大空を見上げて

日頃感じていること

企業戦士

2009-06-22 | Weblog
 ホスピスに入院している義弟に日々接している私はいつも思う。
モルヒネで痛みを抑えながら日増しに痩せてくる弟は眠っている時間が長くなった。
目が覚めると毎日の様に見舞いに来ている孫と笑顔でたわむれ、近くの本屋で好きな本を買ってきて夜は静かに読んでいるとの事。
やがて人生の最後を終えようとしている弟は覚悟ができているらしく、私達との会話も普通で冷静である。
大手の某新聞社に入社して30年、企業の戦士として頑張り昇進していったが並大抵の努力ではなかったと思う。
社会(企業)の荒波に立ち向かい、ある時は凄い試練の波に押し瞑れそうになった事があったと聞いた事もあったが見事な精神力で乗り越えたとの事。
毎日の様に上司や部下との酒の付き合いも多く、それも仕事の一部で休日も関係なく夜遅く朝早くが長年続いたようだ。
食事もほとんど外食だったらしい。
6年前、膀胱がんになり、もうこれで終わりかと腹をくくった事があり、幸いそれは完治して乗り越えている。
そのせいか義妹に「俺は50歳まで生きれば充分だ。やりたい事は全部やった。」と言っていたとの事。
妻は「そんな事言ってたの?知らなかった。口の言葉は生きていて大切なのに…」と言った。
弟の会話でやることはやった覚悟はしているが、せめて親父の葬式は俺が出したかったと残念で心残りだと言っている。

私は弟といろいろ接して、企業戦士としてやり遂げた姿に日本の古来の武士道の精神を感じている。
赤穂浪士の、本懐をとげて家老大石以下四十七士が堂々と死んでいった事が頭に浮かび、弟と重なってしまう。
まもなく散り行く弟の立派な態度に強く心打たれ感謝していつも心より頭をさげている。