漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 493

2024-08-21 06:01:06 | 貫之集

はるがすみ とびわけいぬる こゑききて かりきぬなりと ほかはいふらむ

春霞 飛びわけいぬる 声聞きて 雁来ぬなりと ほかはいふらむ

 

春霞を分けるように飛んで行く雁の声聞いて、雁が来ているらしいと、よそでは言っていることであろう。

 

 春霞の中の分け入るように飛んで行く雁。その声を聞いて雁の来訪を想像で語る「ほか」の人々は、霞で雁の姿が見えない場所にいるということでしょうか。

 本歌は春の霞ですが、貫之には秋の霧を材料に詠んだ類歌もあります。

 

あきかぜに きりとびわけて くるかりの ちよにかはらぬ こゑきこゆなり

秋風に 霧飛びわけて 来る雁の 千代にかはらぬ 声聞こゆなり

(後撰和歌集 巻第七「秋下」 第357番)