いよいよ新たに作る物がなくなってきた。鏡花の描く異界の住人は、妖怪じみているといえば女顔のミミズクくらいで、あとは鎮守の杜の妖怪なのか単に獣なのか判然としない。白ウサギが太鼓を叩く、というくだりがある。重要なシーンではないが、昨年ボロ太鼓を入手してしまっている。見た目こそ古びていてイメージぴったりだが、叩いてもほとんど鳴らないジャンクな物である。撮影に使うこともなく、ただ残るとしたらこれほどムカツクものはないであろう。目の前の小学校にちょうど白ウサギがおり、それをボランテイアで世話をしているSさんにお願いするはずが改装工事に入ってしまい、どこかのPTAが引き取ってしまったとかで撮影ができなくなっていた。それならということで、本日ウサギに触れられるという西葛西の行船公園にいくことにした。撮影中、ウサギを支えてもらうため、助手としては最低のKさん。ヒマだけが取り柄である。しかし例によって朝っぱら飲んでしまってロレツが回っていない。汗をかいているので酒臭いったらなく、車中隣の女子高生が席をかえる始末。親戚にこんなのがいたら嫌だろうなあといつも思うのである。 炎天下を歩いてたどりつくと、暑さのため動物と触れあうコーナーは中止。たしかにこれでは無理だろう。かき氷を食べて帰る。 無駄な1日になってしまったが、唯一、重要なシーンなのに、どう描くか浮かばず、後回しにしていたカットが昨晩より収まりがつきそうな気配である。二日間不明だった携帯電話も無事戻った。