一音でマイルスと分かる音がテレビから流れる。デアゴスティーニが発行した「隔週刊クール・ジャズ・コレクション」のCMで、新聞にも全面広告を打つ力の入れようだ。マイルスを筆頭に、エヴァンス、コルトレーン、ピーターソン、ロリンズというラインアップからはクールという呼び名は、おやっと思うが、ジャズ史上ひとつの転換期をもたらした49年の「Birth Of The Cool」以降として捉えるなら強ち間違いではないだろう。
編曲を重視したマイルスが、ギル・エヴァンスやジェリー・マリガンという時代の先を行くアレンジャーと構想を練り上げ、生まれたのが「クールの誕生」である。J.J.ジョンソン、リー・コニッツ、ジョン・ルイス、マックス・ローチ等、錚々たる顔ぶれが並んだセッションに参加したベーシストを覚えているだろうか。3セッション中、最初の録音に参加したのはジョー・シュルマンで、ジャンゴ・ラインハルトとも録音を残した人である。目だったソロ活動はないものの、バディ・リッチやクロード・ソーンヒルのビッグバンドで鳴らした指は、エリントンが賞賛したほど正確なリズムを弾き出す。
そのシュルマンは忘れていても奥様、バーバラ・キャロルをご存知の方は多い。女性らしい繊細なタッチは寛ぎのひと時にはもってこいのピアニストだが、バップの流れを汲むスタイルは時に女性とは思えぬ力強さがある。ヤシの木ならぬヤシの手をデフォルメしたジャケットは、バーバラのRCA第一作で、夫君のシュルマンも参加しているアルバムだ。「レッツ・フォール・イン・ラヴ」とバーバラがはにかみながら呼びかけると、待ってましたとばかり「Good Bait」とシュルマンが「甘い誘い」に乗る。このタッド・ダメロン作のバップ曲が白眉で、起伏のあるメロディに呼応するようにベースラインも膨らみ、息の合ったところをみせる。結婚する1年前の53年の作品だが、57年にシュルマンは亡くなり「グッドバイ」したのは残念なことだ。
「隔週刊クール・ジャズ・コレクション」は6号以降もチック・コリア、パーカー、ゲッツ、モンクと続き70号まで発行される予定という。ジャズ・ジャイアンツとその名演はあらかた揃うことになるが、百科事典の項目にしかすぎない。分冊百科のパイオニアのデアゴスティーニは、元来は世界地図の普及を目的にした地図会社である。地図に記された町には踏み込んだ人にしか見えない景色が広がるように、ジャズもまた項目を捲ると未知な世界が待っている。このコレクションからひとりでも多くのジャズファンが増えること願ってやまない。
編曲を重視したマイルスが、ギル・エヴァンスやジェリー・マリガンという時代の先を行くアレンジャーと構想を練り上げ、生まれたのが「クールの誕生」である。J.J.ジョンソン、リー・コニッツ、ジョン・ルイス、マックス・ローチ等、錚々たる顔ぶれが並んだセッションに参加したベーシストを覚えているだろうか。3セッション中、最初の録音に参加したのはジョー・シュルマンで、ジャンゴ・ラインハルトとも録音を残した人である。目だったソロ活動はないものの、バディ・リッチやクロード・ソーンヒルのビッグバンドで鳴らした指は、エリントンが賞賛したほど正確なリズムを弾き出す。
そのシュルマンは忘れていても奥様、バーバラ・キャロルをご存知の方は多い。女性らしい繊細なタッチは寛ぎのひと時にはもってこいのピアニストだが、バップの流れを汲むスタイルは時に女性とは思えぬ力強さがある。ヤシの木ならぬヤシの手をデフォルメしたジャケットは、バーバラのRCA第一作で、夫君のシュルマンも参加しているアルバムだ。「レッツ・フォール・イン・ラヴ」とバーバラがはにかみながら呼びかけると、待ってましたとばかり「Good Bait」とシュルマンが「甘い誘い」に乗る。このタッド・ダメロン作のバップ曲が白眉で、起伏のあるメロディに呼応するようにベースラインも膨らみ、息の合ったところをみせる。結婚する1年前の53年の作品だが、57年にシュルマンは亡くなり「グッドバイ」したのは残念なことだ。
「隔週刊クール・ジャズ・コレクション」は6号以降もチック・コリア、パーカー、ゲッツ、モンクと続き70号まで発行される予定という。ジャズ・ジャイアンツとその名演はあらかた揃うことになるが、百科事典の項目にしかすぎない。分冊百科のパイオニアのデアゴスティーニは、元来は世界地図の普及を目的にした地図会社である。地図に記された町には踏み込んだ人にしか見えない景色が広がるように、ジャズもまた項目を捲ると未知な世界が待っている。このコレクションからひとりでも多くのジャズファンが増えること願ってやまない。
足を鳴らし、身体が揺れだすリズミカルなテーマを持った「グッド・ベイト」は、フェイバリット・ナンバーのひとつです。お気に入りのバージョンをお寄せください。
管理人 Good Bait Best 3
Fats Navarro / Royal Roost Sessions 1948 (Bep)
John Coltrane / Soultrane (Prestige)
Don Byas / A Tribute to Cannonball (Columbia)
紹介したバーバラ・キャロルのアルバムには、記事にある曲の他、「ブロードウェイの子守歌」も収録されており愉しめるものです。キャロルはあまり聴いておりませんが、お薦めのアルバムもご紹介ください。
私はクール・ジャズ・コレクションの創刊号を買いましたが、記事中「モンクに文句をつける」というのがありました。どこかのブログで見た文句ですね。(笑)
今週もたくさんのコメントをお待ちしております。
以外には、あんまり持ってないなあ・・・。
なんせ、Soultrane のガーランドによる
チョー長いシングル・トーンのソロの印象が
強烈でして。
あ、1枚ありました。
「Good Bait/ Bobby Hutcherson」
George Cables(p), Ray Drammond(b), Philly Joe jones(ds)
にBranford Marsalis(ss, ts)というメンバー。
最晩年のフィリーの音源として貴重なんですが、
Good Bait の内容は、さして特筆すべきものでも
ありませんね。
検索かけると、ガレスピーとニーナ・シモンが
ぞろぞろ出てきますけど、手持ちにはなし。
>バップの流れを汲むスタイルは時に女性とは思えぬ力強さがある。
バーバラのみならず、この時期の女流ピアニストは
皆女性とは思えないほどのダイナミズムがありますね。
ロレイン・ゲラー、テリー・ポラード、パット・モラン、
ドロシー・ドネガン、そしてもちろんマリアン・マクパートランドも。
やはり Soultrane の印象が強い曲ですね。コルトレーン、ガーランドという人気プレイヤーですし、アルバム自体優れた内容ですので最もポピュラーなバージョンと思います。
ガレスピーは得意ナンバーでして度々録音しているようです。私が上げたナヴァロは、ロイヤルルーストの貴重な演奏でして、作者のダメロンやアレン・イーガー、ケニー・クラークとのセッションです。CD再発は分かりませんが、音源が少ないナヴァロですのでお薦めです。
ニーナ・シモンはベツレヘム盤ですね。ヴォーカルなしでピアノトリオによる演奏で、ピアノの上手さに驚きます。おっしゃるようにこの時代の女流ピアニストは、繊細な中にも豪快さがありました。ヴィジュアルだけで売る今の時代とは大きくかけ離れておりますね。
ダメロン・・名作曲家ですね。
結構気に入っている曲が多く、昔バリー・ハリスの「プレイズ・タッド・ダメロン」を何度も聴いた事を思い出しました。
ベニー・カーターのホエン・ライツ・アー・ロウが原曲のグッド・ベイトも好きな曲です。
お気に入りは
トレーン「ソウルトレーン」
ダメロン&マイルス「パリ・フェスティバル・インターナショナル」
フラナガン「サムシング・ボロード・サムシング・ブルー」
ほかにマルやハッチャーソンも良い演奏を残していますね。
グッド・ベイトがお好きとは嬉しいですね。同じメロディの繰り返しですが、少しずつテンポを変えながらのテーマ部は誰の演奏でもゾクゾクするものがあります。バップの躍動感を一曲で伝えるならこの曲でしょうか。
Jackson もお気に入りの曲でしたが、Hutcherson が取り上げたのは、Jackson の影響でしょうね。
フィリージョーのリーダーアルバムはリバーサイドに数枚ありますが、この曲は入っていないようです。
ダメロンはピアニストとしては評価されませんが、作曲者としては実に素晴らしい曲を残しております。バリー・ハリスの「プレイズ・タッド・ダメロン」は、ダメロン百科辞典ですね。
やはり「ソウルトレーン」がきましたか。ジャズ喫茶世代には忘れえぬアルバムです。ガーランドのソロは何度聴いてもグッドです。
ダメロン&マイルスのパリ・フェスに、フラナガン、挙げられるグッド・ベイトを次々に聴くとグッド・ナイトできませんね。(笑)
聴いたことあるのはニーナ・シモンのピアノとハッチャーソンとギャレスピーですね。
ダッド・ダメロンは派手では無いけど、一度聴くとどうも忘れられないメロを・・・。
ダメロン作品集がありましたね・・エート、なんだっけ?(教えて度忘れだ!)
Plays Damelonとか言うやつです。
ところで、「クール・ジャズ・コレクション」のようなシリーズもの・・どうなんでしょうかね。
正しいジャズファンを育てるなんて言うことはおこがましくて言えませんが・・・。
やはりアルバムで聴き始めるのが良いのでは・・・今では、1000円や1500円で嘗ての名盤が揃っているのですから。
付録の本を読んで知ったかぶりしてもしょうがないだろうし・・・。
そうだ、言い忘れが・・・バーバラ・キャロルの盤って全部ジャケがいいですね!
名前とURLを入れずに投稿を押したら、行ってしまいました!
すみません!