この作品は世界初の推理小説であるが、私が最初に読んだのは、おそらく子供向けの本だったろう。犯人がオランウータンというのにびっくりした。よって、どちらかというとオランウータンが女を殺している場面を作りたかった、といってよい。何度か映画化されているが、検索しても、どういうわけだか、本物のオランウータンを使っているのは今のところ見当たらない。 この事件を解決するのが、後の推理小説の探偵像に多大な影響を与える名探偵、オーギュスト・デュパンである。暗号を解くのが得意だったポーそのもの、といってもよい分析能力に長けた人物である。もちろんポーにその役をやってもらったが、ポーは人物の外見について、ああだこうだ書かないので有難い。明智小五郎がもじゃもじゃ頭のおかげで江戸川乱歩に明智をやってもらうのを断念したことは前にも書いた。 完成したのは、オランウータンが女を殺しているというのに、助けようともせず、ドアの陰で、どこかの家政婦のように聞き耳立てているデュパンである。
※世田谷文学館にて展示中
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