カラスといちごとクロッカスと

身の回りの鳥や小動物、庭の花や畑の野菜など、日々日々、季節季節の情報を、
個人の目をとおしてお届けします。

スカブラ・スミレ

2024年05月31日 08時00分00秒 | スミレ科
2023.04.14撮影

今日は、わたしのお庭から、もうひとつスミレをご紹介します。ひとつめとふたつめの記事は、

    
「ラブラドール」 「リヴィヌス」  (今日のスミレ)

冒頭画像と上では右端のが、そのみっつめのスミレです。「ラブラドールのスミレ」と「リヴィヌスのスミレ」とは、趣が異なりますね? 花びらの開き具合、ボカシ、また、紫条がほぼないこと。

学名 Viola × scabraViola hirta × Viola odorata
英名(不明)
和名(不明)

今日のスミレは、英名も和名も不明なので、学名から、暫定的に「スカブラ・スミレ」と呼んでおきます。

このスカブラ・スミレは、ヨーロッパの、主に温帯地域が原産です。

自然交雑種で、Viola hirta(和名:不明)と Viola odorata(ニオイスミレ)を親種とします。交雑種であることは、学名に「×」で反映されています。Viola hirta と Viola odorata の姿は、次のリンク先で見られます。写真がたくさん掲載されています。



2023.04.10撮影

スカブラ・スミレ学名の Viola × scabra についている種小名 scabra は、属名の Viola を修飾する形容詞です。scabra は scabro の女性形(scabro は男性形です、つまり、男性形が基本形と扱われます)

scabro の意味は、Wiktionary によると、
1. rough, coarse, uneven(粗雑な、粗野な、一様でない、でこぼこの)
2. concise, terse(簡潔な、そっけない)

でも、なぜ、そんな意味の形容詞が? 考えられる理由は3つあります。

このスミレの
・花は、「ぱっちり」と咲かない
葉は、表面にでこぼこがある
葉は、縁取りが、ギザギザではなく、丸く段々となっている


2023.04.14撮影

さらに、距(花の後ろに突き出た筒のようなもの)をご覧ください。「ラブラドール」と「リヴィヌス」は、距が白いです。でも、「スカブラ」(とその親種2種も)の距は、白くありません。

でも、「ラブラドール」「リヴィヌス」「スカブラ」と、スカブラ親種2種には、スミレの分類上の共通点があります。
・有茎種(葉柄が直接地上から出ない)
・惻弁有毛(両側に開く花弁にブラシのような毛がついている)

スミレの分類(これは、前にもリンクしました)

2023.04.10撮影

上の画像でも、葉の表面がでこぼこなのが見えます。距が白くないのも見えます。

でも、ここでは、右側の花をご覧ください。花の中央にオレンジ色のものが見えますね。そこから突き出している白っぽいものが、メシベです。そして、オレンジ色のものは何かというと、オシベにくっついている「付属体」。

「付属体」って、なんや? 前から気になっていた。それで調べてみると、
>> 特に名前をつけるほどではないもの
につけられた名称だとか。ほんまかいや。

植物用語事典

それでは、改めて、上の画像と冒頭画像で、花の微妙な色合いとボカシ具合いをお楽しみください。次の画像でも、そのボカシがきれいに入っています。また、オレンジ色の「付属体」も見えます。


2023.04.14撮影

実は、「スカブラ・スミレ」の色は、このような色ばかりではないようです(親種にも色の幅があるように?)。「スカブラ・スミレ」の写真を次のリンク先で見ることができます。そこでは、唇弁に紫条が少し出ている個体も挙がっています。



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リヴィヌスのスミレ

2024年05月29日 08時00分00秒 | スミレ科
2022.05.13撮影(Viola riviniana

わたしの庭には、3種のスミレが長い間住んでいます。そのうちの1種、「ラブラドールのスミレ」、を前回ご紹介しました。原産地は、グリーンランドからカナダのラブラドールを経、アメリカの東部にかけた地域です。

今日は、冒頭画像のスミレをご紹介します。

学名 Viola riviniana 
英名 Common dog-violet
別名 Dog violet
和名 ヴィオラ・リヴィニアナ(学名から)

種小名の riviniana は、某ドイツ人植物学者への献名です。その人の名前をラテン語化したもの Rivinus を、さらに形容詞形 riviniana にしてあります。種小名は、必ず、形容詞で、属名とともに斜字体で書かれます。

今日のスミレは、前回の「ラブラドールのスミレ」という呼び方にならって、「リヴィヌスのスミレ」と呼ぶことにします。

「リヴィヌスのスミレ」の原産地は、文献によってやや異なるので、広めにとって、北西アフリカ〜ヨーロッパ〜西アジア、としておきます。

 
2024.04.30撮影Viola labradorica)     2024.04.30撮影Viola riviniana

左上の画像が「ラブラドールのスミレ」右上の画像と冒頭画像が「リヴィヌスのスミレ」です。花だけを見れば、「ラブラドールのスミレ」と「リヴィヌスのスミレ」は、色違いなだけじゃ? と思うぐらいですね。両者とも、側弁有毛だし、紫条も同じようだ。

リヴィヌスのスミレ」の画像をあちこちで見比べてみると、青紫〜赤紫〜ピンクのように色の幅があります。その第一の理由は、撮影条件の違いだとは思いますが、 Viola riviniana ‘Rosea’「バラ色の=ピンクの」という園芸種があり、他にも色の異なる園芸種があるのかもしれません。

それなら、「ラブラドールのスミレ」と「リヴィヌスのスミレ」を色で区別するのは、慎重にしなくてはなりません。

 
2024.05.03撮影Viola labradorica     2022.05.02撮影Viola riviniana

距(きょ)もご覧ください。花の後ろに突き出た、終わりが閉鎖された筒のようなものです。「ラブラドールのスミレ」も「リヴィヌスのスミレ」も、距は白いです。ますます異なるところはないような・・・

実は、「ラブラドールのスミレ」と「リヴィヌスのスミレ」は、あちこちで混同されています。インターネット上の記事を見ると、行けども行けども、そのような記事に出会います。あまりにひどいので、リンクしません。

「ラブラドールのスミレ」を「リヴィヌスのスミレ」と呼んでいる場合
「ラブラドールのスミレ」は青紫っぽく、「リヴィヌスのスミレ」は赤っぽいです。青紫のものを赤紫のものの名前で呼ぶので、ご丁寧に、Viola riviniana 'Purpurea'「紫のリヴィヌスのスミレ」とまで色を指定している場合があります。

「リヴィヌスのスミレ」を「ラブラドールのスミレ」と呼んでいる場合
でも、園芸店へ行くと、たいていは、反対なんです。「リヴィヌスのスミレ」を「ラブラドールのスミレ」と呼んで売っています。なぜ? 「リヴィヌス」という訳のわからない名称より、「ラブラドール」の方が、馴染みやすい? 夢がある? ロマンチック???

なぜこんなに混同される? 単に、花がそっくりだから?

姿が先なのか、名称が先なのか、わからないのですが、なんと、「ラブラドールのスミレ」も「リヴィヌスのスミレ」も(そして、他の数種のスミレも)、英語では、Dog violet「イヌ・スミレ」と呼ばれるんです!!!

大体、英語でも日本語でも、「役に立たない、有用でない、取るに足りない、ニセモノの」植物を「イヌ」と冠して命名する傾向にあり、なぜこのようなかわいい花が「イヌ」???


 
2024.04.29撮影Viola labradorica     2023.05.21撮影Viola riviniana

決定的に違うところを見てみます。葉です。

「ラブラドールのスミレ」の葉は「黒い」です。でも、「リヴィヌスのスミレ」の葉は、きれいなみどり。(なお、左上の画像中、ふちがギザギザの大きい葉は、ヘレボルス・アルグティフォリウス Helleborus argutifolius のものです。)

ですから、葉っぱがみどりの「リヴィヌスのスミレ」を、葉っぱが黒い「ラブラドールのスミレ」と偽って売れる理由がわからない。つまり、「ラブラドールのスミレ」の葉は黒い、ということを隠しているということだ。いやあ、その黒い葉が魅力なのだが。

 
2022.04.20撮影Viola labradorica     2021.04.18撮影Viola riviniana

文句たらたらで失礼いたしました。


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ラブラドールのスミレ

2024年05月27日 08時00分00秒 | スミレ科

2024.04.30撮影

わたしの庭には、スミレが3種類あります。ひとしきり咲いて、どれも花は終わりました。

今日は、その3種うちの1種、「ラブラドールのスミレ」をどうぞ。日本では手に入りにくい種類かもしれません。

「ラブラドールのスミレ」は、原産が
・グリーンランド
・東部カナダ(ラブラドールを含む)
・東部アメリカ合衆国
です。

この「ラブラドール」というのは、人気の犬種のひとつ、「ラブラドール・レトリーバー」の「ラブラドール」です。(「レトリバー」とも呼ばれるみたいですが、英語的には、「レトリーバー」でないとおかしい。)


学名 Viola labradorica
英名 Labrador violet
別名 Dog violet
和名 黒葉スミレ
スミレ科(Violaceae)スミレ属(Viola

「ラブラドールのスミレ」の特徴は、葉の色が黒っぽい(紫色っぽい、赤っぽい)ことです。和名はその特徴に基づき「黒葉スミレ」。

2022.04.20撮影

スミレは、花弁が5枚あり、
・上の2枚を上弁
・左右の2枚を側弁
・下の1枚を唇弁(または、下弁)
といいます。


スミレには、側弁の基部に、歯ブラシのような毛がついている(側弁有毛)のと、ついていない(側弁無毛)のとがあります。「ラブラドールのスミレ」は、有毛です。有毛か無毛か、でスミレを分類することができます。


2024.05.03撮影

唇弁(下弁)には、後ろに突き出した距(きょ)があります。上の画像は、「ラブラドールのスミレ」を横から撮影したもので、花柄の下側に突き出している白い筒のようなものが、距です。

距の中は中空で、そこに蜜がたまっているそうです。本当に蜜が入っているかどうか調べたいのですが、花をいためるか、と思うと、踏み切れない。


2022.04.20撮影(周りの植物は、ヘレボルス・アルグティフォリウス)

スミレの花弁には、典型的に紫の筋(条)が入ります。種類によっては、大変薄い色にもなりますが。この紫色の筋は、スミレ専用である(とわたしが理解している)用語を使って、「紫条(しじょう)」と呼ばれます。「ラブラドールのスミレ」には、かなり濃い紫色の紫条が出ます。

紫条は、蜜を求めてやってくる虫たちに、蜜のありかを教える役を果たすそうです。唇弁(下弁)に、他の花弁よりも多くのはっきりした紫条がつくのは、まずは唇弁(下弁)に着地して、そこから紫条に従ってお進みください、ということでしょうか。

2024.05.04撮影

この黄緑のものは、タネのサヤです(上の画像)。これが成熟すると茶色くなり、3裂して、中からほぼまん丸の茶色のタネが飛び出します(画像なし)。

スミレは、タネのでき方がふたつあります。
1。花が開花し、虫に媒介されて受粉した結果
2。花が開花せず、閉鎖花のままで、自家受粉した結果

上の画像のタネのサヤは、季節的に見て、開花した花のものだと思われます。

2024.04.29撮影

スミレは、側弁の基部に毛があるかないかで分類される他に、地上に茎があるかないかでも分類することができます。

日本で一般に(そして、正式名が)「スミレ」と呼ばれる Viola mandshurica は、地上に茎を出さずに葉が直接根本から立ち上がります(無茎種)が、「ラブラドールのスミレ」は、地上に茎を出して、その茎に葉をつけます(有茎種)。また、有茎種は、節目から根を発達させて(上の画像の茎についたヒゲのようなもの)、はって広がっていくことができます。


2024.05.03撮影

わたしの「ラブラドールのスミレ」は、大方が日陰に近いところで育っています(上の画像)が、日向で育っている(下の画像)は、花の花柄が長めの傾向があります。でも、他の植物の緑の葉っぱの間から顔を出している「ラブラドールのスミレ」の葉(数枚ですが)は、やはり、黒っぽいです。


2024.04.29撮影


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