This is me.

- 無用の用 -

生と死

2009-09-26 09:32:57 | Weblog
木曜日。
自宅から最寄り駅に向かう最後の曲がり角に、花束やらが手向けられているのを見た。
一番手前に犬の水飲み用のお皿が置いてあった。

その犬は見るからに老齢で、この夏の暑い時も外に出て、ずっと寝ていた。
帰り道で起きて歩いている姿を見かけたこともあったが、ふらふらふらふらして、この犬は大丈夫なのだろうか、といつも思っていた。
こんなに暑いのだから、犬の高さの体感温度はおそろしく高いだろう。家の中に入れてやればいいのに、と思ったが、そこは立ち飲み屋で、店に犬を入れることは出来ないのだろうな、と考えた。

連休前にその犬を見たとき、本当によろよろで、本当に大丈夫なのか、と思ったのを覚えている。

花束やらを見て、それらのことが一瞬のうちによみがえり、その犬が死んでしまったことを知った。

私は暫く立ち止まり、というかそのことに思い至って動けず、彼(彼女)の姿をしばし思い出していた。




金曜日。
母親の携帯に、母が時々出かけている訪問看護先のおばあちゃんが危篤状態だという知らせが入った。
母は「では明日伺います」と言って切った。
しばらくして、また電話をしているみたいだった。
「今日うかがってもよろしいでしょうか?変に思われたりしないですかね?」と言っている声が聞えた。
その後「ちょっと行ってくるわ。晩ご飯もうあるから、あとは焼くだけやし、用意頼むわ」と言って出かけて行った。

土曜日。
朝、母の携帯にメールの着信音が流れた。
一瞬嫌な顔をし、時計に目を走らせる。
メールを確認して「ああやっぱり・・・。午前2時に亡くなったみたいやわ」とぽつりと言った。

母の訪問先の人なのだけど、ちょっとした用事があり、私も一度会ったことがある。
昔は踊りの先生をしていたらしく、とても貫禄があり、人生を真っ直ぐ生きてきた、自分に自信のある、そんな昔の人独特の雰囲気を纏った人だった。

母はとても真面目に、患者さんのことを第一に考えて仕事をする人で(私は母の仕事に対する姿勢にとても尊敬している)、また愛想も良く、注射の腕もぴか一なので、その人にすごくかわいがってもらっていた。
そして、3人居る娘さんとの一人と同じ歳ということもあり、娘さんとも気も合ったみたいで、仲良くしてもらっていた。
そんな感じで、その家族に母は訪問看護を通して、入り込んでいた。

母は普段患者さんが亡くなってもあまり表立って泣かないが、やはり今回は違うかった。
「うちのオカンに似てたから」と言ってた。






死、とは何なのかを考える。
一匹の犬、一人の人が死ぬということは一体どういうことなのだろうか。
体はそこにあるのに、問いかけても答えない。動き出すこともない。
もう声も聴けないし、意思の疎通も出来ない。

いつか絶対死ぬのに、何故人間は動物は生命は誕生するのだろうか。

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2 コメント

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捉え方による (もぐ)
2009-09-27 20:29:57
勝手な想像ではあるんだけど、、、

お母さんの涙は、亡くなったおばあさんの人生に関わることができた喜びみたいなものがあってこそなのかなぁ、、と。

手向けられた花は、死んだ犬が愛されていた証なのかなぁ、、と。


もちろん、本当がどうであるかは分からないけどね。
亡くなる人、それを見送るひとの気持ちは本人にしか分からんし。


因みに。。。

悲しみや喪失感とかその他、人間が死に対して抱く感情や、目に見える現象だけが「死」の全てではないと思う。
「生」も同じかな。

いや、別にオカルト的な考えのつもりじゃないんだけど(オカルトかもしれんけど)、
「生と死」って、自分が知っている以上にいろんな側面を持っているんだろうなーという想像です。



逆に「生と死は、あらかじめ決められた自然現象でそれ以外の何でもない」という考え方もできるなぁ。
誰が何を思おうが、何をしようが生まれるものは生まれるし、死ぬものは死ぬから。
生まれて死ぬという現象自体に、人間の感情や行動や思い出は全く関係ないから。



実際はよくわからない。
「生と死」には、何とも答えの導きようがない理不尽さが常に付きまとっていて、それ故に色々な感情が生まれるのかもね。


考えがまとまらずにほぼ独り言状態でしたすまん。

ではまた


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もぐさんへ (えり)
2009-09-27 22:43:19
いや、謝らないでよ。
この記事にコメントが付くとは思ってなかった。ありがとう。

こういう事態に遭遇すると、地球ってなんだろうとか人間ってなんだろうとか、今時小学生でも考えないようなことを色々と考えてしまうわ。


>お母さんの涙は、亡くなったおばあさんの人生に関わることができた喜び~

こういう発想が出来るのが素敵やよね。
その人の良さというのが現れているとそんなふうに思った。
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