エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

住宅エコポイントと住宅産業の転換期

2011-04-14 06:51:19 | Weblog
住宅版エコポイントを契機としてビジネス開拓をしようという動きが盛んになっています。住宅版エコポイント制度では、省エネ性能の高い住宅の新築には一律30万ポイント、窓や断熱材のリフォームでは最大30万ポイント、標準的な戸建て住宅(10窓)では15万ポイントがもらえ、そのポイントは商品券や地域の特産品のほか、風呂や台所、壁のリフォームにも使えます。
 これを断熱窓などのビジネスチャンスにしようとしているのがサッシ業界です。断熱窓には、既存の窓枠に内窓を後付けする方法、古いサッシを丸ごと交換する方法、ガラスを二重ガラスにする方法の3つがあります。
 このうち、トステムが特に力を入れる内窓は、標準的なもので設置費用7万円程度で、1時間程度で設置できるという手軽さが強みです。トステムの試算では、内窓を取り付けると、年間冷暖房費が1万円強、節約できるといいます。結露を減らし、遮音効果もあります。同社では内窓の売上高を、2009年の10億円から2年後には30億円とすることを目指しています。
 サッシ業界2位のYKK APも積極的な提携を進めています。TOTOはYKK APの内窓を自社のショールームに展示、自社の販路で売る計画です。またビックカメラが都内の店舗でYKK APの内窓販売を始めたように、家電量販店やホームセンターなどへの販路拡大が進んでいます。
 09年の新規住宅着工件数は80万戸を切り、市場は4分の3に縮小しています。それだけに住宅建材メーカーはこぞって既存住宅のリフォームに活路を見出そうとしています。住宅各社はリフォームビジネスへの転換を図っています。積水ハウスは、同社が建てた中古住宅を買い取り、修繕した上で販売する事業を2008年から始めています。再販する再生住宅は、建物の価格が新築の70%、10年間の保証がつくとあって、徐々に販売が拡大しています。「新築そっくりさん」を手がける住友不動産、ミサワホームなどもこの分野を強化しています。
 しかし、リフォームビジネスへの転換は容易なことではありません。リフォームは新築と比べると一軒あたりの工事単価が小さく、物件の個別性も強く、部材の大量購入などによる規模のメリットも働きにくいことから、ビジネスモデルの変更が必要です。しかも、従業員に求められるスキルが異なります。
 リフォームの場合、営業や見積もり、現場の段取り、現場管理、アフターサービスなどあらゆることを一人の営業マンがこなさなければなりません。施主や職人とのコミュニケーションスキルも必要な上に、中古の場合は壊してみなければわからないことも多く、その場で対応し、判断する能力も求められます。だが、新築一辺倒の時代が長く続いたため、住宅業界にはそうした人材が不足しているのです。
 今後日本の住宅産業は、「箱の産業」から「場の産業」に転換することが必要です。これまでの住宅メーカーやディベロッパーは、建築物という箱を提供していましたが、これからは、豊かな生活を送るため絵の場の提供という切り口でビジネスモデルを再構築すべき時を迎えています。