エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

2008年5月チェルノブイリ原発事故の現場訪問記(その2)

2011-04-05 00:36:24 | Weblog
(「石棺」から200メートルの距離まで接近)
 この「石棺」から200メートルの距離まで接近したとき、戦慄が走り、体調が最悪の状態の下でも緊張感で体が「しゃきっと」しました。「石棺」からは、高さ100メートルくらいの排気筒が突き出ていました。ここでは、チェルノブイリ原発を覆っている「石棺」の壁の一部崩れかけており、壁が崩れないような補強工事をしている最中でした。「石棺」の中には、事故当時原子炉内にあった燃料の95%が、現在も留まっています。
 内部の放射性物質の崩壊熱や雨水でコンクリートの劣化が進み、「石棺」が崩れるかもしれないという状態になっていました。さらに、「石棺」の上部の天井にさびで穴ができ、そこから放射性物質が漏れてきているので、このため、外側をさらに新たな遮蔽壁で覆う計画が持ち上がり、膨大な建設費をかけて「石棺」をさらに覆う「シェルター」の建設工事が進んでいます。日本をはじめとする先進国の技術的・経済的支援を受けてこれからその工事を開始するのだという説明も、その現場で受けました。

 (人類史上最悪の事故の状況)
 「石棺」から100メートルの距離(安全が確保される最大のところまで)接近した現場近くには案内センターがあり、そこでは、チェルノブイリ原発の模型を使って、事故時の詳細なブリーフィングを受けました。その概要は、次のとおりです。
 「事故が起こったのは、86年4月26日午前1時23分44秒(モスクワ時間)。事故の前、チェルノブイリ原発4号炉では、検査と燃料交換のためにいったん停止させるのを機に、ある実験が行われようとしていた。
 事故や停電が重なって原発のすべての電源が失われると、緊急時に大量の水を注入して炉心を冷やすECCSまで止まってしまう。そのときは非常用ディーゼル発電機に切り替わるのだが、動きだすまでに数十秒間の空白がある。その間の電力を確保するため、原発が停止してもしばらく回りつづけるタービンの慣性を利用して発電する実験である。
 停止24時間前の25日午前1時、停止状態にもっていくために出力を下げはじめた。だが、いくつかの操作ミスが重なって出力が下がりすぎた。このままでは実験が続行できなくなる。そこで運転員は、核反応を抑えている制御棒を手動で次々に引き抜いて出力を上げようとした。
 200本あまりの制御棒をほとんどすべて引き抜いた。ところが今度は逆に出力が急上昇しはじめた。緊急停止ボタンを押したが止まらない。あわてて制御棒を下げはじめたところで原発は暴走をはじめ、大爆発を起こし、火柱が夜空高く立ち上った。原子炉上部の1600tもあるフタが吹き飛ぶすさまじいものだった。 」
 これが、人類がかつて経験したことのない最悪の原発事故、最大の放射能汚染のはじまりでした。