とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

『僕達急行-A列車で行こう-』

2012年04月05日 00時20分12秒 | 日本的笑世界



『僕達急行-A列車で行こう-』を観てきました。
『間宮兄弟』系列の森田流ほんわかバディムービーは健在!

緑の中のトンネルを出たり入ったりする映像から映画は始まる。鉄っちゃんでなくとも、列車好きなら、運転席の真後ろに立ってフロントガラスから見える景色をながめたことが一度はあるはず。

そんな、鉄道好きのための映画であり、カラフルな鉄道がいまも一両きりでコトコト走る地方の田舎町のための映画であり、そこで暮らし、なんとか元気に働いて生きていこうとがんばっている日本人のための映画です。

すぐれた脚本書きとしての森田芳光の技も健在。
失恋の痛手を癒すため、東京から博多へ青春18きっぷでやってきた小町(瑛太)に、

「安くて時間のかかる手段が、心を癒してくれるんだな」

となぐさめる小玉(松山ケンイチ)の言葉が胸にしみる。

やっぱり、森田芳光は、コメディってものをわかってる人だ。コメディってものの、ほんとのところを。

わーわー大騒ぎしたり走り回ったりするだけがコメディじゃない。現実社会と遊離した「シュール」な映画だけがコメディじゃない。森田芳光には、それがよくわかってる。

「シュール」とラベルをはられた『そろばんずく』だって、よくよく見れば、バブル時代における広告代理店同士の不毛な戦争を糾弾した映画なのだ。

小町:倒産寸前の町工場の息子。
小玉:大手不動産会社のけっこうやりてサラリーマン。
筑後:九州一の大手食料品メーカー社長。

全員が、鉄道オタク。「趣味」は世界を救う。過疎化した地方も、そのせいで廃線寸前になってる鉄道も、救うのだ。

わたしの鉄道好きの友人(女性)は、タイのバンコクから北部へ鉄道旅行をしたとき、車両が日本のかつてのブルートレインであることに気づいて狂喜乱舞したという。鉄道には、そんな物語もあるのだ。


森田芳光は、日本で唯一、バディ映画を正しく理解し、バディ映画を正しく撮れる監督だった。

『そろばんずく』で、商談を成功させた時津風(木梨憲武)と春日野(石橋貴明)が「手をつなごうか!」「ひさしぶりだなっ」と、手をつないでニコニコ顔でキャメラに向かってくる。そのショットを見た瞬間、森田芳光が好きになった。そのココロは『僕達急行』でも生きていた・・・!

あと、3ばか大将の映画みたいに、いちいちへんな効果音がついてるのが笑えました。
マツケンの演技がおかしくって、笑えました。
瑛太くんと笹野高史さんがほんとの親子みたいにそっくりなのが、笑えました。

たっくさん笑った!そして、監督にさよならを言った。

「不安はいっぱいある。けど、僕達はどっかでかならずつながってる。だから大丈夫」

・・・なんだよね、監督?







追記:4月4日付朝日新聞ネット版「好きなことでつながろう 森田監督遺作若者へエール」
プロデューサーの三沢和子さんのインタビューです。

小玉がつとめる「のぞみ地所」に社長シリーズが反映しているというのも、『そろばんずく』に通じますね。『の・ようなもの』の伊藤克信さんがカメオ出演していたり、ヘリコプターの音が鳴ったりと、『僕達急行』にははからずも過去の森田作品のファクターがあちこちにちりばめられている・・・

上映回数や期間をはじめから少なく設定している劇場も多いようですが、この映画はぜったいに映画館で観るべきだと思う。







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13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今日はシャーロックの話ではないです。 (ki-chi)
2013-03-17 21:50:07
そりゃシャーロックのニュースもめちゃくちゃ気になりますけど・・・。今日はあえて違う話題を。

森田芳光作品は「間宮兄弟」が出会いでした。しかし当時中学生だった私はまったく良さがわからず、「つまらんかった」というのが正直な感想でした。
が、父に「家族ゲーム」を熱心に勧められたのでしぶしぶ見てみました。これが本当におもしろく、頭をガーンとやられた感じでした。
そして昨日「ハル」を見て、久しぶりによい映画を見たなあと思えました。ラストシーンも大好きなんですけど、新幹線からお互いをビデオカメラで撮るシーンにきゅんとなってしまいました。いまだったらカメラの性能もすごく上がってるから、たぶん成立しないんでしょうね・・・。今見るとパソコンの古さがめだちますが、1995年当時は最先端な映画だったはずです。(私は当時2歳でしたが)

シャーロックを見てるとデジタル技術がいかに進歩したかがいやでも思い知らされます。それでもあと10年、いや5年もしないうちに「古いな~」と感じるようになるんでしょう、きっと。

とりとめのない駄文で失礼しました。森田作品はこれから見てみる予定です。

追記
深津絵里と内野聖陽がかわいかったです!内野聖陽が全然泥臭くない(笑)
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ki-chiさん (ファイアー)
2013-03-18 15:21:05
森田芳光の良さにめざめられたとのこと、すばらしいですね。
観てないものがまだいっぱいあるから、エラソーには言えませんが。
「家族ゲーム」は傑作だと思います。
わたしも公開当時は中学生くらい?いや、もうちょっと上だったかな(笑)
やはり頭をがーんとやられた記憶があるので、
ki-chiさんの感想を読んで、時を超えた名作なんだなあとあらためて感じました。
今度テレビドラマにもなるようですね。

「ハル」も大好きです。これは根強いファンが多い作品ですね。

>シャーロックを見てるとデジタル技術がいかに進歩したかがいやでも思い知らされます。それでもあと10年、いや5年もしないうちに「古いな~」と感じるようになるんでしょう

正直、わたしもこの点はひっかかってるんです。
いまの最先端って、案外すぐ古びてしまうものですからね・・・
でも「ハル」がいまだに人の心を打つみたいに、
良いものならきっと残っていくんでしょうね。
「ハル」の新幹線から互いを撮るシーンは、黒澤明の「天国と地獄」の引用ですね。
「天国と地獄」ご覧になってるでしょうか?
もしもまだでしたら、オススメです^^
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「天国と地獄」の引用だったんですか! (ki-chi)
2013-04-09 12:33:48
気が付かなかったです。なるほど~。言われてみればそうですよね!

それにしてもシャーロックのコメント欄がエライことに(汗)私は最近タンブラーもあまりみないようにしています。でもイギリスでクリスマスに放送予定なんですよね?じゃあもう放送直後からタンブラーはネタバレの嵐になること確実ですよね・・・。というかファイヤーさんとおなじく、私もここ最近のベネラッシュにまったくついていけてません!!どうしちゃったの?というぐらい特集されてますもんね。

だからというわけでもありませんが、マット・スミスに最近は移行しています(笑)しかし検索してもヒットしない・・。イギリスでは知名度抜群なのにっ くやしいいい。
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ki-chiさん (ファイアー)
2013-04-09 23:36:49
>それにしてもシャーロックのコメント欄がエライことに

このブログのコメント欄のことですよね?
ふっふっふ(笑)いやーもう皆さんの社交場にしていただけたらうれしいので。
ちっとも更新してなくってもうしわけないですが・・・

マット・スミスは、日本では話題になってないんでしょうか?
海外ドラマのサイトとかブログとかも?
Dr.Whoがそもそも日本であんまり知られてないからかなあ。
でも、大々的に売り込めば当たりそうな感じしますけどねえ。
日本人の感性にはイギリスのドラマは絶対合ってるはずなんだけどなあ。
返信する
その後 (ki-chi)
2013-04-19 21:12:48
ちょっとずつですが森田作品を見ています。ついこの間は「ときめきに死す」を観ました。置いてあるレンタルビデオ店がなかなか見つからず、けっこうさがしました(苦笑)「家族ゲーム」の次に作られたけれどもヒットしなかったんですよね?この作品。私もこの作品の評価は現時点ではグレーゾーンです。嫌いではないんです!でも、なんか「んん?」っていうかんじがあって・・・。しいて言うなら「心がざわつく映画」でした。

あとこれは完全に個人的なことなのですが、シャーロックからいろんな分野に派生しまくっています。箇条書きにすると

1シャーロックを見てはまる
2相棒熱が再燃する
3相棒って岸部一徳がでてたよね
4一徳ってタイガースで昔歌ってたんだよね
5そういえばジュリーって昔どんな感じだったんだろう?

・・・というわけで、ジュリーの曲に手を出しています。以前「太陽を盗んだ男」を見ていたはずなのに、動画で「カサブランカ・ダンディ」を歌うジュリーに完全にやられました。・・・なんなんですか、あのカッコよさは!!

イケメン?ハンサム?二枚目?エロかっこいい?
どの言葉でも表現できない気がします。

ファイヤーさんはタイガース世代よりは後ですよね?
もしくはベストテンで「勝手にしやがれ」等を見ていた世代ですか?
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ki-chiさん (ファイアー)
2013-04-20 10:34:01
森田作品、追っかけてらっしゃるんですね!
すばらしい!
「ときめきに死す」は、わたしはまだ観てないんです。
実は「の、ようなもの」も観てません(汗)
森田ファンだなんて、言えないなあ・・・

>シャーロックからいろんな分野に派生

ki-chiさんの派生の方向性が、かっこよすぎます・・・
シャーロックからジュリーへいくとは!
今の雰囲気からはちょっと想像つかない人が多いかもしれないけど、
ジュリーはほんとーにかっこよかった!
いま見てもオシャレで、エロくてね・・・センス抜群なんですよね。
凝った衣裳が毎回楽しみで。
仰る通りわたしは子どもの頃「勝手にしやがれ」を一緒に歌ってた世代です^^
タイガース時代はまったく知らないです。
「カサブランカ・ダンディ」いいですよね~
「恋のバッドチューニング」や「ストリッパー」も大好きでした。
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クラクラします。 (ki-chi)
2013-04-23 12:31:31
「ストリッパー」ですかー。ずいぶん攻めな曲をセレクトしましたね、ファイヤーさん(笑)「恋のバットチューニング」は未見なんですけども、ジュリーがカラコンしてるやつですよね?早く見たい~。

>今の雰囲気からはちょっと想像つかない人が多いかもしれないけれど、

現在はずいぶんと恰幅がよろしくなられたので(笑)、正直同一人物とはいまだ思えないです。でもそのぶん声量がよりパワフルになられてたので、「この人ほんとにすごいなあ。」とただただ感心しています。

個人的に好きな衣装は「OH!ギャル」の船長コスプレですね。というかあれで全部持っていかれました。しかも間奏でタバコ吸ってますし。すごい・・・。あと赤いマニキュアをした手でタバコをもつ手つきが変にエロくて困りました(苦笑)
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ki-chiさん (ファイアー)
2013-04-25 00:26:18
あの当時のジュリーの曲は、どれもこれも大好きでした。
なつかしいな~
当時の映像ってネットでけっこう見れるものなんですか?
すごい時代ですなあ~(笑)
OH!ギャル、ぎゃーるぎゃるぎゃるぎゃるぎゃーるー♪ですね。
まだタバコがこんなに悪者にされてなかった時代ですからねえ。
何とも思ってなかったですけど、指摘されてみるとなるほど、です^^
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Unknown (ki-chi)
2013-04-26 16:25:13
そうなんですよ。いまやジュリーの出てた歌番組はかなり動画で見られるんです。すごいですよね!

そして、ついにジュリーが出てたドリフコントにまで手を出した私です(苦笑)志村けんとの鏡コントは爆笑しました!おもしろすぎて…。やっぱり帽子を投げちゃうところがジュリーだな、と。

ところでジュリーが「沢田課長」に扮してコントをやってるネタがあるらしいのですが、出典はドリフでいいのでしょうか?ものすごく気になるので、もしご存じであればネタ元教えてください!お願いします。

それにしてもあれだけかっこよくて、歌が上手でお芝居もできてなおかつ笑いも取れるアイドルって、今いるんでしょうか・・・?

あ、あと「悪魔のようなあいつ」近日中に見る予定です♪
返信する
ki-chiさん (ファイアー)
2013-04-30 10:43:08
>ついにジュリーが出てたドリフコントにまで手を出した

それは完全に正しい方向です(笑)
ジュリーのドリフコント、わたしも大好きでしたよ。
ジュリー、研ナオコ、桜田淳子、キャンディーズ、
このあたりはもう当然のようにドリフと絡んでましたものね(笑)

>あれだけかっこよくて、歌が上手でお芝居もできてなおかつ笑いも取れるアイドル

ジュリー以外だと、郷ひろみら御三家、そしてチェッカーズでしょうねえ。
いまだとエグザイルとかになるのかしら?
他はジャニーズが一気に引き受けてる感じですよね。
歌えて芝居もできて、というカテゴリーにジャニーズがどれだけハマるのかは
意見がわかれるかもしれませんが・・・(ジャニーズファンの方すいません)^^;
男性アイドルと笑いの歴史って、おもしろいテーマですね。
そうかあ、ジュリーってアイドルなのね。
ki-chiさんに言われるまで意識してなかったです。
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