ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「熟れた月」 宇佐美まこと

2022年04月27日 20時05分52秒 | 作家 あ行
熟れた月 (光文社文庫) 2022.4.27読了。
宇佐美まこと (著)

がんで余命半年と宣告されたヤミ金業のマキ子。落ちぶれた取り立て屋の乾。
陸上部のエース阿久津先輩に憧れる高校生の結。生まれてから車椅子の生活しか知らない身体の不自由な博。
それぞれの運命が絡み合ったとき、人生は思いがけない方向へ……。
二〇一七年『愚者の毒』で日本推理作家協会賞を受賞した著者が、底辺で生きる人間たちの業と、不思議な縁を描く。



最初、どういう話なのかさっぱりわからなかった。話がわからなくても面白く読み進めてしまうのは作家さんの力量か。後半に向かって、話が回収されていき、ストーリーがまとめられてくるあたりから、そりゃー、面白いわ面白いわ。クライマックスまで一気読み。ちょっとファンタジーが入っているおかげで、出来すぎのラストにならないで済んでいるのもよく考えられている。7点。

「一橋桐子(76)の犯罪日記」 原田ひ香

2022年04月21日 22時27分05秒 | 作家 は行
一橋桐子(76)の犯罪日記 単行本 2022.4.21読了。
原田ひ香 (著)

老親の面倒を見てきてた桐子は、気づけば結婚もせず、76歳になっていた。両親をおくり、わずかな年金と清掃のパートで細々と暮らしているが、貯金はない。同居していた親友のトモは病気で先に逝ってしまった。唯一の家族であり親友だったのに……。このままだと孤独死して人に迷惑をかけてしまう。絶望を抱えながら過ごしていたある日、テレビで驚きの映像が目に入る。収容された高齢受刑者が、刑務所で介護されている姿を。これだ! 光明を見出した桐子は「長く刑務所に入っていられる犯罪」を模索し始める。




また、単行本読んでしまった、そんで小説は面白かった。だけど、ラストがうまく行きすぎ。主人公に関わった人、全部があかの他人の老人にみんなこんなに優しくはしてくれないと思う、現実社会では。おとぎ話レベルのありえなさだ。でも、小説としては目の付け所が上手く大変面白かった。題名に(76)入ってるって…。7点。

「世界が赫に染まる日に」 櫛木理宇

2022年04月18日 13時28分39秒 | 作家 か行
世界が赫に染まる日に (光文社文庫) 2022.4.16読了。
櫛木 理宇 (著)

中学三年生の緒方櫂は復讐心をたぎらせていた。従弟が上級生たちから凄絶ないじめに遭った末に意識不明の重体に。その妹も同じ連中に性的暴行を受けたのだ。自殺願望を持つ同級生・高橋文稀が櫂の復讐の相棒となることを承諾。二人は予行演習として、少年法に守られて罰せられない犯罪者たちを次々と襲い始める。エスカレートする制裁の果てに待つ衝撃の運命とは?



なんか焦点がぼけていたような。結局何にポイントを置いて書かれたお話なのか? 友情なのか、少年法なのか、クライム小説なのか、サイコミステリーなのか、青春ものなのか。あと、主人公が計画から脱落する理由もちょっと弱い気もするし、そもそも主人公はどっちだったんだろう? なんか色々と中途半端な状態ですが、とは言ってもそれなりに面白かったし、ラストも良かった。6点。

「テスカトリポカ」 佐藤 究

2022年04月14日 20時22分57秒 | 作家 さ行
テスカトリポカ ハードカバー 2022.4.14読了。
佐藤 究 (著)

第165回直木賞受賞! 鬼才・佐藤究が放つ、クライムノベルの新究極、世界文学の新次元! メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。第34回山本周五郎賞受賞。



登場人物の運命が絡まり物語がすすんでいく。これは運命か偶然か神の手引きか? 一体何なんだーとか(小声で)叫びながら読んだ。読んでいる間、旅に出ているような、夢の中にいるような、凄まじい没入感に浸って出てこれない。というより出ていきたくなくなる。この感じはずっと昔に読んで衝撃を受けた垣根涼介さんの「ワイルド・ソウル」以来だ。稀にしか体験できない素晴らしい時間を過ごさせてもらった。クライム小説にアステカの神話を絡めたところが肝だねぇ~。重くて厚い(550頁超)ハードカバーを毎日持ち歩いても少しも苦にならなかった(嘘)。9点。

「アイネクライネナハトムジーク」 伊坂幸太郎

2022年04月08日 20時51分32秒 | 作家 あ行
アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫) 2022.4.8読了。
伊坂 幸太郎 (著)

妻に出て行かれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL……。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐輪場で、奇跡は起こる。情けなくも愛おしい登場人物たちが仕掛ける、不器用な駆け引きの数々。明日がきっと楽しくなる、魔法のような連作短編集。



それぞれの短編の登場人物が時間を行き来してまた登場する。実は、彼は誰かの夫だったり、娘だったり、ってな具合に。そして最後の「ナハトムジーク」に突入していろいろとわかって終焉という連作短編集なんですが、自分はこの本、長編として時系列通りに(「ナハトムジーク」はそのまま最後で)並べてほしかった気もちょっとします。長編として連続して読みたいと思ったりもした。このままでも十分面白かったけど。6点。

「飛べないカラス」 木内一裕

2022年04月05日 14時40分44秒 | 作家 か行
飛べないカラス (講談社文庫) 2022.4.5読了。
木内一裕 (著)

規格外の新主人公(ニューヒーロー)誕生!
すべてを失った男に舞い込んだシンプルな「超難問」
「娘が幸せかどうか確かめてきてほしい」
1億円の行方と、謎の女と、仕掛けられた過去。
冒険は、この依頼から始まった。
俺の幸運は、不幸の始まり……の、はずだった。
元売れない俳優で元起業経営者。元犯罪被害者で元受刑者。
納得しようのない罪での服役を終えた加納健太郎への奇妙な依頼は、彼を運命の女(ファム・ファタール)へと導いた。
笑い、驚き、涙する。すべてが詰まった究極のエンターテインメント!



スピード感、謎解き、ユーモア、ちょっとハードボイルド的かっこよさ、ちょこっと感動、そして映画への愛、などいろいろ満載のエンターテインメント小説。
面白い。一言でいえば面白いけど、読んでいて引っかかるところも多く、そんでご都合主義。突っ込みどころも多いけど、そこは深く考えないで楽しく読むのが正解だと思う。6点。

「正体」 染井為人

2022年04月01日 13時12分13秒 | 作家 さ行
正体  光文社文庫 2022.3.31読了。
染井為人 (著)

罪もない一家を惨殺した死刑囚はなぜ脱獄したのか!?
その488日を追うミステリー!
埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した! 東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける彼の目的は? その逃避行の日々とは? 映像化で話題沸騰の注目作!



なになにどうなるの?最初から一気に没入。ページをめくる手が止められない状態。だが、後半に入ると大体話が見えてくるような。ここからは、いやなラストしか思い描けず、急に読み進めたくなくなる。なんとか最後まで読み切りやはり憤慨。この気持ちをどこにぶつければよいのやら。7点。(ハッピーエンドにしていてくれたら自分的には9点だし、ぜひ再読リストに入れたい)