This is me.

- 無用の用 -

28『海辺のカフカ(上・下)』村上春樹

2008-04-29 00:24:01 | 本 2008
村上春樹『海辺のカフカ』(上・下)

【内容情報】
「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」―15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真…。



やっと読めた。もうずいぶん前からチェック入れてたんだけど、今まで機会がなかった。この今、読めてよかったと思う。

いやぁ、ほんとよかった。
なんだろうね。前も書いたかも知れないが、力強いようでそうでない。迷いがないようでそうでない。この雰囲気が何とも言えない。

うーん、悪くない、なぁ。
もしかしたら、はまっているのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
やれやれ。
と言った具合。

話の運ばれ方とか会話とかは村上春樹って感じだったけど、最後の終わり方はちょっとなんか意外な気がしないでもなかったなぁ。

村上春樹作品はすごく好きだけど、なぜだか性描写だけはあまり好きじゃないかな。何故だろう。よくわからんが。


「(略)風は物体ではない。それは空気の移動の総称にすぎない。(略)」

「(略)息をのむような素晴らしい思いをするのも君ひとりなら、深い闇の中で行き惑うのも君ひとりだ。君は自分の身体と心でそれに耐えなくてはならない」

これとか好きだったなぁー。なんかわからんけどね。理由はない。




「でも僕にはまだ生きるということの意味がわからないんだ」

  

27『体は全部知っている』吉本ばなな

2008-04-20 22:49:44 | 本 2008
吉本ばなな『体は全部知っている』

【内容情報】
「アロエが、切らないで、って言ってるの。」ひとり暮らしだった祖母は死の直前、そう言った。植物の生命と交感しあう優しさの持ち主だった祖母から「私」が受け継いだ力を描く「みどりのゆび」など。日常に慣れることで忘れていた、ささやかだけれど、とても大切な感情―心と体、風景までもがひとつになって癒される13篇を収録。
みどりのゆび/ボート/西日/黒いあげは/田所さん/小さな魚/ミイラ/明るい夕方/本心/花と嵐と/おやじの味/サウンド・オブ・サイレンス/いいかげん



面白いよ、と前に薦められていたので読んでみた。
実に面白かったです。はい。
なんだろう、この感じ。このタイトルはぴったりだ。
どういう人生を歩んできたらこんなお話が書けるのだろう。
今の自分の状態がこんなだから、不安定だからか知らないが、とても良かった。
良かった、と一言で片付けるには非常に勿体ない。
切なく甘く愛おしい、そんな感じ。


26『凶笑面』北森鴻

2008-04-17 17:51:31 | 本 2008
北森鴻『凶笑面』

【内容情報】
“異端の民俗学者”蓮丈那智。彼女の研究室に一通の調査依頼が届いた。ある寒村で死者が相次いでいるという。それも禍々しい笑いを浮かべた木造りの「面」を、村人が手に入れてから―(表題作)。暗き伝承は時を超えて甦り、封じられた怨念は新たな供物を求めて浮遊する…。那智の端正な顔立ちが妖しさを増す時、怪事件の全貌が明らかになる。本邦初、民俗学ミステリー。全五編(鬼封会/凶笑面/不帰屋/双死神/邪宗仏)。



これはすごいなぁ。ミステリーでしかも短篇でしかも民俗学が絡んでて且つ簡潔に完結しているという・・・。
ちょっと難しい部分があったけど(以前「不帰屋」が収められた短編集を読んだ時にも書いたと思う)理解出来ない部分はなく、そこになんというかこの何とも言えない感触。
蓮丈那智という人物も非常に魅了的だ。

あとこのシリーズで2作品が出されていて、この本に登場するある人物でもシリーズがあり、また蓮丈那智が他の作品にも出ているらしい・・・。うまいなぁ。全部読みたくなるじゃないか。

しかも解説の最後の部分が編集部の要請により削除されているという。「シリーズ第二集をお読みください」だってさ。ふにゃー


25『あたしの中の…』新井素子

2008-04-13 23:11:58 | 本 2008
新井素子『あたしの中の…』

【内容情報】
あたしが目を覚ますと、そこは病室。なんでもあたしの名前は田崎京子で、バスの転落事故に巻き込まれて奇跡的に助かったらしい。しかもこの一週間で二十九回も事故にあっているのに、まったくの無傷らしい。けれどあたしには記憶がない!警察はあたしのことを疑っているみたい。あたしは誰なんだろう…!?(「あたしの中の…」)表題作ほか三編(ずれ/大きな壁の中の外/チューリップさん物語)を収録。新井素子デビュー作の新装版。



この年でコバルト文庫を読むとは思わなかったけど、いつの間にかこの本がリストに入っていたので気になって読んだ。
コバルト文庫ですよね・・・?と聞きたくなるような本。確か少女小説だよなぁ。これ若い子が読むの?それっぽい雰囲気があるけど、いやぁ・・・信じられない。
表題作は作者が16歳の時に書いたものらしいが、何度も書くが確かにそれっぽい雰囲気はあるけど、いやぁ・・・すごい。
要はSFなお話ばっか。内容は怖い。よく考えると怖い。いや、私の場合よく考えなくても怖いと思ったな。
解説を星新一が書いてるのだけど、似た様な雰囲気がある。ちょっとブラックていうか何というか。ちょっとじゃないかもしれないなぁ。
全体的に、地球が滅びる、というのを出してる。それをさらっと書いてくれてる。
いやぁ、また新しい人を見つけた感じ。他の作品も読んでみようかな。


24『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上・下)』村上春樹

2008-04-11 17:37:04 | 本 2008
村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上・下)』
第21回谷崎潤一郎賞受賞作。

【内容情報】
高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。



これはとても面白かった。今まで何冊か村上春樹を読んだが、一番好きだ。2番目は『羊をめぐる冒険』かな。

本は薄いのだがぱらぱらめくってみると、字がびっしり印刷されてある。ここまで字があるといくら本が好きとは言え、一体読み終わるまでに何日かかるのだろう・・・とどんよりとした気持ちになっていたが、あらすじにも書かれているように、二つの物語が同時進行していく所為か、面白い所為か、たぶん後者だろうすらすら読めた。

最初は字の多さや上下に渡った長さにどんよりしていたのだが、最後の方にいくに従ってこの物語が終わってしまうのか、と暗い気持ちになった。なんだか終わってしまうのがとても寂しかった。


この世界は一体何なんだろう。そして、それを作り出した村上春樹とはどのような人物なのだろう、ととても興味をそそられた。ここまでなったらハマった証拠である。多分。
この、なんだかすべての物事に対して諦めたような、割り切っているような主人公の考え方。しかし、実際にはとても混乱し迷う。一見矛盾しているようだが、矛盾はしていない。そういうものなのだろうな、と思わされる。
「わからない」「そうかもしれない」が口癖。優柔不断のようだがそうではない。しかしそういう部分も持ち合わせている。

うーん、素晴らしかったな。

あと、とても印象に残った言葉も多かった。
「あんたが何を質問するかはそれはあんたの勝手だが、それに答える答えないは俺の勝手だよ」

『よくわからない、と私は言った。私はだいたいが正直な人間である。(略)曖昧な言い方はしない。トラブルの大部分は曖昧なものの言い方に起因していると私は思う。世の中の多くの人々が曖昧なものの言い方をするのは、彼らが心の底で無意識にトラブルを求めているからなのだと私は信じている。そうとしか私には考えられないのだ。』

「みんなうまくいくって信じていれば、世の中に怖いものなんて何もないわよ」
「年をとると、信じることが少なくなってくるんだ」「歯が擦り減っていくのと同じだよ。べつにシニカルになるわけでもなく、懐疑的になるわけでもなく、ただ擦り減っていくんだ」

「これはみんな過ぎていくことなのよ。悪いことはかさなるものかもしれないけれど、いつかは終ることなのよ。永遠につづくことじゃないわ」

離婚をしている主人公。結婚生活がうまくいってなかったから離婚したの?と聞かれ、それはうまくいっていた、と答えたあとの言葉。
「でもそんなのは物事の本質とはあまり関係ないんだ。二人で同じベッドで寝ていても目を閉じるのは一人だ」


最後のは素晴らしいと思った。何度も何度も繰り返し読んだ。これこそ私が常に人は結局独りだと感じているものを言い表した言葉だと思う。実にその通りだ。どんなに一緒に寄り添っていたって、結局はそうなのだ。

  


23『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』J. K. ローリング

2008-04-03 20:27:25 | 本 2008
J. K. ローリング『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』

【内容情報】
ホグワーツ魔法魔術学校5年目の新学期を目の前にして、15歳のハリー・ポッターは思春期のまっただ中にいる。なにかというとかんしゃくを起こしたり、やつれそうなほどの恋わずらいをしたり、強烈な反抗心でいっぱいになったり。鼻持ちならないダーズリー一家と過ごす夏は、相変わらず腹の立つことばかりで退屈きわまりなく、しかもこの休み中は、マグルでない級友たちと連絡をとる機会がほとんどなかった。ハリーはとりわけ、魔法界からなんの知らせもないことにいらついていた。復活したばかりの邪悪なヴォルデモート卿がいつ襲ってくるかと、気が気ではなかった。ホグワーツに戻れば安心できるのに…でも、本当にそうだろうか?



前作も長かったけど、今回も長かった。読み終えるのに時間が結構かかったなぁ。携帯版だけれど上下巻だ。

色々詰まった本だなぁ。一応児童書だと言うけれど、うーん。
とっても切ない雰囲気。

あと2巻で終わりか。終わりはなんとなくは想像出来るけど、でもきっと驚くような展開があるんだろうな。
早く発売してほしい。