カラスといちごとクロッカスと

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ウクライナの花、その2

2023年02月25日 08時00分00秒 | ウクライナの花
Crocus banaticus
撮影者:Philippe.pechoux
撮影日:2008.11.10
オリジナルからの改変、なし

これがクロッカス? まあ、きれい!

わたしは、分厚い植物図鑑を何冊も持っていて、そういうのをしょっちゅうめくって眺めているのですが、このクロッカスには、初めて出会いました。「花びら」もオシベも独特!

学名 Crocus banaticus
別名 Crocus iridiflorus「アイリス咲きクロッカス」
別名 Crocus byzantinus
英名 Byzantine crocus *
和名(ないもよう)
アヤメ科(Iridaceae)クロッカス属(Crocus
原産 スロバキア、ハンガリー、セルビア、ルーマニア、ウクライナ

今日のブログ記事で、この花をどう呼ぼうか考えたんですが、確立した和名は多分ないので、自由裁量で、学名の別名 Crocus iridiflorus に基づき、日本語として通りの良い「アイリス咲きのクロッカス」と呼ぶことにします。「アイリスの花のようなクロッカス」という意味です。

*をつけた名称は、後で説明します。

Crocus banaticus
撮影者:Cristian Bortes
撮影日:2010.09.11
オリジナルからの改変、なし

インターネットで情報を集めてみると、この「アイリス咲きのクロッカス」の花の色は、「バイオレット」と「白」と書かれています。

冒頭の画像と直前の画像をご覧ください。かなり異なる色ですよね。冒頭の方は、わたしのイメージの「すみれ色」に近いですけど、上は「ふじ色」?

この2つの写真の場合は、撮影条件が異なるのははっきりわかります。では、光線の違いで片づけられるのか、というと、わたし自身が、実際にこの花に接したことがあって目視で確かめたのわけではないので、なんともご報告できません。

ただ、英語の violet「バイオレット(すみれ)」という語は、花の色を表すときに、かなりの色の幅に渡っている、ということを、つけ加えておきます。次のWikipediaのページに、 violet「すみれ色」で形容できる花の例が画像で挙がっています。ページの中ほどです。カラフルできれいなページですので、ぜひ、お出かけくださいませ。

Violet (color)(英文+多数の画像)

Crocus banaticus
撮影者:Nataliia Madzhara
撮影日:2018.09.21
オリジナルからの改変、なし

「アイリス咲きのクロッカス」は、秋に花を咲かせます。上の画像のように、葉を出さず、花茎だけをスッと伸ばして、その先に花をつけます。

次の「iNaturalist」というサイトの記事によると、花期は9月、10月がピークのようです。グラフ以外に、きれいなすみれ色の写真が挙がっていますので、どうかご覧ください。

Byzantine crocus(英文+画像+グラフ)

この「iNaturalist」には、上記ページに続き、次の写真のページがあります。これほど紫色各様の写真が存在する、ということは、現実にもそうなのかもしれません。

Photos of Byzantine Crocus (Crocus banaticus)(写真ギャラリー)

Crocus banaticus
撮影者:Cristian Bortes
撮影日:2010.09.11
オリジナルからの改変、なし

花は、、、「花びら(ガク)」と書くのに疲れたので、ちゃんと書くことにします。「花びら」がみんな「ガク」の場合にはそれで、まあ、いいですが、「花びら」が「ガク」ばかりとは限らない場合もあるし。

クロッカスの花は、花被片(かひへん)6枚からなります。外花被(がいかひ)(=ガク)3枚と、内花被(ないかひ)(=花弁)3枚です。一般のクロッカスは、この外花被3枚と内花被3枚が、ほぼ同じ大きさです。

花被片

> 花被片(かひへん、Tepal)は、植物の花被を構成する要素の一つ。外花被(萼)と内花被(花弁)を含む。通常、花弁と萼が形態的に類似する、あるいはほとんど区別できない場合に、それらをまとめて花被片という。

「アイリス咲きのクロッカス」は、外花被3枚が内花被3枚よりずっと大きいです。と言うか、内花被3枚が外花被3枚よりずっと小さいです。これが、「アイリス咲きのクロッカス」が他のクロッカスとは異なり、また、iridiflorus(アイリス咲き)と呼ばれる所以です。

もうひとつ「アイリス咲きのクロッカス」の風貌を特徴づけるのは、メシベの形状。長いだけでなく、パラボラアンテナのようにピラピラとなっています。長いだけなら、同じく秋ざきのサフラン(Crorus sativus)がありますが、そのメシベは先が分かれていません。

葉っぱは、花が咲いた後、やっと出てきます。クロッカスの葉っぱは、細長い葉の真ん中に縦の白い線が入っているものですが、「アイリス咲きのクロッカス」にはそれがありません。

Crocus banaticus(英文+画像)

Crocus banaticus
撮影者:Nicu Farcaș
撮影日:2012.09.03
オリジナルからの改変、なし

改めて、「アイリス咲きのクロッカス」の名称について見てみます。

学名の Crocus banaticus の種小名 banaticus は、Banat「バナト」と呼ばれる地域のことです。その地域は、ハンガリー、ルーマニア、そして、セルビアの、各国それぞれ一部に広がる肥沃な低地を指します。

バナト

「アイリス咲きのクロッカス」の原産地は、スロバキア、ハンガリー、セルビア、ルーマニア、ウクライナ、ですから、この Banat と呼ばれる地域が、原産地に含まれるのでしょう。

「アイリス咲きのクロッカス」の原産地は、以下の、キュー王立植物園の分布地図で見ることができます。

Crocus banatics(英文+画像+地図)

学名の別名 Crocus byzantinusbyzantinus、英名の Byzantine crocus の Byzantine は、日本語で言うところの「ビザンティン」です。「ビザンティン帝国」の「ビザンティン」。

「アイリス咲きのクロッカス」がこの帝国の領土内にあったのか、と思い、ビザンティン帝国の領土が歴史的にどのように発展、衰退したか、見てみました。でも、上のキュー王立植物園の地図と、一部しか被らない、むしろあまり被らない、んです。

それで、Byzantine という言葉の意味を調べてみました。すると、「(システムや状況が)過度に複雑である、そして、典型的に、運営の仕方が大きく関わってくる」、と出てきました。語源的には、「ビザンティン帝国が中期〜末期には国の運営が複雑になっていた」ということかもしれません。ということは、Crocus byzantinus は、「構造が複雑怪奇なクロッカス」ということなのでしょうか。

Byzantine

Crocus banaticus
撮影者:Conrad Altmann
撮影日:2017.10.27
オリジナルからの改変、なし

次の「Pacific Bulb Society(太平洋岸地方球根協会)」の「秋咲きクロッカス」のページに、「アイリス咲きのクロッカス」も出ています。上から2番目の Crocus banaticus です。よろしければ、これで、花の色(白を含む)と形状をお確かめください。

Fall Blooming Crocus(英文+画像)

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