カラスといちごとクロッカスと

身の回りの鳥や小動物、庭の花や畑の野菜など、日々日々、季節季節の情報を、
個人の目をとおしてお届けします。

シジミチョウ〜帰国日記6

2023年06月30日 08時00分00秒 | 昆虫、その他
2023.06.10撮影

2日続けてナミアゲハ(Papilio xuthus)について書きましたが、実は、ナミアゲハよりも、このシジミチョウ科(Lycaenidae)のチョウの方をよく見たんです。

そして、6月9日にナミアゲハを撮影するのに挑戦した挙句、チョウを撮影するおもしろみに味をしめ、翌10日に、その飛翔パターンから、シジミチョウを撮る方が簡単なことに気づき、シジミチョウの方がちっちゃいのですが、積極的に撮ってみることにしました。

いずれにしてもズームを使っているので、画面はそうすっきりはしません。

さて、このシジミチョウを同定するのですが、次の図鑑を参照しました。

昆虫エクスプローラ
「シジミチョウ図鑑(42種類)」

そして、わたしの写真記録には異なる4個体がある(いる?)ので、そのすべてを拡大して、見比べてみることにしました。

個体Aと個体Bは今回この6月に、個体Cと個体Dは去年の11月(ワクチン証明だけで隔離が不要になって初めての帰国のとき)に撮影したものです。

個体A(+オカトラノオ)
2023.06.10撮影(冒頭の画像の切り取り)

個体B(+ポーチュラカ)
2023.06.10撮影(この記事の最後の画像の切り取り)

個体C(+イヌマキ)
2022.11.15撮影

個体D(+チェリーセージ)
2022.11. 02撮影

この4個体のうち、個体Aが、個体B、C、Dと異なって見えます。個体Aは、前羽を後ろ羽にあまり畳みこんでいません。一方、個体B、C、Dは、前羽を後ろ羽の内側にほぼ畳んでしまった形になっています。

でも、この、羽の畳み方の違いを除くと、4個体とも、見かけはみんなよく似ていますよねえ。

地域的に合わないもの、季節的に合わない(だろうと思われる)もの、また、あまり見かけられないものを除いて、次の2種を候補に絞りました。

・ルリシジミ
・ヤマトシジミ

ルリシジミ

ヤマトシジミ

このうち、白っぽいことが特徴のルリシジミが、実家の庭に訪れているシジミチョウではないか、と思われます。または、やや黒っぽい個体Aだけは、ヤマトシジミなのかもしれません。羽の畳み方の違いも何か意味があるのでしょうか。

2023.06.10撮影(個体A)

学名 Celastrina argiolus
英名 Holy blue
和名 ルリシジミ(瑠璃小灰蝶)
シジミチョウ科(Lycaenidae)ヒメシジミ亜科(Polyommatinae)
ルリシジミ属(Celastrina

学名 Zizeeria maha
英名 Pale grass blue
和名 ヤマトシジミ(大和小灰蝶)
シジミチョウ科(Lycaenidae)ヒメシジミ亜科(Polyommatinae)
ハマヤマトシジミ属(Zizeeria

羽の表が見えていれば、もう少し同定が正確になると思うんですけど〜〜見えなかったんですよ〜〜

お願い:
もし、同定に誤りがありますれば、指摘し、教えてくだされば、幸いです。

2023.06.10撮影(個体A)

わたしは、子どものとき、図鑑を買って与えられていました。植物の図鑑、昆虫の図鑑、鳥の図鑑、魚の図鑑、鉱物の図鑑、、、というように。それぞれの図鑑はそう大きくなくて、子どもにも扱いやすい仕様でした。

最初のページから最後のページまで、何度もくって、何度も見て、よく植物や昆虫の特徴と名称を覚えていたものです。そして、実際に野原などで見て(そうです、まだ野原が存在した時代です)、同定できた(「同定」なんて言葉は、そのころは知らなかったが)。でも、もう名称は忘れていますね、植物以外は。

去年の10月から帰省をくり返し続けているのですが、両親にこの頻度で会っていると、子どものときに帰ったようで、そのころのことがいろいろ思い出されます。

ずっと片付け物を手伝っているけれど(と言うか、わたしが、両親の補助ではなく、両親の代わりに、しているのだけど)、あの図鑑はどこに行ったのかなあ。とんでもなく古いものが出てくる(例えば、わたしが幼稚園へかぶって行っていたベレー帽)ので、あの図鑑だって出てきてもいいようなものだが、、、

2023.06.10撮影(個体B)

明日も、チョウの話題が続きます。


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アゲハの卵と幼虫〜帰国日記5

2023年06月29日 08時00分00秒 | 昆虫、その他
Papilio xuthus(ナミアゲハ)
撮影者:Laitche
撮影日:2008.08.13
パブリックドメイン

今日は、昨日からのつづきで、ナミアゲハです。成虫だけでなく、卵と幼虫についても。

ただ、成虫の方は、わたしの「ナミ」以下の画像をこれ以上お見せするわけにはいかないので、今日は、Wikipediaの美しい画像(そのうち2枚はパブリックドメイン!)を借りてきました。

いっしょに写っている花は、ランタナです。ランタナ(Lantana camara)は、国際自然保護連合の定めた「世界の侵略的外来種ワースト100」のひとつだそうです。

世界の侵略的外来種ワースト100

学名 Lantana camara
和名 シチヘンゲ(七変化)
別名 ランタナ(学名の属名から)
クマツヅラ科(Verbenaceae)シチヘンゲ属(Lantana

Papilio xuthus(ナミアゲハ)
撮影者:Laitche
撮影日:2008.08.13
パブリックドメイン

ナミアゲハの名称をもう一度確認しておきます。原産地をつけ加えます。

学名 Papilio xuthus
英名 Asian swallowtail「アジアのアゲハチョウ」
和名 ナミアゲハ(並揚羽)
別名 アゲハチョウ(並揚羽蝶)
別名 アゲハ(揚羽)
アゲハチョウ科(Papilionidae)アゲハチョウ属(Papilio
原産 日本全国、台湾、中国、朝鮮半島、等

和名の「アゲハ」というのがどういう語源かしかとは分かりませんが、「ナミ」は「普通の」という意味の「並」と取っていいですよね。ナミアゲハは、アゲハチョウの代表のように感じられませんか?

実際、「アゲハチョウ」と言えば、ナミアゲハのことを指したりします。小・中学校の理科では、ナミアゲハを単に「アゲハ」と呼ぶそうです。(そう言えば、そうだったか? と昔日のことを思い出してみる・・・)

ナミアゲハ

Papilio xuthus(ナミアゲハ)
撮影者:Daiju Azuma
撮影日:2007.04.22
オリジナルからの改変、なし

英語の名前も見てみると、Asian swallowtail「アジアのアゲハチョウ」と、原産地を示す「アジアの」というのがついています。Swallowtail というのは、「ツバメのしっぽ」で、アゲハチョウ類の後ろ羽につく突起に注目した命名です。でも、すべての「アゲハチョウ」にこの「しっぽ」があるわけではありません。

Papilio xuthus(英文+画像)

Swallowtail butterfly(英文+画像)

帰省中、実家の庭には、ナミアゲハがたくさんやってきました。主にはオカトラノオのミツを吸っているようでしたが、あるとき、1頭が、サンショウの周りを飛び回り、腹部の先(つまり、お尻)を近づけて、何やらしているもよう。これは産卵に違いないと思いました。

それで、そのサンショウを検分。それが、次の画像です。雨が降った後に撮影したので、葉っぱがてかてかしていますが、ご容赦を。

2023.06.04撮影

この真珠のちっちゃいみたいなの、卵じゃない?

画像中では、右に出た複葉(ふくよう)の下から3番目の小葉(しょうよう)に4粒、その下の小葉に1粒。さらに、上に出た複葉の、上から数枚目の小葉の葉軸(ようじく)寄りに1粒。(複葉、小葉、葉軸、については、以下の記事などをどうぞ。)

複葉

以下に卵(と思われるもの)を拡大してみました。

2023.06.04撮影

このサンショウの木の、他の部分も見てみました。すると、卵がもう1粒上の方に、そして、葉っぱの虫に食われたようなあとがあちこちに。ということは、幼虫が住んでいるのか? あるいは、いたのか?

でも、幼虫やサナギを見つけることはできませんでした。

と、思ったんですが、

画像を見て初めて気づいたことがあります。肉眼で見たときには、なんかくっついている、程度でやり過ごしていたのですが、写真で見てみると、どう見ても、幼虫であるようにしか見えない。

先の画像をもう一度ご覧ください。

卵の複数ついた複葉の手前側の一番下の小葉に、鳥のフンみたいなものがありますね? これ、
・形(一方がやや太い)
・色(黒っぽい)
・模様(体の途中が白っぽい)
から、何齢かはわかりませんが、若齢幼虫だと思います。終齢幼虫なら、黄緑です。

以下に拡大してみます。つの、つの、っとしているのも身体中に見えます。

2023.06.04撮影

アゲハと言えば、わたしには、小学校のときの思い出があります。3年生か4年生のときのことで、先生に、校庭のどこそこにミカンの木がある、そこへ行って、おもしろいものが見つかるから、見てきなさい、と言われたんです、見つけてのお楽しみ、みたいな感じで。

それで、数人で昼休みに校庭の植え込みまで歩いて行きました。

行ってみると、緑のでっかい青虫がいる!!! みんな女の子たち(いまさらですが、「自己紹介」しますと、わたしは女性です)でしたが、大喜び。女の子はおしなべて虫嫌い、ってわけじゃないのよ。それから毎日観察に出かけました。

そのうち緑の青虫は行方不明になり(サナギになったんでしょう)、代わりに、ミカンの木に、鳥のフンみたいな、芋虫か、毛虫か、訳のわからないものがくっついていて、女の子たちは失望したものです。

先生が、幼虫は変化していく、これは新しく生まれた幼虫、卵は見つからなかったかな? と教えてくださったのですが、わたしたちは、緑のコロコロしたのを喜んで見ていたので、黒いのに白のバンドのついたのは、受け入れ難かったんです。

ただ、ナミアゲハの卵がミカンの木の葉に産みつけられ、幼虫はミカンの木の葉を食べて成長する、ということは、しっかり学習しました。

ということは、これらの卵(らしきもの)がナミアゲハの卵なら、サンショウの木は、ミカン科であることになります。そして、サンショウの木は、実際、ミカン科です。

学名 Zanthoxylum piperitum
和名 サンショウ(山椒)
別名 ハジカミ
ミカン科(Rutaceae)サンショウ属(Zanthoxylum

それで、これら、ナミアゲハの卵(と思われるもの)は、どうなったか? ナミアゲハの卵は5日〜1週間ほどで孵化するそうなんですが、何も起こりませんでした。

ただ、4粒並んでいたのが、3粒に減っていました。何らかの理由で落ちたか、あるいは、孵化して、幼虫が自分の卵の殻を食べたか、でしょうか。


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アゲハチョウ〜帰国日記4

2023年06月28日 08時00分00秒 | 昆虫、その他
2023.06.09撮影

実家の庭で庭仕事をしていると、チョウがけっこう訪れるんです。1頭のときもあるし、複数頭のときもある。

最初は、この、チョウのいる時間と空間を楽しもう、と、植物を扱う手を休めてじっとして眺めていただけだったんです。

でも、何度もやってくるので、ひょっとしたら写真に撮れる、と思って、写し始めました。

わたしが今使っているカメラは、コンパクトデジタルカメラ「ごとき」であります。レンズを取っ替えながら重みのある一眼レフを使うのが面倒くさくなって、こういう簡便なものを持ち運ぶようになりました。花の記録程度にはいいけれど、動くものはダメよ。

でも、撮影の工夫をしながら撮ってみると、同定するのに十分な画像にまで撮ることができました。それが冒頭の画像です。

このままでも同定に使えますが、念のために拡大してみます。画像が粗くなりますが、ご容赦を。

2023.06.09撮影

まず、拡大しなくても、アゲハチョウ(Papilio)というのは、わかります。そして、色調から、ナミアゲハ(Papilio xuthus)であると、絞れます。

また、拡大写真で確認してみると、羽(翅)の胸からすぐ上の部分に縦の筋が入っているので、ナミアゲハと同定していいことになります。羽を立てた状態で見えているのが、羽の裏です。

学名 Papilio xuthus
英名 Asian swallowtail「アジアのアゲハチョウ」
和名 ナミアゲハ(並揚羽)
別名 アゲハチョウ(並揚羽蝶)
別名 アゲハ(揚羽)
アゲハチョウ科(Papilionidae)アゲハチョウ属(Papilio

2023.06.09撮影

冒頭のような画像が撮れるまでに、上のような写真をいっぱい撮ったんです。これよりももっと羽が動いているのも。でも、工夫する過程で、いろいろ学習しました。学習するのは楽しいですねえ。

これで一挙に一眼レフへの回帰に弾みがついたかも・・・あくまで、かも、ですけど。(あんなものを持って国際線に乗りたくない。)

今日の記事のチョウの写真は、みんなズームを使って撮影されています。ですから、もとより、画像自体はそれほど鮮明ではないんです。花もしっかりとは写っていない。

それで、もう少しチョウの話しを進める前に、このナミアゲハがミツを吸っている植物を改めてご紹介します。オカトラノオ(Lysimachia clethroides)です。

学名 Lysimachia clethroides
英名 Gooseneck loosestrife「ガチョウの首のミソハギ」
和名 オカトラノオ(丘虎の尾)
サクラソウ科(Primulaceae)オカトラノオ属(Lysimachia


2023.06.10撮影

上のオカトラノオの画像は、花の房を真上から下を向いて撮影したものです。一番新しい花のオシベが他のと異なりますね。開いたばかりの花なんでしょう。

この個体(根がつながっているので、どこからどこまでが「個体」よ?)は、陽の当たりすぎるところに植わっている(と言うか、勝手に出っ張ってきた)ので、葉がやや黄変し、葉の縁が茶色くなっています。オカトラノオは、やや日陰の方がきれいです。

実家の庭には、このオカトラノオがたくさんあります。次のサルビア・ガラニチカもたくさんあります。別に、たくさん植えたわけではないけど。帰省するたびに増えているんですよ。

両者ともはびこってくれて、この両者の根同士がからみ合い、放っておけば、庭中この2種(とカタバミ)のお花畑になるので、「駆除」するしかなく、その「駆除」にどえらい労力と時間がかかります。

老齢の両親がそんな「駆除」作業をするわけもなく、わたしがこの前3月に帰省したときには、そういうことをしていました。指が痛くなった。根をほぐす作業をしたので。(コロナの前、2019年に帰っていたときも、同じことをしたなあ・・・)

でも、両者ともきれいな花です。サルビア・ガラニチカは色が特にきれいだし、そばを通ってちょっと着ているものが触るだけで、いい匂いが立ち込めます。

学名 Salvia guaranitica
英名 Anise-scented sage「アニスの香りのセージ」
和名 サルビア・ガラニチカ(グアラニティカ)(学名から)
和名 メドーセージ
シソ科(Lamiaceae)アキギリ属(Salvia

2023.05.26撮影

次の画像で、ナミアゲハの羽の表(羽を開いた形のときに見える側)をご覧ください。チョウの左側の羽の表が見えます。この画像では、後ろ羽のオレンジ色と青の「彩色」の部分は、はっきりと写っていません。

2023.06.09撮影

次の画像(この画像は、拡大、切り取りなので、さらに画質が下がっている)では、ナミアゲハさんのお顔もどうぞ見てあげてください。オカトラノオの房のひとつが、ちょうど頭の上に飛び出て写っているので、わかりにくい画像ですが、眼と触覚の対が見えます。口吻(こうふん)は、これかなあ、という程度までしか、この画像では判別できません。

2023.06.09撮影

明日につづきます。

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キボシカミキリ〜帰国日記3

2023年06月27日 08時00分00秒 | 昆虫、その他
2023.05.26撮影

ムシがお好きでない方が抱くかもしれないお気持ちを尊重して、冒頭の画像には、インパクトが低めかな、と思われるものを選んでみましたが、それでも強烈すぎたでしょうか。

昨日のクロウリハムシ(Aulacophora nigripennis)は、どちらかと言えば、かわいく感じてくれるかも、と思って、最初から全姿を載せましたけど、、、

冒頭の画像は、ムシが、縦向きの枝に頭を上にしてとまっているのを、上から撮影したものです。それで、枝に逆さにとまっているように見えます。

このムシは、キボシカミキリ(のはず)です。

学名 Psacothea hilaris
英名 Yellow spotted longicorn beetle(黄斑カミキリムシ)
別名 Yellow spotted longhorn beetle(黄斑カミキリムシ)
和名 キボシカミキリ
カミキリムシ科(Cerambycidae)キボシカミキリ属(Psacothea

次の画像は、同じ位置にとまっているキボシカミキリを、横から撮ったもの。身体中に黄斑が出ているのがわかります。

2023.05.26撮影

キボシカミキリは、英語版Wikipediaによると、原産は、
北朝鮮、中国、日本、
だそうです。朝鮮半島では、北朝鮮だけ? 朝鮮半島の南にはいない??? 

そして、イタリアに導入されているそうです、、、へ?

なお、日本語版Wikipediaには、キボシカミキリの記事は、今日現在では存在しません。片手落ちですね、日本に産するのに。

Psacothea hilaris(英文+画像)

キボシカミキリの黄斑(黄星「キボシ」)の出方は、地域により異なり、それ(とその他の特徴も?)が亜種としての分類につながっているもようです。(ギャハ、「もよう」なんて、ダジャレのつもりでも、ないのよ。)

上にリンクした英語版Wikipediaに挙がっている亜種の学名を見てみると、命名者が日本人であったり、また、日本の地名(宮古島、宮古、石垣島、与那国、西表)が亜種の名前としてつけられています。

お断り事項:
学名では、正式には、種名や亜種名の後に命名者の名前(姓)と命名の公表の年をつづけますが、わたしは、ゆるい、ブログ用の表記として、普段は、属名と種小名だけで済ませています。煩雑を避けるためですので、ご理解をお願いいたします。

日本「本土」では、南北(=東西)で、黄斑が違うそうな。そして、その間の地域に中間の模様を持つものがいるそうな。それなら、英語版Wikipediaに挙げられている Psacothea hilaris intermedia がその中間亜種??? intermedia というのは、「中間」という意味です。

2023.05.26撮影

あんまり撮影を続けていたら、このキボシカミキリさんに、嫌われちゃったみたい。とまっていたイチジク(Ficus)の枝から出てきました。いや〜〜、逃げないで〜〜。

このイチジクは、一度切り倒した古株から芽吹いてきたものなんです、それで丈が低いんです。前は、大人の手のひらよりも大きい実を実らせていたんです(ウソだと思われるかもしれませんが、ホントウです)。来年には実がなるかしら。

さて、このキボシカミキリさんは、イチジクから出て、そのほぼ真上に張り出してきているカキノキ(Diospyros kaki)の葉にとび移りました。これが、「飛び」だったか「跳び」だったか、しっかりとは観察できませんでした。

2023.05.26撮影

キボシカミキリの学名(Psacothea hilaris)にもどりますと、属名 Psacothea は、命名者のイギリス人昆虫学者であった Pascoe からきています。なんで Pas… が Psa… になったのか知りませんけど。

種小名の hilaris は、ギリシャ語からラテン語にとり入れられたもので、「陽気な、快活な、楽しい」という意味です。アメリカの前国務長官、前大統領候補(民主党)の「ヒラリー・クリントン」の「ヒラリー」です。

hilaris

イチジクからカキノキに移動したキボシカミキリさん、羽を使って飛び立った(のを、わたしはしっかりと見た)ので、このままどこかへ逃げてしまうのか、とガックリしていたら、わたしの後ろ側にあったブロック塀に「逃避行」しました。

慌てて振り返って撮影したら、触覚が画像に入っていなかった。

2023.05.26撮影

ついでに英名も見てみます。

yellow spotted というのは「黄斑の」→「黄星の」ということで、日本語の命名方法と同じです。yellow spotted につづく longicorn は、英語の新しい言い方では longhorn で、「長い角の、長い触覚の」。beetle は「甲虫」。longicorn/longhorn beetle とつづけて「長い触覚の甲虫」から、「カミキリムシ」。

わたしが近寄ってカメラのシャッターを切り続けるのに嫌気がさしたか、あるいは、恐れをなしたか、キボシカミキリさん、塀の上に飛び乗りました! すくっと立っています。仁王立ちじゃあ。次の画像をご覧ください。

2023.05.26撮影

そして、塀の向こう側にかけられている看板(市がこのあたりの地図を設置した)の裏にへばりつきました(次の画像)。ツルツルでないとは言えほぼ垂直の平面に静止していられるなんて、足の裏がすごいんでしょうね。頭の上の真ん中に黄色の縦線が入っているのが見えます。

触覚の節と節の間が白いです。それと、触覚、長いですね。男性だということかしら。あれ? ちょっと待って、お尻の先が左右に出っ張っていますねえ・・・ということは、性別は?

2023.05.26撮影

結局、キボシカミキリさんは、看板の裏に取りつけられている枠の下(画像内では一番上)に潜り込んで、姿を大体のところで隠してしまいました。

それで、わたしは反省しました。嫌がっている、そして、怖がっているかもしれないムシを後追いして接近しすぎたのではないか? と。あるいは、そういう解釈は、人間の感情を動物に当てはめる感傷でしかない? でも、逃げたことは事実である。

でも、そもそもキボシカミキリさんはなぜイチジクの木にいたのか。調べてみると、幼虫が、クワ、イチジク、ミカンなどの生木を食べるそうな。そして、成虫も、これらの木で、その葉を食べるそうな。ただ、それでイチジク等が枯れるわけではないので、キボシカミキリを害虫扱いするのは間違いであるそうであ〜る。

この、今日、有無を言わさず写真のモデルにならされたキボシカミキリさんは、ひょっとしたら、成虫になったばかりだったのかもしれません。そうなると、ご休憩していた、ということで、わたしは、ますます反省します。夕方に見にいくと、看板の裏からはいなくなっていました。

今日の記事のキボシカミキリについての情報は、以下の検索ページから出てくるものも利用しました。



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クロウリハムシ〜帰国日記2

2023年06月26日 08時00分00秒 | 昆虫、その他
2023.06.10撮影

これは、キキョウ(Platycodon grandiflorus)の花の下半分です。

前回3月に帰国・帰省しているときに、実家の庭にこの根を植えつけました。もちろん、両親が楽しめるように、です。母が家から出たがらないので、なるべく庭に引き出す努力の一環でもあります。

今回5月に帰省するとツボミがたくさんついていて、滞在中に咲いてくれるといいなあ、と思っていたら、6月には咲き、うれしかったです。

でも、すぐに花びらがかじられてしまいました。きっと、この2色色分けのハムシさんの仕業でしょう。現行犯までいきませんでしたが、とまっている場所が怪しすぎる。

この独特な色づかいから見て、このハムシは、次のハムシだと同定しました。

学名 Aulacophora nigripennis
英名 Pumpkin beetle「カボチャ虫」(ウリハムシ属の英名)
和名 クロウリハムシ(黒瓜葉虫)
ハムシ科(Chrysomelidae)ウリハムシ属(Aulacophora

でも、ウリハムシ属はウリ(キュウリ、カボチャ、など)類の花を食べるって・・・それが、なぜ、キキョウにへばりついている?

2023.05.25撮影

実は、最初にこのムシを見たのは、キキョウの花の上ではなく、ナデシコ属(Dianthus)の花の上なんです。このナデシコ属の花も3月に植えたもの。

このムシさんは、わたしが、カメラを取りに家に入っている間もそこにいるままだし、何度も接写しているのに、ぜんぜん逃げない。このムシは、よっぽどこの花が好きなんだな、と思いました。

と言うか、甲虫って、あんまり逃げないよね。

2023.06.09撮影

ああ、やっている、やっている。カーネーション(Dianthus caryophyllus)の花びらが4分の1なくなっている、ミニ・カーネーションですけど(これも3月に植えた)。泣、泣、、、これは、現行犯よね。

ムシを嫌う人がかなりいらっしゃるのは知っていますが、わたしは、ムシって、好きですよ〜。できるだけ、ムシとも共存していきたいです。

2023.05.26撮影

これは、先のナデシコ属の花ですが、右側の花びら(の少なくとも)1枚に穴が空いています。ムシさんは、左のツボミにとまって、おくつろぎのようです。

目が、真っ黒で、丸くて、体の大きさの割には大きめで、かわいいですね〜〜。オレンジ色がかった黄色の頭部は3段になっています。お腹も頭部とコーディネート。

ひょうきんな見かけの虫で、どちらかと言うと触りたかったのですが、この時点で、有毒かどうか知らなかったので、触るのを控えました。あとで調べたところによると、無害なようです、農作物を食う、と言うことで害虫とされますが。

さらに調べると、

ウリハムシ属は一般にウリ類の花を食べるが、

クロウリハムシは、
>> カーネーション、キキョウ、フジ、ナデシコ等
を食べるそうです。

殺虫剤のアース製薬のサイトに出ていました。

実家の庭で、キキョウ、ナデシコ、カーネーション、でダイニングされていたのは、そういうことでしたか。

わたしの接写には気を止めていないようでしたが、わたしがやりすぎたか、ついにカーネーションから飛び立ってしまいました。と言っても1メートルも飛ばないで、側のマキ(イヌマキ:Podocarpus macrophyllus)の植え込みに飛びついただけですが。そして、その後、すぐにカーネーションに帰ってきました。

2023.05.26撮影

わたしはムシと「遊んで」楽しかった〜。ムシから見たら、「もてあそばれた」になるのかもしれない。それなら、ごめんね、ハラスメントだもんね。

なお、画像中のクロウリハムシさんたちが同じ個体かどうか、はわかりません。


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ツバメ〜帰国日記1

2023年06月25日 08時00分00秒 | 
2023.06.06撮影

帰国・帰省して、そして、バンクーバーに帰宅してから、ちょっと日にちが経ったのですが、帰国中の写真から、何種類か画像をご紹介したいと思います。

実家の庭にもっと花を植えようと思って、ある日、植物を買いに出かけたんです、自転車に乗って(わたしは、実家のある町では車を運転したことがありません)。交差点のところで自転車を降りて、ふと、道端の家の軒を見ると、ツバメの子どもたちのいる巣がありました。

ああ、ツバメなんか見るのは何年ぶりだ、6月に帰国することは滅多にないからなあ、と思ったんです。

わたしが子どものころは、ツバメの季節にはツバメなんかどこにでもいて、人家や商家の軒先に飛び込んだり、そこから飛び出たり、していたものですが、今回の帰国では、この画像のツバメの子どもたちが、ツバメを見るのでは初めてでした。

でも、この時は、植物をたくさん買った場合を想定して、少しでも身軽でいようとカメラを持たずに出かけていたので、ツバメの子どもたちの写真は撮れませんでした。

それから数日後、まだ天気がもっていたので、それならもう一度植物を買いに行こう、と思い、今度はカメラを持って出かけました。まさかもう巣立ちしている? と思いながら。

例の交差点のところで自転車を降り、その人家の側まで近づくと、いました!

自転車を歩道の脇に寄せて止め(道ゆく人に不審者に思われるかな、とちらと心配しながら)、カメラを引っ張り出し、撮れるようにセッティングをし、画像の割り振りを決め、さて、シャッターを押そう、と思ったら、

そこにちょうど親鳥の1羽が帰ってきて、子どもたちが一斉に口を開けた

というが、この冒頭の画像です。

親鳥は写りこんでいませんが、画像の左手、空中で、巣に向かって「ブレーキ」をかけつつあるところです。子どもたちは、親の飛んでくるのを察して、すでに口を開けています。

2023.06.06撮影

親鳥が巣にたどり着いたところも撮影したかったのですが、ズームを使って撮影中で、もう一度続けてシャッターが切れるまでカメラが「回復」していず、それはかなわず。

結局、わたしの視点からでは、親鳥が羽を広げて巣をおおいかくすようになったので、どの子どもがどの程度食べられたのかは分かりませんでした。

シャッターが切れるようになってから撮った最初の画像が、直前の画像です。つまり、これは、ごはんを運んできた親鳥が巣を去った少し後です。

なんかね、向かって右側の子が、押しつけられてかわいそうな気がする。一番左の子が、一番スペースを陣取っているみたい。他の3羽より、毛並みではなく、羽並みが、やや、いいかな?

2023.06.06撮影

早く買い物を済ませて早くうちへ帰りたかったので、ツバメ観察は早々に切り上げて、植物屋さんへと向かいました。なぜ早くうちに帰りたかったかって? 見たい時代劇があったからですよ〜〜日本にいるときにしか見られないから〜〜

学名 Hirundo rustica
英名 Barn swallow「納屋のツバメ」
和名 ツバメ
ツバメ科(Hirundinidae)ツバメ属(Hirundo

ところで、バンクーバーで普通に見かけるツバメと、日本に来るツバメが同じ種だ、ということを、学名を調べて初めて知りました。へ〜〜。別種だと決めてかかっていたことについて、反省。ただし、種の下の分類である亜種のレベルで異なる可能性があります。

今ごろは、あのツバメの子どもたちは、巣立ったことでしょうねえ。

それにしても、巣は、親鳥たちが唾液で泥を固めて、ひとつずつ積み上げていったのよね。草を使って補強してある(できあがった巣では、ワラのように見える)。

よかったね、泥を使って巣を作っておいて。そうでないと、人間の食用にかっぱらわれたりするのよ。

つばめの巣


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オレンジもどきバイカウツギ

2023年06月24日 08時00分00秒 | アジサイ科
オレンジの花とオレンジの実
撮影者:Ellen Levy Finch
 撮影日:2004.03.23
オリジナルからの改変、なし

冒頭の画像は、「バイカウツギ」の花ではなく、オレンジの花と実です。なんで、実のなっているときに花が咲いているのか、知りませんけど。オレンジって、そういう植物なのかな??

で、なぜ「バイカウツギ」の話しをしているときにオレンジが出てくるか、と言うと・・・

「ルイスのバイカウツギ」は、英語で、Lewis’s mock-orange「ルイスのオレンジもどき」あるいは Wild mock-orange「野生のオレンジもどき」と呼ばれます。

Lewis’s「ルイスの」とつくのは、学名 Philadelphus lewisiilewisi 同じく、この花を「発見」した探検隊長のルイス(Lewis)のことです。wild「野生の」というのは、この植物が、北アメリカ大陸西部では普通に野生で見られるからです。

mock-orange「オレンジもどき」というのは、花が、甘いオレンジの花のような匂いであることを形容したものです。

ここで、はた、と思ったのは、英語圏で、みかんのことを Satsuma と呼ぶんですよね。温州みかん(Citrus unshiu)のことですけど。鹿児島県薩摩地方からアメリカに移入されたミカンが、Satsuma と呼ばれた。ここまでは、事実です。

ここからは、妄想。ミカンやオレンジの花のようないい匂いが、Satsuma という表現を想起させた。そして、それが、「日本のバイカウツギ」の学名 Philadelphus satsumi に使われた。

これは、まったく時代考証のなされていない、素人の戯言です。どうか、お忘れになってください。

2022.06.24撮影

わたしがカナダ、バンクーバーに移住して初めての初夏に、この白い花があちこちで咲き出しました。庭に植えてあるおうちも多いし、なんでもないところに生えている。

それで、周りのカナダ人の友だちに聞きましたよ、あれはなんだ、と。すると、あんなもの特別じゃない、どこにでもある、って。そう言って、まともに取り合ってくれなかったんです。

数年後、根掘り葉掘り聞いて、「なんであんなもんに興味があるんや」と言われつつ、やっと名前を探り出しました。それが、Mock-orange「オレンジもどき」という名前。その名前に、なるほど〜〜、と思いました。

そして、庭の自由に作れる家に移ったら、すぐに手に入れよう、と思いました。

そして、迎えたのが、この、ずっと画像をお見せしている園芸種。と言っても、野生のとどう違うのか、わからないぐらいですけど。

2022.06.24撮影

うちの庭の、園芸種の「ルイスのバイカウツギ」は、その名前を ‘Blzzard’「ブリザード(大風雪、大吹雪)」といいます。白い花がびっしりと木をおおう様子を「大吹雪」と言ったのでしょう。

うちのバイカウツギは、朝しか日が当たりません。それでも花はまあまあよくつきます。調べてみると、午前中だけ日が当たるのでいいことがわかりました。よかった。でも、もう少し当たった方がいいのだろうと思います。

その朝の光にあたった様子が次の画像です。オシベが多いのが、光との対比で、よく見えます。

2022.06.25撮影

わたしは、実は、このバイカウツギの剪定には苦労しています。徒長枝と変な方向に伸びている枝と古い枝は除くのですが、どうもうまく姿をまとめられない・・・

花がたくさん咲いているときにも、ちょっと切ります。水揚げをしないので、半日ほど家の中で匂いと姿を楽しむだけですけど。

2021.06.09撮影

上の画像は、ツボミがふっくらしたところ。

次の画像は、枝先の花が一斉に咲いているところ。なんかの生物が写り込んでいるのですが、見えますか。

2021.06.15撮影

「ルイスのバイカウツギ」は、アメリカ、アイダホ州の州花です。北アメリカ大陸西部では、野生で生えていますから、その州にもたくさんあるのでしょう。

アイダホ州

日本のバイカウツギ(Philadelphus satsumi)、および、他のバイカウツギ属(Philadelphus)の種について、以下で説明が見られます。よろしければ、どうぞ。

バイカウツギ 梅花空木


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ルイスのバイカウツギ

2023年06月23日 08時00分00秒 | アジサイ科
2022.06.15撮影

日本からバンクーバーに帰ってきたら、自宅の庭にこのバイカウツギ属(Philadelphus)の花が咲いていました。と言うか、盛りがやや過ぎてしまっていました。そんな状態でも、甘くて、たいへんいい香り。画像だけでなく、匂いもお届けしたいくらいです。

上の画像には、アリさんか何かも写りこんでいます。

学名 Philadelphus lewisii「ルイスのバイカウツギ」 
英名 Lewis’s mock-orange「ルイスのオレンジもどき」
別名 Wild mock-orange「野生のオレンジもどき」
和名 ないもよう
アジサイ科(Hydrangeaceae)バイカウツギ属(Philadelphus
原産 北アメリカ西部

この植物に和名はないもようなので、学名 Philadelphus lewisii から、ここでは「ルイスのバイカウツギ」と呼んでおきます。

2013.06.12撮影

「ルイスのバイカウツギ」と「日本のバイカウツギ」は、見た目に大きな違いはありませんが、別種です。

今日の記事に、日本のバイカウツギの画像は掲載されていません。姿をお確かめになりたい方は、以下のWikipediaの記事などでどうぞ。

バイカウツギ

学名 Philadelphus satsumi
和名 バイカウツギ(梅花空木)
日本固有種

「日本のバイカウツギ」は、学名を、Philadelphus satsumi といいますが、satsumi というのは、「薩摩の」という意味でしょうか。地名から来た種小名に -i がつくことはなかったと思うのだけど、わたしの勘違い? ・・・この satsumi は人名「薩摩」?? でも、地名と取る方が自然なような・・・

植物学名の性・・・語尾による性別の判断

2021.06.09撮影

「日本のバイカウツギ」Philadelphus satsumi「ルイスのバイカウツギ」Philadelphus lewisii、の「姓」の方(=属名)Philadelphus は、「兄弟姉妹を愛する、愛している」という意味です。でも、なぜこれがバイカウツギの属名に? 

Philadelphus (disambiguation) (英文)

一説には、Philadelphus(バイカウツギ)は、エジプトのファラオ、プトレマイオス2世に因んだ命名だそうです。この王は、母親が同じ姉を妻としたために、「兄弟姉妹を愛する」という意味の Philadelphos「ピラデルポス」という異名を与えられています。

でも、この説は、信じがたい。なぜなら、バイカウツギ属の分布は
・北アメリカ
・中央アメリカ
・アジア
および、
原産ではなく、18世紀終わりまでに、日本から移入され、帰化したもようの
南東ヨーロッパ(全域ではなく)
であって、エジプトには産しないからです。

Philadelphus(英文+画像)

2022.06.18撮影

では、学名 Philadelphus lewisii の「名」の方(=種小名)lewisii はどうでしょうか。種小名の最後に -ii がついていたら、その前の部分は人の名前です。つまり、lewis は人名なのです。

実際、「ルイスのバイカウツギ」は、「ルイス・クラーク探検隊(発見隊)」によって、白人によっては初めて採集されたのだそうです。なんでも白人が「初めて」見たら、「発見」ですからね。アメリカ大陸発見、みたいに。

200年ちょっと前、ルイス(Lewis)とクラーク(Clark)によって率いられた白人の一隊が、北アメリカ大陸東部から、北アメリカ大陸中部を通り、北アメリカ大陸西部に探検に行ったんだとさ。すると、今まで見たことないもの、いっぱい見つけた。発見に発見が続いた。

お、この白い、いい匂いの花はなんだ。オレンジの花みたいな香りがするなあ。ほんと、いい匂いだなあ〜〜

と、その植物も、
>> 全178種に及ぶ植物
のひとつになったのであります。

ということで、この北アメリカ大陸西部で「発見」されたバイカウツギは、「発見隊」の隊長の名前を取って「ルイスのバイカウツギ」と名づけられました。

ルイス・クラーク探検隊

明日につづく。


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ウェールズのケシ 3

2023年06月22日 08時00分00秒 | ケシ科
2023.05.09撮影

改めてご紹介します。

学名 Papaver cambricum「ウェールズのケシ」
英名 Welsh poppy「ウェルシュ・ポピー」
和名 メコノプシス・カンブリカ(旧学名から)
ケシ科(Papaveraceae)ケシ属(Papaver

バンクーバーでは、「ウェールズのケシ」は、だれが植えるともなく、庭づくりをしているお家の庭には、どこにでも出てきます。

たいへんきれいなんですが、あまりにも増えるので、タネができる前に終わった花を摘むことになります。これを怠っているととんでもないことに。

でも、4月の終わり、5月、6月初め、と咲き続けてくれるので、ありがたい存在です。

2023.04.29撮影

この閉じたツボミの状態の個体が、花びらを覗かせるようになるのに、3週間ほどかかりました。それが冒頭の画像。まだ、10℃出るか出ないかの時でしたからね、このころは。

15℃〜20℃に上がると、この期間は短くなるのだろうと思います。

ちょっと葉もご覧ください。

2023.05.11撮影

柔らかできれいな緑です。

ブログ上の画像ではあまり拡大されていませんからわかりにくいですが、コンピュータの大きいモニタ上で見てみると、葉の表面に白っぽい点々が出ています。何か特別な働きをするのでしょうか。

それにしても、この「ウェールズのケシ」の葉は、他のケシ属の種の葉と全然似ていない・・・

次の画像の植物は、わたしの実家の庭で育っていたケシ(Papaver somniferum)です。日本語で「ケシ」とだけ言えば、このアヘンを取るケシ属の植物を指すのではないでしょうか。それではややこしいので、種小名から「ソムニフェルム種」とも呼ぶそうですが。

さて、この、実家の庭できれいに咲いていたケシ、警察の手入れにあい(いえ、女警さんが、写真つきの説明書を持って、優しいお声で「指導」に来られたそうです)、翌日までに抜いてしまうように、と命令が出たんですって。

その前後、わたしの実家だけでなく、あちらでも、こちらでも、ご近所、みんな「指導」を受けたそうです。

2014.05.25撮影

「ウェールズのケシ」(Papaver cambricum)は、「ソムニフェルム種」(Papaver somniferum)などの他のケシ属(Papaver)と、葉の見かけもかなり違う、「子房〜花柱〜柱頭」の作りも違う。それならケシ属じゃないだろう、だから、メコノプシス属(Meconopsis)「ケシのような属」として分離しよう、という、そういう人間の知覚に基づく判断を押さえ、分子系統学的研究により、「ソムニフェルム種」と同じくケシ属Papaverに再び配属されました。

2022.06.06撮影

さて、これで困ったことが起きた。

なぜなら、そもそも、メコノプシス属は、「ウェールズのケシ」をケシ属から独立させるために創設された新しい属でした。そのため、「ウェールズのケシ」がメコノプシス属の模式種となっていたのです。

模式種

模式種とは、まあ言えば、その属の、人間の家で言えば、戸籍筆頭者、戸主、あるいは、組織で言えば、筆頭者、代表者、みたいなものです。その筆頭種が属から引き抜かれてしまったのですから、メコノプシス属は、模式種なし、つまり、主なしの、「仮の属」となってしまいました。(属になぜ模式種がなくてはならないか、というのは、ここではナシね。)

これを正すために、どうするか。わたしのような素人は簡単だと思うのですが、学者さんたちはこれをするのに5〜6年かかったんです。

2023.05.09撮影

メコノプシス属を廃してメコノプシス属に入っていた残りの種を他の属に再配分するか、もっと簡単に、メコノプシス属を温存して、メコノプシス属の残りの種のひとつを模式種に認めればいいだけですよね。素人はわかっちゃいねえよ、って? ごもっとも。

でも、結局、後者の方法が取られ、Meconopsis regiaメコノプシス属の模式種となりました。いわゆる「ヒマラヤの青いケシ」のひとつです。

Meconopsis (Himalayan Poppy)

2013.05.07撮影

わたしは、「ヒマラヤの青いケシ」(どの種であったかの記録、なし)を育てたことがあります。数年うまく咲いてくれたんですよ。眺めるたびに、感動で、ぼ〜〜っとしていました。でも、周りの木々の成長につれ、環境が変わって、やはり失ってしまいました。

それで、写真も撮らなかったなあ、残念だったなあ、と思っていたんですが、自宅のではなく、ブリティッシュ・コロンビア大学の植物園で撮影した、他種の「ヒマラヤの青いケシ」の写真が見つかりました。それが、直前の画像で、Meconopsis grandis「大きいメコノプシス」です。

どうか色をお楽しみくださいませ。


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ウェールズのケシ 2

2023年06月21日 08時00分00秒 | ケシ科
2023.05.05撮影

今日は、昨日のつづきです。「ウェールズのケシ」について。

このケシの学名は、Papaver cambricum(パパベール・カンブリクム)から出発して、Meconopsis cambrica(メコノプシス・カンブリカ)となり、再び、Papaver cambricum(パパベール・カンブリクム)にもどりました。

その経緯は、次のようになります。

Papaver cambricum(英文+画像)

リンネの分類(1753年)
「ウェールズのケシ」は、最初、ケシ属(Papaver)に入れられ、Papaver cambricum(パパベール・カンブリクム)「ウェールズのケシ」と命名された。
* ケシ属の花のメシベには、花柱がないのが特徴である

柱頭(ちゅうとう)、花柱(かちゅう)、子房(しぼう)
受精(じゅせい)、生殖細胞(せいしょくさいぼう)

ケシ属のメシベに花柱のない様子を、次の画像でご覧ください。この花は、種(しゅ)まではわかりませんが、ケシ属であることには間違いありません。

花の中央に、大きな、やや平べったい子房があります。そして、その子房を、てっぺんから網を下ろしたようにおおうものがあります。それが柱頭です。明らかに花柱は存在しません。花の根本に直にへばりついているのですから。

Papaver(ケシ)
撮影者:Paulparadis
撮影日:2019.06.28
オリジナルからの改変、なし

フランス人植物学者ヴィギエによる再分類(1814年)
「ウェールズのケシ」は、花柱に関して他のケシ属(Papaver)の花とは特徴が異なる、ということで、ケシ属から離され、新たな属、メコノプシス属(Meconopsis)が作られ、その属に入れられた。そして、それだけでなく、その属の模式種(すなわち、「筆頭種」)となった
* その異なる特徴とは、メシベに花柱があることである

模式種

次の「ウェールズのケシ」の画像をご覧ください。

花の中央の五裂しているものが柱頭、その下に見えるふくれたものが子房です。それで、花柱はどこにあるか、というと、すみません、画像でははっきりとは見えないんです。でも、柱頭が、直前のケシ属の花のように、子房をボウシのようにおおっているのでないことは、わかります。ですから、花柱が短くても存在する、ということなのでしょう。


2023.05.11撮影

花柱の確認できる「ウェールズのケシ」の画像をインターネット上で見つけました。著作権がついていますので、リンクをつけるだけにしておきます。

Papaver cambricum (Welsh Poppy)

メコノプシス属の創設
新たな属は、Meconopsis(メコノプシス属)「ケシのような属」と命名された
* Mecon-「ケシ」、-opsis「〜のような」、Meconopsis「ケシのような」

Meconopsis(英文+画像)

「ウェーズルのケシ」の名称変更
リンネ命名の Papaver cambricum(パパベール・カンブリクム)の Papaver(パパベール)が、新しい属名 Meconopsis(メコノプシス)に変えられ、種小名はそのままで(ただし、中性形の cambricum から、女性形のcambrica に屈折変化させられて)、属名、種小名、合わせて、Meconopsis cambrica(メコノプシス・カンブリカ)となった。

日本語でこのケシをメコノプシス・カンブリカと呼ぶのは、この学名 Meconopsis cambrica によります。

ヒマラヤ山中で、メコノプシス属
撮影者:Manas Badge
撮影日:2015.07.28
オリジナルからの改変、なし

メコノプシス属の他の種
新設のメコノプシス属には、ヒマラヤ地域で「発見」されたケシの類が、分類されるようになった。「ヒマラヤのケシ」といえば、「青いケシ」として知られるが、すべてが青いわけではない。
* メコノプシス属の花には、メシベに花柱があるのが特徴である

上の画像をご覧ください。

このメコノプシス属の「青いケシ」には、子房(花の中央のふくらんだところ)の上にはっきりと花柱があって、その先が柱頭になっています。

もっと青い「ヒマラヤの青いケシ」の例をどうぞ。これにも、花柱が見えます。

青いケシ
撮影者:Magnus Hagdorn
撮影日:2018.05.19
オリジナルからの改変、なし

分子系統学的研究による再分類(2011年〜2017年)
「ウェールズのケシ」が、「ヒマラヤの青いケシ」等のメコノプシス属の各種とは親戚関係にない、ということが、分子系統学的研究により証明され(2011年)、ケシ属への再編入が決定された(2017年)。

そして、結果的に
Papaver cambricum 転じ、Meconopsis cambrica
Meconopsis cambrica 転じ、Papaver cambricum
今さらなので、慣例上、Meconopsis cambrica と呼ぶこともある・・・

メコノプシス属に分類される各種は、ヒマラヤ地域を含むアジアの原産です。そこへ、1種だけ、ヨーロッパ産の「ウェールズのケシ」を入れておくのは、やはり、無理がありました。

一方、「ウェールズのケシ」を再編入したケシ属は、もっと広い地域に産します。その分布地は、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、北アメリカ。

明日につづく。


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