私が広角レンズは形が極端に歪曲するレンズだと思い込んでいた頃。ある写真展で風景を広角で撮影し、引き伸ばされたプリントを見ていた。それがある距離に来たら、歪曲して見えていた画像が歪みのない、普通の風景に見えた。こういうポイントがあるのか。と面白かった。 被写体、被写体との関係や距離。プリントのサイズ。特別なポイントが在るのではないか。来年の深川江戸資料館での個展は、大きなプリントを考えている。用紙のサイズの都合、背景を含めての人物ということもあり、必ずしも人間大とはいかないかもしれないが、できるだけそうしてみたい。人形が人形であるかぎり、人間サイズを越えるべきではないという気がするが、写真は違う。あくまで人を撮っているつもりでいる。人間大にしてみる価値はあるだろう。 作家シリーズを始めた初期に、江戸川乱歩が帝都上空を気球に乗って、という作品を作った。作品自体に極端なパースを付け、さらに広角レンズで撮影した。背景の空を自分で描き、それを自然光で撮る、しかも人形を手持ちで、と今思うとややこしい、あまり頭が良いとはいえない撮影方であったが、それが私だとしかいいようがない。田村写真で最初にプリントを見た時、自分でそうするつもりでやっていたはずであったが、『私はこういうことをしようとしていたのか。』と意外な驚きがあった。もし今度あの感じを味わえるとしたら、人間大プリントではないか、と密かに期待しているのである。
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