カラスといちごとクロッカスと

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個人の目をとおしてお届けします。

御美衣(おみごろも)でしょうか

2024年02月14日 08時00分00秒 | ツバキ科

2023.12.16撮影(日本に出立前

日本からバンクーバーにもどってくる時、羽田空港で国際線に乗って、わたしは、早速、ヘッドホンを耳に当てて、お目当ての映画を見始めました。なぜなら、日本行きの便で3本目に見たその映画が、時間切れになり最後まで見られなかったのです。題して『レジェンド&バタフライ』(木村拓哉、綾瀬はるか、主演)。


出発後1時間ほどして、機長のアナウンスが・・・「現地バンクーバーの気温は、現在、マイナス12℃」え? わたしはその場で凍りつきましたよ。ヘッドホンで耳がおおわれていたので、他の乗客の反応は聞こえませんでしたが。

2023.12.16撮影日本に出立前

飛行機を降りる直前に、わたしのジャケットを物入れから取り出してくれた客室乗務員さんが、「このジャケットじゃ、寒いんじゃ?」と心配してくれました。わたし「日本ではこれくらいのがいいのじゃないか、とこのジャケットを選んだんですが、マイナス12℃には寒いと思います。でも、すぐ、迎えの車に乗り込みますから、大丈夫です。」(なんて言っておいて、空港の建物を出た途端に震えた。チメタかったわ。その時点では、マイナス10℃だったそうです。)

乗務員さんは、つづけて、「植物が寒さでやられているんじゃ?」と。その疑問に対し、わたしは、偉そうに、堂々と、「いえ、植物は大丈夫なんです。」そのわたしの答えに納得して、乗務員さんは、「ああ、植物はこちらのもので、こちらの気候に慣れている、ということですね。」そして、わたしが答えましたよ「そうなんです。」(と、表を張って言いながらも、実は、内心、心配であった。)

2023.12.16撮影日本に出立前

ここまでの画像3枚と次の画像(合計4枚)は、わたしが12月半ばに日本に出立する前にわたしの庭で咲いていた、サザンカの花です。今季は気温が穏やかなせいで、10月末からずっと咲いていました。日本に出立前の時点で、このサザンカを1ヶ月半楽しんでいました。

この木には、2〜3年前からツボミが多くつくようになりました。でも、例年は、今季のように早く咲かず、ツボミが開く前に気温が下がり、さらに雪が降るとツボミがくさってしまう、つまり、ツボミが開くまで生きていないので、咲いた花は滅多に多く見られないのです・・・ぐすん

それで、その対策をどうするか、というのを書いた(そして、何度かリンクした)のが、次の記事です。

サザンカのツボミ

帰国する前、ヒヤヒヤものでしたよ。こんなに咲いているのに、また、こんなにまだまだツボミがついているのに、わたしの留守中どうなるか? と。もし雪が降って、降るだけでなく枝の上に積もれば、そして、積もっている時間が長くなれば、咲いている花はどうなるのか、ツボミはどうなるのか、と。

2023.12.16撮影日本に出立前

客室乗務員さんにお別れを言って、空港で通常通り入国手続きをし、出迎えてもらって、いつもの道を走り、自宅に着き、車を降り、、、わたしは、一番に、でも、おそる、おそる、わたしのサザンカのところに駆けつけました。

2024.01.14撮影(帰宅後)

やっぱり・・・

開いていた花が低温でやられていました。まあ、開いていたのは花びらが無防備だから仕方ない、と思ってツボミを見てみると、ツボミも無傷ではありませんでした。

2024.01.14撮影(帰宅後)

ピンクのところが残っているから、大丈夫か? でも、色が変わっているのはツボミの根本の方だから、もうダメか?

と気をもんでいると、翌日からバンクーバー都市圏(Greater Vancouver)の山がちのところが雪に、その翌日から海に沿ったバンクーバー市(the City of Vancouver)も雪に、それから何日間も、雪、雪、雪、、、

となると、経験から、雪が消えた時にはどうなっているか、もうかわかっていたんですよ。


2024.01.24撮影(積雪が解けた後)

このように、ツボミが全部ダメになってしまいました。今季は、わたしのサザンカはこれで終わりです。来季まで花が咲くことはありません。

以下の画像は、きれいに咲いていた時の写真です。

2023.11.29撮影日本に出立前

このサザンカにわたしの庭で花を数多く開いてもらうには、早くから、つまり、寒くなってしまう前に、咲いてもらうしかないようです。でも、頼んだからと言って、聞いてくれるものでもないし。ですから、わたしがなんらかの対策を講じなくちゃ。雪が降り出したら、すっぽり覆えるものを被せるか?

2023.12.10撮影日本に出立前

直前の画像は、雨に濡れる、開き切らない、まだきれいなサザンカです。バンクーバーは雨が多いです。雪だけでなく、雨も長く降ると、花びらが傷みます。この画像の花は、雨に濡れているだけですけど。

2023.11.11撮影日本に出立前

これは、開いて間もないサザンカ。まだ、ピンクの色が勝っています。

サザンカの画像をインターネット上でいろいろ見ていて、うちのサザンカは、『御美衣(おみごろも)』の可能性があるかな、と思いました。

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サザンカ〜帰国日記4

2024年02月12日 08時00分00秒 | ツバキ科
2024.01.05撮影

1年ちょっと前の帰国では、成田空港に着きました(季節や航空会社によって、着くところが異なります)。成田空港から羽田空港へのバスの車窓から、高速道路の脇にサザンカがたくさん植えられているのが見えました。10月の末でちょっと時期が早かったからでしょう、花はまばらにつき始めたところのようでした。

若かったころの両親が今の地所を家つきで購入したのは、わたしが3歳半の時です。その時に庭に植えられた花の咲く木々は、わたしと同じくまだまだ小さく、幼くて、花はそんなに咲かなかったんです。

ある年、冬の初めに、小学校低学年の時だったか、家の中から外を見ると、真っ白な花が咲いている木が目に入りました。その花は、咲きながらも、散るのです。冬に入ろうとする季節なのに、そのあたりがパッと明るくなり、すごく印象的でした。母に報告すると、母は、今年はサザンカが咲いたのね、と言いました。

人はそれぞれ心象風景ってあると思うんですよ。この咲いては散っていく白いサザンカが、わたしの子ども時代の心象風景のひとつとなりました。

それがわたしのサザンカへのこだわりとなり、わたしのバンクーバーのお庭にもサザンカを植える理由となったのでしょう。

サザンカのツボミ
サザンカの一番花、二番花、三番花

現在の両親のうちの庭には、このサザンカの木はありません。全面改築する時に、敷地に盛り土をするため、庭の植物は廃棄されたか、掘り上げられて他所へ預けられたのです。この白いサザンカはその時廃棄され、新しい庭には改めてサザンカが植えられることはありませんでした。両親は、その辺は気になっていたようですが、サザンカなしに今に至っています。

今回、年末年始に帰国・帰省し、あちこちでサザンカを見ることができて、うれしかったです。サザンカを見ることができるだろう、と期待はしていたんですが、期待以上でした。ご近所をさらっと散歩しただけでも、次々と鑑賞することができました。

前置き(すみません、ここまでが前置きです)が長くなりましたが、そして、日本の比較的暖かい地域にお住まいの方には珍しくもなんともないと思いますが、わたしが感動しつつ見たサザンカの画像をお見せしたいと思います。

他人様のお庭に植わっているものなので、カメラをじっくりと構えるわけにはいかず、手の届く範囲内で、さっと撮影したものばかりです。

品種名は、もとよりわかりません。花の色の違い、花びらの形状の違い、花全体の姿の違い、オシベ、メシベの様子などを、ご覧くださいませ。

オシベ、メシベは、冒頭の画像で大写しされています。中央にあるのがメシべ、それを取り巻くのがオシベです。メシベは、3裂するものですが、この個体は、たまたま4裂しているようです。

次の2枚は、冒頭画像のサザンカと同じサザンカです。花びらを平たく開き、目をぱっちり開けて、花自体が咲くことを楽しんでいるように見えます。

 
2024.01.05撮影               2024.01.05撮影

下のサザンカ2枚は、別の木から。上のサザンカと比べ、花びらが平たく開ききらないようです。でも、わたしの見たのがたまたまそういう開き具合のだったのかもしれません。花びらの感触は、上のがぴらぴらしていて、下のはやや重量感があります。

 
2023.12.22撮影               2023.12.22撮影

次のピンクのサザンカは、葉がかなり赤いです。花びらの質感が、ぴんとしている? ひょっとして、狭い意味でのサザンカではないのでしょうか。

 
2024.01.05撮影               2024.01.05撮影

次の白いサザンカは、花がわたしの手の届くところになかったので、一旦写したのを拡大切り取りしました。左右とも同じ木からです。開き具合で、花の印象が随分異なります。

 
2024.01.05撮影(拡大切り取り)       2024.01.05撮影(拡大切り取り)

次のピンクのサザンカですが、左と右のとでは、同じ木か、異なる木か、覚えていません。写真って、やはり、メモをとりながら写したほうがいいのでしょうか。

 
2024.01.06撮影               2024.01.06撮影

次のサザンカは、「一重」に近いでしょうか。2枚とも同じ木からです。

 
2024.01.06撮影               2024.01.06撮影

次は、やや形状が異なるようです。花びらが重なり、ひらひらしています。

2024.01.06撮影

以上、および、今までの記事で、サザンカ(Camellia sasanqua)のように見える花をすべて「サザンカ」と呼んできましたが、サザンカは、実は、3群に分けられます。
・サザンカ群
・カンツバキ群(名称は「ツバキ」だが、サザンカである)
・ハルサザンカ群

わたしの住むバンクーバー近辺は、サザンカをよく観察して勉強できる環境ではないので、わたしは知識が少なく、よって、この3群を分けずに書いてきました。もし不都合な記述があったなら、お許しください。

サザンカ一般については、以下の国立歴史民俗博物館の
『くらしの植物苑特別企画「冬の華・サザンカ」』
という記事に、説明があります。よろしければ、どうぞ。


今回の帰国日記はここで終わりますが、次回は、わたしのうちのサザンカに再び話が戻ります。

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サザンカの一番花、二番花、三番花

2023年12月01日 08時00分00秒 | ツバキ科

2023.10.29撮影

サザンカのツボミを凍らせないようにするにはどうすればいいか、と心配を重ね、対策を練ろう、、、


、、、としているうちに、サザンカの今年の一番花が咲いてしまった、10月末に。

例年は、12月に入ってから。まさか10月中に咲くとは思っていなかったので、観察していなくて、いつ咲いたのかわかりません。なぜこんなに早く?

実は、この秋、バンクーバーでは、雨が、降ることは降るんですが、あまり続かないんです。降っても、しとしととひとしきり降ると、晴れる、という感じ。そして、太陽が優しく照り、気温がうららか(秋に「うららか」と言うのも変かもしれませんが)。

そのためなのでしょう、気温が、サザンカの耐寒気温を上回った、のだと思います。

温暖化が原因だとして、地球規模ではそれを喜ぶわけにはいかないんですが、うちのサザンカにはこれで結構。サザンカさま、この調子でどんどん咲いてください、寒くなりきる前に。ひとつずつでもいいので、お顔を見せてね。

それと、この開いたサザンカ(冒頭画像)、今までにうちで咲いたサザンカの花の中で、一番大きい! 木が成熟してきたためか? と言っても、このサザンカは、うちに15年以上植っているのですが。それとも、やはり、単に、温暖化のため?


2023.11.07撮影

その後、固く閉じていたツボミが、こんなふうに(上の画像)ふくらんできました。きれいな色、今までよりずっと濃い色。

すると、そのうちに、二番花が咲いているのを見ました。一番花が咲いているのを見つけてから大方2週間後のことです。これも、咲き始めるところを逃した。あまり外に出ていないから、こういうことになる。


2023.11.11撮影

わあ、きれい、こんなにピンク? 今まで咲いた花は、表が白く、花びらの縁と裏の一部だけがピンクだったので、この新しい色は、夢見心地な色だなあ〜〜。このように花の色が違うのは、接木をした(?)時の台木の花なのかしら? それか、陽の当たり加減? それか、単に、一個の木の花の、通常のバリエーションの範囲内? 開き切ると、もっと白くなるのかしら。

そうすると、本当に白く開いてしまった(次の画像)。それでも、例年より、ピンクの色が濃いです。


2023.11.14撮影

二番花がここまで開いて数日後、三番花が丸くほころんできました(次の画像)。これは、まだ花びらの裏が見えていて、花びらの裏は元々ピンクっぽいので、花全体がより濃いピンクの印象を与えます。


2023.11.16撮影

これも開き切ると白さの方が勝ってしまいました(次の画像)。


2023.11.21撮影

9月から数ヶ月固いままであったツボミが、たくさん、次々とふくらんできています。「たくさん」と言うのは、うちのサザンカの基準で「たくさん」です。氷点下になる前に、ツボミが開くことを祈るのみです。次の花がいつ咲くか、と毎日楽しみにしています。

このサザンカは、歩道に近く植えてあるんですが、歩道を行く人、みんな、きれいね〜、と言ってくれます。えへへ〜〜、こういうのって、ガーデナー冥利に尽きるんです〜、サザンカって、ここ(バンクーバー)ではよく知らない人も多いので、珍しい、という効果も入っていますけど〜〜

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サザンカのツボミ

2023年11月29日 08時00分00秒 | ツバキ科
2022.12.14撮影

今日は、わたしの庭の冬支度、番外編です。冬支度では、植物を保護するために、マルチや落ち葉を使いますが、今日は、マルチや落ち葉では解決できない問題について書きます。

うちには、サザンカCamellia sasanquaがあります。園芸種名は控えなかったので分かりません。学名の種小名 sasanqua は、日本語の「サザンカ」からきています。

学名 Camellia sasanqua
英名 Sasanqua camellia
和名 サザンカ(山茶花)
ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia
原産 中国、日本


 バンクーバーの気温は、サザンカが生育する最低耐寒気温ギリギリです。でも、きれいに咲かせているお家もたくさんあります。大木になっているのもあります。バンクーバーは坂が多く、気温や風向きが場所場所で異なるので、それが植物の生育に影響を与えます。

わたしは、子どものとき実家の庭で咲いていた真っ白のサザンカが、バンクーバーのわたしの庭でも咲いて欲しかったんですが、長い間、躊躇していました。耐寒気温のことがあったからです。

でも、この(次の画像)、花びらの外側がほのかに赤いサザンカに出会ったときに、恋に落ちてしまい、なんとか育てられる、という楽観的な気持ちの方が勝って、うちに連れ帰ってしまいました。画像中、花びらが光っているのは、それは、雨です。

2021.01.17撮影

案の定、このサザンカは、何年も小さいままでした。もうダメか、と思いながら、強剪定してみたところ、2年後にぐんぐん成長し始めました。そして、過去5年ほど、どんどんツボミをつけるようになりました。

ツボミは、9月に早々とつき始めます。そして、10月、11月と、だんだん、でも、ゆっくりゆっくり、成長してきます。12月になると咲き始めますが、同時に気温がさらに下がっていきます。雨が降ることには変わりはありません。

このバンクーバーの冬の冷たい雨で、咲いた花びらがやられてしまうのです。次の画像2枚をご覧ください。透けて見えるところが、その雨で傷んだところです。左の画像の、右と右上の花びらで顕著です。

  
2020.12.24撮影               2021.02.08撮影

年が明けると、さらに寒い日がやってきます。氷雨がつづくか、あるいは、雪が降りつもって、気温が下がったままになると、光沢のある葉はなんともないのですが、ツボミが腐ります。これは、凍って、解けるために起こっているようです。

ツボミが腐ると、茶色く、柔らかく、なってしまう。そうなると、腐ったのを手でポロポロと落としてやるしかない。去年が特に被害を受けた。(画像はあるのですが、別に美しいものでもないので掲載しません。)

この寒さの打撃がなければ、12月、1月、2月、と少しずつ咲き続けるのです・・・

ツボミの凍結・解氷を防ぐための対策は、まだ練れていない。何年も悩んでいます。

植物屋さんで聞いても、「耐寒性はある」の一点張り、
「いや、実際、ツボミが腐るんだよ」
「そんなことは、聞いたことがない」とまで突っ張る。
「だから、今、わたしから聞いているよね」と言いたいのを我慢する。

「気温が低い間だけ、ムシロみたいなのを被せておけばいい?」
「そんなことをすると、窒息するよ」
「あんなあ、ビニール袋を被せて縛るんじゃないんだけど」とも返さない。

「サザンカの横に、風よけを立てればいい?」
「それでは、サザンカに雪が積もることには変わりがない、それに、太陽をさえぎる。」
「1月に、バンクーバーのどこで太陽が照っているんだ?」なんて、言わなかったよ〜〜

こういう感じで、結局、もう、ええわ、さいなら、ということになるのです。


2021.01.17撮影

わたしの住んでいる地区(バンクーバー全体が、という意味ではなく)は、比較的、風がよく吹く(花の写真を撮るのに風の収まる一瞬を捉えなくてはならない)んですが、その上に、わたしが、たまたま、わたしのサザンカを植えた場所が、方角的に風が直撃するところだったんです。冬に庭を巡回すると、よくわかります。植えたときには、そんな風向きのことまで考慮しなかった。バカもの!

で、どうすんの? わからん。考え中。おまけに、サザンカの世話に肝心な時期である年末年始には、日本にいる予定・・・

そう、こう、9月、10月、と思案しているうちに、、、

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ツバキ? サザンカ?

2022年12月19日 08時53分25秒 | ツバキ科
2020.12.24撮影

ツバキとサザンカの見分け方については、インターネット上にもいい記事がたくさんあると思いますが、その中で視覚的に見やすいかな、と思われる記事をご紹介しておきます。株式会社科学技術研究所(かぎけん)が制作・管理する「かぎけん花図鑑」というサイトのものです。


今日のわたしの記事の目標とすることは、でも、ツバキとサザンカの特徴の違いを見極めることではありません。入り組んだツバキとサザンカの名称を、ツバキ科ツバキ属を全体的に見ながら、解きほぐす糸口を見つけることです。科学的な探究では、もちろん、ありません。

2021.01.17撮影

ツバキもサザンカも、ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia)に属する植物です。まず、上位の分類であるツバキ科から見ます。

和名 ツバキ科
学名 Theaceae「チャ科」
英名 the tea family「チャ科」

植物に興味のある方にはツバキとお茶がつながっているかもしれませんが、一般的にはどうでしょうか。お茶の花なんて見たことない、という方もいらっしゃれば、あ、言われてみればお茶の花ってツバキに似ているよね、と思う方もいらっしゃるかもしれません。実際、ツバキとお茶の木は近縁です。

科名の学名となった Theaceae の「thea」は、語源的に、「チャ(茶)」なので、Theaceae は、文字通りには、「チャ科」です。

でも、その「チャ科(Theaceae)」の下には、現在の分類では、「チャ属(Thea)」はありません。お茶の類は、現在、ツバキ属(Camellia)に吸収されています。ですから、ツバキとお茶の木は、同じ属の植物なのです。

今は存在しない「チャ属」という分類からきた「チャ科」という名称が、それでも変更されずに残ったのは、その科名が今まで使われてきたという事実と歴史を優先して、のことです。

和名の方では便利な(?)ことに、最初から(?)、「ツバキ科」だったようです。ただし、「チャ科(Theaceae)」という意味の学名からは、「ツバキ科」という名称は、ずれた名称になっています。

2021.01.17撮影

では、ツバキ科には、どんな属が属しているでしょうか。


ツバキ科には、現在、9属が認められており、以下の4属がその主だったものです。

属名に「ツバキ」を含む
1.ツバキ属(Camellia
2.ナツツバキ属(Stewartia
3.ヒメツバキ属(Schima

属名に「サザンカ」を含む
4.ヒサカキサザンカ属(Tutcheria

4のヒサカキサザンカ属だけが「サザンカ」を名称に含むのね、
それなら、サザンカは、4のヒサカキサザンカ属に入っているのよね、
と思いませんか・・・

それにしても、それなら、
上位の分類である「属」の名前が「ヒサカキ+サザンカ」で、
下位の分類である「種」の名前が「サザンカ」、
ということになる、って変・・・ですよね・・・

ヒサカキサザンカ属(Tutcheria)のうち、(和名では属名と同名の?)ヒサカキサザンカ(Tutcheria virgata)という種の画像を見つけましたので、次のリンク先で、よろしければご覧ください。


2021.01.17撮影

それでは、ツバキ科のクイーン、ツバキ属(Camellia)にどんな種が属すか、見てみましょう。

以下の種のうち、ヤブツバキ(Camellia japonica)というのは、平たく言うところのツバキのことです。サルウィンツバキ(Camellia saluenensis)については、昨日書きました。サルウィンツバキとヤブツバキをかけ合わせて生み出された交配種が、ウィリアムシーツバキ(Camellia × williamsii)です。これも、昨日の記事。


ツバキ属(Camellia)に属す種は、その名称により、3つのグループに分けることができます。主な種の例も、挙げておきます。

「ツバキ」を名称に含む
・ヤブツバキ(Camellia japonica
・ユキツバキ(Camellia rusticana
・サルウィンツバキ(Camellia saluenensis

サザンカ」を名称に含む
・サザンカ(Camellia sasanqua
・ヒメサザンカ(Camellia lutchuensis

「チャ」を名称に含む
・チャノキ(Camellia sinensis
・タイワンヤマチャ(Camellia formosensis

つまり、ツバキ属の種の名称には、「ツバキ」「サザンカ」「チャ」の3つの名称が混在していることになります。

2022.12.03撮影

少なくとも、日本の文化の中で、「椿(ツバキ)」「山茶花(サザンカ)」「茶(チャ)」は異なる植物である、という認識がある(だからこそ、ツバキとサザンカはどう違うか、が話題になる)以上、この3つの名称の混在には、問題があります。

名称の使い分けが、
? 植物の特徴をはっきり表しているのか
? 植物の特徴をある程度表しているのか
? ほぼ単なる呼び慣わしなのか

さらに、
? ツバキとサザンカの特徴の差異とされるものは、名称にどこまで一致するのか
? 交配種は、ツバキなのか、サザンカなのか、あるいは、チャなのか
? 新しい園芸種の命名は、何に基づくのか

わたしは名称に敏感すぎるのかもしれませんが、やはり、科学的な分類こそ、「名は体を表す」で行ってほしいと思うんです。ところが、動植物だと、ここに、伝統的に、また、文化的に、使われてきた名称がからむので、簡単にはいきませんね。

ところで、今日掲載の画像は、次の画像も含め、全て同一の植物からのものです。うちの庭にわたしが植えて、大切に育てている植物です。これは、わたしの「見立て」(と言うほどでもないけど)だけでなく、ラベルにもよると、、、

2006.02.05撮影

サザンカの園芸種です。園芸種名は失念しました。

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花を愛でるはずが、怒江まで行く

2022年12月18日 08時00分00秒 | ツバキ科
Camellia x williamsii 'Roger Hall’
Focus stack of 11 photos
撮影者:Agnes Monkelbaan
撮影日:2021.04.20
オリジナルからの改変、なし

今日は、クイズから始めま〜す。

この花は、何でしょう。

1.バラ
2.ツバキ
3.ボタン

園芸がお好きな方、葉っぱをジトっと観察された方、画像につけた説明の学名をチラ見された方、には、すぐにバレたかもしれませんが、答えは、2のツバキです。

もっと正確には、ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia)のウィリアムシーツバキ(Camellia × williamsii)、そして、そのツバキの園芸種で、‘Roger Hall’「ロジャー・ホール」と呼ばれるものです。

和名 ウィリアムシーツバキ「ロジャー・ホール」
学名 Camellia × williamsii ‘Roger Hall’
英名 Camellia williamsii ‘Roger Hall’(など、類似名、多数)
ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia

Camellia × williamsii(英文+画像)

ウィリアムシーツバキは、サルウィンツバキ(Camellia saluenensis)とヤブツバキ(Camellia japonica)をかけ合わせて生み出された交配種です。

サルウィンツバキ(Camellia saluenensis)の花の様子の例は、以下でご覧ください。何とも言えない花色です。でも、個体により色の濃さの差は大きいのだそうです。

サルウィンツバキ

草本図譜
ツバキ属の交配種

ウィリアムシーツバキの例は、以下。園芸種名は、書かれていないので分かりませんが、サルウィンツバキと同様に、独特の花色を表しています。

ウイリアムシー

ウィリアムシーツバキの園芸種のほとんどが、花びらが半透明で、透き通るような感じなのだそうです。もうひとつ例をどうぞ。これは、'Citation'「サイテーション」という園芸種です。

Camellia × williamsii 'Citation'
撮影者:A. Barra
撮影日:2007.03.
オリジナルから、改変なし

ウィリアムシーツバキは、イギリス人の John Charles Williams(ジョン・チャールズ・ウィリアムズ)によって作り出されました。創作者の名前 Williams をラテン語風に変形して williamsii とし、Camellia × williamsii と呼ばれます。

「×」という表記は、交配種である、という印です。(でも、Camellia × williamsii は、Camelliawilliamsii をかけ合わせた、という意味ではありません。)

「W」という文字は、ラテン語を表すラテン文字(ローマ字)には本来はありませんでした。でも、外国語の固有名詞に由来する語をラテン語である学名に使用するときには、必要に応じ、使います。発音は、その元の外国語における読み方に従います。

ドイツ語の例:welchi「ヴェルヒ」
英語の例:williamsii「ウィリアムズィイ」

(細かいことを言えば、「ウィリアムシー」ではなく「ウィリアムズィイ」のはず。「ウィリアムズ」の「ズ」から来ているので。)

サルウィンツバキは、中国名を「怒江山茶」といい、「怒江」は川の名前、「山茶」は日本語の「ツバキ」に当たり言葉です(サザンカは中国語では「茶梅」)。

怒江山茶

怒江山茶は
> 是中国的特有植物。分布于中国大陆的云南等地
と書いてありました。

「これ(=怒江山茶)は中国固有の植物である。分布は、中国大陸の雲南、等である」という意味だと思います。

「怒江山茶」という命名から、サルウィンツバキが、怒江辺りの原産、あるいは、固有、なのだろうな(地名が必ずしも原産地、固有地、を表すわけではないが)、とは思いましたが、怒江なんてのは、高校の地理の時間に習わなかったよ。

怒江山茶は、中国の雲南が原産、ということなので、この川は雲南にあるのかな。

それで、調べてみると、日本語では「サルウィン川」と呼ぶ、と分かりました。種小名の saluenensis は、ここから来ているのね。そして、これが日本語の「サルウィンツバキ」の「サルウィン」なのね。

Wikipediaの記事によると、サルウィン川は
> チベットを源流とし、中国雲南省を流れ、ミャンマー北東部のシャン台地にあるカヤー州・カレン州を南下してアンダマン海北端部のマルタバン湾へと注ぐ国際河川である。一部ミャンマーとタイの国境を成す。長さは2815 kmにおよぶ。

サルウィン川

この同じ川「怒江」を、Wikipediaの中華人民共和国版で見てみると、
> 國家 中华人民共和国
としか書いていない、地図では明らかにミャンマー領内も流れているのに・・・

怒江(中国語+画像+地図)

「怒江」なんて名前だから、流れが激しいのかなあ、とか、舟を引きずり込むほどの渦巻きがあるのかなあ、とか、考えたのですが、わからずじまいでした。「怒江(ヌー川)」の両岸には「ヌー族(怒族)」が住む、というのは、分かりましたけど。(そう言えば、昔に、「怒族」って何? と調べたことがあったのを思い出しました。)

サルウィン川の流れる中国の雲南と言えば、植物が豊富なところで知られていますよね。そのことについて、Wikipediaの「サルウィン川」から引用しておきます。

> 流域には7千種を超える植物と、80種の希少種および絶滅危惧種の動物と魚が暮らす。ユネスコはサルウィン川の流域を「世界で最も多様性に富む温帯の生態系かもしれない」とし、2003年に、上流域を世界遺産に登録した。

実は、ひとつ、お詫びがあります。冒頭の画像についてです。

この花が、なんか、不自然に美しかった、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。この画像には、撮影者自身の施した加工が加わっています。複数の画像を重ね合わせて、各種調整がなされています。でも、この画像に見える花の姿は、自然の姿とあまり変わりません。画像として美しくなっているだけです。

よろしければ、念のために、次のサイトなどで、Camellia × williamsii ‘Roger Hall’ のより自然な姿をお確かめください。以下のサイトでは、大きい画像の下にある小さい画像は、クリックすると拡大します。

Camellia ‘Roger Hall’(英文+画像)

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