レンゲさんが狸寝入りしながら、実は、僕に“据え膳”をかましているのじゃないだろうか。。。?
あたしが眠った振りをして、無防備状態になって、デンマンさんを誘惑している、と。。。そう思ったのですかぁ。。。
そういう事だって考えられるでしょう?
つまり、眠れないというのは実は口実で、本当はデンマンさんに抱かれて身も心も一つになりたくて、あたしがデンマンさんと一緒に寝たのだと。。。。
そういう可能性だってありますよね?
あたしは、それ程、手の込んだ事をしませんわ。
でもね、レンゲさんはこれまでに豊富な恋愛体験を持っている。清水君とも毎日のように愛し合っていた。でも、現在は清水君と別れて一人の生活をしている。阿部定事件の定さんの予審調書を読んでいて、次のような箇所に僕の目が留(と)まったんですよ。
男性と付き合っていないと気がイライラする
丹波の篠山を逃げて神戸に住んでからは吉井信子と名乗って二週間ばかりカフェーの女給をして居ましたが前借のこともあるし小遣にも困り、何とか金が欲しいと思い、店に来た客に月100円の収入ある商売はないかと聞いたところ客が
「よい商売がある。遊んで居て気が向いてから商売を始めたらどうか」と言いました。
その男は高等淫売(コールガール)の客引をしている人でした。
大体その見当はついていましたから今更堅気になっても良い暮らしができるわけではないと思い、私もその気になってその家に行きました。
2ヵ月ばかりブラブラ静養しながら高等淫売を始めました。
ところが、その主人は私の稼ぎから今までの費用を差し引いて、なおピンはねするので仕打がヒドイから3ヵ月位で商売を止め、昭和7年28歳の時に大阪へ行き同じ商売をしました。
しかし、間もなく淫売を止め1年ばかり妾をしておりました。
その間、相手は3人変り毎月60円から100円の手当をもらっていました。
この頃から情事に快感を覚え一人寝は淋しくてなりませんでした。
妾では旦那の来るのが月に5回か6回なので淫売当時の好きな客2人ばかりとも時々関係していました。
金もたやすく入ったし暇もあったので遊蕩三昧の生活をするようになりました。
暇に任せて麻雀したり、宝塚へ遊びに行ったり、道頓堀へ出掛けたりして浮かれておりました。
賭博の事で警察に検挙されたのはこの頃です。
そこで謹慎する気になり小遣も400円もありましたから妾を止め、独りで大阪の住吉アパートを借り、本などを読みながら1ヵ月半位静かに生活していました。
しかし、男性と関係を持っていないと気がイライラするので、当時お医者さんに診察してもらった事がありました。
お医者さんは「別に異状はない。そのような事は人間として当然ある事だから独身より真面目な夫婦生活をするがよい、それができないようであれば、精神修養の本を読んで気分を転換しなさい」
そう言われました。
『自伝・阿部定の生涯 その2』より
もちろん、レンゲさんはコールガールをしていたわけではありません。でもね、“恋愛経験”という事を考えるならば、定さんと比べても引けをとりませんよね。
つまり、あたしの男性経験を持ち出して、あたしが定さんのように欲求不満になってイライラしているとおっしゃりたいのでしょう? それで、衝動的にバンクーバーにやって来て不眠だと言いながらデンマンさんのお部屋に入って行った。でも、実は、あたしがデンマンさんとしたいからだと。。。
。。。そこまで。。。そこまで、レンゲさんに先を越されて言われてしまうとは思ってもいませんでしたよ。。。やっぱり、レンゲさんの理解力というか。。。洞察力と言うか。。。すごいなあああ。。。レンゲさんは、やっぱり頭のいい女の子だなあアア~~。
変な所で、おだてないでくださいな。。。どうせ、デンマンさんは、いろいろと回りくどい事を言って、あたしが今言った事をほのめかすのですわぁ~。この記事がやたらに長くなるだけだから、あたしがデンマンさんの言おうとしている事を言ったまでですわぁ~。
そうですか。。。そこまで、気を使ってもらっちゃって。。。うへへへ。。。
デンマンさんは、あたしがふしだらな女だと思っているのでしょう?
違いますよゥ。。。違いますよォ~。。。僕は決してレンゲさんがふしだらな女だとは思っていませんよ。
でも、欲求不満が元でデンマンさんのお部屋に行ったのだと思い込んでいますわ。
そうであはありませんよ。上の定さんの予審調書の中で、お医者さんが言ってますよね。“別に異状はない。そのような事は人間として当然ある事だから独身より真面目な夫婦生活をするがよい”とね。。。
つまり、洋ちゃんと結婚しなさい、とデンマンさんはおっしゃりたいのでしょう?
僕は言ってませんよ。上の調書の中でお医者さんが言っている事を僕が引用しているだけですよ。
とにかく、あたしが洋ちゃんと別れているので、あたしが欲求不満なんだとデンマンさんは思い込んでいるのですわ。
そうやって、何から何まで、レンゲさんが自分で決めてしまっては、僕の出番がないじゃありませんか?
だって、そうでしょう?
違いますよゥ。。。違いますよォ~
そうですってばああああああああ!
分かりました。。。そんなに大きな声を出さなくても聞こえますよ。。。じゃあね、誤解のないようにはっきり言いますよ。
早く言ってくださいな。
あのね、確かに僕はレンゲさんが欲求不満に陥(おちい)っているのではないだろうか。。。そう思いました。年齢だって当時28才の定さんとあまり変わりがない。男性経験だって定さんと同じぐらいの経験を持っている。そうであるなら、当然レンゲさんだって、これまで清水君と毎日愛し合っていたのだから、別れてからしばらくたっている現在のレンゲさんは、さぞかし一人寝が寂しいだろうと思ったわけですよ。
つまり、あたしが欲求不満だと思っているわけでしょう?
だからそう思っていたんですよ。
今は、そう思っていないとおっしゃるのですか?
少なくとも僕に“据え膳”をかまそうとしたのではないという事が分かりましたよ。
もちろんですわ。あたしはそのような事を全く考えていませんでしたから。。。デンマンさんが、あたしをふしだらな女だと思い込んでいるから、そのようなふしだらな事を考えるのですわ。
とにかくね、僕はレンゲさんの素直なところを改めて見直しましたよ。
どうして、そのような事をおっしゃるのですか?
僕はね、レンゲさんが狸眠りしていると思っていたんですよ。僕の腕の中でスヤスヤと眠っているけれど、実は眠った振りをしている。僕はそう思って、レンゲさんの表情をじっと眺めていたんですよ。騙されてはならない。。。ここで騙されては、デンマンの男が廃(すた)るとね。。。ウへへへへ。。。。
それで。。。
でもね、どうしたら、化けの皮をはがす事が出来るだろうか?僕は、そのように、かなりかんぐってレンゲさんの可愛い寝顔を眺めていたんですよ。
そんなにあたしの表情を見つめていたのですか?
そうですよ。そのうち、レンゲさんがニタッと笑うのではないだろうか? こういう時に、早まって妙な気を起こして、妙な事をしたら、僕は全くレンゲさんの思う壺にハマってしまう。僕の男としての値打ちが下がるし、下がるだけではない、男が廃る。レンゲさんから、この程度の男だと見下されてしまう。騙されてはいけない。僕はそう思って、なおもレンゲさんのかわゆい寝顔をじっと見つめたものですよ。
あたしが狸眠りをしていると思ったのですか?
そうなんですよ。。。レンゲさんは頭のいい女の子ですからね。このようなことをして僕を試そうとする事だってありうる。そう思いながら僕はレンゲさんのスヤスヤと眠っている寝顔を見つめたものですよ。でもね、本当にスヤスヤと気持ちよさそうに眠っているんですよ。レンゲさんは8才の女の子になりきって僕に甘える事が出来る人ですからね。その事から思えば、眠っている振りをするくらい、そう難しい事ではないはずですよね。
あたしは怖くって神経をすり減らしていたし、デンマンさんの腕に抱かれて、安心して本当にすぐに眠ってしまったのですわ。
でも、僕は、レンゲさんがそれ程すぐには眠れるはずがないと思っているから、レンゲさんの狸寝入りに騙されてはならないと寝顔をじっと見つめるわけですよ。
それで、あたしがどうしてぐっすると眠っているという事が分かったのですか?
話せば実に簡単な。。。つうかああ、単純な事なんですよ。うへへへ。。。
どういうことですの?
レンゲさんがね。。。うへへへへ。。。
なんですの?。。。おっしゃってくださいな。。。
オナラをしたんですよ。
あたし、しませんわ。
しませんわ、と言ったって、レンゲさんはグッスリと眠っていたから覚えてないんですよ。
あたしは眠りながらオナラなんてしませんわ。
でもね、眠っていてもオナラは出るものなんですよ。別に異常でもなんでもないんですよ。
あたしは、しませんでしたわ。
だから、ぐっすりと眠っていたから分からないんですよ。それで、僕はレンゲさんが狸眠りじゃなく、本当に眠っているのだと分かったんですよ。
それって。。。デンマンさんの作り話ですわよね?
作り話をわざわざ、これほど手間ヒマかけてしませんよ。だから僕は初めに言ったでしょう?レンゲさんが気に障ることを言うかも知れませんよ、とね。。。
デンマンさんって、ホントにイケズやわああ~ こうして世界のネット市民の皆様の前で言う事ではないでしょう?
別にレンゲさんが恥ずかしがる事でもないでしょう?
でも。。。でも。。。言って欲しくありませんわ。
とにかく、そう言う訳なんですよ。
つまり、このような嫌がらせまでして、あたしに釘を刺すのですわね?
嫌がらせ。。。?
そうですわ。女が嫌がる事までして、聞きたくない事まで言って、あたしがデンマンさんのお部屋に行かないようにと、忠告しているのですわよね。そういう事をすると、後で、こういうイヤな目に会うよ、と思い知らせているわけですよね。
それは、レンゲさんの考えすぎですよ。レンゲさんが話してくださいと言ったから僕は話したまでですよ。ちゃんと、気に障ることを言うかも知れませんよと、前もって言ったんだから。。。うへへへへ。。。
だから、デンマンさんは、人を馬鹿にしたような事を書いたり言ったりすると言われるのですわ。
レンゲさん。。。レンゲさんは、キレるのですか? 僕は言いましたよね。レンゲさんがキレるような事を言うかもしれないと。。。
(レンゲさん、膨れたまま無言。)
レンゲさんが僕の部屋に来なければ、このような事にはならないんですよ。だから、今夜は一人で寝てくださいね。うへへへへ。。。
【ここだけの話しですけれどね、2週間って、短いようで長いですよね。。。先が思いやられますよ。とにかく、レンゲさんは衝動的なところがありますからね。何をやらかすか分からない。。。レンゲさんにとっては退屈紛れになるかもしれないけれど、その退屈紛れが、僕にとっては脅威ですよ。時限爆弾を懐に抱えるようなものですからね。。。いづれにしても、レンゲさんの話の続きは、ますます面白くなりますよ。僕は、ますます複雑な立場に追い込まれそうです。。。本当に頭痛がしてきますよ。。。んも~~。。。もっとレンゲさんのことが知りたいのなら、下にリンクを貼っておきましたからぜひ読んでくださいね。】
レンゲさんの愉快で面白い、そして悩み多いバンクーバーの日々は
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