デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

前田憲男さんがウエスト・ライナーズで活躍したころ

2018-12-02 09:24:47 | Weblog
 先月25日に亡くなられた前田憲男さんがジャズ界で注目されのは、昭和32年に「西条孝之介とウエスト・ライナーズ」に参加してからだ。「日本のジャズ史」(スイングジャーナル社刊)から当時の様子を抜粋してみよう。「メンバーは五十嵐兄弟=武要(ドラムス)、明要(アルト・サックス)、原田忠幸(バリトン・サックス)、前田憲男(ピアノ)、今泉俊明(トランペット)、金井英人(ベース)の七名で・・・」錚々たるメンバーだ。

 そして、「このバンドを支えたのは、スタン・ゲッツ、リー・コニッツら白人サックス奏者を専門に研究していた西条の知的なプレイと、その「お殿様」のような風貌にあらわれた人柄の良さだったが、もうひとつ、前田憲男のペンに負うところが大きかった」と。当時の音源は「20世紀日本ジャズ大系」にまとめられているので聴くことができるが、三管編成を活かした編曲は見事なものだ。とかく日本ジャズの黎明期は云々と批判する輩がいるが、とんでもない。阿吽のアンサンブルといい、斬新なハーモニーといい、各人の溌溂としたソロといい、アメリカのジャズに劣らない高い水準を満たしている。

 ウィンド・ブレイカーズは前田さんが1980年に日本のトッププレーヤーを集めて結成したバンドだ。ウエスト・ライナーズ時代からの旧友西条孝之介と原田忠幸をはじめ、テナーサックスの稲垣次郎、トランペットの数原晋、伏見哲夫、トロンボーンの原田靖、ギターの沢田駿吾にベースの荒川康男、ドラムスは猪俣猛という、言うなれば重鎮オールスターズである。ジャズが普及していない時代にジャズの楽しさと面白さを伝えてきた人たちばかりなので理屈抜きに楽しめる。タイトル曲をはじめ「Bag’s Groove」、「Satin Doll」、「My Funny Valentine」という耳馴染みのメロディーが輝いているのは、いぶし銀の光沢を放っているからだろう。

 前田さんは、「11PM」や「題名のない音楽会」といったテレビ番組に出演したり、「女心のタンゴ」や「冬のリヴィエラ」という歌謡曲のアレンジも手掛けているので、ポップス畑に見えるが、れっきとしたジャズピアニストである。後に渡辺貞夫も加わったウエスト・ライナーズをトップコンボに成長させたセンスのいいピアニストがいなければ今の日本ジャズの発展はなかったかも知れない。享年83歳。合掌。 
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 洒落たアズナブールの「JAZZN... | トップ | ジェリー・マリガンを尊敬し... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ベニー・ゴルソン (duke)
2018-12-08 08:52:42
azumino さん、おはようございます。

例年より雪が遅い札幌でしたが、昨日からの大雪で一気に冬景色に変わりました。私も前田憲男さんの生は聴いたことはありません。テレビの仕事で忙しい中、精力的にライブを開いていましたので聴き逃したのは残念です。私も11PM世代ですので、やはり当時の印象が強いですね。9月末にDAY BY DAYで山岡未樹さんのライブを聴きましたが、その時にベニー・ゴルソンと共演することを話されていました。前田さんはいませんが、山岡さんとゴルソンで盛り上げてほしいですね。
返信する
トリプルピアノ (azumino)
2018-12-07 21:27:16
こんばんは

前田憲男さんは、11PMで見たことがあるくらいで、実際の演奏を聴いたことはありませんが、ピアニスト、編曲者として高名な方でした。羽田健太郎さん、佐藤允彦さんと3人で、トリプルピアノとして活動していたことも記憶に残っています。羽田さん、佐藤さんの演奏は聴いたことがありますが、前田さんだけがないので、残念です。この12月に、ベニー・ゴルソンが来日しますが、東京でのコンサートには、前田さんが参加することになっていたので、それもかなわなくなりました。ご冥福をお祈りしたいと思います。
返信する
昭和九年会 (duke)
2018-12-05 16:06:22
芝刈りオヤジさん、コメントありがとうございます。

前田憲男さんはテレビの仕事が多いせいかジャズ・ピアニストであることを知らない方もいるようです。そういえば前田さんも名を連ねていた「昭和九年会」のメンバーの大橋巨泉さんがジャズ評論家だったことも知られていませんでしたね。

「FOUR BROTHERS」とは最高です。なかなか札幌では4管以上の編成バンドを聴く機会がありませんが、もしチャンスがあれば「FOUR BROTHERS」をリクエストしたいですね。銀座のスウィングといえば、今週末8日(土)に黒岩静枝さんのライブがあります。DAY BY DAYの精鋭トリオがバックです。是非お時間があればお聴きください。11/23の室蘭コンサートは私も同行したのですが、今回は断念しました。
返信する
合掌! (芝刈りオヤジ)
2018-12-04 19:52:54
こんばんわ 
前田憲男さんのファンでした。前田憲男さんの訃報を聞き大きくため息をついてしまいました。残念至極

西銀座のライブハウス「銀座スウィング」でpfトリオとスモールバンドのステージを度々聴きに。前田さんのピアノも素晴らしかったのですが、狭いステージでの6管編成バンドの圧倒的な迫力は耳に残ってます。
ある時「FOUR BROTHERS」をリクエストしたら前田さんは久しぶりに演ろうか! と云って見事なフォーブラザーズを聴けたのも今となっては想い出となりました。

ネットで調べて見ると 12月3日のステージが決まっていたそうでして、急遽前田さんの追悼ステージにしたそうです。

ご冥福をお祈りいたします。


返信する

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事