カラスといちごとクロッカスと

身の回りの鳥や小動物、庭の花や畑の野菜など、日々日々、季節季節の情報を、
個人の目をとおしてお届けします。

スカブラ・スミレ

2024年05月31日 08時00分00秒 | スミレ科
2023.04.14撮影

今日は、わたしのお庭から、もうひとつスミレをご紹介します。ひとつめとふたつめの記事は、

    
「ラブラドール」 「リヴィヌス」  (今日のスミレ)

冒頭画像と上では右端のが、そのみっつめのスミレです。「ラブラドールのスミレ」と「リヴィヌスのスミレ」とは、趣が異なりますね? 花びらの開き具合、ボカシ、また、紫条がほぼないこと。

学名 Viola × scabraViola hirta × Viola odorata
英名(不明)
和名(不明)

今日のスミレは、英名も和名も不明なので、学名から、暫定的に「スカブラ・スミレ」と呼んでおきます。

このスカブラ・スミレは、ヨーロッパの、主に温帯地域が原産です。

自然交雑種で、Viola hirta(和名:不明)と Viola odorata(ニオイスミレ)を親種とします。交雑種であることは、学名に「×」で反映されています。Viola hirta と Viola odorata の姿は、次のリンク先で見られます。写真がたくさん掲載されています。



2023.04.10撮影

スカブラ・スミレ学名の Viola × scabra についている種小名 scabra は、属名の Viola を修飾する形容詞です。scabra は scabro の女性形(scabro は男性形です、つまり、男性形が基本形と扱われます)

scabro の意味は、Wiktionary によると、
1. rough, coarse, uneven(粗雑な、粗野な、一様でない、でこぼこの)
2. concise, terse(簡潔な、そっけない)

でも、なぜ、そんな意味の形容詞が? 考えられる理由は3つあります。

このスミレの
・花は、「ぱっちり」と咲かない
葉は、表面にでこぼこがある
葉は、縁取りが、ギザギザではなく、丸く段々となっている


2023.04.14撮影

さらに、距(花の後ろに突き出た筒のようなもの)をご覧ください。「ラブラドール」と「リヴィヌス」は、距が白いです。でも、「スカブラ」(とその親種2種も)の距は、白くありません。

でも、「ラブラドール」「リヴィヌス」「スカブラ」と、スカブラ親種2種には、スミレの分類上の共通点があります。
・有茎種(葉柄が直接地上から出ない)
・惻弁有毛(両側に開く花弁にブラシのような毛がついている)

スミレの分類(これは、前にもリンクしました)

2023.04.10撮影

上の画像でも、葉の表面がでこぼこなのが見えます。距が白くないのも見えます。

でも、ここでは、右側の花をご覧ください。花の中央にオレンジ色のものが見えますね。そこから突き出している白っぽいものが、メシベです。そして、オレンジ色のものは何かというと、オシベにくっついている「付属体」。

「付属体」って、なんや? 前から気になっていた。それで調べてみると、
>> 特に名前をつけるほどではないもの
につけられた名称だとか。ほんまかいや。

植物用語事典

それでは、改めて、上の画像と冒頭画像で、花の微妙な色合いとボカシ具合いをお楽しみください。次の画像でも、そのボカシがきれいに入っています。また、オレンジ色の「付属体」も見えます。


2023.04.14撮影

実は、「スカブラ・スミレ」の色は、このような色ばかりではないようです(親種にも色の幅があるように?)。「スカブラ・スミレ」の写真を次のリンク先で見ることができます。そこでは、唇弁に紫条が少し出ている個体も挙がっています。



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リヴィヌスのスミレ

2024年05月29日 08時00分00秒 | スミレ科
2022.05.13撮影(Viola riviniana

わたしの庭には、3種のスミレが長い間住んでいます。そのうちの1種、「ラブラドールのスミレ」、を前回ご紹介しました。原産地は、グリーンランドからカナダのラブラドールを経、アメリカの東部にかけた地域です。

今日は、冒頭画像のスミレをご紹介します。

学名 Viola riviniana 
英名 Common dog-violet
別名 Dog violet
和名 ヴィオラ・リヴィニアナ(学名から)

種小名の riviniana は、某ドイツ人植物学者への献名です。その人の名前をラテン語化したもの Rivinus を、さらに形容詞形 riviniana にしてあります。種小名は、必ず、形容詞で、属名とともに斜字体で書かれます。

今日のスミレは、前回の「ラブラドールのスミレ」という呼び方にならって、「リヴィヌスのスミレ」と呼ぶことにします。

「リヴィヌスのスミレ」の原産地は、文献によってやや異なるので、広めにとって、北西アフリカ〜ヨーロッパ〜西アジア、としておきます。

 
2024.04.30撮影Viola labradorica)     2024.04.30撮影Viola riviniana

左上の画像が「ラブラドールのスミレ」右上の画像と冒頭画像が「リヴィヌスのスミレ」です。花だけを見れば、「ラブラドールのスミレ」と「リヴィヌスのスミレ」は、色違いなだけじゃ? と思うぐらいですね。両者とも、側弁有毛だし、紫条も同じようだ。

リヴィヌスのスミレ」の画像をあちこちで見比べてみると、青紫〜赤紫〜ピンクのように色の幅があります。その第一の理由は、撮影条件の違いだとは思いますが、 Viola riviniana ‘Rosea’「バラ色の=ピンクの」という園芸種があり、他にも色の異なる園芸種があるのかもしれません。

それなら、「ラブラドールのスミレ」と「リヴィヌスのスミレ」を色で区別するのは、慎重にしなくてはなりません。

 
2024.05.03撮影Viola labradorica     2022.05.02撮影Viola riviniana

距(きょ)もご覧ください。花の後ろに突き出た、終わりが閉鎖された筒のようなものです。「ラブラドールのスミレ」も「リヴィヌスのスミレ」も、距は白いです。ますます異なるところはないような・・・

実は、「ラブラドールのスミレ」と「リヴィヌスのスミレ」は、あちこちで混同されています。インターネット上の記事を見ると、行けども行けども、そのような記事に出会います。あまりにひどいので、リンクしません。

「ラブラドールのスミレ」を「リヴィヌスのスミレ」と呼んでいる場合
「ラブラドールのスミレ」は青紫っぽく、「リヴィヌスのスミレ」は赤っぽいです。青紫のものを赤紫のものの名前で呼ぶので、ご丁寧に、Viola riviniana 'Purpurea'「紫のリヴィヌスのスミレ」とまで色を指定している場合があります。

「リヴィヌスのスミレ」を「ラブラドールのスミレ」と呼んでいる場合
でも、園芸店へ行くと、たいていは、反対なんです。「リヴィヌスのスミレ」を「ラブラドールのスミレ」と呼んで売っています。なぜ? 「リヴィヌス」という訳のわからない名称より、「ラブラドール」の方が、馴染みやすい? 夢がある? ロマンチック???

なぜこんなに混同される? 単に、花がそっくりだから?

姿が先なのか、名称が先なのか、わからないのですが、なんと、「ラブラドールのスミレ」も「リヴィヌスのスミレ」も(そして、他の数種のスミレも)、英語では、Dog violet「イヌ・スミレ」と呼ばれるんです!!!

大体、英語でも日本語でも、「役に立たない、有用でない、取るに足りない、ニセモノの」植物を「イヌ」と冠して命名する傾向にあり、なぜこのようなかわいい花が「イヌ」???


 
2024.04.29撮影Viola labradorica     2023.05.21撮影Viola riviniana

決定的に違うところを見てみます。葉です。

「ラブラドールのスミレ」の葉は「黒い」です。でも、「リヴィヌスのスミレ」の葉は、きれいなみどり。(なお、左上の画像中、ふちがギザギザの大きい葉は、ヘレボルス・アルグティフォリウス Helleborus argutifolius のものです。)

ですから、葉っぱがみどりの「リヴィヌスのスミレ」を、葉っぱが黒い「ラブラドールのスミレ」と偽って売れる理由がわからない。つまり、「ラブラドールのスミレ」の葉は黒い、ということを隠しているということだ。いやあ、その黒い葉が魅力なのだが。

 
2022.04.20撮影Viola labradorica     2021.04.18撮影Viola riviniana

文句たらたらで失礼いたしました。


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ラブラドールのスミレ

2024年05月27日 08時00分00秒 | スミレ科

2024.04.30撮影

わたしの庭には、スミレが3種類あります。ひとしきり咲いて、どれも花は終わりました。

今日は、その3種うちの1種、「ラブラドールのスミレ」をどうぞ。日本では手に入りにくい種類かもしれません。

「ラブラドールのスミレ」は、原産が
・グリーンランド
・東部カナダ(ラブラドールを含む)
・東部アメリカ合衆国
です。

この「ラブラドール」というのは、人気の犬種のひとつ、「ラブラドール・レトリーバー」の「ラブラドール」です。(「レトリバー」とも呼ばれるみたいですが、英語的には、「レトリーバー」でないとおかしい。)


学名 Viola labradorica
英名 Labrador violet
別名 Dog violet
和名 黒葉スミレ
スミレ科(Violaceae)スミレ属(Viola

「ラブラドールのスミレ」の特徴は、葉の色が黒っぽい(紫色っぽい、赤っぽい)ことです。和名はその特徴に基づき「黒葉スミレ」。

2022.04.20撮影

スミレは、花弁が5枚あり、
・上の2枚を上弁
・左右の2枚を側弁
・下の1枚を唇弁(または、下弁)
といいます。


スミレには、側弁の基部に、歯ブラシのような毛がついている(側弁有毛)のと、ついていない(側弁無毛)のとがあります。「ラブラドールのスミレ」は、有毛です。有毛か無毛か、でスミレを分類することができます。


2024.05.03撮影

唇弁(下弁)には、後ろに突き出した距(きょ)があります。上の画像は、「ラブラドールのスミレ」を横から撮影したもので、花柄の下側に突き出している白い筒のようなものが、距です。

距の中は中空で、そこに蜜がたまっているそうです。本当に蜜が入っているかどうか調べたいのですが、花をいためるか、と思うと、踏み切れない。


2022.04.20撮影(周りの植物は、ヘレボルス・アルグティフォリウス)

スミレの花弁には、典型的に紫の筋(条)が入ります。種類によっては、大変薄い色にもなりますが。この紫色の筋は、スミレ専用である(とわたしが理解している)用語を使って、「紫条(しじょう)」と呼ばれます。「ラブラドールのスミレ」には、かなり濃い紫色の紫条が出ます。

紫条は、蜜を求めてやってくる虫たちに、蜜のありかを教える役を果たすそうです。唇弁(下弁)に、他の花弁よりも多くのはっきりした紫条がつくのは、まずは唇弁(下弁)に着地して、そこから紫条に従ってお進みください、ということでしょうか。

2024.05.04撮影

この黄緑のものは、タネのサヤです(上の画像)。これが成熟すると茶色くなり、3裂して、中からほぼまん丸の茶色のタネが飛び出します(画像なし)。

スミレは、タネのでき方がふたつあります。
1。花が開花し、虫に媒介されて受粉した結果
2。花が開花せず、閉鎖花のままで、自家受粉した結果

上の画像のタネのサヤは、季節的に見て、開花した花のものだと思われます。

2024.04.29撮影

スミレは、側弁の基部に毛があるかないかで分類される他に、地上に茎があるかないかでも分類することができます。

日本で一般に(そして、正式名が)「スミレ」と呼ばれる Viola mandshurica は、地上に茎を出さずに葉が直接根本から立ち上がります(無茎種)が、「ラブラドールのスミレ」は、地上に茎を出して、その茎に葉をつけます(有茎種)。また、有茎種は、節目から根を発達させて(上の画像の茎についたヒゲのようなもの)、はって広がっていくことができます。


2024.05.03撮影

わたしの「ラブラドールのスミレ」は、大方が日陰に近いところで育っています(上の画像)が、日向で育っている(下の画像)は、花の花柄が長めの傾向があります。でも、他の植物の緑の葉っぱの間から顔を出している「ラブラドールのスミレ」の葉(数枚ですが)は、やはり、黒っぽいです。


2024.04.29撮影


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カナダガン

2024年05月24日 08時00分00秒 | 
2020.09.30撮影

久しぶりに、植物ではないことを書いてみます。鳥についても書かないと、わたしのブログタイトル「カラスといちごとクロッカスと」を返上しなくてはならなくなります。

さて、コロナがまだ吹き荒れていたころ、いつものカフェでブランチをテイクアウトして、冒頭画像の公園へやってきました。

人間は、他の人間に近寄らないようにしているのに、この、大型の鳥、カナダガン(Branta canadensis)たちは、二密(少なくとも密閉空間ではないので、三密ではなく二密)などお構いなく、密集、密接で、池の端で休憩していました。


画像に1羽しか写っていないのは、離れている1羽を選び出して写したからです。集団も撮影しておいた方が良かった、今から考えると。

学名 Branta canadensis
英名 Canada goose
和名 カナダガン(加奈陀雁)
カモ科(Anatidae)コクガン属(Branta
原産 北米大陸(中米を除く)

冒頭の画像は、次の画像から切り取りました。

2020.09.30撮影

カナダガンは、2〜7亜種に分けられます。画像のカナダガンが、どの亜種であるかは、わかりません、候補は7亜種に分けた場合の2亜種ほど挙げられますが。

カナダガンの大きさは、亜種によってずいぶん異なります。羽の色は、それほど変わらず、やや異なるだけ。でも、カナダガンの亜種すべてに紛れもなく共通していることがあります。それは、白い「アゴひも」。そして、この白い「アゴひも」が、カナダガンを、他のカモ類(ガン類)から際立たせる特徴となります。

この「アゴひも」は、人間の顔で言えば、こめかみから、ほお、あご、あごの下、にかけてアゴをつったように出ています。上掲画像でお確かめください。わたしは、個人的に、「アゴひも」ではなく「アゴおび」と言った方がいいと思いますけど・・・

カナダガンの他の一般的な特徴は、
・白い「アゴひも」
・「アゴひも」の部分以外の首と頭は、
・くちばしも、黒
・体の上側が、薄茶色〜茶色で、鱗のように見える
・体の下側が、白
・脚は、水かきも含め、黒(真っ黒ではなく、煤けた色)

2020.09.30撮影

バンクーバーには、公園がたくさんあります。小さいのは住宅地の中にある1軒用の敷地ほどのから、大きいのはダウンタウンに隣接する400ヘクタール以上のスタンレー公園(Stanley Park)まで、全部で250ほど。そんな公園の、中規模以上の公園には、池がつきものです。そして、池には、各種の水鳥たちが集まります。

わたしがバンクーバーに移住して初めて行った公園は、スタンレー公園です。わたしは、そこで、カナダガンなるものを初めて見ました。半端ない数のカナダガンが、車が大量に走る6車線(?)から歩道をはさんだだけの芝生の上で、悠々と構えているんです。あれには、え? 町の中にこんなにたくさん大型の鳥がいるの? そんなこと、あり得るの? と思いました。

実際、現在、多くの北米の都市で、カナダガンが増えすぎて困っているんですよね。草を食べるんですが、公園のことですから、芝生を食べるんです。そして、多数のカナダガンがいるので、芝生は、とことん食われて傷んでしまう。また、フン害にも憤慨する人がいます(げ、言ってしまった)。

カナダガンは、集団で移動するときには、「V字型」になって飛行します。これは、自転車のロードレースでエースをアシストする人々がトレインを作る理屈と同じだろう、と思っていたのですが、基本は同じでも、全く同じであるというわけではないみたい。ツバサと自転車では空気の流れ方が違うので。

わたしの説明ではなく、次をご覧ください。
先頭を飛んでいる鳥は、風を一身に切り、力を尽くして、グループを引っぱって飛んでいるのですが、いっしょに飛んでいる鳥たちの長なのではありません。

先頭の個体は先頭でしばらく飛ぶと後ろへ退き、2番手で飛んでいた鳥の1羽が次に先頭を飛びます。このようにして、鳥たちは、力分けして民主的に飛んでいるわけであります。弱い個体は多分早めに後ろへ退き、強い個体は多分長めに働くのだと思います。

そして、カナダガンたちは、鳴きながら飛ぶことが多いですが、あれは、先頭を飛ぶ個体に向かって、やれ〜〜、がんばれ〜〜、と言っているのだそうですよ。

ところで、カナダガンは集団で飛ぶので、飛んでいる飛行機と衝突することがあります。そして、衝突しただけでもお気の毒な鳥がエンジンに吸い込まれると、飛行機が事故を起こすことになります。そのうちの有名な例が、アメリカの旅客機の、ハドソン川上への水上不時着です。

あれをわたしは車のラジオのニュースで聞いたんですね。ハドソン川に不時着ってことはないだろ、ニューヨーク市のマンハッタン区だよ。まさか、と、はなから信じませんでした。後で、テレビで映像を見て、びっくり。


2020.09.30撮影

この画像に出ているカナダガンの姿勢は、体の脂を羽に塗っているんだと思うんですが、よくわかりません。

眠るときには、
・天敵の少ない水上で(安全な場合は、地上でも)
・水に浮かんで(地上では、普通、座り込んで)
・首を背中の方へ曲げて
・普通は、クチバシを羽の中に突っこんで
・普通は、集団で
寝ます。

カナダガンは、また、眠るとき、脳の半分だけが眠り、後の半分は覚醒しています。これを、半球睡眠といいます。そして、目は、片一方は閉じ、もう片一方はやや開けて眠ります。脳全体が眠っているわけではないので、物音や気配を感じたら、すぐに起きてしまいます。よって、あんなにたくさんいるのに、アップの写真を撮ろうとしても、近づけない。

長距離を飛ぶ場合は、この調子で、眠りながら飛びます。バンクーバーにいるカナダガンは、季節の渡りをしません。1年中ここに住んでいます。ですから、飛びながら眠る必要もありません。まあ、ゆっくり池でくつろいでください。


わたしも半球睡眠したい。それでどれだけしたいことができるようになるだろう。


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マゼンタの花、フウロソウ 2

2024年05月22日 08時00分00秒 | フウロソウ科
2021.05.28撮影

マゼンタの花シリーズは、今日で終わりです。マゼンタの色の花が庭で一度に咲いて、うれしかったです。

今日のマゼンタの花は、前回
のつづきで、「ビーバンのフウロソウ(Geranium macrorrhizum 'Bevan's Variety')」です。

このフウロソウは、花びらがマゼンタであるばかりではありません。ちょっと色合いは異なるのですが、花糸(オシベの軸の部分)も花柱(メシベの軸の部分)も、マゼンタです。特に、花びらが落ちてからのオシベが見事です(冒頭画像)。

オシベは束となって残り、上を向いて突き出します。実際、花よりも形がおもしろくて、目立つくらい。

2023.05.20撮影

前回、オシベがヤクを開き、花粉を出して、「授」粉できるようになっているのに、メシベはまだ「受」粉体制に入っていない、というところまでお話ししました。

なんで協力しないんだ!!! とも言いたいのですが、彼らには彼らなりの理由があり、それはそれで、理屈はある程度通っている。

直前の画像には、開いた花がふたつ写っていますが、両者は日齢が異なります。

右側の花には、まだ花粉を出しているヤク(黄色っぽい粉のついているヤク)と、衰退したヤク(茶色がかってしぼんでいるヤク)とがあります。メシベは、この画像中では判然としません。

左側の花は、右側の花よりもう少し日齢の進んだものです。ヤクは茶色っぽくしぼんでいるか、あるいは、花糸からもう落ちています。つまり、もう生殖能力がないのです。

ここで代わりに目立つのは、メシベです。画像中、オシベよりもより長くなっているメシベが、オシベの先の位置から言うと、左上方向に伸びています。そして、その先が、割れて開いています。これが、メシベが受粉可能な状態です。

2024.05.11撮影

上の画像では、オシベの束が6つ見えます。そのうち、5つの束の間から、メシベがのぞいているのが写っています。柱頭が5裂しています。

一番上部にあるオシベの束は、わたしがうかつに先を画像から外してしまったのですが、それでも、その先には柱頭があるのだろう、とわかります。なぜなら、オシベに囲まれて、タネのサヤがもう形成されていますから、軸みたいに見える緑のものです。

2024.05.14撮影

上の画像では、若いタネのサヤに柱頭のついたメシベが残っています。

タネができる? いや、これ、おかしいんじゃ? オシベが花粉を出している時には、メシベはまだ受粉できるようになっていなかった。それなのに、なんでタネができるのよ。タネって、受粉の結果よね(大方の場合)。

メシベが成熟するのをオシベよりも遅らせたのは、自家受粉を避けるためです(と、学者が言っています、植物に聞いたわけではない)。その代わりに、メシベは他の花の花粉をもらいます。

このように、メシベの成熟の方が後発、という花は、たくさんあります。

でもね、わたしは、いつも考えるんです。1個体の植物があって、その花のひとつひとつがオシベとメシベの成熟をずらしても、自家受粉は避けられないと思う。なぜなら、早く咲く花も遅く咲く花もありますから。となりに咲いている花の花粉で受粉したら、自家受粉じゃ? 遺伝子、同じよね???

2024.04.26撮影

「ビーバンのフウロソウ」の花には、メシベしかつかないものが結構現れます。オシベがない、というより、退化しているようです、痕跡みたいなものがメシベの根本についていますから(次の画像みたいな感じ)。要するには、これは、雌雄別花のハシリでしょうか。

2023.05.03撮影

上の画像では、退化したオシベだけでなく、花軸が二股に分かれること、その股のところに花がつくことがあること、また、股の部分にある「葉」が左右に分かれること、などが読み取れます。

しばらく続けましたマゼンタの花シリーズは、ここで終わりです。


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マゼンタの花、フウロソウ 1

2024年05月20日 08時00分00秒 | フウロソウ科
2024.05.19撮影

マゼンタの花シリーズが続いています。今日のマゼンタの花は、フウロソウ(Geranium)の1種です。

学名 Geranium macrorrhizum 'Bevan's Variety'
和名 ゲラニウム・マクロリズム「ビーバンズ・バラエティ」
別名 ゼラニウム・マクロリズム「ビーバンズ・バラエティ」
フウロソウ科(Geraniaceae)フウロソウ属(Geranium

日本語で「ゲラニウム」とするか「ゼラニウム」とするか(「ゲ」か「ゼ」か)は、学名読みに従うか英語読みっぽくするか、です。英語では、Geranium は「ジェラーニアム」に近く発音します。英語の「ジェ」は、日本語化する時、よく「ゼ」になります(例:「ゼリー」)。

この記事では、簡略化のため、今日の花を、属名に品種名の一部をつけ加えて、「ビーバンのフウロソウ」とだけ呼んでおきます。


2024.04.26撮影

これは、ビーバンのフウロソウ」のツボミです。若いツボミは、ややオリーブ色がかった緑、成熟してきたツボミは、赤っぽくなります。形が、蛇腹(ジャバラ)というか、提灯(ちょうちん)というか、半袖のパフスリーブみたいで、かわいいですね。(男性には、パフスリーブって、わかるかな? 昔の乙女は、パフスリーブを夢見たのであった。)

 
2024.05.04撮影               2024.05.12撮影

ビーバンのフウロソウ」は、花軸が(ほとんどの場合)途中で二股にきれいに分かれます(左上の画像)。その二股に分かれた様子は、上から見下ろしても分かります(右上の画像)。この二股に分かれるのがビーバンのフウロソウ」に特有のものかどうかなんですが、うちの庭で現在咲いている他のフウロソウでは、そのようになっていませんでした。

この二股に分かれたところに、さらに花が、ひとつか、あるいは、少数(せいぜい、ふたつ)、つく場合があります(下の画像)。


2023.05.03撮影

花軸が二股に分かれる根本には、葉(それ以外の名称がついているかもしれません)が左右に分かれてつきます(上の画像)。この、文字通り襟巻き状の「葉」ですが、いくつも観察してみましたが、大きさのそろっているのも、そろっていないのもあります。

2022.05.14撮影

これは、まだ新しい花です。フィラメント状に見える花糸の先に、ヤクがついています。袋状というか、米粒状のもの。そのヤクのほとんどが、まだ開いていません。つまり、花粉を出していません。

黄色っぽい粉状のものがついているヤクがひとつ(ふたつ?)ありますが、それが花粉です。よって、それらのヤクは、「遺伝子ばらまき」状態に入っています。この後、花の日齢が進むにつれて、他のヤクの袋も開いてきます。

メシベは、この画像では、ちょうど中央にある、すっと伸びた軸状のもので、柱頭(メシベの先端)は、まだ発達していません。申し訳程度に、ぷちっとなっているだけです。この段階では、メシベは受粉できる状態ではありません。

2024.05.05撮影

直前の画像では、ヤクがすべて開いていて、みんな花粉を出しています。オシベにとり囲まれ、やや長く左上に曲がり、先まで赤い軸がメシベです。この段階で、オシベは花粉を産出していますが、メシベの先にある柱頭は、成長し出しているとは言え、まだ開いていません。つまり、受粉能力はありません。

同じひとつの花冠(花弁の集合体)の中、オシベの方は準備万端、メシベはまだまだ生殖能力さえない、なぜメシベはオシベをこんなに「じらす」のでしょうか。

つづく


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マゼンタの花、アネモネ

2024年05月17日 08時00分00秒 | キンポウゲ科
2024.04.19撮影

マゼンタの花シリーズを続けます。今日は、アネモネ(Anemone coronaria)です。

学名 Anemone coronaria
英名 Windflower
通称和名 アネモネ
和名 ボタンイチゲ(牡丹一華)、ハナイチゲ(花一華)、ベニバナオキナグサ(紅花翁草)
キンポウゲ科(Ranunculaceae)イチリンソウ属(Anemone

学名で言うところの「アネモネ属Anemone」は、日本語では、「イチリンソウ属」と言います。


2024.05.05撮影

アネモネの花の色は、マゼンタ、赤、紫、白・・・上の画像には、白はありません。画像中右上、アネモネよりも高いところに咲いている花は、黒いチューリップです。

このアネモネは多年草(宿根草)なんですが、バンクーバーの気象条件はこれを育てるのにギリギリで、真冬にマイナス15℃とかが何日か続くと、なくすことになります。ですから、バンクーバーでこのアネモネを育てるには、一年草として育てる覚悟がないと、泣くことになります。わたしは、泣き泣きを数回経験済みで、今回(=来年の春)はどうなるか、今から期待と不安・・・

今日は、同一個体の花の成長を追ってみたいと思います。

 
2024.04.13撮影               2024.04.16撮影

去年新たに植えたアネモネが、今春4月半ばになって、ツボミをふくらませ始めました(左上の画像)。最初は下を向いていたのですが、3日で横向きになりました(右上の画像)。この時点で、花の色は、赤なのかマゼンタなのか、はっきりしませんでした。

ツボミの「下」についている葉は、花の向きの変化に伴い、傘(左上の画像)から屏風(右上の画像)に変わりました。葉っぱは、ぴろぴろ、ギザギザ、しています。そして、これは、後で分かったんですが、葉っぱに赤い縁取りが出るのは、このマゼンタのだけです(うちのアネモネからだけ言えば)。

 
2024.04.18撮影               2024.04.19撮影

数日して、花びらがきれいにマゼンタに発色してきました(左上の画像)。ここでも、葉の縁が赤いのが見えます。そして、すぐに、右上の画像のように、花が上を向いてきました。これが、冒頭画像です。冒頭画像の方で見るとわかりやすいのですが、花びらの外側に結構毛がついているんですよね。「毛」じゃなくて、「産毛(うぶげ)」というべきですか。

このころは、まだムスカリ(Muscari)が咲いていました。左右の画像とも、左後方に見える青いのがムスカリです。アネモネのすぐ後ろに見えるのは、黒いチューリップの葉です。

2024.04.20撮影

そして、花が開きました。真上から覗きこむと、中央に黒っぽく、メシベとオシベが見えます。全開の画像は、たまたまありません。

 
2024.04.22撮影               2024.04.22撮影

アネモネは、他の多くの花のように、夜間つぼみます。上の画像は、陽が陰ってきた時刻のもの。左側は、ほぼ真横から見た姿、右側は、真上から様子です。メシベもオシベも見えません。


2024.04.26撮影

咲いてから5日以上たった花で、花びらがくたびれかけています。花びらの色と質感から、それが見て取れます。この画像は、日中に撮影されたものなのですが、雨が降っていたので、やや薄暗く、このように、花が半開きにしかなっていません。

花の内側の中央の方に、粉状のものが散らばってくっついていますが、それは、花粉のはずです。

オシベとメシベをお見せしたく思いましたが、ちょうどシベのうまく見えるマゼンタの画像がありませんので、他の色の画像を援用します。

 
2024.04.26撮影               2024.05.02撮影

画像中、中央にびっしりと固まっているのが、メシベです。オシベはその周りを取り囲みますが、花が若いときにはオシベの花糸は短く、ヤクの部分が直接メシベにへばりついているように見えます(左上の画像)。時間が経つと、オシベは花糸を伸ばし、先端にあるヤクがふらふら揺れるかと思うぐらいになります(右上の画像)。

赤いアネモネについてつけ加えれば、赤いアネモネには、花びらの根本(=花の中央)が白くなるものが多いようです。そして、その白い部分が、花の日齢に従い広がっていきます。

アネモネ(Anemone coronaria)の種小名 coronaria は、「王冠のような」という意味です。これは、オシベの姿を王冠に見立てたものです。ということは、メシベの詰まった部分は、人の頭、ということになります。

2024.05.02撮影

5月に入り、ここまで観察してきたマゼンタの個体の花が、終わりに近づいてきました。これは、上から眺めたものです。花びらがひらひらしています。


2024.05.05撮影

上の画像では、右側で一番背の高いマゼンタの花が、今回見た個体です。もう花びらが落ちる直前です。画像左側奥は、ムスカリがタネになっています。これだけでも、季節の推移が感じられます。

終わろうとしているマゼンタの花と、その下方に見える、これもマゼンタの花は、花びらがぴらぴらしています。それに対し、画像左下に写るマゼンタのアネモネの花びらは、丸い形をしています。同じアネモネの「1袋」を買ったにしても、形質がやや異なるんですね。

以下の画像は、その丸い花びらのアネモネです。まだ開ききっていません。若いお肌は、ぴちぴちしていますね、うん。それでも、産毛が見ますことよ。


2024.05.03撮影


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マゼンタの花、サーモンベリー

2024年05月15日 08時00分00秒 | バラ科
2024.04.07撮影(花柄に黄緑色の虫がとまっている?)

今日は、先週に始めました、マゼンタの花シリーズのつづきです。

シリーズ1回目、2回目は、シャクナゲ(Rhododendron)でした。

途中でシャクナゲ番外編をはさんで、

今日、マゼンタの花シリーズの3回目は、サーモンベリー(Salmonberry)です。和名があるかどうかよくわかりません(=見つかりません)ので、英名をカタカナにして「サーモンベリー」としておきます。

「ベリー(berry)」は、「ストローベリー(Strawberry)」「ラズベリー(Raspberry)」「ブルーベリー(Blueberry)」の「ベリー」ですが、「ベリー」とは何か、というのも、「シャクナゲ(日本語でいうところの)」とは何か、というのと同様、こわい話題ですので、避けて通ることにします。

学名 Rubus spectabilis
和名 サーモンベリー【暫定的に】
バラ科(Rosaceae)キイチゴ属(Rubus

2024.04.17撮影

サーモンベリーは、冒頭画像のように、下向きに咲くことが多いです。ですから、お顔を拝見しようと思えば、下から覗くしかありません(直前の画像)。

撮影するには、全部を自動設定にして、画面の割り振りも考えず、ひたすらシャッターを押し続けます。ただ、光線の向きは計算に入れます。すると、何枚か、写真として通る画像が撮れます。あるいは、高く伸びた枝に咲く花を下から見上げ、普通に撮影します。

上の画像の花は、まだ若い花です。オシベがそろって、まだ固く並んでいます。

2024.04.22撮影

下向きの花が多いんですが、中には、直前の画像のように、ほぼ横向きに咲く花もあります(背景の青い花はブルーベルです)。このサーモンベリーの花は、雨に打たれた後で、花びらが傷んでいます。ぶちぶちと何度も書くが、バンクーバーは雨が多いのよ。人々は、天気予報を見ながら、いつ何をするか決めます。

サーモンベリーの学名 Rubus spectabilis にもどりますと、属名 Rubus は「キイチゴ」、種小名 spectabilis は「目を見張る、見るに値する、愛でるべき、壮観な」というような意味です。これは、この鮮やかな花の色、マゼンタ、から来ていると言っていいと思います。

2021.05.14撮影

キイチゴ属(Rubus)の花の多くは、白ですが、サーモンベリーの花はマゼンタ。

日本固有のバニバナイチゴ(Rubus vernus)も、花の色はマゼンタで、葉や実も、サーモンベリーのと大変よく似ています。でも、ベニバナイチゴの花の色は、サーモンベリーの花の色より暗い色調のマゼンタです。花びらの形を比べてみると、ベニバナイチゴの花びらの先は、サーモンベリーの花びらの先ほど、尖っていません。そのため、花全体の姿が、ベニバナイチゴはややずんぐりと見える一方、サーモンベリーの花はほっそりしています。


バニバナイチゴは日本特産ですが、サーモンベリーは、わたしの住むバンクーバーを含む北アメリカ西海岸固有です。


2012.06.04撮影

直前の画像には、異なる成長段階のベリーが写っています。今はまだ花が咲いている時期なので、このようになるのは、もうちょっと先。

成熟に近づいている実は、画像のほぼ中央、やや左寄りに見えます。つぶつぶが集まっていますよね。このつぶつぶが、もっと熟すと、半透明の濃い朱色になります。それが、イクラそっくりなんです。イクラはサーモンなどの卵、それで、このベリーはサーモンベリー。

このベリー、食べられるんです。わたしは美味しくないと思いますが、美味しいと言う人もいます。美味しい、美味しくないは、当たり外れがあるんだ、とか。

サーモンベリーの葉は、段ボールの、2枚のボール紙(?)の間にはさまれた部分みたいな形をしています。次の画像をご覧ください。

2022.05.13撮影

わたしは、サーモンベリーの花が咲くと、毎年、うれしくなります。数多くのスプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)がほぼ終わってしばらくすると、咲き始めるんですよね。それも、スプリング・エフェメラルのように地上近くに咲くのではなく、地上から少し離れた枝に付くので、花の咲いている感じが全く違うのです。季節が推移していっている、というのがよく感じられます。


2022.04.24撮影

実は、前にもサーモンベリーについて、書きました。わたしの初期の記事(7番目の記事)です。今日書いたことと内容はかぶるのですが、よろしければ、覗いてみてください。



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シャクナゲ、もっと

2024年05月13日 08時00分00秒 | ツツジ科

先週、うちの庭のマゼンタのシャクナゲをご紹介した後、UBC(ブリティッシュ・コロンビア大学)の植物園から、さらにいろいろなシャクナゲをお見せしました。今日は、そのつづきです。

画像は、すべて、2013年5月7日の撮影。バンクーバーにひとりで(=父を家においてけぼりにして)訪問中の母と、ふたりで遊びに行った時のものです。母もまだ若かった、わたしもまだ若かった。

冒頭画像のシャクナゲは、ごくごく薄く赤みがかった白い花びらに、臙脂色(えんじいろ)と言っていいだろう赤い斑点が、やや広い面積で出ています。このシャクナゲでは、花柱(メシベの軸)も花糸(オシベの軸)も花びらの色と同じ。こういう色づかい、きれいですね。




このシャクナゲは、花の形に飾り立てがなく、すっきりしています。しかし、色に特徴があります。バラ色(と言っていい?)の花びらが、中央に向かって白っぽく、根本部分がオレンジ色がかっている。斑点もオレンジ色で、きれいに広がっています。


実は、わたしは、こんなシャクナゲがほしいと思っているんです。よく行くカフェの近くの歩道の植え込みに、これにそっくりなシャクナゲがあります。住宅地なら、市の条例により、住人が植え込みの管理をするのですが、商業地区だからだと思います、市から派遣された人が剪定していたりします。

ある時、その剪定した枝を、挿し木にしようと、頼んでもらってきたのですが、うまくつきませんでした。ま、ナマケモノのわたしのすることですから、こんなもんでしょ。さすが、わたしでも、レンギョウは挿し木で増やせるが。


このシャクナゲの木は、花が大変よくついています。それだけでも見事なのですが、花が5裂よりも多いのかな? 花びら片も重なっているようだし。それに、それぞれの花びら片の先が割れています。おまけに! 斑点がぐるりと出ている。上の方が色が濃く、下の方が薄いです。愛嬌があるのは、メシベの柱頭がポチッと黄緑。


斑点がぐるりとついているシャクナゲがあるか、と思えば、この薄いレモン色のシャクナゲのように、斑点が見当たらないのもあります。その代わりと言っていいか、オシベの先についたヤクが花びらを背景に突き出て浮き出して、味があります。


上のレモン色のシャクナゲの木の背景に、白いシャクナゲの木が見えます。それが、この上の白いシャクナゲです。斑点はないようで、レモン色のと同じように、ヤクが花びらを背景にして見えます。

画像左端の花は、もう落ちようとしている花です。花柄と花びらをかろうじてつないでいるのは、メシベです。その真後ろの花も、メシベでぶら下がっているようです。


真っ赤ですね。斑点がついているようですけど、花弁の地の色と変わらないみたい。花糸(オシベの軸)も花柱(メシベの軸)も、そして、柱頭(メシベの頭)も、みんな赤。オシベの先にあるヤクだけが真っ黒。

そのオシベの先を拡大すると、、、



オシベの先端にあるヤク()は、ツツジ属の花では、ふたつの袋の上部がくっついたみたいなものです。そのそれぞれの「袋」を、半葯といいます。半葯は、さらに、ふたつの「部屋」に分かれ、そのそれぞれの「部屋」を、葯室といいます。

ヤクは、花粉を出すのに、多くは縦に裂けるものですが、ツツジ属では、先端に穴が開きます。半葯の先端だけが見える場合はふたつの「穴」が、葯室まで見える場合には4つの「穴」が、見えることになります。

と、ここで、突然、記事を終えることにします。

次回は、マゼンタの花にもどります。


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シャクナゲ、いろいろ

2024年05月10日 08時00分00秒 | ツツジ科

今日も、つづけて、わたしの庭からマゼンタの花をお届けしようと思っていたのですが、せっかくのシャクナゲの季節なので、予定を変えました。

わたしの手持ちの写真の中から、日本語で「シャクナゲ」(つまり、「ツツジ」、「サツキ」ではなく)と呼ばれるだろう、と思われるものを拾って、その花の姿を簡単に描写してみます。

系統的には、ツツジ科(Ericaceae)ツツジ属(Rhododendron)までしかわからず、種名、品種名、はわかりません。

今日の画像は、すべて、ブリティッシュ・コロンビア大学(University of British Columbia)の植物園からです。2013年5月7日の撮影です(もう11年前か・・・)。うちに遊びにきていた母といっしょに、陽気のいい日に歩きました。

冒頭画像のシャクナゲの色は、マゼンタと言っていいですか。ちょと濃いめか、とは思いますが。かなりの大木でした。濃い花びらの色を背景に、白いシベが上に向かっているのがよく見えます。ここまで花弁の色と対比してシベの目立つシャクナゲを、わたしはこれより後にも先にも見たことがありません。



シャクナゲは、花はロート状で、根本が合弁、先が5裂します。でも、直前の画像のような、多分園芸種と思われるものでは、「花びら」の数が変則的になったりします。このシャクナゲでは、ピンクの花びらに赤い斑点が出ますが、場所はロート状の部分で、限定的です。メシベは、柱頭(メシベの先)まで含めて、白です。


このシャクナゲでは、花びらがきちんと5裂しています。花びらの色は先のピンクとよく似ていますが、斑点は、赤ではなく黄緑です。そして、こちらの方が斑点の出ている面積が広いです。柱頭の色は、斑点の色と同様、黄緑色です。



こちらは、花びらが、目を見張らせるような色です。そして、斑点の色は、花びらの色を濃くしたもの。オシベの花糸も、花びらの色ときれいにコーディネートされています。それなのに、メシベだけがマゼンタという、みごとな色づかいです。


このやや紫がかったピンクのシャクナゲは、花びらの切れ込みが深めで、5裂した部分の花びらがほっそりとしています。オレンジ色の斑点が、裂けた花びらの1枚とその左右にも出ています。メシベは花びらの色よりも濃いです。

メシベの色って、花びらの色より薄いのもあれば、濃いのもあるんですね。


シャクナゲの花はロート状の合弁花、と言っても、この花は、花びらが根本近くまで裂けています。また、裂けているだけではなく、5裂した花びらがかなり平たく開いています。そして、黄色がかったクリーム色の花びらに、オレンジ色の斑点が、花の根本からほぼ先端まで続いています。メシベは黄緑。


このピンクのシャクナゲの花で特徴的なのは、濃いあずき色の斑点が広めに出ているのもそうですが、裂けた花びらの縁が重なり合っていることです。そのため、花に重みが出て、より華麗に見えます。メシベは白です。

ここまで見てきただけでも、花びらの色とメシベの色は一致しない、と言い切っていいようです。


この薄いピンクのシャクナゲでは、赤いメシベの先(柱頭)が、花びらを背景にポチッと見えます。画像中では小さい点なので、花ひとつひとつの真ん中あたりを見てくだされば、薄い色を背景にして赤い点が見つかると思います。

斑点は黄土色(おうどいろ)です(まさか、「黄土色」って色の名前は、もう日本語で使わない??)。


この画像に写る景色は、UBC(University of British Columbia の略)の植物園の、車の通れる道のあるあたりでは、典型的に見られる眺めです。

この画像中、左上の紫色っぽい花も、樹形から見て、シャクナゲだと思います。手前下の青い花は、ブルーベルなんですが、近いうちにブルーベルについて書きたいと思います。

ピンクのシャクナゲにもどりますと、開いた花は薄い色なのに、ふくらんだツボミが赤っぽいのって、かわいいですね。

UBCの植物園からのシャクナゲ、来週につづく。


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