素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

アケボノゾウをさぐる(4)

2022年05月21日 09時04分06秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち
         アケボノゾウをさぐる(4)

  
  アケボノゾウのご先祖さん:その(2)

  前述しましたように、マストドンゾウがユーラシア大陸から(専門家の中には、「ヨーロッパ大陸から」、と説明しているケースがあります。)アメリカ大陸に渡り、アメリカマストドンの時代を築いたのですが、一方、アジア大陸では、ステゴドンゾウが繁栄したと言われています。アジア大陸は、ステゴドンの楽園だったわけです。

 それが2600万年前中新世のころから続いたのです。ステゴドンはステゴドン科(Stegodontidae)のステゴドン属(Stegodon)ですが、樽野博幸氏の論文「ステゴドンとステゴロホドンー識別と系統的関係―(哺乳類:長鼻目)」(1985年3月)があります。

 この論文は、樽野氏が大英自然史博物館をはじめいくつものヨーロッパの博物館を訪ねて、インドおよびビルマ産のステゴドンとステゴロフォドンの標本を研究した成果をまとめたものですが、その中でステゴドン科(Stegodontidae)にはステゴドンとステゴロフォドンの2属があって、ステゴドン属はステゴロフォドン属よりも進化していること、しかしステゴロフォドン属は原始的であることを2属の臼歯を研究することで明らかにしています。

 大雑把に言いますと、ステゴロフォドン属はステゴドン属の先祖になると見ることもできるのではないかと小生は考えています。5、6百万年の太古の昔、ステゴドン科の2属は大陸から日本列島に渡って来ています。つまり数百万年もの時間をかけて日本列島の古環境に生息できるように進化を遂げていたのです。大型、中型、小型のゾウへと進化し、200万年から100万年前になりますと、アケボノゾウと言う小型ゾウの種を生み出したのです。すなわち日本固有のゾウに進化したのです。

 前回「アケボノゾウをさぐる(3)」において、*印を付けて説明した箇所で松本彦七郎が、「1918年(大正7年)、地質調査所にあった石川県戸室山産とされていたゾウの臼歯化石から日本にアケボノゾウが生息していたことを明らかにし、アケボノゾウが日本固有種のゾウであることを発見した」と注記しましたが、そこに記してある「地質調査所」でありますが、ゾウの化石が発見さる地層・地質の研究とは密接な関わりがあります。

  ところで、地質調査所の必要性を最初に説いたのは、実はドイツから招聘された東京大学初代地質学教授ハインリッヒ・エドムント・ナウマン(1854-1927)だったのです。独立した機関となるまではお役所(内務省)の「係」ないし「課」であったのですが、ナウマンは1878(明治11)年、伊藤博文から地質調査所計画の起草を委託されています。

 そして「地質調査所」は、1882(明治15)年に農商務省の直轄機関として設置されました。それから120年の時を経て、2001(平成13)年経済産業省の付属機関に再編されました。現在は独立行政法人産業技術総合研究所法の規定で、「地質調査総合センター」として「地質図をはじめとする我が国の基盤的地質情報の整備、資源・環境や防災に関する地質調査とそれらの成果発信をミッションとして、我が国の発展に寄与することを目的として日々研究を行っております。また、世界各国の地質調査研究機関とも様々な形で連携・協力してグローバルな研究課題にも取り組んでいる云々」(センター長の挨拶から)とのことです。
 
 さて、大陸からやって来たステゴドンゾウは、日本列島の中で何百年もかけて、小型化へ進化したものと考えられます。

 すなわち、500万年から400万年前に大陸から日本列島に渡って来て生息していたと推測されている体高(足元から肩までの高さ)約4.5mはあったであろうと推定される超大型ゾウ、Stegodon zdanskyi(ツダンスキーゾウ)、400万年前から300万年前に日本列島に生息していた体高3.5mの大型ゾウ、Stegodon miensis(ミエゾウまたの名シンシュウゾウ) 、230万年前(290万年前から210万年前)に生息していたと推測されます。

 2001年12月に東京八王子市北浅川右岸河川敷において発見され新種のゾウで体高およそ2.5mの中型ゾウ、Stegodon protoaurorae(ハチオウジゾウ)、そして200万年前(一説には、250万年前から100万年前)日本列島各地に生息していた体高1.5m前後の小型ゾウ、日本の固有種Stegodon aurorae (アケボノゾウ)というように、アケボノゾウの先祖の流れを辿ることができるようです。