とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

ユー・ガット・メール

2006年09月04日 22時26分10秒 | 世界的笑世界
『ユー・ガット・メール』
(You've Got M@il ノーラ・エフロン監督 1998 アメリカ)


エルンスト・ルビッチの名作ロマンティック・コメディ『街角~桃色の店』のリメイク。

<あらすじ>
ニューヨークのアッパーウエストサイドで、小さな児童書の店を経営するキャスリーン・ケリー(メグ・ライアン)。チャットルームで知り合ったHN:NY157という男性と、秘密のメール恋愛をしている。やがて、大型ディスカウント書店フォックス・ブックが店の向かいに進出する。若き敏腕経営者ジョー・フォックス(トム・ハンクス)と、犬猿の仲となるキャスリーン。しかし、実はそのジョーこそが、NY157だった。フォックス書店のせいで、キャスリーンの「街角の店」は危機に・・・


メグ&トム、3度目の共演です。個人的に、いちばんのお気に入り。
なんですが、あれこれ叩かれることも多い作品です。

「『恋人たちの予感』や『めぐり逢えたら』のいいとこ取り」
「オリジナルには遠く及ばない」
「話が不自然」「話が無責任」
「役者とキャラクターが合わない」
「AOLとスターバックスの回し者」etc,etc・・・・・・

おっしゃるとおり!ご説いちいちごもっとも!

それでも、わたしは『ユー・ガット・メール』が好きだー!!

まずとりあえず、ミーハー的見地から言うと。

1.メグ・ライアンが可愛らしすぎ。

わたしと親友M嬢は、メグ・ライアンとグウィネス・パルトロウの信奉者です。彼女たちが髪型を変えるたび、もう大騒ぎ。『フレンチ・キス』でも、いかにメグ・ライアンがすばらしい女性かをさんざっぱら書きましたが、彼女の髪型、ワードローブのすべてがビタッ!とはまったのが、『ユー・ガット・メール』です。本作での彼女のトラッドな装いは、いつでもわたしのお手本です。

2.トム・ハンクスが良い。

ニューヨークタイムスのレビューでは「トム・ハンクスの良さがまったく出ていない」なんて評されてましたが、そうかなあ? 頭が良くて、茶目っ気があって皮肉屋で、素直じゃないけど純粋・・・それこそ『スプラッシュ!』以来のトムのウリじゃあないですか?暗くて元気のなかった『めぐり逢えたら』よりか、ずっとトムは生き生きしてたと思います。ところで彼の役名がジョーなのは、メグとのはじめての共演作『ジョー満月の島へ行く』へのリスペクトなのか!?


ところで、トムといえば「現代のジェームス・スチュワート」と呼ばれている。らしい。
J.スチュワートといえば、『桃色の店』で主役を演じた人。

そのリメイクにトムが主演したということは、新旧の「アメリカの良心」が同じ役を演じたということ。時を超えて、ふたりのヒーローがひとつになった、記念碑的作品でもあるわけです。
(もっとも、トム・ハンクスが「アメリカの良心」と呼ばれるのははなはだ気の毒だけど)

もちろん、スマートでハンサムなジミーにくらべて、トムは二枚目ではないしちょっとお腹も出てる。紳士的なジミーよりも、トムはもっと意地悪で鋭い。でも、それがトム・ハンクスの魅力です。

同じように、映画自身も、オリジナルとは違うものとならざるをえません。60年近くたってるんだから。

わたし個人としては、これは非常によくできたリメイクだと思います。真似るべきところは真似、変えるべきところは変えている。よく練られた脚本だと思う。

たとえば、『桃色の店』では、喧嘩ばかりしていたふたりがラスト間際で恋に落ちるのが、やや強引な感じがあります。『ユー・ガット・メール』ではそこをうまく処理している。

キャスリーンがメールの恋の相手だと知ったジョーは、事実を隠したまま、キャスリーンと"友だち"になります。友情を育むなかで、キャスリーンも自然にジョーを恋していくのです。NY157としてではなく。このあたりは、むしろオリジナルよりもリアルで、わたしには強い感動がありました。

最後の最後にキャスリーンに真実を告げた時、キャスリーンは言います、"I wanted it to be you"・・・あなたであって欲しかった・・・と。

レビュアーの中には、「最後までキャスリーンが事実を知らなかったのが不公平だ」と言う意見もありますが、それは違う。彼女も疑ってはいたのです。でも確信がもてなかっただけ。最後に見せる彼女の涙は、驚きではなく、夢がかなって良かった、という安堵の涙なのです。

・・・たしかに、監督自身も言う通り、これはファンタジーにすぎません。でも、それこそがロマンティック・コメディのあるべき姿のはず。このせちがらい日常の中に灯る、小さなファンタジーを信じないで、いったいどうやって生きていけるというのでしょう??

きわめて古典的なラブコメの法則を踏襲したからこそ、本作は公開当時、あんなにも強いインパクトを残したのでしょう。まさにこれは、20世紀最後のロマンティック・コメディなのでした・・・


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