素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

アケボノゾウをさぐる(1)中本博皓

2022年05月09日 10時00分37秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち
    アケボノゾウをさぐる(1)中本博皓


  はじめに

  前回栃木県佐野市の葛生化石館に展示されています「世界最小のナウマンゾウ」に触れましたが、日本で見つかっているゾウの仲間の化石には、同じくらい小さな大人のゾウの化石があちこちで見つかっています。その一つに1918(大正7)年に松本彦七郎(1887-1975)が最初に「記載」したと言う論文があります。それがアケボノゾウ(Stegodon aurorae )について記した論文です。

  現在ではほぼ丸ごと一体分の化石が掘り出されており、国の天然記念物に指定されるほど学術的にも価値が認められるようになりました。その化石が発見されたのが滋賀県多賀町四手の住友セメントの貯鉱場の建設現場から、1993年(平成5)3月に発掘されたものです。

  草食の大型哺乳類の化石としては、この滋賀県多賀町(四手)産のアケボノゾウの化石が最初の指定を受けたのだそうです。多賀町のアケボノゾウの化石は、その地層から180万年前のものと推定されています。

  アケボノゾウは、分類学で言う「目」は長鼻目、「科」はステゴドン科(Stegodontidae)、「属」はステゴドン属(Stegodon)、「種」はアケボノゾウ(Stegodon aurorae)となっています。

  アケボノゾウは、わが国で誕生した「日本固有のゾウ」と言われています。これまで、本ブログではナウマンゾウについて考察してきましたが、これからしばらくアケボノゾウについて触れて見ることにします。専門家の先生方の研究成果に依拠しながら、小生なりに言及して見たいと考えています。時間がかかりそうです。

  歴史を辿りますと、ステゴドン系のゾウは、アジア各地で約2000万年前の中新世の地層から発見されているステゴロホドン(Stegolophodon)というゾウを先祖として、鮮新世から更新世にアジアの各地域で繁栄したと言われています。亀井節夫(1925-2014)によりますと、この先祖のステゴロホドンとステゴドンとをあわせたグループが、今日ではステゴドンゾウ(ステゴドン科、ステゴドン属)と呼ばれています。  

  亀井によりますと、ステゴドンゾウは東アフリカのウガンダやレバントLevant(地中海東岸)まで分布を広げたのだそうです。日本でも国府田良樹・安藤寿男・飯泉克典・三枝春生・小池 渉・加藤太一・薗田哲平・長谷川善和らの論文(「茨城県常陸大宮市野上の中新統玉川層からの
ステゴロフォドン属(長鼻目)頭蓋化石およびスッポン科(カメ目)肩甲骨化石の発見とその意義」・茨城県自然博物館研究報告、2018)で、「常陸大宮市からはStegolophodon pseudolatidens の臼歯2 個(京都大学理学部所蔵; 北塩子A・B 標本)が発見されていることが報告されています。

 また亀井に依拠しますとステゴドンゾウには、インドのガネッサゾウや中国北部のコウガゾウ、日本のミエゾウあるいはシンシュウゾウのように、肩の高さが3メートルを超す大型なゾウが多かったのです。それが日本列島の限られた島内に棲むようになって、餌など生存するための諸々の環境に適応するために、たとえばアケボノゾウのように矮小化したのではないかとも推測されています。

  インドネシアのトリゴノセファルスゾウ、ミンダナオ島のミンダナオゾウや日本のアケボノゾウなど肩の高さが1.5メートルぐらいの小さなものまで、大小さまざまな形態に変化したのではないが考えられています。