とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

喜劇王と日本

2012年03月29日 20時37分16秒 | バスター・キートンと仲間



『アーティスト』の公開までついに10日をきった今日このごろ、フェイスブックで増谷キートン氏のページを発見。友だちリクエストを出したかったが、いまは受けつけていない模様・・・残念。彼の芸名の由来をたずねてみたいのに。

ブログやツイッターで芸名について語ったりしてるのだろうか。あきらかに「バスター・キートン」のもじりなんだけどなあ。あるいは益田喜頓氏にあこがれたのか? 「あらびき団」でおなじみの増谷氏所属お笑いユニットも「キュートン」なんだよなあ。

ルックスが、RICAKOだけでなくなにげにバスター・キートンに似ているし(というかRICAKOには似てないんだよね(笑))意識はしているんだろうと思うんだが・・・ 

彼だけでなく、芸能界にキートンファンはたくさんいるはず。爆笑問題の太田光氏もたしかキートンファンを公言していたと思う。個人的にはどうしても、とんねるずがキートンについてどう考えているのかが非常に気になります。見ていないはずはないのでね。特に、“身体芸人” ノリさんが、究極のフィジカル・コメディアンであるキートンをどう見ているのか、すごく知りたい。


チャップリンやロイドとちがって、キートンが生涯に一度も来日しなかったのは、とても残念です。チャップリンの来日については淀川長治さんをはじめくわしい記録が残っているし、また、チャップリンには高野虎市という日本人秘書がいたことがわかっています。これについてはチャップリン研究家の大野裕之さんが詳細な調査をされ、『チャップリンの影 ~日本人秘書 高野虎市~』という本も書かれています。わたしも第3回チャップリン・フェスティバル(京都)で、このテーマについての大野氏の講演を聞いています。

ハロルド・ロイドも、何度も来日している。1960年代に、脱疽に苦しんでいたエノケンこと榎本健一をロイドが見舞った話はよく知られています(ロイドは1920年に撮影現場の爆発事故で右手の親指と人差し指をうしなっている)。







また、小津安二郎はロイドのファンでした。サイレント作品『大学は出たけれど』では、就職浪人している主人公(高田稔)の部屋に『ロイドのスピーディ』(1928)のでっかいポスターが貼ってあるのが見えます。







和服を着た日本人の部屋にロイドのポスターなんて、考えたらおかしいんだけど、小津さんなら全然オッケー。日本的と形容されることの多い小津さんの映画は、実際はとてもハイカラでアメリカかぶれなんですよね。その他、小津さんの「大学生もの」とロイドの影響についてはこちらのサイトにくわしい。

キートン信者のわたしですが、ロイドファンでもあります。

気弱で平凡な中流階級の青年が恋にスポーツに奮闘し、最後には大成功するというストレートな作風は、サイレント喜劇のなかでも良い意味でもっとも「わかりやすい」もので、現代ハリウッド映画の源流にロイドがいたとも言える。『スーパーマン』のクラーク・ケントとロイドの親近性は、よく指摘されるところです。

先日記事にした『ヒューゴの不思議な発明』だけでなく、ちょっと気をつけてみれば、ロイドを引用したりオマージュをささげた映画は数限りなく見つけられます。2月に公開された『ペントハウス』(ブレット・ラトナー監督ベン・スティラー主演)も『要心無用』のビルよじのぼりシークエンスをほぼそのまま引用していました。

意外なんだけど、筒井康隆先生もロイドの大ファンらしい。『不良少年の映画史』によると『ロイドの巨人征服』(1923)を公開当時劇場で6回も観たそうです。最初にDVDで観たときは、わたしにはおもしろさがいまひとつわからなかった。最近観直して、大感動してしまった(笑)傑作だ!







『不良少年の映画史』(文春文庫)が、いきなり超マイナーなコメディアン、モンティ・バンクスの思い出から始まってるのが、なんともすごいというか、うれしいというか。しかも、モンティ・バンクスの最大の(というより唯一の)代表作である『無理矢理ロッキー破り』(1927)をしっかり観ているんだよなあ。




(「キートンさん、ロイドさん、一足お先きに失敬しますよ!」とキャッチコピーが・・・当時のバンクスの勢いを感じます)



それよりなにより、ロイドって、普通にハンサムなのよね・・・特に笑顔!! 八重歯がちらっと見えるあのチャーミングな笑顔に、ヤラれちゃうわけです。









それにしても、益田喜頓、キートン山田、増谷キートン・・・キートンの名前だけは、日本のエンタメ界に脈々と生き続けてるんだけどなあ。それ以外の日本とのつながりは・・・ない(涙)




これは中国か・・・惜しい!



ひとつだけ、以前から気になっていることはあります。
キートン監督主演作『将軍』(aka『大列車追跡』1926)の日本での公開が、本国アメリカよりも早かったのではないか、ということ。以前、何かの資料で公開日をつきあわせたときに、日本の公開日のほうがアメリカより早かったので「おや?」と思ったことがあります。

もしもそうだとすると、その日本公開版のプリントに、削除シーンが残っていたかもしれない、という可能性がわずかに出てくるんです。アメリカでは、いったん公開したあと編集しなおしたという記録がのこっているらしい。もちろん、確認はできておらず、推測の域を出ないのですが。「いったん公開」というのが、実は単なる試写だった可能性もあるし。

『将軍』は南北戦争を忠実に再現した歴史大作コメディです。キートンのインタビューにも出てくるように、公開当時は、一般に南北戦争の記憶がまだ生々しかったため、賛否両論の論争をまきおこしたといいます。「問題作」だったわけですね。だから、いったん公開後に再編集したというのは、ありそうな話なんです・・・

それはともかく。

昔、「知ってるつもり?!」でキートンがとりあげられた回があって、益田喜頓さんがキートンの歩き方を披露したと聞きます。どんな歩き方だったんだろう?この回の放送、ぜひ見てみたいものです。喜頓氏は、キートン関連の資料をこつこつとあつめておられたそうで、いまその資料がどこにあるのかも非常に気になるところです。

はこだて人物誌「益田喜頓」 野球が得意だったのも、バスター・キートンと共通してらっしゃったんですね。








喜頓さん出演のCM2編。この軽み、たしかにキートンの遺伝子だなあ・・・












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4 コメント

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Unknown (keyboze)
2012-04-02 22:05:00
こんばんわ。

私の個人的で勝手な印象として、お笑いの方ではないのですが、俳優の水谷豊さん(特にお若い頃の)がバスター・キートンとだぶります。
おそらく影響を受けておられることもないのでしょうけど、小柄な体型や憂いを帯びた表情をされるところなんかでそう感じるのかもしれません。

以前観た『青春の殺人者』という映画のオープニングなのですが、雨の中、走ってきた車に水をはねられて一瞬立ち止まる“間”とか...、『傷だらけの天使』の何話目か忘れましたが、ショーケンさんが土手をチャリンコで走っている後ろから、走ってきた水谷豊さんが荷台に飛び乗るそのアクションとか...。

細かすぎますが、本当に一瞬キートンのように見えることがありました。

もし、万が一にも水谷豊さんがキートンから影響を受けていたら良いのになぁ...なんて思っています。


そういえば、水谷豊さんはとんねるずのお二人とも仲が良いみたいですね!

以前「食わず嫌い」に出演された時、罰ゲームになった水谷豊さんの名演に、タカさんが「鳥肌たちましたよ」と言ってたのが印象的です(笑)。
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keybozeさん (ファイアー)
2012-04-03 10:47:33
なるほど~水谷豊さん!
たしかに言われてみれば・・・
水谷さんの若い頃はじつはあまり知らないので(熱中時代くらいしか)
そのご指摘はありがたいです。
『青春の殺人者』、観てみたくなります!
そうですよね、コメディアンだけじゃなく、俳優さんも
いろいろ研究なさってるでしょうね。
沢田研二さんも「キートン」っていうコンサートをやってませんでしたっけ?
お好きなのかな?って思ったことがあります。

「食わず嫌い」の水谷さんをおぼえてらっしゃるとは!
keybozeさん、もしやかくれワンフーでは
わたし忘れてました^^;
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Unknown (keyboze)
2012-04-04 00:01:05
沢田研二さん!そうでした!
何か歌の入る舞台劇だったかをされていたみたいですね!
以前YouTubeでバスター・キートンを探していたら、沢田研二さんの動画が出てきたのを思い出しました。

それからとんねるずさんに関しましては、ワンフーですと言うにはおこがましいのですが...、中学の時「夕ニャン」で高校の時「おかげです」といった世代ですから、とんねるずさんから影響大なのは間違いありません。(友達の中にはLP買ってた子もいたなぁ)
ですので特別詳しいわけではないのですが、番組で観ていた細かい所をピンポイントで憶えていたりするんですよね(笑)。
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keybozeさん (ファイアー)
2012-04-04 22:04:38
ジュリーのライブ自体は見たことないのですけどね~観るべきかしら。
高校で「おかげです」ですか。おっ、同世代ですね

そうそう、水谷豊さん主演の新作映画『愛しの座敷わらし』は、
安田成美ちゃんが奥さん役なんですよね。
観たいです!
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