This is me.

- 無用の用 -

『大河の一滴』 著:五木寛之

2006-10-03 22:42:05 | 
この本に出会えて本当によかったと思う。

あとがきの後ろの解説に「不安だったり、自信喪失に陥ったりしている人には、とりわけ効き目を発揮するだろう」と書かれているが、本当にその通りになった。

宇宙は一つの色で塗りつぶされてはいない。
「あれか、これか」ではなく、「あれも、これも」という考えで生きればいい、どっちか一つではなく、両方とも受け入れる。そうすれば気が楽になる。両方あるからこそ、それぞれが成り立っている。

ネガティブが悪いと一般的に思われているかも知れないが、それがそうだとは限らない。
ポジティブがあるからこそ、ネガティブがある。
逆もまたしかり。と言う事だ。
闇があるからこそ、光が見えた時の感動がひとしおになる。
すべて肯定していく考え。

以前にどこかで「自分を許容出来る範囲しか他人を許容出来ない」と書かれていたのを思い出した。
同じ様なことも書かれていたと思う。

すべてを受け入れる。受け入れる、または許すことが出来なくても、それが出来ない自分を受け入れる。それが大事だと。
この言葉はある方が同じ様な事を仰っていた。
自分を愛せないで、誰が自分を愛してくれるのか?
自分をもっと好きになりなさい、貴女は本当に素直で素敵な人なんだから、と。
いつもいつもその方は私を、恥ずかしくなるぐらい褒めてくれる。
最初はなかなか受け入れられなかったが、ようやく最近受け入れられる様になってきた。
受け入れられなくても、言葉だけでも受け入れる体制を作ろうと「ありがとう」という一言が大切だと思う。


人は生まれてきた時点で死へ向かっているのだ。
それは当たり前の事だが、こんな事を真剣に考えない人が多いだろう、と。
こんな事ばかり考えているネガティブな人は悪い(と言ったら大袈裟かも知れないが)と言う風な雰囲気があるが、それは決して悪い事ではない。当たり前の事なのだと。
どれほどの人生があるか解らないが、一度は立ち止まってそういう事を考えられる時間があったのはとても重要な事ではないか。そう思った。


とても印象的に残ったのが
『あれもこれも、生も死も、光も影も、喜びも悲しみも、みんな抱えこんで生ずる混沌を認め、もう少しいい加減に行儀悪くなって、たおやかな融通無碍の境地をつくることが、枯れかけた生命力をいきいきと復活させ、不安と無気力のただよう時代の空気にエネルギーをあたえることになるのではないか。
いろいろなものを受け入れて、たくさんのものを好きになった方が人生、楽しいのではないか。』

特に最後の一行がずっしりときた。

他、いいと思った所を紹介
『人間にはできることには限りがあります。ぼくはある程度あきらめるということも必要だと思います。「あきらめる」の語源は「あきらかにきわめる」ことです。物事を明らかにして、人間にはできないこと、どうしようもないこともあるのだと理性的に確認するということです。』


大袈裟かも知れないが、この本によって私は救われた。そんな感じがした。