、日々日々、季節季節の情報を、
個人の目をとおしてお届けします。

イチイ、雪が降ると・・・

2023年01月10日 08時00分00秒 | 樹木
2021.12.28撮影

冒頭の画像は、1年ちょっと前の、きれいに晴れた日の写真です。この撮影日の3日後に、雪が降りました。

画像中の緑の葉っぱのついた2本の木のうち、右はアメリカツガ(Tsuga heterophylla)である、と思われます。植えたのではなく自然発生なので、正確にはわかりませんが。

そして、左のは、昨日のブログで「アイルランドのイチイ(Taxus baccata 'Fastigiata')」と同定したものです。これは、幹が上に伸びていく、というので買い求めたものです。ただ、残念なことに、名称を控えてありませんでした。でも、昨日の同定で合っていると思います。この横幅を取らないイチイは、庭に、生垣に、人気の高い種類です。

イチイ、どの?

3週間ほど前のこの年末(上の画像から約1年後)、20日に雪が降りました。次の画像をご覧ください。「アイルランドのイチイ」は、この画像では、右奥に見えます。

2022.12.20撮影

次のブログ記事でも書いたのですが、あまり雪の降らないバンクーバーでは、雪が降ると、人間だけでなく、鳥を含む動物たちも慌てます。そうすると、普段はそう食べない物まで鳥や動物が食べるようになります。

バンクーバーの雪事情とカラス

うちのイチイですが、実がたくさんなっています。時々鳥がついばんでいますが、特に人気のあるエサでもないようです。やってくるのは、主に小さい鳥です。

このイチイは、幹が縦に出ていて、横に出たしっかりした枝がありません。それで、葉や実のついている枝が短いです。つまり、よほど小さい、体重の軽い鳥でない限り、止まれないのです。ですから、小型ではない小鳥がこの果実を食べようとすると、羽をばたつかせて、足場を足探りしながら実を取ることになります。

おまけに、実が雪に埋もれていたので、それを探し出す必要もありました。そうすると、雪を払いながら、空中でずり落ちつつついばもうとするので、えらい騒ぎでした。

次の画像は、実がついばまれる前の「ビフォー」。実がたくさん実っています。

2022.11.30撮影

鳥が(文字通り)バタバタしているところを撮影したかったのですが、とにかく動きが早くてできず、食べた後にご休憩の鳥を1羽撮影することができました。次の2枚をご覧ください。この鳥、どなたでしょ? アメリカンロビン(Turdus migratorius)のメスでしょうかなあ。

2022.12.20撮影

2022.12.20撮影

後日、イチイの周りを見てみると、次の画像のようになっていました。落ちているのは果実がちょっと欠けているだけなので、果実の一部しかついばむことができなかったのかもしれません。あるいは、果実を丸のみして、ここには落ちていない可能性もあります。

2023.01.03撮影

次の画像は、実がついばまれた後の「アフター」。赤い実からのぞくタネが「果肉」からはみ出すほどに大きく成長しているのが見てとれますが、実の数そのものが減っています。

2023.01.03撮影

イチイの実は、人間が食べても美味しいんですよ。ただ、タネには毒がありますから、絶対に噛んだり飲み込んだりしませんように。

・・・・・・・

【お知らせ】

2月初めまで、日本に帰国いたします。帰省中に書けないし、今回は書きだめもないので、ブログはしばらくお休みします。こちら(バンクーバー)に帰ったら、再開します。その時には、またご訪問くださいませ。ヘレボルス属(Helleborus)について書き始めたいと思います。

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イチイ、どの?

2023年01月09日 10時04分02秒 | 樹木
2022.11.30撮影

うちには他に赤い実のなる灌木や樹木がないので、このイチイ(Taxus)の実がなってくれるのが、たいへんうれしいです。イチイ科(Taxaceae)イチイ属(Taxus)の植物で、「イチイ」は「一位」と書きます。

日本のイチイ(Taxus cuspidata)は、日本語では、科名、属名、種名、が全て「イチイ」。センリョウ科センリョウ属センリョウ(Sarcandra glabra)、みたいなもんです。

和名 イチイ(一位)
イチイ科(Taxaceae)イチイ属(Taxus
学名 Taxus cuspidata「尖ったイチイ」
英名 Japanese yew「日本のイチイ」
原産 日本、朝鮮半島、中国北東部、ロシア最南端
雌雄異株

学名の cuspidata「尖った」というのは、葉の形から来ています。でも、痛いほど尖っているわけではありません。

2022.11.30撮影

冒頭の画像と上の画像は、うちのイチイですが、これらではなく、次の「植木ペディア」に挙がっている日本のイチイの葉の画像をご覧ください。


若葉、そして、比較的若い葉なのであろうと思われる葉は、軸に対して両側に出てペタンとついています。でも、枝先で若葉でないように見える葉は、葉の軸に対するつき方が、不規則に揺れたようになっています。

ここで、これを、うちのイチイの葉とお比べください。うちのイチイの葉は、上の画像と冒頭の画像に見えるように、葉が軸を取り囲んでほぼ螺旋状についています。葉と葉の間には隙間があります(上の画像中、真ん中上)が、枝の先端の方へ行くと、より密接しています。

葉のつき方からだけでも、このうちのイチイは日本のイチイ(Taxus cuspidata)ではないことがわかります。

それでは、ヨーロッパイチイ(Taxus baccata)なのか。

和名 ヨーロッパイチイ
イチイ科(Taxaceae)イチイ属(Taxus
学名 Taxus baccata「ベリーのなるイチイ」
英名 Yew「イチイ」
別名 Common yew「一般的なイチイ」
原産(イギリス、アイルランドを含む)西部、中部、南部ヨーロッパ

名称を見ると、「おらがとこ」中心、ですね、どこも。ヨーロッパでは、ヨーロッパイチイ(Taxus baccata)が Yew「イチイ」で、日本では、日本のイチイ(Taxus cuspidata)が「イチイ」なわけです。ごもっとも。

Aril of the European yew(ヨーロッパイチイの実)
撮影者:Didier Descouens
撮影日:2012.08.10
オリジナルからの改変、なし

上の画像は、ヨーロッパイチイの画像です。実を見せるのが目的で、枝を裏側から撮影したものです。葉の裏側からも、葉の軸に対するつき方を観察することができます。このヨーロッパイチイの葉も、うちのイチイのような螺旋状ではありません。(ヨーロッパイチイでも、新芽は螺旋状となります。)

うちのイチイがどの種であるか探索したいんですが、上の画像があんまりきれいなので、その前に、葉の様子を見てみましょう。

イチイ類の葉の裏側は、上の画像に写っているように、このように白っぽく、明るく見えます。葉の中心にきれいに主脈が通っています。そして、その両脇が白っぽいです。さらに、その白い部分の外側は、表の縁が表から裏へやや折り返されたようになっています。

今度は、次の画像(うちのイチイ)をご覧ください。ここで見えている葉は、ほとんどが表ですが、裏からと同様、表からも主脈が浮き上がって見えます。右奥には枯れて茶色くなった葉が見えますが、その左手前に、裏側が見えるのが2枚はあります。ここでも、上の画像と同様、白い筋がきれいに出ています。

こんなふうに見てみると、葉を観察して鑑賞するのも楽しいなあ、と思うようになりました。

2023.01.03撮影

では、うちのイチイは、どの種なんでしょう。次の2点から、Irish yew「アイルランドのイチイ」と呼ばれる種であると確定していいと思います。

1.葉が全体的に螺旋状についている
2.幹が複数本上に向かって伸びている

和名(ないもよう)
イチイ科(Taxaceae)イチイ属(Taxus
学名 Taxus baccata 'Fastigiata'「枝がほうき状のベリーのなるイチイ」
英名 Irish yew「アイルランドのイチイ」
原産 アイルランド

イギリスの「森林信託」
(クリックで開きませんので、アドレスをコピペでどうぞ)
YEW, IRISH(英文+画像)

アメリカ、ワシントン州にある「エリザベス・キャリー・ミラー植物園
(Elisabeth Carey Miller Botanical Garden)」
Taxus baccata 'Fastigiata'(英文+画像)

さらに、その他の記事によると、この「アイルランドのイチイ」は、
・1780年台に
・アイルランドで
・雌株だけが1本
・発見された
ということです。

普通のヨーロッパイチイ(Taxus baccata)の突然変異だと考えられています。そして、増殖は、挿し木でなされてきました。

ということは、うちのも元はアイルランドにあった(まだ現存する、というのもどこかで読んだ)ものの子孫? それも200年以上前からの?

「アイルランドのイチイ」は、横幅をあまり取らずに縦に幹を何本も上げる姿が、美しいです。次の画像でその様子をご覧ください。うちの「アイルランドのイチイ」です。

2020.08.20撮影

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イチリョウ

2023年01月08日 08時00分00秒 | アカネ科
アリドオシ(Damnacanthus indicus
撮影者:Alpsdake
撮影日:2015.05.20
オリジナルからの改変、なし

センリョウ、マンリョウ、について書こう、と思い調べていると、ついに、ヒャクリョウ、ジュウリョウ、を経て、イチリョウにまでたどり着きました。

和名 アリドオシ(蟻通し)
別名 イチリョウ(一両)
アカネ科(Rubiaceae)アリドオシ属(Damnacanthus
学名 Damnacanth indicus
英名 Marlberry
原産 インド東部、東アジア、日本(関東地方以西)

アリドオシ

イチリョウ(アリドオシ)のことで最初に気づいたのは、それが、
・ヤブコウジ属(Ardisia):マンリョウ、ヒャクリョウ(カラタチバナ)、ジュウリョウ(ヤブコウジ、ヤマタチバナ)の上位分類
・センリョウ属(Sarcandra):センリョウの上位分類
のどちらにも属していないことです。

これは、
・他の「〜リョウ」とは異なる花の形(5弁か4弁か、など)
・他の「〜リョウ」にはないトゲの存在
を見れば、別属であっておかしくないであろう、と思います。

先に、ヤブコウジ属(Ardisia)のヤブコウジ(Ardisia japonica)の花を、昨日の記事から再録しておきます。5弁です。

ヤブコウジ(Ardisia japonica)
撮影者:Alpsdake
撮影日:2016.07.02
オリジナルからの改変、なし

次は、イチリョウ(アリドオシ)の花とトゲです。花は4弁です。

アリドオシ(Damnacanthus indicus
撮影者:Alpsdake
撮影日:2015.05.20
オリジナルからの改変、なし

属名の次に気づいたのは、種小名の indicus です。これは、「インドの」という意味。

前に、マンリョウとヒャクリョウについて、イギリスの王立植物園キュー・ガーデンズのサイトにある分布図を見ていただきました。次は、イチリョウ(アリドオシ)の分布図です。地図なので、視覚的にわかりやすいです。

Damnacanthus indicus(地図)

ふうん・・・インド亜大陸(インド半島)のほとんどには分布していないのに indicus「インドの」なのね・・・

アリドオシ(Damnacanthus indicus
撮影者:Alpsdake
撮影日:2015.04.16
オリジナルからの改変、なし

各種「〜リョウ」の特徴については、比較をした記事がたくさんあります。ですから、ここでは、丈だけについて簡単にまとめたいと思います。(高さがおよそ30cm以下の低木を矮性低木と呼びます。)

・マンリョウ(100cm前後)
・センリョウ(50-150cm)
・ヒャクリョウ(20-100cm)
・ジュウリョウ(10-30cm)矮性低木
・イチリョウ(20-60cm)

低木

以上、数日にわたって、貨幣の単位であった「両」を名前にもつ植物を見てきました。

これらは、もともと「一」「十」「百」「千」「万」とそろっていたわけではなく、わたしの推測では、「百両」から始まって、次に「千両」と「万両」がつけ加えられ、あとは、「百」「千」「万」なら、「十」と「一」もね、と拡大したものだと思われます。念のために申しますが、これは、わたしの推測です。

なぜそういう推測を立てるか、というと、日本の文化的な背景から、「百両」という塊が、「大金」であるという最初の概念だ、と思うからです。その「大金」という概念から、愛でるものを名づけるのに、「十」「一」の向きに率先して下がるわけがなく、「千」「万」に向かって上がるはずなのです。そして、「百」「千」「万」がそろったところで、「十」「一」が加えられた。

もとより、わたしが確かな歴史的文献を持っているわけではありません。でも、以上の推測のうち、「百両」が発端であろう、という部分は、傍証できます。中国名です。ヒャクリョウの中国名は、「百两金」です。この名称が、まず日本に入ったのだと思われます。

・・・・・・・・・・

和名 マンリョウ
中国名 硃砂根(硃砂=朱砂「朱色の鉱物、砂」)【追記2】
学名 Ardisia crenata

和名 センリョウ
中国名 草珊瑚(「草サンゴ」なんてきれいな名前ですね)
学名 Sarcandra glabra

和名 ヒャクリョウ
中国名 百两金(和名のヒャクリョウの語源でしょう)
学名 Ardisia crispa

和名 ジュウリョウ
中国名 紫金牛【追記3】
学名 Ardisia japonica

和名 イチリョウ
中国名 虎刺(「アリ」ではなく「トラ」)【追記1】
学名 Damnacanthus indicus

・・・・・・・・・・

「〜リョウ」の名称は、「百両」に始まる、というのは、わたしひとりで言っている間は、推測も推測、おそらく、憶測だろ、程度なので、なんとかどこかに類似の説明はないか、と探すと、植木屋さん「樹げむ舎」のサイトのマンリョウの記事にありました。この管理者の方がどこまで専門家なのかわからないので、この説明も、どこまで裏付けがあるのかは、読む者には分かりませんが。

マンリョウ

・果実の色は赤
・常緑
・花の少ない冬場に、緑の葉を背景に、あるいは、合間に、美しい実がなる
が理由で正月の縁起物とされたのであろう「〜リョウ」。

5回にわたってお届けしてきました。次に「〜リョウ」について書くのは、他の植物との関連で、か、あるいは、「オクリョウ」が出てきた時かな、と思います。

この記事を終えるにあたって、次の3点の追記を書き加えておきたいと思います。

【追記1】
イチリョウのことである「アリドオシ」という名称の由来には、先にリンクしましたのWikipediaの記事によれば、
・トゲが(鋭くて)細長く、アリでも刺し貫く
・トゲが多数あるので、アリのような小さい虫でないと通り抜けられない
の2説があるそうです。中国語では、この同じ植物「蟻通し」を「虎刺」というらしく、これはおもしろい、と思いました。「猛々しい虎でもその上を歩けば刺さって痛がる」という意味でしょうか。

【追記2】
マンリョウの中国名「硃砂根」に出てくる漢字「硃」の意味は、以下でどうぞ。
辞典オンライン漢字辞典
「硃」

【追記3】
ジュウリョウの中国名「紫金牛屬」の中国語での説明です。
Bai du 百科
「紫金牛屬」

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ジュウリョウ

2023年01月07日 08時00分00秒 | サクラソウ科
Ardisia japonica(ヤブコウジ)
撮影者:Qwert1234
撮影日:2016.10.30
オリジナルからの改変、なし

ヒャクリョウ(Ardisia crispa)、センリョウ(Sarcandra glabra)、マンリョウ(Ardisia crenata)、にさらに加え、ジュウリョウ(Ardisia japonica)という植物もあります。

ヒャクリョウ(百両)は「カラ」タチバナ(唐橘)のことでしたが、

ジュウリョウ(十両)はヤブコウジ(藪柑子)のことで、
ヤブコウジ(藪柑子)は「ヤブ」タチバナ(藪橘)、
あるいは、「ヤマ」タチバナ(山橘)とも呼ばれます。

「ヤブ」タチバナ(藪橘)という名称は、マンリョウ(万両)の別名でもあります。

和名 ヤブコウジ(藪柑子)
別名 ヤブタチバナ(藪橘)・・・マンリョウの別名、でもある
別名 ヤマタチバナ(山橘)
別名 ジュウリョウ(十両)
サクラソウ科(Primulaceae)ヤブコウジ属(Ardisia
学名 Ardisia japonica
英名 Marlberry
原産 中国大陸、朝鮮半島、台湾、日本

ヤブコウジ

ここまでに出てきた「〜リョウ」という名前の植物では、マンリョウ(Ardisia crenata)だけが別系統で、ジュウリョウ(ヤブコウジ、ヤマタチバナ)、ヒャクリョウ(カラタチバナ)、センリョウ、は、全て、サクラソウ科(Primulaceae)ヤブコウジ属(Ardisia)です。

以下は、ヤブコウジ(ジュウリョウ)の花とツボミです。ヒャクリョウ(カラタチバナ)とセンリョウの花に似ている、と言ってもいいでしょうか。

ヤブコウジ(Ardisia japonica
撮影者:Alpsdake
撮影日:2016.07.02
オリジナルからの改変、なし

わたしは、去年まで、ヤブコウジだ、と思って育てていた植物があります。ほんの1株だったのが、あたり一面に広がり、他の植物を圧倒していたので、これは、なんとかしなければ、やっぱり秋口に掘り起こそか、と真夏に眺めていたんです。

その時、下のように花が咲いていました。(やっと、手持ちの画像が使えました。)

2021.08.05撮影

これを見てわたしは、その時まで気づかなかったのに、この花はエリカ系の花ではないのか、と思いました。でも、これはヤブコウジである、と思いこんでいたわたしは、その時は、この疑惑を、それきりで忘れたんです。でも、後にブログでサラール(Gaultheria shallon)についての記事を書いている時に、ついに真実がわかってしまった!

かわいい、ハートの、シラタマノキ

このわたしがヤブコウジだと思っていた植物は、ヤブコウジではなく、ヒメコウジであり、分類は、エリカ系だと思った通り、ツツジ科(Ericaceae)で、その下位分類は、サラールと同じくシラタマノキ属(Gaultheria)でした。

和名 ヒメコウジ(姫柑子)
ツツジ科(Ericaceae)シラタマノキ属(Gaultheria
学名 Gaultheria procumbens
英名 American wintergreen「アメリカの冬緑」(他の名称もあり)

次の画像は、このヒメコウジの赤い果実です。「シラタマ」ノキ属ですが、赤い実です。

2021.02.08撮影

これで知らずにいた誤解が解けてよかったのですが、ヤブコウジではなかった、というので、気落ちしました。ヤブコウジだと思って意気揚々と求めたものだったからです。でも、植物が何であれ、冬に緑の葉を保ち、赤い実をつけてくれるのは、うれしいことです。

それと、まあ、間違っても仕方なかったかな、という言い訳は、ヒメコウジがヒメ「コウジ」と名付けられている以上、ヤブ「コウジ」との関連を感じる人もいる、ということだと思います。

上の画像中、ヒメコウジの葉の上に出ている6枚の小葉のある葉は、クルマバソウ(Galium odoratum)のものです。この葉も、冬の間中、緑でいてくれます。

クルマバソウ:グランドカバー ⑵

同じく画像中、向こう側には、大きめの石が置かれています。その手前の方に紅色のツボミがふたつ、みっつつうなだれていますが、これは、ヘレボルス・オリエンタリス(Helleborus orientalis)のツボミです。ヘレボルスについては、2月に書いてみようと思います。

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ヒャクリョウ

2023年01月06日 08時00分00秒 | サクラソウ科
Ardisia crispa(カラタチバナ、ヒャクリョウ)
撮影者:Qwert1234
撮影日:2017.11.18
オリジナルからの改変、なし

センリョウ(Sarcandra glabra)、マンリョウ(Ardisia crenata)、に加え、ヒャクリョウ(Ardisia crispa)、と呼ばれる植物もあります。カラタチバナのことです。

和名 カラタチバナ(唐橘)
別名 ヒャクリョウ(百両)
サクラソウ科(Primulaceae)ヤブコウジ属(Ardisia
学名 Ardisia crispa
英名 Japanese holly「日本のセイヨウヒイラギ」
原産 中国大陸、台湾、日本(福島県、新潟県以西)

カラタチバナ

ヒャクリョウ(百両)、センリョウ(千両)、マンリョウ(万両)、の中では、系統の分類は、次のようになります。

センリョウ科(Chloranthaceae)センリョウ属(Sarcandra
・センリョウ(千両)

サクラソウ科(Primulaceae)ヤブコウジ属(Ardisia
・ヒャクリョウ(百両)
・マンリョウ(万両)

ヒャクリョウ(Ardisia crispa)とマンリョウ(Ardisia crenata)が、同科(Primulaceae)同属(Ardisia)というのは、花を比べてみればわかるだろう(というのが、素人の考えることですが)。

ハナタチバナ(ヒャクリョウ)の花(Ardisia crispa
撮影者:Qwert1234
撮影日:2017.11.18
オリジナルからの改変、なし

上の画像では、カラタチバナ(ヒャクリョウ)の花は、右端上の花だけが開いています。あとはみんなツボミです。この花房を、「樹げむ樹げむのTree World」というサイトの上から3番目の画像との花房とお比べくさい。

マンリョウ
「樹げむ樹げむのTree World」から

ヒャクリョウとマンリョウの花は大変似ている、と言っていいと思います。なんか、ナス科(Solanum)の植物の花に似ている、と思うのは、わたしだけでしょうか・・・

それにしても、カラタチバナ(ヒャクリョウ)は、なぜ「唐橘」と呼ばれるのでしょうか。「唐」は中国の王朝名、「橘」は柑橘類のタチバナです。カラタチバナ(ヒャクリョウ)は、日本も中国も原産地なので、カラタチバナ(ヒャクリョウ)を「中国の」と呼ぶ必要はありませんよね。カラタチバナ(ヒャクリョウ)の花が「タチバナ」の花に似ている??

これを見るために、タチバナ(ヤマトタチバナ)の花と比べてみることにしました。

和名 タチバナ(橘)
別名 ヤマトタチバナ(大和橘)
別名 ニッポンタチバナ(日本橘)
ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus
学名 Citrus tachibana
英名 Tachibana orange「タチバナオレンジ」
原産 日本固有

ヤマトタチバナの花
パブリックドメイン

タチバナ(ヤマトタチバナ)とカラタチバナ(ヒャクリョウ)は姿も果実も全く異なるので、仮に花がやや似ていた(似ていますか?)にしても、カラタチバナを「カラ」タチバナと呼ぶ理由はないと思うのですが・・・

Ardisia crispa(カラタチバナ、ヒャクリョウ)
撮影者:Qwert1234
撮影日:2017.11.18
オリジナルからの改変、なし

昨日、マンリョウの世界的な分布を地図でご覧いただきました。マンリョウが外来植物として被害を与えているなら、近縁種のヒャクリョウはどうでしょう。同じくイギリスの王立植物園キュー・ガーデンズのサイトへ行ってきました。

Ardisia crispa(地図)

外来種として大きく影響を受けているのは、主に、オーストラリアのクイーンズランド州だけのようです。なぜアメリカにまで広がらなかったか、は、アメリカではより小型のカラタチバナ(ヒャクリョウ)は、園芸植物として、それほど需要がなかったのかもしれません。

以下は、著作権の切れているカラタチバナのスケッチです。葉っぱの出方が、センリョウ(Sarcandra glabra)の2段重ねで十字形になるのとは、随分違いますね。

Ardisia crispa
パブリックドメイン(1927.01.01よりも前に出版された作品)

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マンリョウ

2023年01月05日 08時00分00秒 | サクラソウ科
Ardisia crenata
パブリックドメイン

昨日のセンリョウ(Sarcandra glabra)に続き、今日は、マンリョウ(Ardisia crenata)です。

和名 マンリョウ(万両)
別名 アカギ
別名 ヤブタチバナ
サクラソウ科(Primulaceae)ヤブコウジ属(Ardisia
学名 Ardisia crenata
英名 Christmas berry「クリスマスのベリー」
別名 Coralberry「珊瑚のベリー」
原産 インド、東アジア、日本(関東以南)

マンリョウ

センリョウとマンリョウは、「センリョウ、マンリョウ」と並べて称され、両者とも赤い果実が美しく、同じように庭に植えられ、また、同じように正月の縁起物とされる常緑の小低木ですが、両者には近縁関係はありません。

センリョウはセンリョウ科(Chloranthaceae)、マンリョウはサクラソウ科(Primulaceae)です。

マンリョウの属するサクラソウ科、って、え? この植物が? と思うような植物がザクザクと入っている科です。例えば、オカトラノオ(Lysimachia clethroides)、シクラメン(Cyclamen persicum)、、、まあ、よく見てみれば、似ているのかな、似ていないのかな。

オカトラノオと、トラノオ一族たち

そんなら、マンリョウの花を見てみましょう。(花で比べればいいんじゃ?、というのが、素人の知恵です。)

花(マンリョウ)
撮影者:KENPEI
撮影日:2006.07.22
オリジナルからの改変、なし

この画像ではわかりにくいですが、このマンリョウの花、サクラソウに似てます? シクラメンは?

センリョウとマンリョウに戻ると、センリョウとマンリョウの差異点については、多くの方が語っていらっしゃいますから、ここでは、見た目ではっきりわかることだけを、念のために、記しておきます。果実が、センリョウは上を向いている、マンリョウは下を向いている。

Ardisia crenata(マンリョウ)
パブリックドメイン

マンリョウの原産地がインドにまで及ぶことを知り、興味深く思いました。それで、世界的な分布を調べてみることにしました。イギリスの王立植物園キュー・ガーデンズのサイトで、以下の地図を見つけました。どうか、ご覧ください。地図は、画面を横に拡大すると、全世界が見えます。

緑の部分が原産地、赤紫っぽい色の部分が導入され野生化している地域です。アメリカのフロリダ州やテキサス州、オーストラリアのクイーンズランド州で野生化していることがわかります。なぜそれらの地に導入されたのかは、わたしにはわかりません。

Ardisia crenata subsp. crenata(地図)

さて、この導入地のひとつ、フロリダ州には法律があって、マンリョウを栽培してはいけない、と熱っぽく語っています。繁殖しまくって、他の植物が駆逐されてしまい、生態系を乱しているのだそうです。外来種って、どこも同じですね。

以下は、フロリダ大学の博物館のサイトからの啓蒙記事です。5点を挙げています。

Five Facts about coral ardisia in Florida(英文+画像)

1.美しい厄介者である
2.元は、東南アジアから園芸植物として導入された
3.(英語では)名称がたくさんある
4.鳥が拡散を媒介する、生命力旺盛である
5.フロリダでは栽培するのは違法である

木立したマンリョウ
撮影者:Forest & Kim Starr
撮影日:1998.05.29
オリジナルからの改変、なし

上の画像では、赤い果実が前年より残ったままで、すでにツボミがついているようです。

次のリンク先の記事には
> 花の後にできる果実は(中略)でき始めは開花期と重なり、
> 花と実を同時に見るこができるが緑色。
と書かれていました。

庭木図鑑
植木ペディア
マンリョウ/まんりょう/万両

さらには、以下の記事などもどうぞ。

BOTANICA
マンリョウの育て方!見映えのよい樹形を長く保つ管理のポイント | 植物図鑑

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センリョウ

2023年01月04日 08時00分00秒 | センリョウ科
Sarcandra glabra(センリョウ)
撮影者:KENPEI
撮影日:2006.10.25
オリジナルからの改変、なし

明けましておめでとうございます。
みなさまの今年の安寧をお祈り申し上げます。

わたしは、今年も、わたしの好きなお花を中心に、たまには、小動物や鳥についても、わたしの観察、感想を加えて、情報を発信して行きたいと思います。

どうか、今年もよろしくお願いいたします。

今日は、新年ということで、縁起物のセンリョウとマンリョウから取り上げたいと思います。そして、そのうちでも、「センリョウ、マンリョウ」という並びで言うのが普通ですから、まず、センリョウ。

果実
パブリックドメイン

赤い実がきれいですね。センリョウに限らず、赤い実はなぜか文句なく美しい。

和名 センリョウ(千両)
別名 クササンゴ(草珊瑚)
センリョウ科(Chloranthaceae)センリョウ属(Sarcandra
学名 Sarcandra glabra
原産 日本を含む東アジア、東南アジア、南アジア

センリョウ

和名がすごいです!
・科名 センリョウ科
・属名 センリョウ属
・種名 センリョウ(千両)
と「同じ」名前が3つ並んでいます。

和名では、このように、科名、属名、種名、に同じ名前で並ぶものがあります。このことについては、またいつか話題にします。

Sarcandra glabra(センリョウ)
パブリックドメイン

センリョウの赤い実は、真上から見ると、4枚の葉が十字に広がったように見える上に、固まってつきます。

この4枚の葉は、でも、同一の節から4枚が直角を成して出て十字の形を形成しているのではありません。2枚ひと組の葉がひとつの節から左右に出ます。そして、そこから少し離れた節から、他の2枚ひと組の葉が左右に出ます。このふた組の葉が、軸に対して直角に出るので、上から見ると、4枚の葉が十字に出ているように見えるのです。

この様子は、上の画像で見ることができます。実に一番近いひと組の2枚の葉と、それと直角を成す一段下の2枚の葉の間に、隙間があります。次の花の画像ででも同じことがわかりますが、まだ時期が早いので軸が伸びきっておらず、そのため、隙間が狭いです。

Sarcandra glabra(センリョウ)
撮影者:KENPEI
撮影日:2007.06.30
オリジナルからの改変、なし

センリョウの実は華やかですが、花は上の画像のような姿で、多くは見過ごされがちかもしれません。花が咲いた覚えがないのに実がなっていた、というぐらい。

センリョウの花はなんと、ガクも花弁もないんですって。緑色のがメシベで、薄黄色のがオシベだそうです。この緑のが赤い実になるのね。

明日は、「センリョウ、マンリョウ」のマンリョウについてお話しします。

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