以前英国喜劇あれこれという記事を書きました。
最近読み直して、あまりの浅さにわれながらあきれてしまった・・・
60~70年代に英国のテレビで大人気だったコンビ芸人モーカム&ワイズ(Morecombe&Wise)にもふれてなければ、スティーブン・フライとヒュー・ローリーのコンビにもふれてない。フライ&ローリーのコント番組や、伝説的ドラマ「ブラックラダー」、スティーブン・フライが司会をつとめる大人気クイズバラエティ「QI」もまだ見てなかった。リッキー・ジャーヴィスも、彼のシットコム「The Office」も・・・
ちょっと気合いをいれなおして、いずれ英国喜劇について徹底的に書いて挽回したい、という野望(?)に燃えておりますが、それはさておき。
最近発見した「お宝」のひとつが、カナダのコメディです。「発見」と言っても、わたしのベクトルはどーしても、過去の地層にうもれたお宝をを発掘する方向にむかってしまう。
いまハマっているのは、「SCTV (Second City Television)」というカナダで放送されていたコント番組です。放送は1976年~1984年。
マーティン・ショートによるジェリー・ルイスのものまねネタを見たのが、SCTVの存在にきづいたきっかけでした。
SCTV-Scenes from? an Idiot's Marriage
ジェリーの有名なネタ「タイプライター」(こちらの記事参照)を再現している。もうとにかくそっくりなのにびっくりしました。
が、さらに驚いたのは、このコントがスウェーデンの映画監督イングマール・ベルイマンの作品をパロディしていることです。「これは絶対にサタデーナイトライブじゃないな」と直観した。
アメリカのバラエティ番組でヨーロッパの芸術映画をパロディするなんてありえませんから(元ネタをわかる視聴者が少ないし、わかるような人はSNLを見ないだろうし、元ネタを知っても興味をもつ視聴者もほとんどいないだろう)。
それで、この風変わりでハイブロウなテイストの番組に急に興味をもちはじめました。
カナダという国は、どうやら独特のユーモアのセンスが育つ土壌らしい。ダン・エイクロイドやマイク・マイヤーズ、マイケル・J・フォックス、ブレンダン・フレイザーもみんなカナダ出身。
アクターズ・スタジオ・インタビューに出演したマイク・マイヤーズは、アメリカ、英国、フランスとさまざまな文化の影響を受けてきたことがカナダの笑いを独特なものにしてるんじゃないか、と分析していました。
アメリカほどガチャガチャしてない。でも英国ほどブラックにはならず、フランスほど洗練されすぎない。ちょうどいい感じのところでふわっと笑わせつつ、時に不条理だったり超ナンセンスだったり。SNLとモンティ・パイソンをうま~い具合にブレンドしたようなセンスなんですね。
「SCTV」メンバーを見るとおどろきますよ!『クール・ランニング』のジョン・キャンディ、『ミクロ・キッズ』のリック・モラニス、『サボテン・ブラザーズ』のマーティン・ショート、『ホーム・アローン』のキャスリーン・オハラ、『ゴースト・バスターズ』のハロルド・ライミスなどなど!
80年代以降われわれを楽しませてくれたコメディ映画の担い手の多くが、じつはこの番組出身のカナダ人たちだったのです。
だいたいハロルド・ライミスが一員だったって時点で、いかにすばらしい番組だったか予想はつく。ハロルド・ライミスは映画監督として現代のキング・オブ・コメディのひとりだとわたしは思う。『恋はデジャブ』、『クローン』、『悪いことしまショ』などの傑作コメディを監督した人です(*ただしライミスはアメリカ人)。
「サタデーナイトライブ」の影にかくれて日本で話題にされることはほとんどありませんが、ぶっちゃけ、「SCTV」のほうがおもしろい。
いろいろ見てるうちに、ツボにはげしくハマったのが、このキャラクター:
ボブ&ダグ・マッケンジー兄弟!
Bob and Doug McKenzie - Using Snowshoes for Spatulas (SCTV)
兄のボブをリック・モラニス、弟ダグをデイブ・トーマスが演じている。
2分間のコーナーで、兄弟がビール(本物)を飲んで酔っぱらい、カナディアン・ベーコンを焼きながら、毎回いろいろな「トピック」についてうだうだ語る、というもの。ほぼアドリブだったらしい。
これを見ると「ウェインズ・ワールド」はあきらかに影響を受けてたんじゃないかと思う。
「トピック」が、マジでどーでもいいものばかりなんです。「ドーナツ屋の駐車場はなぜあんなに狭いのか」、「NHL(カナダのホッケーリーグ)のチーム数が多すぎる」、「カナダの場所」など、ほとんどがカナダあるある。
それを兄弟がベタベタなカナダ訛りでしゃべる。いわばご当地キャラなわけ。何言ってるのかほとんどわからないんだけど、妙におもしろくてクセになっちゃう。
Bob & Doug McKenzie - Kicked out of Studio (SCTV)
何があったかしらないがスタジオを追い出されたボブとダグ
そもそもこのキャラがうまれた由来がおもしろい。「SCTV」のアメリカNBCでの放送が決まったときのこと。尺が2分ほど余ってしまうので、テレビ局のおエラいさんから「カナダっぽいネタを入れろ」と言われた。
あまりにアホくさい命令にちょっと反抗するつもりで、モラニスとトーマスはわざと「いかにも」なカナダ人キャラを作り、やる気なさそーなネタをやった。
ところが、このキャラクターが人気爆発。カナダ人もみずからのセルフパロディに大喜び。ふたりは一躍国民的人気者になって、アルバムを出したりCMに出たり。果ては映画まで作ってしまった!マッケンジー兄弟の映画『Strange Brew』はいまだにカルトな人気があるらしい(めちゃくちゃ観たい!)。
なんと、カナダでいちばん高速のスーパーコンピューターは通称「マッケンジー」。搭載されているふたつの計算機は「ボブ」と「ダグ」と名づけられているのです!
もしカナダ人に出会ったら「マッケンジーブラザーズ?テイクオフ、エィ?」と声をかけてみましょう。絶対ウケますから(「テイクオフ!」は兄弟の決まり文句のひとつ。「エィ?」と文末につけるのがカナダ訛りらしい)。
Bob and Doug McKenzie Pizza Hut Commercial 1985
ピザ・ハットのCM feat. マッケンジー兄弟
子どものまんまの兄弟がただじゃれあってるような、そんなふたりがほんっとに可愛いです。そして、そんなふたりをこよなく愛するカナダ国民のみなさん、ナイス!
現在もカナダにはかなりたくさんコメディ番組があるようです。たくさんありすぎてどれを観ればいいのかわからない!機会をみてすこしずつチェキラしていこうと思います。
ハリウッドで活躍するコメディアンを見る時は、カナダ出身かどうか、たしかめてみてはいかがでしょうか。
こちらはSCTVの後輩にあたるカナダのコメディ集団「キッズ・イン・ザ・ホール」。彼らも大好き!映画『ブレイン・キャンディ』のビデオも持ってるぜ!
Kids in the Hall - Secretaries - Decaf
女装のクオリティが超高いのだ
Rick Moranis as Woody Allen and Dave Thomas as Bob Hope
「SCTV」はパロディコントが多い。これは『ボギー俺も男だ』のパロディ。
リック・モラニス演じるウディ・アレンがボブ・ホープに憧れて新作映画への出演をとりつける。だがホープに振り回されて絶望的に。そこへあらわれるのがビング・クロスビーのまぼろし。ホープとクロスビーはかつて「腰抜けコンビ」を組んでいた。つまりクロスビーはかつてのホープの相方。クロスビーのアドバイスをうけてウディはホープと仲良くなってゆく・・・
すばらしいアイディア!しかも演者たちのモノマネが超うまい。
こういうのを見ると、コントとは何か、ということを考えさせられる。
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