漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0364

2020-10-28 19:07:49 | 古今和歌集

みねたかき かすがのやまに いづるひは くもるときなく てらすべらなり

峰高き 春日の山に 出づる日は 曇る時なく 照らすべらなり


藤原因香

 

 峰の高い春日山に出た日は、曇る時もなく地上を照らし続けるでしょう。

 「出づる日」は誕生した皇子の比喩。詞書には「春宮の生まれたまへりける時に、参りてよめる」とあります。
 作者の藤原因香(ふじわら の よるか)は、0080 以来久々の登場。そこでは「藤原因香朝臣」とされれていた作者名が、ここでは「典侍(ないしのすけ)藤原因香朝臣」と書かれており、以降の歌でもこれが踏襲されます。典侍の職に就く前と後それぞれの時点での詠歌なのでしょう。

 

 この巻で唯一、誕生を祝うこの歌をもって巻七「賀歌」は完結。次の 0365 から巻八「離別歌」となります。