素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

絶滅したナウマンゾウのはなし(24)

2022年04月04日 13時13分55秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち
      絶滅したナウマンゾウのはなしー太古の昔 ゾウの楽園だった
      日本列島ー(24)


  第Ⅴ部 忠類にもマンモスがいた


  (2) 忠類からもマンモスの臼歯が

  1)もう一つ述べておきたいことがあります。それは発掘されたナウマンゾウ臼歯の中に、実はマンモスゾウの臼歯が混じっていたことが、その後行われた高橋啓一ら専門家による再調査(2008年)で判明したこともあって、人びとの間では興味津々、マンモスとナウマンゾウが共存していたのではないか、と共存説にまで話が飛び、ナウマンゾウに寄せる人びとの思いは一層高まりました。

 しかし、現在のところ、マンモスとナウマンゾウの共存を裏付けるに足る確かな資料は得られていません。

 ということで、高橋他3人の専門家が共同執筆している2008年の論文「北海道、忠類産ナウマンゾウの再検討」(日本古生物学会編『化石』84、2008、74-80頁)など、数点の関連する論文に目を通して見ました。学術論文(2008)が相手ですから、座り直して読むことにしました。専門家には、見過ごせない問題がいくつも指摘されているのに驚かされました。

 高橋らの論文(2008)では、忠類晩成で発掘されたいわゆる忠類産の化石標本の中に、「5本の臼歯化石が含まれていること」、そして「そのうち4個は上下左右の第2大臼歯、残るひとつは未咬耗の右上顎第3大臼歯?とされてきた(亀井ほかの1971;亀井の1978)。

 筆者らはこの臼歯化石を再検討した結果、これまで第2大臼歯と記載されてきた4個の臼歯は、形態的あるいは計測値から第3大臼歯に同定できるものであると判断した」(2008,75頁)、と指摘されております。

  2)次に、高橋らは「“未咬耗の第3大臼歯?”とされてきたものについては、再検討の結果、ナウマンゾウではなく、マンモスゾウMammuthus primigeniusの下顎第2あるいは第3大臼歯と同定することができた。

 忠類標本は、ナウマンゾウ化石を研究する際には、最も重要な標本のひとつであることから、ここに再同定結果を報告する」(2008、75頁)ものだ、と論文としてまとめた意図を実に明快に謳っています。

 加えて、高橋らは、「これまでナウマンゾウの同一個体とされてきた4点の第2大臼歯と1点の右上顎第3大臼歯?は、形態的にそれぞれナウマンゾウの同一個体左右上下顎第3大臼歯とマンモスゾウMammuthus primigeniusの左下顎第2あるいは第3大臼歯と再同定した」(2008、79頁)ことを明らかにしています。

 高橋らの指摘は、素人の立場からしますと、従来の亀井らの調査報告(「北海道広尾郡忠類村産ナウマン象について(予報)」1971)と亀井の単独論文「忠類産のナウマンゾウPalaeoloxodon naumanni(MAKIYAMA)」1978)の二つの論稿に対して、(素人目には)はっきりと「待った」をかけたかの印象を拭えませんので、高橋らの論文(2008)における「指摘」が、学術上きわめて重要な意義を含意するものであると理解しています。

 高橋らのこれらの指摘(2008)は、専門家の先生方のさらなる議論を待つことにして、以下少しばかり視点を変えて、忠類産マンモスの臼歯化石に触れてみます。