ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「聖域」 篠田節子 読了!

2015年12月29日 14時59分40秒 | 作家 さ行
聖域 (集英社文庫) 2015.12.28読了。
篠田 節子 (著)

異動先の編集部で、偶然目にした未発表の原稿『聖域』。なぜ途中で終わっているのか。なぜこんなに力のある作家が世に出ていないのか。過去を辿っていくと、この原稿に関わったものは、みな破滅の道へと進んでいる。口々に警告されるが、でも続きを読みたい、結末を知りたい。憑かれたように実藤は、失踪した作家、水名川泉を追い求め東北の地へ。そこで彼が触れたものは。長編サスペンスの傑作。




死んでしまった恋しい人。
肉体を失い魂となったものとの現実世界との接点を失踪した作家に求め、
その書きかけの小説を書かせるという名目で捜索をする主人公。
やはり、最後には小説はどうでもよくなっていたのだ。
自分が何を求めていたのかももう主人公にはわからないだろう。
人は死んだらどうなるのか?どこへ行くのか?死者と残された人間はどうやってつながりを持ちつづけるのか? 
そんな事を考えながら、一気に読んだ。ただ、ラストが凡庸ではないか。…7点。

「月神(ダイアナ)の浅き夢」 柴田よしき読了!

2015年12月25日 19時48分40秒 | 作家 さ行
月神(ダイアナ)の浅き夢 角川文庫 2015.12.25読了。
柴田 よしき (著)

若い男性刑事だけを狙った連続猟奇殺人事件が発生。手足、性器を切り取られ木にぶらさげられた男の肉体。誰が殺したのか?次のターゲットは誰なのか?刑事・緑子は一児の母として、やっと見付けた幸せの中にいた。彼女は最後の仕事のつもりでこの事件を引き受ける。事件に仕組まれたドラマは錯綜を極め、緑子は人間の業そのものを全身で受けとめながら捜査を続ける。刑事として、母親として、そして女として、自分が何を求めているのかを知るために…。興奮と溢れるような情感が絶妙に絡まりあう、「RIKO」シリーズ最高傑作。



「RIKO」シリーズ第3弾。
なんか母親緑子は、やさしくなったなぁ。
同時に、刑事という仕事を続けるべきか悩んでんだよね。
結構、刑事には優しさが必要なのかもしれないなぁ。
人の心の動きがわからなければ、人の気持ちはわからない。
人の気持ちがわからない刑事に事件が解決できるわけがないもんね。
だから、やっぱ続けていくんだろうねぇ。第4弾書くときのためにも(笑)。
相変わらず、刑事ものとしての謎解きも面白く、読みごたえもある。
ただ、途中、麻生さんと練さんのエピソードを挟んだあたりから、
どうも、捜査の話よりそっちが気になって物語りに集中できない。
主人公より、この二人の方が魅力的ってことか。そのけはないんだけど。
刑事ものとしては、前作の方が上かな。…7点。

「聖母(マドンナ)の深き淵」 柴田よしき読了!

2015年12月18日 15時08分03秒 | 作家 さ行
聖母(マドンナ)の深き淵 (単行本) 2015.12.18読了。
柴田 よしき (著)

一児の母となり、下町の所轄署で穏やかに過ごす緑子の前に現れた親友の捜索を頼む男の体と女の心を持つ美女。保母失踪、乳児誘拐、主婦惨殺。関連の見えない事件に隠された一つの真実。シリーズ第二弾。



女であり、母親であり、そして刑事。
緑子が、母親になったことで、前作よりまた主人公の魅力が増した。
刑事ものでありながら、謎解きもあり、純愛小説の要素も持ち合わせ、
そして、なんと言っても、登場人物がそれぞれ個性的でかつ魅力的。
とくに、麻生と山内の存在感は、この2人を主役に小説が書けるほどのキャラクター。
前作を凌ぐ出来。…8点。

「RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠」 柴田 よしき 読了!

2015年12月16日 13時45分30秒 | 作家 さ行
RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 (角川文庫) 2015.12.16読了。
柴田 よしき (著)

男性優位主義の色濃く残る巨大な警察組織。その中で、女であることを主張し放埓に生きる女性刑事・村上緑子。彼女のチームは新宿のビデオ店から一本の裏ビデオを押収した。そこに映されていたのは残虐な輪姦シーン。それも、男が男の肉体をむさぼり、犯す。やがて、殺されていくビデオの被害者たち。緑子は事件を追い、戦いつづける、たった一つの真実、女の永遠を求めて―。性愛小説や恋愛小説としても絶賛を浴びた衝撃の新警察小説。第十五回横溝正史賞受賞作。



たぶん、いろいろあるでしょ。
はっきりと好き嫌いが分かれる作品かと。

倫理観がどうのとか、
主人公が好きだ嫌いだ、
出てくる男がアホばかりだとか、
最初から、展開読めてたよとか、
もう、ごちゃごちゃ言っても、
最終的には好きか嫌いか。
どっちなのよ?って感じの小説。

極端なものを受け入れられれば、
それは、物語を魅力的にする。
善悪は別にして、一生懸命に生きる主人公は
なんとも魅力的だ。

自分は好きですけど…。…7.5点。

「アヒルと鴨のコインロッカー」 伊坂 幸太郎 読了!

2015年12月15日 14時34分53秒 | 作家 あ行
アヒルと鴨のコインロッカー  創元推理文庫 2015.12.14読了。
伊坂 幸太郎 (著)

【第25回吉川英治文学新人賞受賞】
「一緒に本屋を襲わないか」大学入学のため引越してきた途端、悪魔めいた長身の美青年から書店強盗を持ち掛けられた僕。標的は、たった一冊の広辞苑――四散した断片が描き出す物語の全体像とは? 清冽なミステリ。



数々の伏線を張りながら、淡々と物語りは進んでいく。
現在と二年前が繰り返し描かれるという構成。
軽妙なせりふが多く、たまにクスリとするものの後半まで退屈な展開。
さすがに、ラストに向かって今ままでの伏線を見事に回収しつつ、この現在と二年前が繋がっていく。悲しくて、切ないラストが、心の残る物語。

が、しかし、前半中盤と退屈すぎる。
読む前に、叙述トリックのミステリーであることや、レビューなどで最後に動くのはわかっていましたから、途中で投げ出そうとは思いませんでしたが。ラスト読みたくて努力して読んでどうするねん?
叙述ミステリーであっても前半からガンガン引きずり込まれるものもあるのでそこは不満の残るところ。…6点。

「告白」 湊 かなえ 読了!

2015年12月10日 18時19分00秒 | 作家 ま行
「告白」 (双葉文庫) 2015.12.10読了。
湊 かなえ (著)

第6回(2009年) 本屋大賞受賞
我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。選考委員全員を唸らせた新人離れした圧倒的な筆力と、伏線が鏤められた緻密な構成力は、デビュー作とは思えぬ完成度である。



なんとか読了した。何度、途中で投げ捨てそうになったか。
これ、一章だけでいいんじゃないの。短編として。
本屋大賞なんて、販売元と書店が話題づくりのために無理やり作ったとしか思えん。賞じゃなくて宣伝なんじゃないの。

陰湿な話でも、読後感が最悪でも、それでも、読んで後悔しない本ってあるんだが、この本は読んで、おもいっきり後悔した。時間の無駄だ。気分悪くなるためだけに文章を追っている感じ。

第一章はよいとして、その後の章がなんらかの形で、ストーリーを厚くしてくれるかと思えば、そんなことはまるでなく、見方が違えば、このぐらいの新事実は出てくるもんだろうが、ストーリーは第一章で語られたものをこねくりまわしているだけ、最終章なんかに至っては、いっそ無いほうがマシ。ただの蛇足。…3点。

「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」 真梨幸子 読了!

2015年12月08日 22時17分58秒 | 作家 ま行
インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実  徳間文庫 2015.12.8読了
真梨幸子 (著)

一本の電話に月刊グローブ編集部は騒然となった。男女数名を凄絶なリンチの末に殺した罪で起訴されるも無罪判決を勝ち取った下田健太。その母・茂子が独占取材に応じるという。茂子は稀代の殺人鬼として死刑になっ たフジコの育ての親でもあった。茂子のもとに向かう取材者たちを待ち受けていたものは。50万部突破のベストセラー『殺人鬼フジコの衝動』を超える衝撃と戦慄のラストシーン !



たぶん、この作品は、文庫書下しですし、後付で書いた作品でしょうか。
登場人物は、前作の登場人物となにかしらの繋がりがあり、
「そうだったのか?」とか「この人が?」と驚くこともありますが、
なんとなく途中からは想定の範囲内に。

前作で、わからなかった意味がはっきりしたり、
あのシーンにいた人はあの人だったのかと、
また、新たな解釈になっていく部分もあり、前作のストーリーがより鮮明になっていきます。

構成の複雑さはなく、前作を伏線にストーリーは展開していきます。

まったく別の作品としても、また、前作を読んでいない方でも面白く読めると思います。
ただ、わかりやすく、平坦な構成になっていますので、読者の想像に任せる部分も少なく、
いささかのスケールダウンになっているのは否めない感じです。…7点。

「ふたり狂い」 真梨 幸子 読了!

2015年12月05日 18時51分19秒 | 作家 ま行
ふたり狂い (ハヤカワ文庫JA) 2015.11.4読了。
真梨 幸子 (著)

女性誌〈フレンジー〉の人気連載小説「あなたの愛へ」。その同姓同名の主人公が自分だと思い込んだ川上孝一は、思い余って著者の榛名ミサキを刺してしまう。それに端を発して起こる、デパ地下総菜売り場での異物混入事件、ネットでの企業中傷件、そして郊外マンションでの連続殺人。だが、その背後には謎の女マイコの存在があった……。現代人のささやかな狂気と、連鎖する因縁の果てに明かされる驚愕すべき真実とは?
ベストセラー『殺人鬼フジコの衝動』の著者が仕掛ける、もうひとつの罠。時間を忘れて読んでください。でも、くれぐれも注意深く。恐ろしいものが潜んでいますから。




連作長編である。
それにしても、この作家さんの構成は凝っている。
構成が凝っているから、わかりにくい、途中で混乱する場合もある。
しかし、このわかりにくさが、引っかかりになり、前に戻っては、読み返し、最終章で、その引っかかりが回収され、また、最初に戻って読み返したときに、まったく違う側面が見えてくる。これが魅力だろうか。
「ふたり狂い」とは、狂人と一緒にいるとうつるというようなことらしく、この物語に出てくる登場人物は、最初まともに見えていた人も、実は、やっぱおかしかったというように、ほとんどの人がおかしいかおかしくなっていく。最初から狂っていたのか、それとも、狂人といたからうつってしまったのか?私にはわからないが。とにかく狂人だらけだ。…6点。

「ボトルネック」 米澤穂信 読了!

2015年12月01日 16時40分22秒 | 作家 や行
ボトルネック (新潮文庫) 2015.12.01読了。
米澤 穂信 (著)

亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した……はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。



自分が生きていた世界と、自分が存在せず、そして生まれなかったはずの姉が生まれていた世界。
その二つの世界を否応なく体験しなくてはならなくなった主人公。
姉の世界の方は、自分がいた世界よりも、周りの人々は幸せになり、環境も改善され、良い事ばかりが目に付く主人公。
そして二つの世界の差は、主人公が生まれていたか、姉が生まれていたか、それしかないのだと悟り、落ち込む主人公。ってお話。
おっさんぐらいになると、そんなことじゃ、落ち込まねーよ。
響きませんし。動じません。
ラストも好きじゃないし。
だいたい、青春ミステリーとか学園ミステリーとかあたったことないんだよ(最初から読むなよ)。…5点。