ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「銀行籠城」 新堂冬樹 読了!

2014年08月22日 17時05分49秒 | 作家 さ行
「銀行籠城」[幻冬舎文庫] 新堂冬樹 (著)  2014.8.16読了 。

うだるような猛暑の七月十五日午後三時、あさがお銀行中野支店で惨劇は起こった。閉店寸前の行内に押し入った男が、男性客と案内係を次々に射殺。人質にとった行員と客を全裸にし籠城した。何ら具体的な要求をせず、阿鼻叫喚の行内で残虐な行為を繰り返す男。その真の目的とは何なのか?現代社会の歪みを描ききったクライムノベルの最高傑作。


あまり、前評判が良くなかったので、そんな先入観のせいなのかなかなかおもしろかった。(もっとエロいの期待してたんだけど…)
男が銀行に籠城し、恐怖で人質を支配していく。そして描かれていくのは、人の心の汚さ。人は極限状態に置かれると本性が露呈しちゃうからね。警察も、保身人間の集団だから、うまくいかなくなると結局は責任のなすりつけあい。そんでもってキャリアとノンキャリの対立。人質の生命よりも自分の立場の方が大事なんだからしょうがないわな。
まあ、こんなところは例によって人の汚さを描かせたらうまいですからね新堂さん。おもしろく読めるわけですよ。
でも、しかし、やはり、評価があまりよろしくなくなってるのには理由があるわけで、わたしも読んでて思いました、この非現実感。この犯人、別に元グリーンベレーとかじゃないわけですから、こんなに冷静沈着正確無比に篭城と殺人をこなしていけるんですかね。警察の出方もみんな先に読んでるんですよ。やっぱ、ちょっと無理があるでしょう。しかも、落ちが…。まあ、そういうところには目をつぶって(なんだそりゃ?)ですね、読んでみてください。…6点。

「闇の貴族」 新堂冬樹 読了!

2014年08月20日 20時38分35秒 | 作家 さ行
「闇の貴族」[幻冬舎文庫] 新堂冬樹 (著)  2014.8.15読了 。

眼球が飛び出し、ペニスを釘で打ちつけられた惨殺死体が見つかった。それは倒産整理会社の経営者・加賀篤が目をつけた破産寸前の企業の社長だった。加賀は自身の部下をはめて犯人を殺させ、数十億の金を手にする…。いつしか巨万の富と権力を手にし、「闇の貴族」と称される加賀。だが、既に崩壊は始まっていた。裏社会を熟知した著者の衝撃作。


デビュー1年後ぐらいの初期作品。読んでみて思うのは、ああ、この作品が最盛期の新堂作品の原点なんだなって思うこと。
ほとんど、この作品で出揃ってますね。あぶない業界の裏事情解説、暴力、キャラクター、エロ(この作品はエロ少ないな)、グロ、変態登場、かっこいいアサシン等々。それにおなじみの台詞なんかも。
ただそれだけではなく、一見、読者にストーリー展開が読めた!なんて思わせておいて、それを凌駕してくるサブストーリーだったり、どんでん返しだったりと読ませるうまさ。しかも本作の中にはその後の白新堂につながっているような場面も散見されます。この作品以後、ばんばんと新堂さんは後の代表作となる作品を発表していくわけです。…7点。(8点つけたいんですが、エロとグロが物足りない)

「レッドライト」 森村 誠一 読了!

2014年08月19日 14時31分23秒 | 作家 ま行
「レッドライト」[角川文庫] 森村 誠一 (著)  2014.8.13読了 。

忠誠を尽くした自分をゴミのように捨てた上司の米原を、衝動的に殺した桑崎。痕跡を消し逃走するが、タクシーで玉突き事故に巻き込まれてしまう。幸い無事に帰宅した翌日、ニュースを見て愕然とする。米原が、殺害現場近くの路上で轢き逃げされたというあり得ない事実が報じられたのだ―。2つの交通事故の背後に浮かび上がる、驚くべき人間模様と殺意の連鎖とは。驚天動地の長編ミステリ。


なんかなぁ、なんだろ腑に落ちないよな。刑事たちの地道な捜査と犯人を追い詰めていく事情聴取の様子とかはいいんだよ。だけど、変なしったかぶりの素人探偵みたいのがわけわかんなかったり、肝心の最初のひき逃げ事件がうやむやになってたり、仮にも事件の発端であわや殺人事件を犯した(確実に殺意あり)ような人がのうのうと幸せになったり、最後の犯人の自白がお芝居の台詞のようであったり、なんだかなぁ、全体的に腑に落ちないんだよね…4点。

「炎(ひ)と氷」 新堂 冬樹 読了!

2014年08月15日 15時34分17秒 | 作家 さ行
「炎(ひ)と氷」[祥伝社文庫] 新堂 冬樹 (著)  2014.8.8読了 。

「行内融資を担保に金を借りたい」暴利の競馬金融を営む世羅のもとに堅物の銀行マン赤星が訪れた時、運命の歯車が狂い始めた。赤星の裏で巨額の強奪を画策していた男こそ、世羅の親友で風俗金融を経営する若瀬だったのだ。燃えるような暴力の男・世羅と、冷徹な頭脳の男・若瀬。闇社会の制覇を目論む二人が袂を分かった時、“炎と氷”の壮絶な戦いが幕を開けた。



武闘派闇金屋の世羅(ゴリラみたいだけど設定よりは結構頭働くんだよ)、狡猾でクールな闇金屋の若瀬。
ふたりは親友。そんで、いちお、性格は炎と氷ほど違うという設定。
一人しか立てない闇金融世界の頂点を争うことになるんだけど、親友なんだから、協力したらいいのに。
でも、このふたり。ともにものすごい強欲。(似てんじゃん)
友情より金を迷わず選択するタイプだもんな。やっぱ戦うしかないか。
そんじゃ、やっぱりラストは予想通りこうなるよね。
まあ、ある意味期待通りの作品になっているのではないかな。
新堂ファン、納得作品だと思うよ(なんかエラそうなのがスイマセン)。…7.5点。

「鬼子」 新堂 冬樹 読了!

2014年08月13日 00時56分09秒 | 作家 さ行
「鬼子」(上・下)[幻冬舎文庫] 新堂 冬樹 (著)  2014.8.5読了 。

売れない作家の袴田勇二は、同居していた母の民子が死んで以来、急に暴力的になった息子の浩に翻弄され続けていた。妻の君江までよそよそしくなったばかりか、袴田の唯一の味方だった娘の詩織が浩の不良仲間に凌辱され、完全に家庭崩壊の危機に直面していた。いったいなぜ、素直な息子が悪魔に豹変したのか?稀代のストーリーテラーの新境地。

袴田は編集者の芝野から息子の浩の悪行と家庭崩壊のすべてを暴露するノンフィクション『鬼子』の執筆を迫られていた。断れば作家生命を失う。本を出せば生き恥をさらす。収入源も断たれ苦悩するが、娘の詩織が自殺し、完全に地獄に突き落とされる。それでも浩の暴拳はエスカレートし、ついに息子殺しを決意する。最後まで目を放せない衝撃作。

新堂/冬樹
1966年生まれ。金融会社勤務を経て、現在は都内各所でコンサルタント業を営む。第七回メフィスト賞受賞作「血塗られた神話」(講談社ノベルス、講談社文庫)でデビュー



まあ、新堂さんの小説でこの手の主人公の場合は、病的に勘違い野郎の可能性が高いので、たぶんこんなことなんだろうと予想はついた。急に良い子の長男が時を同じくして母親とともに変になるというのは、まあこんなんだろう。
また、一番善人っぽい登場人物は得てしてとんでもないろくでなしだったり、切れ者であったりというパターンが多いので、この物語に登場する善人も陰でなんかやってんだろうとは思っていたが…すべての顛末を書くわけにはいかないので、アレだけど、あの小説のアレは出来すぎというか無理があるというか、急に書けるもんかな? だから思いもよらなかっよ。反則っぽいからしょうがないけど。
ほんと、この小説は、主人公のアホさ加減に笑わされて、壮絶な家庭内の状態に驚かされて、ちょっと(ちょっとね)泣かされる、インパクトのある小説でした…8点。(新堂さんのなかのマイベスト3に入れとくよ)

「如菩薩団―ピカレスク短篇集」 筒井 康隆  読了!

2014年08月11日 17時19分39秒 | 作家 た行
「如菩薩団―ピカレスク短篇集」 [角川文庫] 筒井 康隆 (著)  2014.8.3読了 。

上品で慎ましい主婦ばかりの盗賊団が高級住宅街のマダムから盗むものは?
上品でインテリだがつましい生活を強いられる団地の主婦たちが、連れだって高級住宅街にやって来た。そう、彼女たちこそ、最近世間を騒がせる女盗賊団だったのだ。悪逆非道な物語ばかりが並ぶとんでもない短篇集!

東京都民三百万人を殺害…したかもしれない男の言語道断。神も仏もない闘争が生んだ無慈悲。知性あふれるマダムの上品な極悪非道。文学のために私小説作家が敢行する落花狼藉。老いた生命の祝祭が暴走する破廉恥。―最凶の悪漢たちによるあまりにも過激な作品の数々。だが、どこかかわいげのある登場人物たち、ちょっとあなたに似ていなくもありませんか?新発掘短篇「傍観者」も収録。

筒井/康隆
1934年大阪生まれ。同志社大学文学部卒業。主な作品に『虚人たち』(泉鏡花文学賞)『夢の木坂分岐点』(谷崎潤一郎賞)『朝のガスパール』(日本SF大賞)『ヨッパ谷への降下』(川端康成文学賞)『わたしのグランパ』(読売文学賞)などがある。映画、演劇、テレビドラマなどにも出演、役者としても活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


短編集です。しかも、12編も収録されています。(別にお得感があるわけじゃないんですが)「コレラ」、「神様と仏さま」、「死にかた」、「小説「私小説」」、「如菩薩団」、「傍観者」、「ケンタウルスの殺人」、「断末魔酔狂地獄」、「三人娘」、「ながい話」、「村井長庵」、「わが愛の税務署」
なんだけど、なんだろな、おもしろいとか、おもしろくないとか以前に、この手の筒井康隆さんを受け入れるかどうかだよね。
だって、「神様と仏さま」なんて、些細なことで、神様と仏さまがいがみあい、腹いせに双方が人間どもに八つ当たりした、みたいなお話ですよ。困りましたね。
「死にかた」なんて株式会社なにがしなんてちゃんとした会社のある課に鬼が突然やってきて、その課の人間をひとりづつ、20人位だったかな、一人残らず頭を金棒で殴りつぶすってお話ですよ。頭蓋骨陥没したり、飛び散ったり、脳漿がばらまかれたり、脳みそふっとんだりですよ。どうしたらいいんですかね。
おもしろかったのは表題作の「如菩薩団」かな。でもな…4点。

「家に棲むもの」 小林 泰三 読了!

2014年08月07日 15時03分20秒 | 作家 か行
「家に棲むもの」 [角川ホラー文庫] 小林 泰三 (著)  2014.8.2読了 。

ボロボロで継ぎ接ぎで作られた古い家。姑との同居のため、一家三人はこの古い家に引っ越してきた。みんなで四人のはずなのに、もう一人いる感じがする。見知らぬお婆さんの影がよぎる。あらぬ方向から物音が聞える。食事ももう一人分、余計に必要になる。昔、この家は殺人のあった家だった。何者が…。不思議で奇妙な出来事が、普通の世界の狭間で生まれる。ホラー短編の名手、小林泰三の描く、謎と恐怖がぞーっと残る作品集。

小林/泰三
1962年、京都府生まれ。大阪大学基礎工学部卒業、同大学院修了。現在、大手家電メーカーに勤務。1995年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


「家に棲むもの」と「お祖父ちゃんの絵」が良かったかな。
この作家さんのは、グロ系より、人間の狂気を描いた作品が好きですね。
「肉」系はちょっと…。
今度は長編を読んでみましょう。…5点。(短編なので)

「黒い太陽」 新堂冬樹 読了!

2014年08月06日 14時48分05秒 | 作家 さ行
「黒い太陽」(上・下) [祥伝社文庫] 新堂冬樹 (著)  2014.8.1読了 。

キャバクラ“ミントキャンディ”の黒服・立花篤は、父の入院費を稼ぐため、嫌悪する水商売に身を投じた。救いは、密かに想いを寄せるNO.1キャストの千鶴。勝ち気な立花は、「風俗王」の異名をとる藤堂社長に見込まれ、さらに、歳の近い若きホール長・長瀬の凄腕に刺激を受けて、この世界の魅力に取り憑かれる…。裏社会を描破する鬼才が、今、風俗産業の闇に挑む。

「闇の世界を煌々と照らす、夜の太陽になれ」キャバクラ“ミントキャンディ”の黒服・立花篤は、「風俗王」の異名をとる藤堂社長から最年少ホール長に抜擢されるも、失意のうちに退店した。やがて、王座を奪うべく渋谷に新店をオープン。だが、直後、藤堂の放ったライバル長瀬の店が目の前に…。連続ドラマ化された圧倒的興奮のエンターテインメント、暗黒の結末は―。


キャバクラ業界の裏側がくわしく描かれている。興味深く読みましたが、なんかやったりやられたりが中途半端な感じがするんだよね。まあ面白かったけど、夢中になってページをめくるって感じじゃないんだよな。なんかグレーなかんじ。やはりオレ、真っ黒な新堂さんがいいみたい。…6点。



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