偶然なんですけど、「夢にとんねるずが出て来る話」を書こうとしたら、「萌えろ!とんねるず」さんの最新エントリーにも同じ話題が。これぞまさしくユング言うところの共時性(シンクロニシティ)ってやつですか!?
そこで、とりあえずこのアングルは、もうすこし後にとっておくとして・・・
今日は「とんねるずと熱湯風呂」について考えてみたいと思います。
「夢」の話題からえらい飛躍ですけど(笑)
ところで、前記事「第3回コメディ学入門 ご報告」の末尾でもふれたように、先日のイベントで初めて3ばか大将を観た若者が「いいをさんがなぜとんねるずファンなのか、わかったような気がする」と言ってくれました。
この一言が、非常にうれしかったというか、なんかこう胸にずーんと響きました。
3ばか大将は、徹底したドタバタ喜劇の代名詞のようなコメディアンです。いつの時代も若者を熱狂させるコメディアンで、特に野郎どものファンが多い(*1)。
さっきの若者は、そんな3ばかに、とんねるずとの共通性を感じとってくれたわけです。
コントもやらなくなって久しいし、いまの若い世代には想像がつかないかもしれないけど、とんねるずは、何をおいてもまず、スラップスティック喜劇をやってやってやりつくした、日本でも稀有なコメディアンです。とにかくカラダを使って笑わせた人たち。
でも、ただの肉体派芸人というわけでもなく、先日のずん飯尾さんの披露宴を見てもわかるとおり、彼ら(とスタッフ)には、スマートでクレバーな知性もある。心技体がそろっていたからこそ、「コラーッ!とんねるず」や「みなさんのおかげです」のコントは日本中を熱狂させることができた。
これまでにも何度も書いてますが、とんねるずは日本に住む外国人のみなさんにも非常に人気があります。フェイスブックでもしょっちゅう会うんですよ、「日本にいたころとんねるずの大ファンだった!」という外国人に。
それもまた、とんねるずが言葉よりもカラダで笑わせるコメディアンであることの、立派な証拠だろうと思う。
で、先日のずん飯尾さんの披露宴に話をもどしますが。
あのとき、ビートたけし氏とたけし軍団が、サプライズゲストで登場しましたよね。彼ららしい無茶苦茶をひとしきりやって、締めは熱湯風呂だった。たけしさんだから、やっぱりそういう展開になるわけです。
それで思い出したのが、2010年秋に放送された「した」の特番です。たけし&所vsとんねるずのゴルフ対決が放送されました。「負けたら熱湯風呂」---これが罰ゲームで、とんねるずは熱湯風呂を回避すべく必死にがんばり、勝利した。
参考記事→とんねるずの穴
このとき、とんねるず、特にタカさんが、熱湯風呂を本気でいやがっていた様子が、わたしにはとても強く印象に残りました。あとあとのリアクションの前フリのためではなく、本当にいやがっていた。
なぜなのか。
タカさんの真意はわかりません。そんなこと、説明するような方ではないでしょうし。なので、こちらで勝手にあれこれ考えるしかないわけですが、それを考えるためには、必然的に「熱湯風呂とはなんなのか」を考えなくてはいけません。
そもそも、熱湯風呂って、おもしろいんでしょうか?
・・・いま、爆弾発言しました??そうでもないか。
あくまで個人的嗜好として言うのですが、わたし自身は、熱湯風呂で爆笑したという経験は、あんまりないんです。
ここまで書いてふと思い出したんだけど、とんねるずも、熱湯風呂的なことを多少はやってるんですね。モジモジくんの脳カベとか。タカさんが冷水風呂にとびこんでホッとしてる図を、急に思い出しました。
しかしまあ、そうだとしても、たとえとんねるずであっても、熱湯風呂はさほど印象には残っていません。
なぜ笑えないかというと、「これはリアクション芸だ」と醒めて見てしまう自分がいるからです。そりゃ、多少は熱めのお湯なんでしょう。だけど、床をころげまわるほど熱いお湯だったら、普通に考えればやけどするでしょう。それに何人も続けて入ったりしたら、急速に冷えるでしょうし。
それなのに「熱い、熱い」とリアクションするのは、やっぱり多少は、というかかなり、オーバーリアクションしてるわけで。
見ててそれがわかるから、どうにも笑えない。
もちろん、だからといって、本気で熱がるくらいのガチ熱湯を使え、なんて言う気はありません。わざわざそんなことしなくたって、笑いをとれる方法は、他にいくらでもあるんですから。
熱湯風呂は、スラップスティックではない。
リアクション芸と、スラップスティックは、ちがう。スラップスティックとは、きちんと計算されたドタバタです。
熱湯風呂というのは、おそらく日本独特のギャグ(?)の一種で、海外のコメディにはないものです。本気で熱がるリアクションを見て笑う、というのが本来のコンセプトでしょう。しかしいまでは、ある程度演じられたリアクション「芸」を見せるためのガジェットになっている。
何か他のことをしていて偶然熱湯に落ちてしまう、というわけでもなく、罰ゲームとしてみずから入っていくのが熱湯風呂です。それはコントの一環でやるものじゃなく、完全にバラエティ仕様のギャグである。
かつて誰かが、日本では、本来の意味のドタバタ=スラップスティックとはまったく異なるタイプのドタバタが、テレビバラエティ界で作られたのだ、と言ってましたが、熱湯風呂はまさにその最たる例ではないでしょうか。
たとえば、純粋ドタバタをなしえた一例に久世光彦ドラマがあります。考えてみてください、「時間ですよ」のワンシーンで、どこからともなくタライが落ちてくる、といったシュールなギャグは、いかにもありそうですよね。しかし、罰ゲームとしての熱湯風呂が登場するなんて、まずありえない。
ここで、いまふれた「タライ」について考えてみましょう。
「タライ」もまた、日本独特のドタバタギャグです。あの銀色に輝くアルミニウム製の大きなタライ。あれが天井からガツンと落ちて来る図は、日本でしか見られないものです。
わたしは、断然「タライ派」です。タライって最高。
タライというアイテムが生み出すギャグのバリエーションは、非常に多い。
コントのなかで何の脈絡もなくいきなり落ちてきても良し。天井から吊るされたタライを映しながら、罰ゲームの一環でやるスリルとサスペンスも良し。
頭にぶつかるときのあのまぬけな音、金属ならではのいかにも無味乾燥な表情(タライの表情ってなんやねん)。地球の引力があの無情なスピード感を生み、人はよける暇もなくタライのえじきになってしまう・・・
タライが頭にぶつかっても、実際はそんなに痛くない。痛くないけど、派手な音がするから、重宝するわけです。ハリセンみたいにね。それでも、無理なく痛がるリアクションがとれる程度には、痛い。
「結局リアクションをとるんなら、熱湯風呂と変わらないじゃないか」とおっしゃる方もいるかもしれません。でも、タライがぶつかったからといって、床をころげまわって痛がるタレントを、見たことありますか?タライは、そんな過剰なリアクションを強要しはしません。
わかりやすく言えば、
熱湯風呂とはジャッキー・チェンであり、タライとはバスター・キートンである。
ジャッキー批判ではないですよ、もちろん!そうじゃなく、熱湯風呂とは、スラップスティックというより、アクションコメディである、という意味です。一方、タライは、正統派のスラップスティックである。どっちもそれぞれ、良さがあるわけです(*2)。
とんねるずの笑いは、やはり、タライの笑いなわけですよ。
いろいろな場面で、とんねるずが好んでタライを使ってきたのを、皆さんはよくご存知でしょう。
最高傑作のひとつは、これ・・・
演歌のあぜ道 ヒロシ☆五木
くっだらね~!(笑)
何度見ても、爆笑・・・
当ブログでは、とんねるずのコント映像等はアップしない方針でやってますが、今回だけおゆるしいただきたい。
「とんねるずはタライ派」の理由が、おわかりいただけるでしょうか!?
とんねるずファンのみなさんに、サイレント喜劇をぜひ観てもらいたいと思う理由は、ここなんです。
こういうコントは、チャップリンやキートンから始まるスラップスティック喜劇をうけついだ正統派なんだということが、わかってもらえるはずなんです。
井原高忠さんは、コルドンブルー時代のとんねるずに「マルクス兄弟の本を読め」と言ったそうですが、とんねるずはマルクス兄弟の系統ではない。むしろ3ばか大将であり、バスター・キートンであり、マック・セネットです。
つまり、身体を使った計算されたメカニカル喜劇。正統派スラップスティック。
ご本人たちが意識するとしないとにかかわらず、とんねるずとは、そういう位置づけのコメディアンである。すなわち、タライ派コメディアンなのである!
タカさんがゴルフ場での熱湯風呂を全力で避けたかった理由の一端を、これですこしでも明らかにできたなら良いのですが。
(*1)もちろん、女性ファンもたくさんいますよ。「オンナに3ばかファンはいない」なんてバカバカしい都市伝説が、いまだにアメリカでは信じられてるようですが。
(*2)ただしジャッキーは、キートンをはじめとするサイレント喜劇のコメディアンたちに多大な影響を受けています。
バスター・キートン トリビュート
3ばか大将 トリビュート
熱湯風呂→熱い熱いというリアクション
ザリガニ→痛い痛いというリアクション
こういうのでお笑いをとるということをやらない人達なんですよね~
貴さんが東京風で冷たいプールに服ごと落とされた時のリアクション見たことありますが、ファンとしては面白くは無かったです。
スタジオでは笑いが起きてましたが。
というかあれは、あの貴さんが突き落とされるのかという構図が面白かった(ビックリした)訳で(笑)
タライなどは一種のオチと考えていいのか解りませんが「一瞬の間」で笑かすんですよね。
考えてみれば爆破、壁が倒れてくる等も。
昔、北の国からのコントで風呂に入っているシーンで風呂が崩れてセットの屋根も落ちてきたのありましたよね?
想像以上の崩れ方だったようでその後の「父さんムチ打ちになっちゃった」っていうボソっという一言が爆笑した記憶が(笑)
昔から体を張る人達でしたが、ただ張るのでは無くて自分達のお笑いをきちんと考えた上の事という感じでしょうかね。
あ~ありましたねw
確かに、あれ単体で「すごくおもしろかった!」と
ファンの心に残るシーンではなかったですよね。
そもそもわたしは、いわゆる「大御所」が水に落ちたから「すごい!」となるのがヤなんです。
素人がえらそーに言うことでもないですけど、
お笑い芸人、しかもドタバタをやる芸人なら、それはやってあたりまえのことでしょ?
大御所になったらドタバタを「卒業」するって考え方が、なんかイヤですね。
>タライなどは一種のオチと考えていいのか解りませんが「一瞬の間」で笑かす
まったくそうです!
タイミングで笑かすんですよね。
タライって、落ちて来るスピードがもんのすごい速いんですよね。
まさに有無を言わさずって感じで。
そこがおもしろいです(笑)
>ただ張るのでは無くて自分達のお笑いをきちんと考えた上の事
至言ですね。
そうなんです、とんねるずは「考える」んですよね。ものすごく。
無茶苦茶やりたい放題な自由じゃない。
話は変わりますが、お二人でライブをやるそうです。
http://blog.livedoor.jp/minna_daisuki/archives/51988891.html
山崎さんは女優(といってもお茶の間ではあまり見かけないような)
片岡さんは引退されていたのかな?
オールナイトフジ、夕ニャンのムーブメント。
とくにオールナイトフジ初期の頃はとんねるずはまだまだの状態。
相乗効果で大きく(認知)なったような気がします。
両番組とも女子大生、女子高生からアイドルへの道もありましたが、
考えてみれば素人を面白くとんねるずは弄り倒す最初のキッカケだったでしょうね。
とんねるずは「ひょうきん族」に出たかったの聞きます。
当時のモンスター番組ですし、お笑いをやっている人達はあたりまえの考えでしょう。
とんねるずには「班」の問題もあったでしょうが、赤信号、ヒップアップなどと同類にレギュラーだったらどうなっていたのだろうと思います。
群を抜いて人気を得ることが出来たのだろうか・・・
そして事務所の方針が当たり前のように、いわゆる純粋なお笑い番組をブッキングしてそれらが土俵だったら・・・
お笑い番組へショートコントで二人の掛け合いで出演を多く求められたら。
(ウッチャンナンチャンがそのパターンから大きくなった感じかな)
ファイアーさんは何か考えたことありますか?
自分が一つ思ったのはスタジオ全体、演者、スタッフを巻き込んだ空間は
オールナイトフジ、夕ニャンで掴んで、それを笑いの一つとして確立して今まで来ているような気がします。
「ひょうきん族」にも少しそういうのありましたが、生番組ではないのでライブ感はそんなに無かったですし。
若い二人の分岐点というものを少し考えてみました(笑)
>いわゆる純粋なお笑い番組をブッキングしてそれらが土俵だったら・・・
しばらく前にある方から聞いたんですが、山田邦子さんが、
「トップになるなら一匹狼でなければいけない」と言ってたそうです。
以前、女芸人についてコメント欄で彼女の名を出していただいたことありますね。
ピンでトップに立って、しかも女性が言う言葉だから、説得力あります。
とんねるずもそうだと思いますね。
ひょうきんベストテンに「一気!」で出た時は、本当にレギュラー芸人たちが意地悪をしたのだと
ラサール石井さんが本に書いてましたが、むしろそれで良かったんじゃないかなと。
>ウッチャンナンチャンがそのパターンから大きくなった
ウンナンって、初期の頃はどんな番組に出てたんでしたっけ・・・
最近、お笑い第3世代っていうくくりについて、ちょっと考えてたんですよ。
特にウンナンは、結構おもしろいポジションでずっときてるよなあって。
山本美貴さんたちの情報、ありがとうございます。
実はこのあたりのことは、わたしよくわからないんですよー
オールナイトフジも夕ニャンも、まともに見てなかったから。
(夕ニャンは時間的に無理、オールナイトフジは地元で放送がなかったので)
すごーく残念なんですけど・・・