デイアギレフはジャン・コクトーに「私を驚かせてみろ」といった。私が私に驚かせてもらいたいのは私自身である。今日は何をしていても『寒山拾得』に出て来る豊干禅師の乗っている虎のことを考えていた。先日ちょっと思い付いて以来、やりたくてしかたがない。今年の正月に、まさか虎を手掛けたい、と熱望することになるとは夢にも思わなかった。それを形にできたら正月の私はきっと驚くだろう。タコと北斎にしてもそうだった。びっくりしただろう私。ザマアミロ、と。これを続けていけば、私の想定外の方向に行ってしまうがそれで良い。どうせ私の想定したことなどロクな物である訳がない。 そうやって自分のしでかしたことに驚いていられるうちは私は生きている。周辺にヒトダマを浮かべてこちらを見ている三遊亭円朝が、最近の手法の第一作であった。昨年4月の終わり頃だった。それまで随分長い間、頭の中で円朝がこちらを見ていたのを憶えているが、その時はむしろヒトダマを筆で描くアイデアが面白く、その後おかげで作風が一変することになるとは思ってもいなかった。あの前には戻りたくない。私の場合、冥土へ向かう恐怖に打ち勝つにはこれをくり返すしか方法はない。去年の私と今年の私が変わらないなんて、こんな恐ろしい話はない。 亡くなった父が何度か死にそうになり入退院をくり返し、痩せ衰えながらも帰宅した日。TVで水戸黄門を見、スポーツ新聞を読んでいるのを見て心底ビックリした。
銀座青木画廊「ピクトリアリズム展Ⅲ』5月12日(土)〜5月25日(金)20日(日休)
2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより
※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載6回「夏目漱石の鼻」
HP
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