ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「百年法(上・下)」 山田宗樹

2023年08月31日 15時37分19秒 | 作家 や行
百年法 上・下 (角川文庫)電書版 2023.8.28読了。
山田 宗樹 (著)



不老不死が実現した日本。しかし、法律により百年後に死ななければならない――西暦2048年。百年の生と引き替えに、不老処置を受けた人々の100年目の死の強制が目前に迫っていた。その時人々の選択は――!?



SF小説ではあるが、なんか近未来の日本のシミュレーションの様でもある。身につまされた。ほんとにこんな世の中になるのじゃないだろうかと思わされる真実味がそこにはあった。
国を興し、国を作り、繫栄させていく。こんなに楽しい仕事はないだろうな。なんか読んでいてストーリーとは別にそんなことをふと考えた。もう一度読みたいな。8点。

「JR上野駅公園口」 柳美里

2023年04月18日 13時26分34秒 | 作家 や行
JR上野駅公園口 (河出文庫) 2023.4.17読了。
柳美里 (著)

一九三三年、私は「天皇」と同じ日に生まれた――東京オリンピックの前年、出稼ぎのため上野駅に降り立った男の壮絶な生涯を通じ描かれる、日本の光と闇……居場所を失くしたすべての人へ贈る物語。解説=原武史、全米図書賞・翻訳文学部門 受賞作



どんな仕事にも慣れることはできたが、人生にだけは慣れることができなかった。人生の苦しみにも、悲しみにも、喜びにも。という一文が出てくる。大変心に残った。東北の貧しい農家ゆえの長き出稼ぎ。家庭や家族関係などはまともに構築できなかっただろう。特に子供とはどんな関係性だったのだろう。子供が生まれてから20年間も出稼ぎに出っぱなしなのだ、想像に絶する。そんな人生に慣れることなどたぶん誰もできないだろう。上野駅周辺のホームレスには東北の出稼ぎの人が多いのだそうだ。悲しいことだ。7点。

「上杉謙信」 吉川英治

2021年12月23日 16時02分09秒 | 作家 や行
上杉謙信 (吉川英治歴史時代文庫) 2021.12.18読了。

謙信を語るとき、好敵手・信玄を無視することはできない。精捍孤高の武将謙信と千軍万馬の手だれの武将信玄。川中島の決戦で戦国最強の甲軍と龍攘虎搏の激闘を演じ得る越軍も、いささかもこれに劣るものではない。その統率者・謙信と彼の行動半径は――?英雄の心事は英雄のみが知る。作者が得意とする小説体の武将列伝の1つであり、その清冽な響きは、千曲・犀川の川音にも似ている。



第四次川中島をメインに武田信玄との戦いを双方の視点から描いている。なんといっても謙信の人物像が魅力的。まさしくカッコイイのだ。有名な話ではあるが塩を武田に送るくだりはめまいすら覚える。美しい文体と華麗な構成は今読んでも色あせない。今回、青空文庫版にて読ませていただいたが、こんないいものが、無料で読める時代が来るとは、なんとも驚きだ。7点。

「戦百景 長篠の戦い」 矢野隆

2021年11月29日 15時38分00秒 | 作家 や行
戦百景 長篠の戦い (講談社文庫) 2021.11.26読了。
矢野 隆 (著)

戦国最強の騎馬軍団を膨大な数の鉄砲で打ち負かしたとされる「長篠の戦い」。だがそこには、それぞれの武将の深い思惑が働いていた。
長篠城の奥平信昌はどうして武田を裏切って徳川方についたのか。
内藤・馬場・山県ら武田の勇将たちは無駄な特攻をなぜ敢行したのか。
家康・酒井忠次主従は何を期して奇襲軍を出したのか。
信長が仕掛けた罠とは何だったのか。
勝頼は絶対的に不利な状況で、なぜわざわざ攻撃を仕掛けなければならなかったのか。そして、長篠の戦いの最大のヒーローとも言える奥平勢の足軽・鳥居強右衛門の活躍とは。
最強合戦の真実に迫る書下ろし歴史小説!



良く言えば、読みやすい。悪く言えば、軽い。
ストーリーが全部わかっているのもこの手の小説の弱点だ。どうなるのかわからないから小説は面白いんだし。
読んでいて、昔、流行った歴史ifジャンルのような感じがした。ifジャンルは結果が史実とはガラッと変わるのが醍醐味。あらすじ、結果がわかっているifジャンルぽいものとなるとなんとも面白みがない。ifジャンルにありがちなキャラクターが大げさなところどうだろうか。4点。

「年収100万円で生きる」吉川ばんび

2021年10月08日 15時41分02秒 | 作家 や行
年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声- (扶桑社新書) 2021.10.7読了。
吉川 ばんび (著)

トランクルームに住む「ワーキングプア」、劣悪環境で暮らす「ネットカフェ難民」、母の遺骨と暮らす「車中泊者」、田舎暮らしで失敗した「転職漂流者」、マスク転売をする「新型コロナで失職した男」……etc。



100万円あれば幸せに生きられるという系統の本ではなくて、100万円以下の年収しかなく、それで困難な生活を余儀なくされているという人々のドキュメンタリー、なんだけど、途中からその主題から話が大きくそれて関係ないっちゃ関係ない話に終始、そして著者の生い立ちの話で終わり。「年収100万円で生きる」はどこへ行ってしまったんだー? 5点。

「シュガーレス・ラヴ」山本文緒

2021年08月18日 20時08分54秒 | 作家 や行
シュガーレス・ラヴ (角川文庫) 2021.8.18読了。
山本 文緒 (著)

仕事、恋愛、家族…女性たちを取り巻く様々な人間関係のストレスが引き起こす病気の数々。皮膚炎、睡眠障害、アルコール依存症等々、女たちの心と体を蝕む人間ドラマを描く短編集。



うーん、面白くなかった。内容が薄いし、ありきたり。山本さんは好きだけど、ほんと山本さんの本なのか?というクオリティ。3点。

「満願」 米澤穂信 読了!

2019年10月10日 18時08分52秒 | 作家 や行
「満願」 (新潮文庫) 2019.10.10読了。
米澤 穂信 (著)

「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが…。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、全六篇を収録。史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。山本周五郎賞受賞。



「夜警」「死人宿」「柘榴」「万灯」「関守」「満願」の6編からなる短編集。どの作品もそれぞれ面白いが、頭抜けて「満願」が面白かった。…6点。

「無銭優雅」山田詠美 読了!

2018年08月27日 14時36分49秒 | 作家 や行
無銭優雅 (幻冬舎文庫) 2018.8.24読了。
山田 詠美 (著)

友人と花屋を経営する斎藤慈雨と、古い日本家屋にひとり棲みの予備校講師・北村栄。お金をかけなくとも、二人で共有する時間は、“世にも簡素な天国”になる。「心中する前の心持ちで、つき合っていかないか?」。人生の後半に始めた恋に勤しむ二人は今、死という代物に、世界で一番身勝手な価値を与えている―。恋愛小説の新たなる金字塔。



おもしろかった!
最初は、これはなんなんだ? と思った。そして、途中で投げ出すんだろうなぁとも思った。
ただの中年バカップルののろけばなしなのだ。あり得ない!だろ、こんなん、と思っていたが、そのありえないのが逆にリアルに思えてくるから不思議。
しかし、そんな話で、一冊本を読ませてしまうのだから、この作家さんはホントにうまいんだろうなぁ。最後にちょっとした波乱はあるものの、それ以外は坦々と日々の他愛のないやり取りが続くのだから。…7点。

「ベター・ハーフ」 唯川 恵 再読了!

2018年06月25日 22時26分38秒 | 作家 や行
ベター・ハーフ (集英社文庫) 2018.6.25読了。
唯川 恵 (著)

日本が未曾有の好景気に沸いていた時代、2年ごしの交際をへて広告代理店勤務の文彦と派手な結婚式をあげた永遠子。その日が人生最高の日だった。順調にスタートをきったはずの結婚生活は、バブルがはじけたことから、下降線の一途をたどる。不倫、リストラ、親の介護…。諍いと後悔にあけくれる日々から、夫婦はどう再生してゆくのか。結婚の真実を描く長編小説。




読み始めてすぐに読んだことあると気づきましたが、細かいところは完全に忘れていましたので、楽しめました。
バブル絶頂期に結婚したとある夫婦の10年。
バブル崩壊、阪神大震災、サリン事件等等、実際の社会で起こった事をからめつつ、夫婦の崩壊と再生の物語を描く。夫婦っていったい何なのか考えさせられる一冊。ラストがもうちょっとだったかな。…6点。

「手のひらの砂漠」 唯川 恵読了!

2018年06月21日 18時02分33秒 | 作家 や行
手のひらの砂漠 (集英社文庫) 2018.6.21読了。
唯川 恵 (著)

この不幸は、いつまで続くのだろうか―。平凡な結婚生活の先に待っていたのは、思いもよらぬ夫からの暴力だった。シェルターからステップハウス、DVの被害女性だけで運営される自然農園…。離婚を経て、居場所を変えながら少しずつ自立を果たそうとあがく可穂子に、元夫・雄二の執拗な追跡の手が迫ってくる…。現代の闇に恋愛小説の女王が切り込む、衝撃のノンストップサスペンス!



しかし、DVを扱った小説って、読んでいて気分が悪い。だからあんまり読まないんだけど。
イライラしつつ、ハラハラしつつ、先が読めない展開にページをめくりまくって一気に読んだ。面白かった。そしてラストでほんとスッキリした。「刹那に似てせつなく」同様、唯川さんは恋愛小説じゃないほうが面白いという傾向があるかも。…7点