素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

絶滅した日本列島のゾウのはなし(30)

2021年04月10日 10時37分11秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち
   絶滅した日本列島のゾウのはなし(30)

 

  9.日本列島に生息した古代ゾウの絶滅原因をめぐって

 (1)地球上で繰り返されてきた大量絶滅のはなしから

 これまでわが日本列島に生息していたと言われる先史時代の長鼻類の仲間、大雑把に「古代ゾウ」と言う言葉でひと括りにして述べてきましたが、中でも数百万年前頃から日本列島に姿を現し、生息していたステゴドン科のゾウの仲間、ミエゾウ、ハチオウジゾウ、アケボノゾウ、そして1万数年前頃まで生息していたであろうと言われるゾウ科のナウマンゾウも含めて、多くのゾウの仲間がいたのですが、いつの時代かに、何が原因か特定できないまま、姿を消してしまいました。

 絶滅原因については、ミエゾウやアケボノゾウについては、原因の何たるも分かっていません。絶滅した日本列島のゾウたちをめぐって、この辺でいろいろな角度からなぜ消えてしまったのか、少しばかり考えてみようかと思っています。しかし、その前に、前置きのつもりで、地球上で繰り返されてきた生物の大量絶滅について若干触れてみたいと思います。

 わたしが最近読んだ大量絶滅に関する文献の一つに『6度目の大量絶滅』(The Sixth Extinction: An Unnatural History,2014:邦訳・鍛原多恵子、NHK出版、2015)があります。原著者は、米国のジャーナリストで作家、そしてウイリアムズ大学の客員研究員も兼ねているエリザベス・コルバート(Elizabeth Kolbert、)です。

 彼女は、われわれ人類について、「地球上の生命をこれほど変えた生き物はいまだかつてないが、これに匹敵する出来事は過去にも起きている」、とも言っています。そして次のようにも述べています。

 「はるか昔、ごくまれに地球が大激変を起こし、生物の多様性が失われた。太古に起きたこれらの減少のうち、5回は規模が大きく、いわゆる《ビッグファイブ》と呼ばれる。そして今まさに、私たち自身が同じ現象を新たに引き起こそうとしている」、すなわち、今度はわれわれ人類が、6度目の地球上の生物の大量絶滅に加担する恐れのある行動をしているのだ、とエリザベス・コルバートは指摘しています。

  太古と言いますか、顕生代(5億4200万年前から現在まで、肉眼で見える生物が生息している時代を言う)の5億4200万年の間に5回の「大量絶滅」(これを「ビッグファイブ」とも呼ぶ)が起きたことが知られています。それらは以下のようなものでした。
 
 古生代では、➀オルドビス紀末(約4億4400万年前)」と、②「デボン紀後期(約3億7500万年前)」、そして③「ペルム紀末(約2億5200万年前)」です。中生代では、④「三畳紀末(約2億年前)」と、⑤「白亜紀末」の大量絶滅があります。これらの大量絶滅を招いた原因は何だったのか。専門家の間でも多くの議論が行われて来ました。

 磯崎行雄氏(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系教授、専門は地質学、生命史、古生物学。また最近では、古生代・中生代境界での生物の大量絶滅を研究テーマとしている)のWebページなどによりますと、生物種レベルでみた絶滅率としては6割程度と見られ、けっこう多くの生物種が耐えて生き延びていると言っています。

 また、磯崎氏は、爬虫類に代わって哺乳類の時代へと変化したのは確かだが、実は生物圏全体としては、この絶滅境界の直後も、多様性が順調に増加してきたし、2億5200万年前、古生代と中生代の間(ペルム紀末=P-T境界)に起きた大量絶滅事件は、K-T境界絶滅より圧倒的に規模が大きかったし、当時の海では無脊椎動物の9割以上の種が消えたとされている、と指摘しています。

 ところが、「絶滅によって生物の進化がすべて“振り出し”に戻って、改めてバクテリアから進化をやり直したというわけでは」なく、「大型生物種が絶滅事件のなかを生き残って、新しい年代の種に繫ぐという進化を続けてきている」(「大量絶滅」を乗り越えてきた生命進化)のだとも述べています。

 これまでに地球上に現れた生物の99%以上は、すでに絶滅してしまったと言われています。しかし反面で、たえず変化する環境に適応しようと新しい種が登場し、進化してきているのです。その一方では、古い種はいろいろな原因でいつの間にか消えてなくなっているというか、絶滅していることが多いのです。そしてそれは現在でも自然界を注意深く観察していますと消えてなくなっていることに気が付くことがあります。

 種の絶滅は一瞬に起こることもあり、相当の時間がかかっているもの、そのペースは決して一定ではないのです。

 前述しましたように、地球の歴史を遡りますと火山の大噴火や隕石の落下などで一瞬とも言えるような短い間に数十パーセントから9割以上(絶滅率99.9%と言う説もあります)の種が消えてしまう「大量絶滅」が起こっているのです。

 いまでは、研究が進み大量絶滅の原因もかなり解明されてきています。また、5億4500万年もの間に、地球上におけるビッグファイブと呼ばれる大量絶滅が5回起きていることが明らかになっています。