デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

アル・ヒブラーの日の出

2008-01-06 07:58:08 | Weblog
 皆様、あけましておめでとうございます。昨年は多くの方がご訪問され、またコメントも多数お寄せ頂き感謝申し上げます。3年目の今年も選りすぐりのアルバム、隠れた名演、陽の当たらない珍盤を話題にします。何が出てくるのか分からないジャズ玉手箱のアドリブ帖ですが、今年も毎週日曜日更新を目標にしておりますので引き続きご覧頂ければ幸いです。

 今年も全国各地の初日の出の様子がテレビに映し出される。1年に1度の最初の夜明けはめでたいとされ、初日の出参りを行う人は数多い。昇る朝日に手を合わせ願い事やその年の決意などを祈るようだ。今年こそ来年こそと思いつつ二日酔いで起きられない身にとっては、何とも眩しい日の出なのだが、自然の神秘と地球の大きさを体験できるものだろう。その美しい日の出を歌い上げたのはアル・ヒブラーであった。エリントンの壮大な組曲「Liberian Suite」はヒブラーの「I Like the Sunrise」で始まる。

 ヒブラーはややバリトンがかった太く逞しい美声の持ち主で、情感こもったバラードは一際ドラマチックな展開だ。90年の映画「ゴースト ニューヨークの幻」でライチャス・ブラザースの「アンチェインド・メロディ」が使われ、映画とともに大ヒットした。うっとりとする美しいこのメロディを55年に最初に歌ったのはヒブラーで、劇的ともいえる歌唱はその後のカバーでも手本にされている。「私は日の出が好き」はより起伏に富んだ歌いようで、少しずつ大きく明るくなる日の出の光景を見事に表現しており、エリントン楽団に相応しいスケールだ。

 アメリカで解放された奴隷が作った国、リベリア共和国の国名はラテン語の Liber から来ている。解放された自由を象徴したもので、その国民の心情を音で組み立てのが「リベリアン組曲」だ。リベリア共和国は赤道周辺の大西洋に面しており、エリントンは水平線から昇る日の出の美しさに心奪われたのだろう。この曲には自然と自由であることの美しさが讃えられている。
コメント (33)
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