呑んべぇ爺さん

呑んべぇ爺さん「音岳」の記録とつぶやき

南アルプス縦走(1日目)[寸又川林道]

2007年07月31日 | 南アルプス
寸又川林道右岸から左岸への転換点「千頭ダム」

 朝ペンションを4:20頃に出発する。天候は曇で雨でなくホッとする。天気予報では台風5号は相変わらず日本に向かっていて、あさっての8月2日辺りからしっかり影響が出てくるようだ。虫捕りの親子が暗い中で何組も居た。カブト虫かクワガタを探しに来ているのだろう。
【出発前30日のピンポイント予報】

 寸又峡温泉から、道なりに進み、しばらくすると、眼下に大間ダムが見えてくる。ここで直進して「飛龍橋」を渡って寸又川右岸林道に出る選択は大回りで距離が長いので止めて、重いザックには厳しいが距離の短いダムまで下り、ダムの上に架かっている「夢の吊橋」を渡って、同じく寸又川右岸林道に出る事にする。吊橋方向に下るが、途中、細い鉄階段しか無いので、一瞬間違えたと思って引き返すが、間違い無さそうなので進む。吊橋の幅は狭く、結構揺れる。

 この橋は、寸又峡温泉の観光スポットらしいが、早朝でまだ薄暗い中なので誰もいない。夢の吊橋を渡りきると、今度は林道まで一気に登るので重荷が堪えて汗が噴き出す。寸又川右岸林道に出て、すぐ尾崎展望所があり、さらに進むと閉じられたゲートに出くわす。ゲートの右側を通過する。ずっとアスファルトの道なるので、こんな道では登山靴の代わりにクッションの良い靴のトレイルシューズにして正解だ。

 最初にトンネルにぶつかるとトンネル内に照明はなく、真っ暗。トンネル道の中央に排水溝があって水が流れている。ヘッドランプを取り出し、1つ目のトンネルを通過。このようなトンネルが3つ続く。千頭ダムに近づくと手前に道路が大きく陥没し、中部電力の車が手前で止まっていた。斜面の崩落と道路が陥没して穴が開いていた。これでは車の通行は不能だ。台風4号の影響だろうか。その後も、斜面からの落石は何度も見られたが車が通過出来ない程では無かった。

 千頭ダムに到着すると、満水状態で放水中であった。千頭ダム堰堤を渡り、寸又川右岸林道への取り付き点を捜そうと思うが、踏跡がダム湖に沿って付いていたので、ついついそちらの方へ行ってしまう。おかしいなと思って引き返してよく捜すと見つかった。一番近い所にあった。写真にある石碑の真裏から道が延びていたのだ。この先の登りは、草付きが多く、昨日からのしずくで靴が塗れるので、堰堤に座り、靴の上から雨対策ビニールを着け、ヒル対策を兼ねる。また、虫除けスプレーをズボンの裾にもしっかり撒く。
【夢の吊橋へ(右に下る)】
【夢の吊橋】
【尾崎展望台】
【車止めゲート】
【トンネル】
【中部電力車】
【道路陥没.】
【崩落】
【千頭堰堤】
【放水】
【取り付き点は標柱の裏】

 千頭ダム堰堤からは暫く急登になっていて、足場は悪い。通る人も少ないのだろうから手入れもされないので、あちこち崩落したままで、崩れ易い。靴を地面にフラットに置くと、斜めの斜面に置くことになって踏ん張りが利かないので、こんな時は、トレイルシューズには厳しい。道は泥で湿った所が多く、途中、ヒルがビニールの上を這いつくばっているのを発見してすぐ払う。何度かヒルが立ち上がっていて狙われているのではないかと思われるのを見る。廃墟になっている小屋を過ぎ、逆河内林道に着く。

 登って着て、林道右手約10m先に取り付き点があった。ここには「光岳・大無間」と書いた標識が残っていたのですぐ判った。この取り付き点付近も崩落がひどく、重い荷物で何度も崩落箇所を乗っ越すのに苦労する。急な登りで、ザックの重みが肩に食い込んでくる。とにかく重たい!! 廃墟跡を過ぎて、ようやく寸又川左岸林道に到着。

 ここは、「お立ち台」という表示があり、開けた広場で立派なトイレまである。今まで樹林帯の中で湿った感じが続いていたが、ここに来て開けた明るい空間の上に天候まで晴れてきてきつい日差しになってくる。雨対策ビニールを脱いでヒルの点検をするが、見つからずホッとする。

【崩壊した道】
【歩き難い道・ヒルが出る】
【廃屋】
【逆河内林道からの取付点】
【廃墟跡】
【お立ち台】

 ここからはひたすら寸又川左岸林道を上流に向けて歩き続ける。一体どのくらいあるけばいいのか感覚的に見当がつかない。大無間山登山口が現れた。取り付きは丸太道になっている。この左岸林道は、そこそこ歩けば沢にぶつかるため、コップがすぐに使えるようにしておけば充分なので、重い水を持たずに済むので助かる。

 小根沢の手前から小根沢の先の小屋が見える。近づくと林道の上に建っていた。様子を見に入る。かつては大きな飯場だったようで、中は散乱していたが、畳の部屋など緊急避難時には我慢すれば、まだ使えそうだ。この先進むとショベルカーで土砂崩壊除去の作業を行っていた。監視員の方に今日はどこまで行く予定かと尋ねられる。

 本日の目的地は、できれば光岳(てかりだけ)登山口まで行きたいと言うと、作業の方は光岳登山口の先500m程先に小屋があって、登山者なら泊まっても良いと言われる。有り難い情報だ。ここまではきれいに整備がされた林道歩きであったが、このような作業の結果だったのだ。この先の道はあちこちで土砂崩壊していて荒廃していて岩がゴロゴロして歩きにくい。
【左岸林道】
【大無間山登山口】
【小屋1】
【小屋1内部】
【小屋2】
【小屋2内部】
【左岸林道】
【小根沢小屋の屋根が見える】
【小根沢小屋】
【小根沢小屋内部1】
【小根沢小屋内部2】
【小根沢小屋内部3】
【林道崩壊を整備中】
【小屋3】
【小屋3内部】
【土砂崩壊を振り返る】
【左岸林道】

 工事現場のすぐ先の林道横に青い小さな小屋が現れる。中はコの字形に畳が配置されていてきれいで、最近でも作業の方が使われているのだろうと思う。

 暫く行くと、渡るのをためらう大きな土砂崩壊にぶつかる。足を踏み入れるとザーっと崩れて流れるので、大きなザックを担いだままでバランスを崩すと下まで滑落しそうで、恐ろしい。どうしようかと考えた結果、ザックを降ろしてダブルストックでバランスを保ちながら、ステップを付けて行く。運動靴のような柔らかい靴でステップを切るのに苦労する。何とかザックを背負って渡っても崩れにくくして渡るろうとするが、少し崩れにくくなっただけで崩れは止められない。ストックとバランスで何とか一気に渡ってしまう。かなり緊張したが、通過できてホッとする。

 ホッとしたのもつかの間で、大根沢橋に近づくと大崩落があって、この前に渡った崩落と比べて斜度もきつく、距離も長い。とても渡れそうも無い。これは引き返すしかないなと一瞬脳裏をかすめる。でもここまで来て引き返すのも情けないと渡る方法を考える。長距離のトラバースは先程の経験からバランスを崩すと滑落で大怪我が待っているだけで、最初から手段として有り得ない。

 高巻きする方法を考えるが、下るポイントが見えないしザイル無しでは無謀に思える。一旦下って川沿いに伝って登り返す方法が最も現実的だが、大きなザックを背負ったままでザイル無しで下るのは無謀に思える。崩れる中、空身で下るステップをつける挑戦に出る。流された大きな倒木も利用しながら、苦労して何とか下れそうになるまで仕上げてから、再び戻ってザックを担いで何とか通過に成功した。かなりの緊張感であった。
【おっと、どうして渡ろう!?】
【小屋4:扉開かず】
【大根沢橋が見えた!】
【近づくと、大崩落!!】

【右上の石積が林道:殆ど埋もれている】

【何とか渡ってから、振り返って大崩落を見た所(下部)】

【渡ってから、大根沢橋から振り返って見た所(上部)】

 ホッとして、大根沢から少し進むと赤い屋根の作業小屋にたどり着いた。中はまだ十分使える小屋なので、先程の緊張から余程ここで一泊しようかと思う。ここは栃沢の手前だが栃沢小屋ではないかと思う。天気が良くなった初日から距離を稼げないのは残念だ。18時前なのでまだ1時間ほど明るいだろうから、せめて釜ノ島小屋を目指そうと気持ちを奮い立たせる。何とか暗くなる前に着きたい。しばらくすると三昇ノ瀧(さんしょうのたき)に到着。かなりの落差があったが、暗くなり始めていたのでゆっくり見ている余裕も無い。

 もう危険な崩落は無いだろうと思っていたら口惜しい事に、再び大崩落が現れた。大根沢の時ほど斜度は無いが距離はそこそこある。長い。ステップををつける試みを始めるが暗くなってきたのでヘッドランプでは全体の見通しが効かない。ここで断念してテントを張る事にする。ここは釜ノ島小屋手前の1154mピークの南側の麓だ。水を汲んで持っていなかったので、15分ほど引き返して汲んで来る。今夜は就寝が遅くなってしまう。
【小屋5】
【小屋5内部:ここに泊まっておくべきだった】
【こんな崩落はしょっちゅう】
【三昇ノ瀧】
【今日は先の崩落通過を断念】

(ゆっくり登る時の歩数計はあてにならないが、取り敢えずの表示が「寸又峡温泉 ~ テント設営地点」:53,288歩)



1 コメント

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Unknown (紺谷そとよし)
2021-07-07 00:26:28
こんな難しい所を注意深く歩く人がいる、「山さゆがねば」のお人です。彼は歩き慣れているらしく、余程の事が無いと断念はしない特殊な人です。
栃沢の小屋の床下には動物が住んでいて電気を消すとゴソゴソするとの事ですね。
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