エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

日銀の成長戦略策定とエコポイント

2011-04-13 06:36:19 | Weblog
日銀は、10年7月以来日本経済の成長基盤の強化策推進しています。これは、政府が同年6月にとりまとめた新成長戦略と歩調を合わせ、いわば「日銀版成長戦略」と言えるものです。
 日銀が、単なる金融緩和策ではなく「成長基盤の強化策」に目を付けたのは、日本経済が長らく「流動性のわな」(ケインズ)に陥り、日本経済の成長期待の低下=「自然利子率」(望ましい資源配分を実現するための実質利子率の水準で、潜在成長率にほぼ等しい。今や中央銀行関係者からも支持されている考え方)の低下があるという認識に基づいています。企業や個人が将来の経済に明るい展望を持てないため、設備投資や個人消費が思ったように回復せず、需給ギャップが長期間にわたり継続しているのです。
 記者会見において、白川総裁は「民間金融機関による成長基盤強化の取り組みを資金供給面から支援する方法を検討する」と発言していますが、具体的な内容は明らかにしていません。ただ、「成長分野」として、イノベーションを促進する研究開発、科学技術振興、環境エネルギー事業などに触れました。
この日本銀行の動向に触発され、「日本型スマートグリッド」を構築する際の重要な政策として、エコポイントを成長戦略として活用すべきことについて、述べてみたいと思います。最先端の経済学の観点を踏まえたものです。
 日本経済の最大の課題は、「流動性の罠」がもたらす投資機会の不足と消費機会の不足です。このため、慢性的に資金の供給過剰状況が出現し「自然利子率」がマイナスとなっています。その定義からも明らかなように、自然利子率を金融政策や財政政策で上昇させることはできません。自然利子率を上昇させるためにはイノベーションを起こすことが必要です。ちなみに、「イノベーション」とはシュンペーターが提唱した概念であり、プロダクト、プロセス、マーケット、サプライチェーン、ビジネスモデルの5つのタイプがあります。このうち最も需要なのは、新しいビジネスモデルの構築です。
 自然利子率を高めるためには、「アニマルスピリット」(ケインズ)を高めてリスク・テイクを増やす環境を整えるとともに、マネーによる購買力の退蔵を回避して消費を喚起する手段を登場させることが必要です。前者で重要になるのは、期待収益率を高めるための政府による明確なコミットメントとスマートレギュレーション(賢明な規制)ですが、後者に関してはエコポイントを発展させることが処方箋となります。エコポイントは、巷間考えられているようなイメージとは異なり、「真のグリーンイノベーション」を実現する手段です。
エコポイントには、利子がつかないすなわち名目利子率ゼロであり、ポイントの有効期限が設定されているというマネーとは異なる性質があります。「流動性のわな」の下ではマネーは家計等に退蔵されてしまい消費が喚起されません。現に、前麻生政権下で実施された2兆円の定額給付金によって増えた消費支出はわずか6300億円で、名目GDPに占める割合は0.13%にすぎません。これに対してエコポイントは、利子を生まないので長期保有のメリットがなく、逆に有効期限が来ると価値を喪失しまうので、次に使われることを想定した価値媒体であると言えます。したがって、「流動性の罠」の下でも貨幣の流通速度を上昇させることにより、消費財に関する消費貯蓄選択を刺激して消費需要を増大させることができます。そうなれば、投資需要も喚起されます。

イギリスのシステム利益課金とボイラー転換

2011-04-12 02:33:37 | Weblog
イギリス政府は、省エネルギーに関してユニークな試みを行っています。すべての電力ユーザから年間1ポンド(1ポンド=約147円)のシステム利益課金(System Benefit Charges)を徴収して、「エナジー・セービング・トラスト」(Energy Saving Trust)により、各種の省エネ事業を促進するための助成が行われています。
イギリス政府はこの制度を活用して、2010年からボイラー買い替え促進策するための「ボイラー買い替え促進策」(Boiler Scrappage Scheme)を実施し、条件を満たした各家庭に対して400ポンドの助成を行うことで、エネルギー効率の低いボイラーから高効率ボイラーへの転換を進め、当面、年間14万トンのCO2削減を目指しています。総額5,000万ポンド、12万5,000世帯分です。
 具体的なスキームとしては、各家庭は新しいボイラーの購入と設置費用を前払いし、有効期限内のクーポン券と請求書を「エナジー・セービング・トラスト」に送付すると、400ポンドのキャッシュバックを受けられます。クーポン券は発券後12週間有効で、キャッシュバックは「エナジー・セービング・トラスト」が必要書類を受領後、25営業日以内に実行されます。

「日本テクノ」電気保安からBEMSのサポートへ

2011-04-11 00:04:09 | Weblog
高圧受電設備の監視装置の販売や省エネコンサルティングを手がける日本テクノは、スマートメーターの概念をいち早く取り入れたサービスで急成長しています。日本テクノは、高圧電力を使用する事業者向けに高圧受変電設備(キュービクル)の保安管理を行っている会社です。
 2004年から高圧電気設備の保守点検に民間企業の参入が認められるようになりましたが、その背景には日本テクノの規制緩和への働きかけがあります。また、新しいシステムの下では、高圧電力使用者は法令により専門家(電気主任技術者)による電気設備保安管理点検を月次、年次で受けなければなりませんが、適確な絶縁状態であれば隔月で済むことから、日本テクノのサービスに対するニーズは高いものがあります。
 このため日本テクノは、工場やオフィスにあるはキュービクルのわきに24時間自動監視装置を設置し、顧客の設備の故障原因となる電気の異常を検知するサービスを提供していますが、それととともに、省エネ化にも貢献する電力使用量のデータを集めています。キュービクルの監視情報は常時、無線で日本テクノの監視センターに送られてきます。停電や漏電などの異常があれば警報を顧客の担当者の携帯電話に送り、監視センターから技術担当者へ連絡したり緊急対応を要請したりして知らせる仕組みです。
 監視装置はあわせて、電力会社の電力量計が発するパルス信号から電力使用量についての情報を取得しており、この情報をもとに省エネアドバイスが可能になります。あらかじめ目標となるデマンド値を設定しておき、電力使用がデマンド値を超えると予想された場合に、事業所内に設置した表示装置で知らせるなどして注意を喚起し、エアコンのスイッチを切るなど節電に取り組んでもらっています。また、半年に1度、過去の使用実績のグラフなどをパソコンに示しながら省エネ改善のアドバイスもしています。顧客は、いつでもインターネット経由で前日までの電力使用に関するデータを見ることができます。その意味で、この24時間自動監視装置はスマートメーターの機能も有していると言えます。
 また、2008年7月にはテナントビル用の自動検針システムによるサービスも開始しています。テナントビルはオーナーが電力会社と契約して一括して電気料金を支払い、オーナーはテナントに対し電気料金を請求するケースが多くあります。テナントが支払う料金はテナントに按分(あんぶん)されていますが、その際に明確なルールがあるわけではありません。面積、部屋割りなどオーナー任せになっています。共用スペースの按分をどのようにするかという問題もあります。
 このような状況下では、テナントには省エネのインセンティブが働きにくくなります。また、オーナーはいったん電気料金を一括払いをして、しかる後に定期的にテナントに料金を徴収していますが、その手間がばかになりません。
 そこで日本テクノは、オーナー、テナントと個々に契約を結び、テナントごとに子メーターを取り付けて料金請求・回収をオーナーに代わって行うサービスを提供しています。テナントに対しては、テナントごとに設置されるモニターにより省エネのアクションも誘導するサービスも提供しています。
 日本テクノは2007年に特定規模電気事業者(PPS)に登録し、JEPX(日本卸電力取引所)の取引会員にもなって電力の小売事業を手がけられるようになっています。それを基礎として2010年度末から、電力利用が増えたときに顧客の電気機器の運転を止める機能を設けた電力小売業を開始しています。

なぜスマートグリッドの本質が語られていないのか

2011-04-08 06:50:26 | Weblog
スマートグリッドは、インターネット、コンピューティング、通信(テレコミ)、電力の各種技術を融合させて電力の双方向でのやり取りを可能にするシステムで、日本では20年代半ばまでに国内全域で構築されようとしていますが、このスマートグリッドがもたらす革命の本質がほとんど語られていません。
そのため一般の人々の関心は低く、アメリカでも79%の人々がスマートグリッドには関心がないと答えています。日本でも、スマートグリッドという言葉を聞いたことのある人々は過半を超えると思いますが、自分の生活やビジネスとは関係ないと思っている人々が90%以上であると推測されます。
このことは、15年前のIT革命勃興期にゴア副大統領の「情報スーパーハイウェイ」が一部の人々だけで熱く語られていたことを彷彿とさせます。この「土管の発想」がIT革命の本質ではなく、インターネットがもたらすビジネス革命のみならず生活革命が産み出す膨大なる需要の創造、「ムーアの法則」(半導体の価格性能比が18カ月ごとに半減していくという経験則)に代表されるイノベーション、「メトカ―フの法則」(ネットワークによる価値創造は参加者の2重に比例して増加するという経験則)に代表される自己組織化のネットワーク増殖力が革命の本質であると人々が気づくまでには、少し時間がかかりました。
スマートグリッドの世界でいま起こっていることの本質は、こうした方向、言ってみれば、IT革命がもたらした「You Tube」=誰もが番組をつくり、配信して楽しむパラダイムへの進化に相当する誰もがエネルギー作りに参加できる「You Energy」に向けた進化が起こっていることです。それが「スマートグリッド革命」です。
「You Energy」のパラダイムでは、誰もが発電所となって太陽光発電など再生可能エネルギーを提供し、電力会社に売電したり、電気自動車に搭載されている蓄電池を介して相互に融通したりして、「個人がエネルギーを作り、配電して楽しむ」ということを可能にします。そこでは、供給サイドから需要サイドへのパワーシフトが起こり、誰もがエネルギーを作り消費する主体、すなわちアルビン・トフラーの言った「プロシューマー」となります。そうなれば、インターネット上での双方向メディア、ピア・ツー・ピア(Peer-to-Peer)のファイル共有・情報の自主管理の発展が思い描いたシナリオよりもはるかに大きな変革をもたらすことは間違いありません。
広がりつつある分散型電源は、複雑なソフトウェアや高度なデジタル技術、インターネットによって相互に接続し、「エネルギー&インフォメーションウェブ」を形作っていきます。次世代高機能ケータイであるスマートフォンがその端末となるでしょう。さらに、「エネルギー&インフォメーションウェブ」を活用すれば、省エネによる発電(ネガワット)と太陽光発電による創エネ(ポジワット)を、トータルとして個人・法人による発電ととらえることができます。この多様な主体による発電をエネルギーマネージメントでつなげ、日本全体でヴァーチャル発電所として「スマート国民総発電所」を構築すれば、原子力発電所の数基分~十数基に相当する発電エネルギーを得ることができます。
さらに、再生可能エネルギーは地球環境にやさしいエコの価値を持っていますので、その売電収入やCO2削減分に対応したエコの価値エコの価値をエコポイントやエコマネーという媒介を使って取引するようにすれば、「You Energy ! 誰もがエネルギーを作れる」から「誰もが新ビジネスを創造できる」というパラダイムが生まれ、おびただしいイノベーションの創造が「経済成長&雇用創出」につながるというパラダイムへと発展します。それは、人々が課題解決に向けて新しいライフスタイルを自ら創り、その結果産業と雇用が生み出され、経済成長につながるという、いままでとは逆向きのイノベーション・プロセスです。
そこで強みを発揮するのは一人ひとりのゼロからの創造力です。その主体は市民で、その場は地域です。今日本の課題となっている「地域主権」社会の構築や「新しい公共」の創造にもつながります。このパラダイムの出現が「スマートグリッド革命」が革命たるゆえんです。

2008年5月チェルノブイリ原発事故の現場訪問記(その4)

2011-04-07 06:33:48 | Weblog
廃墟となったプリピャチにおいて受けたブリーフィングは、次のようです。
 「事故発生から36時間経って、住民に避難命令が出た。「3日分の食料持参」の指示に従って住民は着の身着のままでひとり残らずバスに乗せられ脱出した。イヌも後を追ってバスに飛び乗ったが、汚染しているという理由で放り出された。原発から30km以内に居住する約13万5000人のすべての人が移動させられた。」

(「チェルノブイリ原発博物館」訪問)
 チェルノブイリ原発訪問の翌日、キエフ市内にある「チェルノブイリ原発博物館」に行きました。博物館の入り口には、事故当時に救援、復旧に使った軍用ジープ、装甲車等が提示してありました。そこでは、事故の数日後、チェルノブイリ原発からの放射性物質の飛散をできる限り抑えようと、ヘリコプターから大量の砂の空中散布をした兵士が、致死量の放射能を浴びて数多く殉職したことを知り、その遺影とイヌの奇形のはく製を見て呆然としました。そこで得た知識は次のとおりです。
 「ソ連政府の公式発表では、死者は運転員、消防士を合わせて33人だが、それ以外にも事故処理にあたった軍人や予備兵、地下から炉に接近するためのトンネル掘削に駆り出された炭鉱労働者など多数の死者が確認されている。
 放射能被害など長期的な観点から見た場合の死者数は、86年のウィーンでの国際原子力機関(IAEA)の非公開会議で4000人という結論になった。2006年になって世界保健機関(WHO)は9000人とし、国際がん研究機関は1万6000人、環境団体のグリーンピースは9万人と発表した。」
  事故後、子供の甲状腺がんが急増しました。そして今、その子供たちが結構適齢期を迎え、子供を産む年代となってきています。未熟児を出産する確率が高いとされ、放射能被害は未来の世代にまで引き継がれます。
 原子力安全の重要性を心に刻み込んだ2日間でした。

2008年5月チェルノブイリ原発事故の現場訪問記(その3)

2011-04-06 06:53:35 | Weblog
「事故直後、火災は30カ所で発生しました。現場に駆けつけた消防士は、致死量の放射能と濃霧のような煙のなかで火と戦わなければならなかった。 ただ、消防士には放射能が致死量レベルだということは知らされていなかった。」
 広島級原爆500個分もの放射性物質が飛び散り、風やジェット気流に乗って予想をはるかに超える広い範囲に広がりました。ロシア科学アカデミー地球気象研究所の調査では、汚染はウクライナ、ベラルーシ、ロシア西部にかけて、101万1000km2と日本の面積の2.7倍に及びましだ。人体に危険なレベルの汚染地帯は4100km2と、東京都のほぼ2倍になりました。さらに風に乗って、日本を含む北半球全域に拡散しました。

(廃墟となったチェルノブイリとプリピャチ市内)
 チェルノブイリ原発では、案内センターを後にして、かつて住民が暮らしていた隣町のプリピャチを訪れました。映画館、アパートなどコンクリートのビルはまだ少し残っていましたが、木造家屋はほとんどが取り壊されていました。巨大な建屋の並ぶいたる所に瓦礫(がれき)や資材が放り出されていました。軍用トラック、軍用装甲車、軍用ヘリコプターが数機、コンクリートのパネルの大きな山、ねじ曲がった鉄材、鉄板…。それらが錆びた無残な姿をさらしていました。

2008年5月チェルノブイリ原発事故の現場訪問記(その2)

2011-04-05 00:36:24 | Weblog
(「石棺」から200メートルの距離まで接近)
 この「石棺」から200メートルの距離まで接近したとき、戦慄が走り、体調が最悪の状態の下でも緊張感で体が「しゃきっと」しました。「石棺」からは、高さ100メートルくらいの排気筒が突き出ていました。ここでは、チェルノブイリ原発を覆っている「石棺」の壁の一部崩れかけており、壁が崩れないような補強工事をしている最中でした。「石棺」の中には、事故当時原子炉内にあった燃料の95%が、現在も留まっています。
 内部の放射性物質の崩壊熱や雨水でコンクリートの劣化が進み、「石棺」が崩れるかもしれないという状態になっていました。さらに、「石棺」の上部の天井にさびで穴ができ、そこから放射性物質が漏れてきているので、このため、外側をさらに新たな遮蔽壁で覆う計画が持ち上がり、膨大な建設費をかけて「石棺」をさらに覆う「シェルター」の建設工事が進んでいます。日本をはじめとする先進国の技術的・経済的支援を受けてこれからその工事を開始するのだという説明も、その現場で受けました。

 (人類史上最悪の事故の状況)
 「石棺」から100メートルの距離(安全が確保される最大のところまで)接近した現場近くには案内センターがあり、そこでは、チェルノブイリ原発の模型を使って、事故時の詳細なブリーフィングを受けました。その概要は、次のとおりです。
 「事故が起こったのは、86年4月26日午前1時23分44秒(モスクワ時間)。事故の前、チェルノブイリ原発4号炉では、検査と燃料交換のためにいったん停止させるのを機に、ある実験が行われようとしていた。
 事故や停電が重なって原発のすべての電源が失われると、緊急時に大量の水を注入して炉心を冷やすECCSまで止まってしまう。そのときは非常用ディーゼル発電機に切り替わるのだが、動きだすまでに数十秒間の空白がある。その間の電力を確保するため、原発が停止してもしばらく回りつづけるタービンの慣性を利用して発電する実験である。
 停止24時間前の25日午前1時、停止状態にもっていくために出力を下げはじめた。だが、いくつかの操作ミスが重なって出力が下がりすぎた。このままでは実験が続行できなくなる。そこで運転員は、核反応を抑えている制御棒を手動で次々に引き抜いて出力を上げようとした。
 200本あまりの制御棒をほとんどすべて引き抜いた。ところが今度は逆に出力が急上昇しはじめた。緊急停止ボタンを押したが止まらない。あわてて制御棒を下げはじめたところで原発は暴走をはじめ、大爆発を起こし、火柱が夜空高く立ち上った。原子炉上部の1600tもあるフタが吹き飛ぶすさまじいものだった。 」
 これが、人類がかつて経験したことのない最悪の原発事故、最大の放射能汚染のはじまりでした。

2008年5月チェルノブイリ原発事故の現場訪問記(その1)

2011-04-04 00:00:40 | Weblog
(原子力安全と私)
私は、2007年6月から09年6月までの2年間、原子力安全(国際関係担当)の仕事に従事したことがあります。2年間の仕事の過程で、07年7月に起こった地震による柏崎刈羽原子力発電所の運転停止問題も経験し、IAEA(国際原子力エネルギー機関)における津波に関する国際安全基準の作成等にも関与しました。その関係で、今回起こった福島原発事故とは不思議な因縁を感じます。
  08年5月には、ワシントンでのNRC(米原子力規制委員会)との協議、ウィーンにおけるIAEAでの国際会議後、ウクライナの首都キエフでEU原子力安全機関のチェルノブイリ原発安全確保への支援について事情聴取したのち、チェルノブイリ原発を訪れました。1986年にメルトダウンを起こした人類の原子力史上最悪の事故の現場です。早朝キエフのホテルを出発し夕方戻るまで1日間の行程でしたが、原子力発電所があったサイトではメルトダウンを起こした場所からわずか100メートルのところ(安全が確保される最大のところ)まで接近しました。
ウクライナの後はロシアを訪問し、ロシアの原子力安全規制機関であるロステクナゾール(次官以下との会談)、原子力・放射線安全科学施術センター、原子力開発を担当するロスアトムとの協議を経て日本に帰国しましたが、チェルノブイリ原発訪問は、生涯の記憶に残る鮮烈なものでした。そのときの訪問記を改訂しましたので、4回に分けてお送りします。

 (ホテルからチェルノブイリ原発へ)
 チェルノブイリ原発は、ウクライナ共和国(旧ソ連)の首都キエフから約100km北にあります。チェルノブイリ原発訪問当日の天候は晴れ。ただ、ワシントン、ウィーンでの国際会議の連続と長旅、そして何よりも時差により前日はほとんど眠られず、体調は最悪の状態でした。内部被爆を恐れて、ペットボトルを何本も車に積み込んだ上での出発でした。
 原発に近づくと30km手前に検問所があり、検問手続きのためしばし待たされました。検問より先は、いまだ立入禁止区域となっています。検問所の脇には、「チェルノブイリ」 原野が広がっていました。「チェルノブイリ」とは、このあたりに多い雑草のヨモギの1種で、これにちなんで原発の名が付けられました。よく見ると、周囲にはリンゴやスモモの木も点在していました。
 手続きが済んで検問所を通過すると、放射能汚染によってゴーストタウン化したアパート、強制的に取り壊された村の跡もありました。いよいよチェルノブイリ原発に近づくと、往時は原発からの電力を送電した送電線が見えてきました。チェルノブイリ原発のサイトでは、まずチェルノブイリ原発を覆っている「石棺」の修復作業に携わっている現場の責任者の話を聞き、事故後22年経過してもまだ安全確保のための作業が継続していること、日本をはじめとする先進国が毎年G8サミットでの合意に基づいて技術的・経済的支援をしていること、これらの努力が未来永劫続けられなければならないことなどを改めて認識しました。
 チェルノブイリ原発を覆っている「石棺」とは、事故後の大混乱のさなか、放射能の拡散を抑えるために、コンクリート30万m3、鉄骨6000tなどをかき集めて、原発をそっくり覆ってしまうために構築されたものです。作業部隊は重さ20kgもの防護服を着て、強い放射線のために1回の作業は1分13秒しかつづけられないという過酷な状況下で働いたと言います。

スマートグリッドの本質を一言で表現すると「You Energy!」

2011-04-01 07:13:59 | Weblog
スマートグリッドの本質を一言で表現すると、「You Energy!」となります。これは、「誰もがエネルギーをつくれる時代}です。原子力発電所を新増設しなくても、私たち一人ひとりがエネルギーをつくれる時代が到来するというパラダイムシフトです。
 スマートグリッドは、エネルギーに関する市民へのエンパワーであり、「エネルギーの情報化」が「エネルギーの民主化」へと発展します。エネルギーの相互融通も可能となります。