何故か?
肝心の中身が減ってしまうから。
当たり前か。
財布を買うという行為ってどうも抵抗がある。じゃあ買わなきゃいいんやけど。
しかし、一目惚れしてしまった。なかなかピンとくるものに出会うってそうそうない。一目惚れっていうか、二目惚れっていうか。うーん、意味わからんな。
出かけたついでに、そろそろ何か羽織るものを買おうと思い、ショッピングビルに向かった。
目的のお店に行く前に、とあるお店に入った。すごく好きなお店なのだけど、そのお店では何も買う気はなかった。たしかそのお店は他に店舗がなく、普段あまりその近辺に行くことがない私は、とりあえず久しぶりに行ってみよう、そういう感じだった。
そしてその財布と出会ってしまった。
何気なく手に取ったら店員さんが寄ってきて、それについての説明が始まった。
すごく変わった財布で、長財布なのだけど、ジッパーが上辺と側面片側にあり、それをジーっと開けると、中は一見普通の感じなのだけど、小銭入れのところにジッパーがない。ジッパーがないけど、小銭が中でこぼれないという仕組みになっている。
すごく上手く作っていると思った。
私はこういうのに弱い。
長財布は一度は持ってみたいと思っていて(入れる金なんてほとんどないが)、それにそろそろ財布を変えたいと思っていた。
そこに、そんな手品みたいな画期的な財布が登場して、しかもかなりオシャレで、しかもしかも私の好きなお店となれば、かなりこれは気持ち的に買う寄りになるじゃないか。
しかし、一度頭を冷やそうと思い「考えます」と言い、店を出た。
中身はない。ほとんど働いていないので、余裕なんて一ミリもない。
だけど、財布が欲しい。買うならあの財布が欲しい。
だけど、今買わなくてもあるやつで十分使える。
だけど、欲しい。このチャンスを逃すのか。
だけどだけど、余計にお金がなくなっちゃうよー。
という脳内の争いを聞きながら煙草をふかす。
とりあえずカードで支払うのはやめようと思い、ATMを探す。
・・・・・・この時点で買う気満々か。いや、財布の中にはほとんどお金が入ってなく、お金を使う予定がこの後もあるからそのために下ろそうと思い、ATMを探した。
見つけた。
下ろした。
お店に向かう途中の道で立ち止まる。
右に行くとお店。
左に行くと帰る道。
・・・・・・今年の夏はむぎわら帽子が欲しくて、何軒か見に行った。気に入ったのがあったけど高かったので、とりあえずやめた。それから一ヵ月後、他へも色々見に行ったが、やはりあの帽子が欲しくなり、買いに行った。そしたらもう売り切れていた。しかも私の目の前でレジをしている。・・・・・・あと5分来るのが早ければ。その帽子は手作りで、最後の一点だった。家に帰ってすぐに他の店舗にあるか電話をしまくった。かろうじて、あった。すぐにお取り置きにしてもらい、後日店に行って、買った。
ということを思い出していた。
自分の性格を考えた結果、私の足は右の方向へ向かっていた。
結局、買った。
こんな出会いなかなかない。うん、満足。
しかし、悲しいのか嬉しいのか。
さあ、まあ、ぼちぼち働こうじゃないか。