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花を愛でるはずが、怒江まで行く

2022年12月18日 08時00分00秒 | ツバキ科
Camellia x williamsii 'Roger Hall’
Focus stack of 11 photos
撮影者:Agnes Monkelbaan
撮影日:2021.04.20
オリジナルからの改変、なし

今日は、クイズから始めま〜す。

この花は、何でしょう。

1.バラ
2.ツバキ
3.ボタン

園芸がお好きな方、葉っぱをジトっと観察された方、画像につけた説明の学名をチラ見された方、には、すぐにバレたかもしれませんが、答えは、2のツバキです。

もっと正確には、ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia)のウィリアムシーツバキ(Camellia × williamsii)、そして、そのツバキの園芸種で、‘Roger Hall’「ロジャー・ホール」と呼ばれるものです。

和名 ウィリアムシーツバキ「ロジャー・ホール」
学名 Camellia × williamsii ‘Roger Hall’
英名 Camellia williamsii ‘Roger Hall’(など、類似名、多数)
ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia

Camellia × williamsii(英文+画像)

ウィリアムシーツバキは、サルウィンツバキ(Camellia saluenensis)とヤブツバキ(Camellia japonica)をかけ合わせて生み出された交配種です。

サルウィンツバキ(Camellia saluenensis)の花の様子の例は、以下でご覧ください。何とも言えない花色です。でも、個体により色の濃さの差は大きいのだそうです。

サルウィンツバキ

草本図譜
ツバキ属の交配種

ウィリアムシーツバキの例は、以下。園芸種名は、書かれていないので分かりませんが、サルウィンツバキと同様に、独特の花色を表しています。

ウイリアムシー

ウィリアムシーツバキの園芸種のほとんどが、花びらが半透明で、透き通るような感じなのだそうです。もうひとつ例をどうぞ。これは、'Citation'「サイテーション」という園芸種です。

Camellia × williamsii 'Citation'
撮影者:A. Barra
撮影日:2007.03.
オリジナルから、改変なし

ウィリアムシーツバキは、イギリス人の John Charles Williams(ジョン・チャールズ・ウィリアムズ)によって作り出されました。創作者の名前 Williams をラテン語風に変形して williamsii とし、Camellia × williamsii と呼ばれます。

「×」という表記は、交配種である、という印です。(でも、Camellia × williamsii は、Camelliawilliamsii をかけ合わせた、という意味ではありません。)

「W」という文字は、ラテン語を表すラテン文字(ローマ字)には本来はありませんでした。でも、外国語の固有名詞に由来する語をラテン語である学名に使用するときには、必要に応じ、使います。発音は、その元の外国語における読み方に従います。

ドイツ語の例:welchi「ヴェルヒ」
英語の例:williamsii「ウィリアムズィイ」

(細かいことを言えば、「ウィリアムシー」ではなく「ウィリアムズィイ」のはず。「ウィリアムズ」の「ズ」から来ているので。)

サルウィンツバキは、中国名を「怒江山茶」といい、「怒江」は川の名前、「山茶」は日本語の「ツバキ」に当たり言葉です(サザンカは中国語では「茶梅」)。

怒江山茶

怒江山茶は
> 是中国的特有植物。分布于中国大陆的云南等地
と書いてありました。

「これ(=怒江山茶)は中国固有の植物である。分布は、中国大陸の雲南、等である」という意味だと思います。

「怒江山茶」という命名から、サルウィンツバキが、怒江辺りの原産、あるいは、固有、なのだろうな(地名が必ずしも原産地、固有地、を表すわけではないが)、とは思いましたが、怒江なんてのは、高校の地理の時間に習わなかったよ。

怒江山茶は、中国の雲南が原産、ということなので、この川は雲南にあるのかな。

それで、調べてみると、日本語では「サルウィン川」と呼ぶ、と分かりました。種小名の saluenensis は、ここから来ているのね。そして、これが日本語の「サルウィンツバキ」の「サルウィン」なのね。

Wikipediaの記事によると、サルウィン川は
> チベットを源流とし、中国雲南省を流れ、ミャンマー北東部のシャン台地にあるカヤー州・カレン州を南下してアンダマン海北端部のマルタバン湾へと注ぐ国際河川である。一部ミャンマーとタイの国境を成す。長さは2815 kmにおよぶ。

サルウィン川

この同じ川「怒江」を、Wikipediaの中華人民共和国版で見てみると、
> 國家 中华人民共和国
としか書いていない、地図では明らかにミャンマー領内も流れているのに・・・

怒江(中国語+画像+地図)

「怒江」なんて名前だから、流れが激しいのかなあ、とか、舟を引きずり込むほどの渦巻きがあるのかなあ、とか、考えたのですが、わからずじまいでした。「怒江(ヌー川)」の両岸には「ヌー族(怒族)」が住む、というのは、分かりましたけど。(そう言えば、昔に、「怒族」って何? と調べたことがあったのを思い出しました。)

サルウィン川の流れる中国の雲南と言えば、植物が豊富なところで知られていますよね。そのことについて、Wikipediaの「サルウィン川」から引用しておきます。

> 流域には7千種を超える植物と、80種の希少種および絶滅危惧種の動物と魚が暮らす。ユネスコはサルウィン川の流域を「世界で最も多様性に富む温帯の生態系かもしれない」とし、2003年に、上流域を世界遺産に登録した。

実は、ひとつ、お詫びがあります。冒頭の画像についてです。

この花が、なんか、不自然に美しかった、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。この画像には、撮影者自身の施した加工が加わっています。複数の画像を重ね合わせて、各種調整がなされています。でも、この画像に見える花の姿は、自然の姿とあまり変わりません。画像として美しくなっているだけです。

よろしければ、念のために、次のサイトなどで、Camellia × williamsii ‘Roger Hall’ のより自然な姿をお確かめください。以下のサイトでは、大きい画像の下にある小さい画像は、クリックすると拡大します。

Camellia ‘Roger Hall’(英文+画像)

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