「やあ、ハンス元気そうじゃないか」
『ヴィムも元気そうで何よりだ』
「こうやって酒場で一杯やるってのも久しぶりだなあ」
『そうだなあ。
昔は毎晩呑んだっけ?』
「ああ、ゲラルトと三人で一緒にな!」
『ああ、あの頃は良かった。
三人で酒を呑むだけで楽しかった』
「まあ、畑仕事ばかりなのは今も変わっちゃいないが、確かにあの頃は良かったよな」
『ああ』
「ところで、お前んとこのかあちゃんは元気なのか?」
『お陰さまで病気一つせずぴんぴんしてるよ。
今日も朝から息子のギルベルトが何やったんだかしらないが、こっぴどく怒られてたよ』
「女はかっかして怒鳴ってるうちがいいもんだよ」
アッハッハッハ
「そう言えば、ゲラルトが一人もんに戻ったらしいぞ」
『そうなのか?
うまくいってなかったのか?』
「いや、俺も詳しいことは知らないんだがな。
どうやらあっちの方でやっちまって、とうとうかあちゃんが出て行ったとか」
『ああ、アイツは昔からそうだった。男の俺でも手に負えないよ。
仕事は真面目にするやつなのに、女にはどうも弱えんだよな』
「悪いやつじゃないんだけどな。
男は仕事だ!とかなんとかいつも言ってたじゃねえか」
『ああ、働きものとしては、ゲラルトに勝るやつはいねえ」
「ところで、お前んちはどうなんだ?しっかりやってんのか?」
『おお当たり前じゃないか。
毎晩手を繋いで寝てるよ』
「かー!いい年こいて何やってんだか」
『まあな。』
「で?あっちの方はどうなのよ?今でも現役か?」
『ん?現役?なんだ?どういう意味だ?』
「お前、別にオレ相手に隠す必要はないだろう」
『オレはお前に何も隠し事なんかしちゃいないぞ』
「お前、まさか、本気で言ってるのか?」
『何がどうしたってんだ?オレはいつも本気だぞ。
どうした?もう酔っ払っちまったか?』
「・・・」
『何かおかしいか?変か?』
「いや、そんなことはねえんだが・・・。
ちっと聞いていいか?」
『前置きするなんてお前らしくないな。なんでも訊けよ』
「お前ガキがいるよな?」
『ああ、ギルベルトとかわいいかわいいユスティーネがな』
「お前、ガキの作り方知ってるよな?」
『当たり前じゃないか。
結婚したら出来るのは当然だろ?』
「いや・・・お前、結婚してから、その、なんだ、かあちゃんに手を出したことはないのか?」
『手を出す?どういう意味だ?』
「いや、だから、その」
『なんだ、お前らしくない。歯切れが悪いなあ』
「手を出すってのは、つまり、ほら、あれだ。乳を触ったりだ」
『ああ、そういうことを言ってたのか。
いや、俺はあいつと一緒になって27年になるが、あいつの裸一つ見たことねえ。
なんだって言ってったけなあ。あいつが言うには、宗教上の、なんだ、そういう関係らしい』
「・・・」
『それはそうと、今年からユスティーネが仕事を始めてな!あのおちびさんがよ。オレも歳を取るはずだぜ。
今は勉強の時期だから、って毎晩遅くまで残業して、それからまたうちでも勉強してるよ。
あの仕事への真面目さは誰に似たんだか。ゲラルトも顔負けじゃねえのか?ハッハッハッ!』
「・・・・・・・」
ちょっとシュール過ぎたかな。
昼寝して起きた途端にこの話が頭にブワーっと浮かんだ。
時々ある。起きて気付いたら知らない旋律が頭にぐるぐる回ってたり。
一体なんだろう。