ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「JR上野駅公園口」 柳美里

2023年04月18日 13時26分34秒 | 作家 や行
JR上野駅公園口 (河出文庫) 2023.4.17読了。
柳美里 (著)

一九三三年、私は「天皇」と同じ日に生まれた――東京オリンピックの前年、出稼ぎのため上野駅に降り立った男の壮絶な生涯を通じ描かれる、日本の光と闇……居場所を失くしたすべての人へ贈る物語。解説=原武史、全米図書賞・翻訳文学部門 受賞作



どんな仕事にも慣れることはできたが、人生にだけは慣れることができなかった。人生の苦しみにも、悲しみにも、喜びにも。という一文が出てくる。大変心に残った。東北の貧しい農家ゆえの長き出稼ぎ。家庭や家族関係などはまともに構築できなかっただろう。特に子供とはどんな関係性だったのだろう。子供が生まれてから20年間も出稼ぎに出っぱなしなのだ、想像に絶する。そんな人生に慣れることなどたぶん誰もできないだろう。上野駅周辺のホームレスには東北の出稼ぎの人が多いのだそうだ。悲しいことだ。7点。

「ミヤマ物語」1~3 あさのあつこ

2023年04月14日 16時11分41秒 | 作家 あ行
ミヤマ物語 第一部 二つの世界 二人の少年 (角川文庫)  
ミヤマ物語 第二部 結界の森へ (角川文庫)
ミヤマ物語 第三部 偽りの支配者 (角川文庫) 全三冊 2023.4.13読了。
あさの あつこ (著)

階層が厳しく分けられたウンヌに暮らす少年ハギは、母親のトモと二人暮らし。彼らは最下層である「クサジ」だった。その村を統治するのは、「ミドさま」と呼ばれる存在で、その姿を見ることは決して許されなかった。ウンヌで恐れられる存在がもう一つあった。それは「マノモノ」と呼ばれるもの。その名を声に出すと口が腐り落ちると言われた。ある日、トモに死罪が言い渡される。トモはミドさまのための水を絶壁の泉から汲みあげる水汲み女だったが、そこで粗相があったというのだ。――別次元の世界、現代に生きる小学校6年の透流(とおる)はマスコミで活躍する母親のことで学校でいじめにあい、家の中でもまた孤立していた。絶望的な気持ちのまま家を出て大きなクスノキに登ってみた透流は、そこで不思議な声を聞く。「ウンヌへいけ!」生まれも育ちも、世界も違う二人の少年が出会う、運命の第一部!

死罪を言い渡された母を牢から逃がしたために、兵士から追われ負傷したハギは、ウンヌと異世界が繋がった森で透流に助けられる。透流の家で目覚めたハギは「ヒトはマノモノ」と怯えるが、介抱されるうちに徐々に心を開き自分たちの世界の話を始める……。絶対権力者のミド、厳しい階級社会、「ヒト」は恐ろしい存在で言葉にしただけで口が腐る、と言われていたこと。ミドさまが「マノモノ」から村を守っていると言われている事。そのミドさまの飲み水を汲む母親がわずかな過ちで死罪を言い渡されたこと。「おかかが殺されてしまう。おかかを助けて」ハギの必死の訴えに透流はウンヌの里へ戻ることを決める。自分がハギに出逢うために雲濡にきたことを悟る透流だった……。二人は、目の前に現れた梟の声に導かれて森の奥深くに入っていった。
大人気作家のファンタジー大作、第二部!

亡き父の生まれ故郷雲濡で不思議な少年ハギと出会った透流は、異世界「ウンヌ」の存在を知る。そこは白い髪青い肌青い目を持つ人々が住む厳しい階級社会で、絶対統治者のミドが治める世界だった。彼らは外の世界に住む透流たちを「マノモノ」と恐れ忌んでいた。しかし死刑になりそうな母親を透流とともに救いだしたハギは、ミドから間違った世界観を教え込まれていたことを知る。透流は味方になってくれた警備兵カクテたちとミドの屋敷に捕えられてしまう。一方逃げ延びたハギは村に戻り、ミドによって自分たちがだまされていたこと、もっと自由に生きられることを村人に説くのだった。ミドの正体は何者なのか、なぜ透流はウンヌに呼ばれたのか? ファンタジー大作、ついに完結!



あっという間に読んだ。面白かったが、超サクサク読めるほどに中身が軽い。NO.6ぐらいの奥深さを期待したが、このボリュームではいたしかたないか。もう少し冊数を増やしてでも重厚に書いてくれてもいいのに。
しかし、この物語の舞台になっているウンヌというところは今の日本に似てないかい。格差社会、ワーキングプア、閉塞感、政治不信、数え上げたらきりがない。小説の中も大変だったけど今の日本で生き残るには相当なサバイブ能力が必要だ。6点。