ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「風の如く 水の如く」 安部龍太郎 読了!

2016年03月30日 20時40分23秒 | 作家 あ行
風の如く 水の如く (集英社文庫) 2016.3.29読了。
安部 龍太郎 (著)

関ヶ原合戦が終わった。天下分け目の大戦に勝利した東軍徳川方では恩賞問題に苦悩していた。黒田如水(官兵衛)に謀反の疑いあり!そんな訴えがあり、徳川家康は本多正純に真偽の究明を命じた。如水と石田三成との間に密約は存在したのか。東西決戦の絵図をひいたのは何者なのか。黒田如水・長政ら父子の情をからめ、関ヶ原合戦に秘められた謎の方程式を、鮮やかに解き明かした傑作長編。



歴史好きなら、多くの疑問が残る関ヶ原の戦い。
その中でも黒田如水の九州の動きと、西軍のわずか1日での惨敗。
ありえないことがありすぎるのが歴史の不思議なところだが。
関ヶ原の謎は、この小説の謎解きにより、スッキリと腑に落ちた。
歴史小説としてだけでなく、謎解きミステリーとしても読める。
すべてのつじつまが合うとき、史実が伏線のように回収される。
この小説の仮説が本当なら、三成は戦う前からすでにまったく負けていたというわけだ。
新解釈は見事だが、小説としてはもう少し盛り上げて欲しかった。…6点。

「アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子」 深町秋生読了!

2016年03月23日 12時21分25秒 | 作家 は行
アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子 (幻冬舎文庫) 2013.3.23読了。
深町 秋生 (著)

躊躇なく被疑者を殴り、同僚に低利で金を貸し付けて飼いならし、暴力団や中国マフィアとも平気で手を結ぶ――。警視庁上野署組織犯罪対策課の美人刑事・八神瑛子は夫を亡くして以来、その美貌からは想像もつかない手法で数々の事件を解決し、警視総監賞や方面本部賞を何度も受けている。そんな瑛子が管轄する区域で広域指定暴力団・印旗会の組長の娘が刺殺された。瑛子は、悪徳刑事の排除を目論む上野警察署署長・富永昌弘から監視される中で、独自に捜査を始める。だが、その矢先、手口が同じで、被害者の容姿も似た刺殺事件が、富永らキャリア警官から不審の眼で睨まれながらも、なりふり構わず連続殺人事件の真相に迫ろうとする瑛子。その胸中には、夫の死を自殺と断定した警察組織への激しい憎悪が渦巻いていた。孤独で冷徹な女刑事の魂が躍動する、新・警察小説シリーズ第1弾!!



それなりに物語は面白いが、なにせ、繊細な人物描写が足りない。主人公がなぜそうするのか?まったくわからない。よって、感情移入もできずに読み終わる。ヒロインものでこれは最悪。主人公がどうなっても全然かまわないし、応援したくもならない。ストーリーにも目新しいものなし。…4点。

「地を這う虫」 高村 薫読了!

2016年03月16日 17時11分09秒 | 作家 た行
地を這う虫 (文春文庫) 2016.3.16読了。
高村 薫(著)

「人生の大きさは悔しさの大きさで計るんだ」。拍手は遠い。喝采とも無縁だ。めざすは密やかな達成感。克明な観察メモから連続空き巣事件の真相に迫る守衛の奮戦をたどる表題作ほか、代議士のお抱え運転手、サラ金の取り立て屋など、日陰にありながら矜持を保ち続ける男たちの、敗れざる物語です。深い余韻をご堪能ください。


「愁訴の花」、「巡り逢う人びと」、「父が来た道」、「地を這う虫」の四編からなる短編集。主人公はそれぞれ元刑事だが、今は他の職業に就き漠然とした虚無感を抱いている。ふとしたことをきっかけとして、元刑事の過去が目覚め、それにより普段は人に見せないプライドみたいなものが垣間見られる。しかし目前の事象を受け入れ地道に生きていくしかない現実の前には、そのプライドも一瞬のまぼろしでしかない。地味な短編集だが、一編一編が鈍く光るような重みを持つ。「地を這う虫」のラストが特にいい。…6.5点。

「孤虫症」 真梨幸子読了!

2016年03月11日 18時07分26秒 | 作家 ま行
孤虫症 (講談社文庫) 2016.3.11読了。
真梨 幸子 (著)

「週に三度、他の男とセックスすることを習慣にして」いる主婦・麻美。彼女の不倫相手が、次々と身体全体に瘤のようなものを作って原因不明の死を遂げる。彼女自身の肉体にも異変が起こる。女同士の憎悪や嫉妬、母娘で繰り返される愛憎劇。一見幸せな主婦の誰にも言えない秘密とは…。




肛門から虫が顔を出している。そんなお話(ではないですが)。
第32回メフィスト賞を受賞した作品。
最後の解説にありましたが、実際「孤虫症」ってあるみたいです。世界で14例、うち日本で6例が確認されたのみとか、めったにある病気ではないがあること事態がイヤ。

しかし、そうとうイライラといやな気分させてくれる。
女同士の嫉妬と猜疑心がうごめく人間関係。
この真っ黒な感情こそが、寄生虫よりも怖いものなんじゃないだろうか?
最初は気持ちの悪い寄生虫ホラー系、中盤からミステリーとして展開、最後のどんでん返しは叙述トリック。詰め込みすぎて破綻したかも。…5点。

「リミット」 野沢尚読了!

2016年03月01日 23時22分32秒 | 作家 な行
リミット (講談社文庫) 2016.2.29読了。
野沢 尚 (著)

連続幼児誘拐事件の謎を追う警視庁捜査一課・特殊犯捜査係勤務の有働公子。婦人警官でなく、1人の母親として事件の当事者となってしまった彼女は、わが子を取り戻すため、犯人のみならず警視庁4万人を敵にまわすことに……。驚愕の展開、そして誰も予想だにしなかった戦慄の結末。ミステリーの到達点!




野沢尚さんの小説はあまりはずれた記憶がない。
誘拐されたわが子を奪還するため、犯人グループと対峙し、そして、仲間であるはずの警察組織も敵にまわし追われることになる、孤立無援の婦人警官である母親が主人公。
まさに母性だけを頼りに、徒手空拳で犯人グループに立ち向かっていく様は子どもを持つ親なら、共感せずにはいられない。ましてや、母親ならばましてそうだろう。
途中からは、読みすすめるのがつらくなり、何度も本を置いた。
そして、読者としての自分自身も主人公とともに満身創痍でラストにたどり着く事になる。それにしても母は強し。…8点。